「後継者が見つからない」
「会社の業績は赤字続きで、銀行からの借入金も残っている」
「業界の先行きも決して明るいとは言えない」
「こんな会社、誰も買ってくれないだろう…」と深夜の書斎で呟きながらも、廃業以外の道はないかと情報を探している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
諦めるのはまだ早いです。
この記事では、会社売却ができないとされている理由を具体的に解説します。赤字や借金を抱えていても売却の可能性を見出すための方法や、あなたの会社に眠る「隠れた価値」を見つける方法もご紹介します。
最後まで読むことで、廃業以外の選択肢と、次の一歩を踏み出す勇気が見つかるでしょう。
目次
- 1 会社売却できない9つの理由
- 2 財務状況が悪い
- 3 社長がいなければ会社が回らない
- 4 買い手側に魅力やメリットがない
- 5 高すぎる売却価格を設定している
- 6 売り手側の内部問題
- 7 事業承継の準備が遅れている
- 8 情報の管理が甘い
- 9 特殊な企業形態をしている
- 10 経営者の覚悟が欠けている
- 11 赤字・借金があっても会社売却できる4つの工夫
- 12 事業価値を明確にアピールする
- 13 負債整理と資産分離を事前に行う
- 14 スポンサー型M&Aを活用する
- 15 専門家を活用してスキームを最適化する
- 16 あなたの会社に眠る「隠れた価値」の見つけ方
- 17 買い手は「未来への投資」として会社を見ている
- 18 技術・ノウハウ・特許などの「知的資産」
- 19 優良な顧客基盤・取引先との強力な関係性
- 20 従業員のスキルとチームワーク・企業文化
- 21 会社の価値を高める5つの戦略
- 22 選択と集中で筋肉質な経営を目指す
- 23 業務をマニュアル化する
- 24 何のために何を譲れないのかを決める
- 25 最適な専門家を見つける
- 26 自社の情報を整理・開示できる状態にしておく
- 27 まとめ:「会社売却できない」には理由がある!売却できる会社作りをしよう
会社売却できない9つの理由
会社が売却できないのには、明確な理由があります。まずは自社の状況を客観的に把握するために、売却を困難にする9つの要因を確認してみましょう。課題を明確にし、次の一手を考えるための大切なステップです。
財務状況が悪い
会社売却ができない最も一般的な理由は、財務状況の悪化です。買い手は投資対象として、将来の収益性を厳しく評価するからです。例えば、数年にわたって赤字が続いていたり、売上規模に比して借入金が過剰であったりする場合、買い手は投資の回収が困難だと判断します。
具体的には、借入金が月商の3〜4倍を超えていると警戒される傾向です。決算書に現れない簿外債務や未払いの残業代などの「隠れた負債」が後から発覚すれば、交渉が破談になる可能性が高まるので注意が必要です。
社長がいなければ会社が回らない
「自分(社長)がいなければ、この会社は回らない」という自負は、中小企業の経営者にとって誇りであると同時に、M&Aにおいては大きな弱点です。多くの買い手企業は、オーナー社長が退任した後も事業が安定して継続できるかを重視します。
業務プロセスが標準化されておらず、社長個人の経験や勘に依存している「属人的」な会社は、事業継続のリスクが高いと判断されやすいです。業務マニュアルの不在や、特定の従業員しかできない作業が多い会社は、買い手にとって大きな懸念材料となります。
買い手側に魅力やメリットがない
M&Aは、単なる会社の売買ではありません。買い手にとっては、自社の事業を成長させるための戦略的な投資です。買い手が自社の事業との間に相乗効果(シナジー)を見出せなければ、買収の動機は生まれません。
例えば、買い手の販路を活用して売上を伸ばせる、あるいは売り手の技術で新製品を開発できるといった具体的なメリットが必要です。事業規模が小さすぎる場合、「投資に見合うリターンが少ない」と判断されるため敬遠される一因となります。
高すぎる売却価格を設定している
長年苦労して育ててきた会社には、経営者として強い思い入れがあるはずです。しかし、その想いが市場の客観的な評価、すなわち「企業価値」と大きく乖離していると、交渉は前に進みません。非現実的な価格設定は、買い手候補を遠ざける最大の原因の一つです。
