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DIPファイナンスとは?背景やメリットを徹底解説

DIPファイナンスとは、企業が民事再生法や会社更生法の法下で、金融機関から短期融資を受ける手法です。その融資は、再生手続き後、当面の運転資金として活用されます。

アメリカではよく使われる手法ですが、日本では、法律の関係上、浸透していないのが現状です。しかし近年、日本でも少しずつDIPファイナンスを取り入れる動きが高まりつつあります。

今回の記事では、DIPファイナンスの意味や背景、メリット、民事再生法との違いについて徹底解説します。

DIPファイナンスとは?

DIPファイナンスとは、デット・イン・ポゼッション・ファイナンス(debtor in possession finance)の略で、企業が民事再生法や会社再生法の中で受けられる短期融資です。

民事再生法や会社再生法の手続きをした企業は、基本的に金融機関からの追加融資を受けられません。仕入先への支払いも、手形ではなく、現金で要求されるため資金繰りが苦しく、息詰まることも多いため、二次倒産を招いてしまいます。

そのため、当面の間の運転資金として融資枠を提供するのがDIPファイナンスの主な役割です。これをアーリーDIPと呼びます。

また、もう1つの手法として、民事再生法や会社更生法の再生計画の中にDIPファイナンスを盛り込む方法もあり、これをレイターDIPと呼びます。レイターDIPで受けた融資は、再生のためのリストラ資金や設備投資などに当てられます。

DIPファイナンスは、民事再生の可決後も旧経営陣がそのまま経営を続け、企業再生を図ります。

民事再生法との違い

民事再生法は、民事再生の申立てと保全処分の決定をし、手続きを開始します。財産状況の報告や債務整理をしたあと、再生計画を提出し可決されるのを待ちます。

DIPファイナンスを受ける企業は、民事再生の手続き申立て後、計画認可決定前までの間の融資を受けられます。または、再生計画の中にDIPファイナンスを盛り込みます。

再生計画は、民事再生手続きで債務を縮小してもらい、自力で弁済していく方法や、ほかの企業に出資してもらう、事業譲渡をして譲渡金で債務を弁済する方法などが考えられます。

その中でも、ほかの企業に出資してもらう方法をスポンサー型民事再生プレパッケージ型民事再生と呼びますが、他者からの援助を受けるという点でDIPファイナンスと類似しています。

しかし、DIPファイナンスは、融資する金融機関の立場から見るとリスクが大きいため、実現しにくいのが現状です。

DIPファイナンスのメリットとデメリット

この項では、DIPファイナンスのメリットとデメリットについて解説します。

  • メリット1:優れた企業を再生できる
  • メリット2:地域の雇用や生活の維持
  • デメリット:金融機関側のリスクが高い

以上の3点について詳しく見ていきましょう。

メリット1:優れた企業を再生できる

DIPファイナンスは、優れた企業の危機を助け、再生出来る点が最大のメリットです。倒産してしまう企業の中には、優れた利益性を持つ企業もあります。

再生計画の中で経済的合理性を伝えられれば、DIPファイナンスへの道も繋がるかもしれません。自力での再生や、スポンサーが見つからない企業にとっては、倒産を回避する選択となるでしょう。

メリット2:地域の雇用や生活の維持

倒産してしまう企業の中には、地域に根付き、その地の人々を多く雇用していたり、インフラを請け負い地域経済を活性化させていたりするなど、地域に貢献している中小企業もあります。

このような企業が倒産した場合、その地域の雇用や人々の暮らしに影響を与える可能性も考えられます。DIPファイナンスを実施することで、その地域の人々の暮らしを守るメリットもあると言えるでしょう。

デメリット:金融機関側のリスクが高い

DIPファイナンスのデメリットは、融資する側のリスクが高い点です。一度、民事再生の手続きをした企業は、今後も経営を失敗する可能性が高く、その場合、融資した資金の回収は困難になります。

さらに、企業価値が低下してしまうようなリスクの高い融資を実現してしまう可能性もあるでしょう。再建に失敗すると、融資した側は大きな損害を被りますが、融資された経営者側は失うものは少ないため、成功の可能性が低い再生計画書を提出し、可決される可能性が否めません。

このような事情から、融資する側の承認を受けにくい実情があります。

DIPファイナンスの背景

DIPファイナンスは、アメリカではよく実施されている手法です。

アメリカの連邦破産法の元、経営破たん後も経営陣がとどまり再建を目指す企業に対し、運転資金を融資する形で実施されていました。

アメリカのDIPファイナンスには、優先弁済権があり、倒産後に融資を実施する債権者の保護を通して、有望な投資プロジェクトに対するファイナンスがしやすい仕組みになっています。

そのため、日本ではあまり知られていないDIPファイナンスですが、アメリカでは一定の実績があります。

日本でも大手銀行がDIPファイナンスに積極的になる動きもありますが、アメリカに比べるとまだまだ市場規模が小さいと言えるでしょう。

日本でのDIPファイナンス

アメリカでは、政府がDIPファイナンスを推奨しており、融資する側のサポート体制も整っています。しかし、日本ではサポート体制が用意されていません。

日本の会社更生法では、倒産した企業が借り入れをすることは、原則として禁止されており、民事再生法でも、DIPファイナンスの融資は共益債権に入ります。しかし、弁済の優先順位が低いため、積極的な金融機関が少なく、普及しにくいと言えます。

共益債権とは、民事再生に関わる手続きでの費用やそれに関わる管理費用、処分費用です。共益債権は民事再生の手続きをしても、全額支払わなければならない債権の一種です。

DIPファイナンスは、共益債権の一種ですが、租税債権や労働債権よりも弁済の優先順位が下になるのです。

そのため、日本でのDIPファイナンスをさらに普及させるには、法整備が必要だと言わざるを得ません。

DIPファイナンスのポイントは質の高い再生計画書にあり。

DIPファイナンスは、金融機関から受ける融資の一種です。どのような融資を受ける場合でも、再生計画に、再生の可能性が高い旨を記す必要があります。

具体的には、以下の内容を明記します。

  • 経営を継続するための努力目標
  • 経営改善のための基本方針
  • 収支計画
  • 資金繰り表
  • 長期資金収支予想表

再生計画の中で返済できると見なされれば、融資を受けることができます。再生計画は、客観的目線で精査されるため、株主責任や経営責任を明記した計画書を作成することが大切です。

DIPファイナンスでの企業再生なら、専門家に相談を

DIPファイナンスは、融資する側のリスクが高いため、入念な再建計画を作成しても認可される可能性は低いと言えます。

他者からの融資や支援を検討している場合、ほかの企業がスポンサーになってくれるスポンサー型の民事再生や、他社に事業譲渡するM&Aを実施する選択もあります。再建後の資金が不安要素である場合は、これらの手法も視野に入れてみましょう。

パラダイムシフトは2011年の設立以来、豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。

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