会社の価値は、専門家による客観的な企業価値評価(バリュエーション)によって算出されます。感情的な価格ではなく、市場に基づいた適正価格を理解することが交渉の第一歩となります。
売り手側の内部問題
M&Aを進めるには、法的な手続きをクリアする必要があります。特に中小企業で起こりがちなのが、株主からの同意が得られない売り手側の内部問題です。親族や古くからの知人が株主になっている場合、売却に反対されることがあります。
過去の株式譲渡の履歴が曖昧であったり、法的な手続きに不備があったりすると、買い手は将来的な訴訟リスクを懸念します。企業の法務的な透明性は、M&Aにおける信頼の土台です。
事業承継の準備が遅れている
後継者不在は、今や日本の中小企業全体が抱える深刻な問題です。いわゆる「2025年問題」では、約127万社が後継者不在により廃業の危機に瀕すると言われています。「まだ大丈夫」と考えているうちに経営者が高齢化し気力や体力が衰えてしまうと、M&Aという複雑なプロセスを進めるのは今よりも困難になるでしょう。
事業承継の準備が遅れるほど選択肢は狭まり、不利な条件での売却や最悪の場合は廃業へと追い込まれてしまいます。
情報の管理が甘い
M&Aでは、極めて機密性の高い情報を取り扱います。もし情報が不用意に外部へ漏洩してしまった場合、企業価値は大きく損なわれてしまいます。例えば、従業員に売却の噂が広まれば、将来への不安から優秀な人材が離職してしまうかもしれません。取引先が「事業の継続は大丈夫か」と懸念し、取引を停止する可能性もあります。
情報管理の徹底と関係者への慎重な情報開示は、M&Aの成否を分ける重要なポイントです。
特殊な企業形態をしている
会社の法的な形態も、売却のしやすさに影響します。例えば合同会社は、株式会社と比べて売却(持分譲渡)のハードルが高くなります。株式会社の売却(株式譲渡)は株主総会での決議で進められますが、合同会社の持分譲渡には原則として「社員全員の同意」が必要です。
少数精鋭での運営を前提とした合同会社の仕組みが、M&Aの場面では足かせとなります。合同会社を売却する場合は、株式会社へ組織変更するといいでしょう。
経営者の覚悟が欠けている
最後に会社売却で最も重要とも言えるのが、経営者自身の「覚悟」です。会社売却は、自社の課題と真正面から向き合い、時に厳しい評価を受け入れつつ大きな決断を下すプロセスです。経営者の意思が揺らいだり現実から目を背けたりすると、交渉は停滞してしまいます。
従業員の未来や取引先との関係、自らの人生を守るために会社を売却するという強い意志と覚悟が、困難な道のりを乗り越える原動力となります。
赤字・借金があっても会社売却できる4つの工夫
「会社売却できない9つの理由」を読んで、ますます不安になったかもしれません。しかし、「赤字だから」「借金があるから」といって、売却を諦める必要はありません。買い手企業が独自のノウハウで黒字化できると判断したり、事業の将来性やシナジー効果を高く評価したりして、赤字企業のM&Aが成立するケースは多くあります。
ここからは、厳しい状況でも会社売却の可能性を高めるための4つの具体的な工夫を解説します。
事業価値を明確にアピールする
赤字という事実は変えられませんが、補って余りある「価値」をアピールすることは可能です。買い手は貸借対照表の数字だけでなく、記載されていない「無形の資産」も評価するからです。例えば、特定の分野で他社に真似できない技術力や長年かけて築き上げた地域でのブランドイメージ、安定した優良顧客リストなどが挙げられます。
なぜ赤字に陥ったのかを客観的に分析し、買い手の支援があれば黒字化できるという明確な将来像を提示することが重要です。自社の強みを棚卸しし、買い手のメリットと結びつけて説明する戦略が求められます。
負債整理と資産分離を事前に行う
過剰な借入金や不要な資産は、買い手にとって大きな負担となります。M&Aを検討する段階で、整理を進めることが有効です。例えば、経営に直接関係のない不動産や有価証券を売却し借入金の返済に充てることで、財務状況をスリム化できます。複数の事業を行っている場合は、事業譲渡も選択肢になります。
会社すべてではなく、収益性の高い優良な事業だけを切り出して売却することで、買い手のリスクを限定し交渉しやすくしましょう。
スポンサー型M&Aを活用する
自社単独での再建が困難な場合、事業再生の専門家であるスポンサーの支援を受ける「スポンサー型M&A」という手法があります。事業再生ファンドや再建実績のある事業会社がスポンサーとなり、資金援助や経営ノウハウの提供を受けながら会社を立て直す方法です。スポンサーは、一時的な赤字よりも、事業そのものの潜在的な価値や再生可能性を重視します。
金融機関との交渉や複雑な法的手続きもスポンサーが主導してくれるため、経営者は事業の立て直しに集中できます。廃業の瀬戸際にある企業にとって、事業と雇用を守るための有力な選択肢です。
専門家を活用してスキームを最適化する
会社の状況によって最適な売却方法は異なり、売却方法のことを専門用語で「スキーム」と呼びます。一般的には会社を丸ごと売却する「株式譲渡」が用いられますが、前述の「事業譲渡」や会社を分割して売却する「会社分割」などのスキームもあります。スキームによって税金の額や手続きの複雑さが大きく変わってくるため、自社の状況に合ったものを選択するのが重要です。
M&Aの専門家である仲介会社やアドバイザーに相談し、自社の状況を正確に伝えることで、最も有利で実現可能性の高いスキームを提案してもらいましょう。
あなたの会社に眠る「隠れた価値」の見つけ方
長年経営に携わっていると、自社の強みや魅力が見えにくくなることがあります。しかし、買い手の視点で見れば、あなたの会社にはまだ気づいていない「隠れた価値」が眠っているかもしれません。買い手は財務諸表の数字だけでなく、企業の将来性を生み出す無形の資産にも注目しています。
ここでは、あなたの会社に眠る「隠れた価値」の具体的な見つけ方を4つ紹介します。
買い手は「未来への投資」として会社を見ている
買い手がM&Aを行う目的は、以下の通りさまざまです。
- 新規事業に参入したい
- 事業エリアを拡大したい
- 特定の技術を獲得したい
買い手は、あなたの会社を「現状の姿」で評価するだけではありません。自社のリソース(資金や販路、技術など)と組み合わせることで、将来どれだけの成長が見込めるかと「未来への投資」として見ています。
自社の強みが買い手のどの目的達成に貢献できるのかを考えることが、価値を正しく伝える上で重要になります。
技術・ノウハウ・特許などの「知的資産」
貸借対照表には載らない「知的資産」は、M&Aにおいて高く評価されます。他社には真似のできない独自の製造技術や、長年の経験で培われた専門的なノウハウ、取得している特許などが知的資産です。ニッチな市場で高いシェアを誇っている場合、技術やノウハウは買い手にとって喉から手が出るほどほしい資産です。
買い手は、自社でゼロから開発する時間とコストを大幅に削減できるため、赤字であっても買収する価値があると判断する場合があります。
優良な顧客基盤・取引先との強力な関係性
長年にわたって築き上げてきた顧客との信頼関係や、大手企業との安定した取引実績も強力な「隠れた価値」です。買い手からすると、ゼロから新規顧客を開拓し信頼関係を構築するには、莫大な時間とコストがかかります。あなたの会社が持つ優良な顧客リストや強固な販売網は、買い手がすぐに収益を上げられる貴重な経営資源となります。
特定の地域で圧倒的な知名度やシェアを誇っている場合、地域への進出を狙う買い手にとっては魅力的な価値となるでしょう。
従業員のスキルとチームワーク・企業文化
会社の本当の財産は「人」であるとよく言われます。M&Aにおいても、従業員が持つスキルや資格は重要な評価対象です。熟練した技術を持つ職人や特殊な資格を持つ専門家、チームワークは、簡単にお金で買えない価値を持っています。
風通しの良い企業文化や従業員の高いモチベーションも、買収後のスムーズな経営統合(PMI)を可能にします。買い手は事業だけでなく、事業を支える優秀な人材と組織も一緒に引き継ぎたいと考えているでしょう。
会社の価値を高める5つの戦略
自社に眠る「隠れた価値」を見つけたら、次は価値をさらに高めて買い手にとってより魅力的な会社にするための具体的な行動を起こしましょう。会社の価値を高める取り組みは「事業の磨き上げ」とも呼ばれ、M&Aの成功確率を大きく左右します。ここでは、今日からでも始められる、会社の価値を高める5つの戦略を解説します。
選択と集中で筋肉質な経営を目指す
買い手にとってわかりやすく魅力的な会社であるためには、筋肉質な経営体制を目指すことが重要です。まずは自社の事業や資産を見直し、本業に集中する「選択と集中」を進めましょう。収益を上げていない不採算事業からは思い切って撤退し、経営資源を主力事業に集中させます。
事業に使われていない不動産や過剰な在庫、節税目的で加入した保険なども整理・売却することで、財務状況は改善できます。買い手は事業の実態を把握しやすくなり、高く評価してくれる可能性が高まるでしょう。
業務をマニュアル化する
「社長がいなければ回らない」会社から脱却するためには、業務の標準化とマニュアル化は不可欠です。事業の継続性を買い手にアピールするための最も重要な準備の一つと言えます。誰が担当しても一定の品質を保てるように、主要な業務のプロセスを文書や動画で記録しマニュアルとして整備します。
同時に、社長が抱えている権限を積極的にNo.2や幹部社員に移譲し、組織として自律的に動ける体制を構築することが重要です。買い手が、「社長が辞めてもこの会社は大丈夫だ」と安心して投資判断を下せるよう、業務・組織を整備しましょう。
何のために何を譲れないのかを決める
M&Aの交渉は、さまざまな条件の調整の連続です。交渉の中で迅速かつ的確な意思決定を行うためには、交渉の軸となる「M&Aの目的」「譲れない条件」を事前に明確にしておく必要があります。例えば、目的が「従業員の雇用を守ること」であれば、売却価格が多少下がっても雇用維持を約束してくれる買い手を優先すべきです。
一方で「創業者利益を最大化すること」が目的なら、価格交渉に重点を置くことになります。M&Aの目的を明確にし、絶対に譲れない条件と状況によっては妥協できる条件を整理しておくことが、後悔のないM&Aにつながります。
最適な専門家を見つける
M&Aは、法務や税務、財務など高度な専門知識が要求される複雑なプロセスです。経営者が一人ですべての対応を行うのは現実的ではありません。M&Aを成功に導くためには、経験豊富で信頼できるM&Aの専門家(仲介会社やアドバイザー)をパートナーに選ぶことが不可欠です。
専門家は、客観的な企業価値の算定や自社に最適な買い手候補の探索、契約書の作成支援など、多岐にわたるサポートをしてくれます。複数の専門家と面談し、実績や手数料体系、何よりも担当者との相性を確かめた上で、慎重に依頼先を選びましょう。
自社の情報を整理・開示できる状態にしておく
M&Aのプロセスでは、買い手が売り手企業を詳細に調査する「デューデリジェンス(買収監査)」が必ず行われます。調査の際に求められた資料を迅速かつ正確に提出できるかどうかが、買い手からの信頼を大きく左右します。過去数期分の決算書や税務申告書、株主名簿などの資料を事前に整理し、いつでも開示できる状態にしておきましょう。
潜在的な法務リスクや財務上の問題点があれば隠さずに専門家と相談し、誠実に買い手に開示する姿勢が、最終的な信頼関係の構築につながります。
まとめ:「会社売却できない」には理由がある!売却できる会社作りをしよう
「自分の会社は赤字だから、借金があるから売却できない」という思い込みは、多くの経営者が抱える悩みです。会社売却ができないのには明確な理由があり、多くは事前の準備と戦略によって乗り越えることが可能です。
財務状況の悪化や事業の属人性といった課題も、専門家と協力しながら「事業の磨き上げ」を行うことで、買い手にとって魅力的な会社へと変貌させられます。貸借対照表には載らない技術力や顧客基盤といった「隠れた価値」に光を当て、買い手に正しくアピールすることも重要です。
会社売却は、決して後ろ向きな選択ではありません。長年守り続けてきた事業と苦楽を共にしてきた従業員の未来を守るための、前向きで戦略的な経営判断です。この記事を読んで少しでも可能性を感じられたなら、まずは信頼できるM&Aの専門家に相談することから始めてみてください。
M&AアドバイザリーとしてM&Aに関連する一連のアドバイスと契約成立までの取りまとめ役を担っている「株式会社パラダイムシフト」は、2011年の設立以来豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。
パラダイムシフトが選ばれる4つの特徴
- IT領域に特化したM&Aアドバイザリー
- IT業界の豊富な情報力
- 「納得感」と「満足感」の高いサービス
- プロフェッショナルチームによる適切な案件組成
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