M&Aを成功させるためのノウハウや事例を無料公開中 M&Aを成功させるためのノウハウや事例を無料公開中

M&Aにおけるクロスセリングとは?得られるシナジー効果や手順を解説。

クロスセリングは、客単価を上げる営業手法のひとつとして認知されていますが、M&Aの現場で使われることもあります。

M&Aにおけるクロスセリングの意味は、統合した売り手企業と買い手企業、双方の商品やサービスをお互いの顧客にアプローチすることで生まれる複合的な相乗効果です。このような効果をシナジー効果と呼びます。

M&Aを実施するにあたり、どのようなシナジー効果が得られるかは、とても重要なポイントとなります。今回の記事では、M&Aにおけるクロスセリングについて、得られるシナジー効果とともに解説します。

そもそもクロスセリングとは?

クロスセリングとは、顧客やユーザーが自社の商品やサービスを購入しようとしているときに、関連商品をおすすめして客単価を上げる手法です。

わかりやすい例として、飲食店で注文をした際に従業員の方が「お飲み物もご一緒にいかがですか?」とおすすめしてくれるシーンがあります。この際には、クロスセリングの効果を上げるため、セット価格を設けるなどして販売を促進する飲食店が多くあります。

クロスセリングは、顧客を増やすことなく売上げアップにつなげられるメリットが挙げられます。さらに、顧客との接点が増えて距離を縮めやすくなるため、認知度も上がります。結果として、リピーターの獲得にもつながるのです。

アップセリングとの違い

アップセリングは、ユーザーや顧客が購入を検討している際に、その商品よりも単価の高い物をおすすめして客単価を上げる手法です。

アップセリングは、闇雲におすすめしてしまうと、「高い商品を押し売りされた」というネガティブな印象を持たれてしまうため、タイミングを見計らいおすすめすることが必要です。

クロスセリングとアップセリングは、客単価を上げると言う目的は同じですが、アプローチ方法が異なる点がポイントとなります。

M&Aにおけるクロスセリングとは?

クロスセリングは、M&Aの現場でも使われています。M&Aにおけるクロスセリングは、売り手企業と買い手企業の顧客を共有し、それぞれの商品やサービスをお互いの顧客に販売するという意味を持ちます。

これにより、シナジー効果が発揮され、売上げの増大を見込めるため、M&Aにおけるクロスセリングは重要な項目と言えるでしょう。

シナジー効果とは、M&Aの実施により見込まれる相乗効果を指します。売り手企業と買い手企業、双方の強みを合わせることで、一社単独では生まれなかったメリットが生まれる現象です。

このときの相乗効果は、単純に双方の利益を合算するだけでなく、複合的な効果が生まれて3倍〜4倍へと効果が増大していきます。

M&Aのシナジー効果は、いくつかの種類に分けられます。クロスセリングが含まれるシナジー効果は、販売面のシナジー効果です。

販売面のシナジー効果には、クロスセリングのほかにもブランド力を活用した効果や販売チャネルの統一などがあります。

M&Aにおけるクロスセリングの例

では、M&Aのどのような場面でクロスセリングが期待できるのでしょうか?具体的な例をご紹介します。

例えば、首都圏で販売シェアを持つA社と地方での販売シェアが大きいB社がM&Aを実施したとします。これにより得られる効果は以下のとおりです。

  • A社とB社の売上げが合算される(=売上規模を大きく見せられる)
  • A社の商品を地方にあるB社の顧客でにも販売できる
  • B社の商品を首都圏にあるA社の顧客にも販売できる
  • A社とB社の商品やサービスを合わせて提供できる

A社とB社双方の商品をそれぞれお互いが持つ顧客に販売し、クロスセリングを実現できます。このように、クロスセルングは、単純に売上げが合算されるだけでなく、双方のメリットを生かして効果が何倍にも膨れ上がるのです。

クロスセリング以外で期待できるM&Aのシナジー効果

M&Aを実施にすることにより期待できるシナジー効果には、販売面のシナジー効果以外にもさまざまなものがあります。

  • コストシナジー
  • 財務シナジー
  • 研究開発シナジー
  • 経営シナジー

この項では、以上の4つを紹介します。

コストシナジー

コストシナジーとは、コスト削減につながるシナジー効果です。具体的には以下の内容が挙げられます。

  • 仕入先を統一
  • 製造コストの削減
  • 生産拠点の統合と閉鎖
  • 物流コスト削減
  • 価格交渉能力の向上
  • 広告費やマーケティング費用の統合による削減

コストシナジーの種類は多岐に渡ります。基本的には、重複した部門や拠点を統合・閉鎖していくことで、その分の費用が削減されるという考え方にあります。

コストシナジーは、販売面のシナジーと同じく、M&Aを実施する上で、大きなポイントになります。

財務シナジー

財務シナジーは、M&Aにより資金調達の力が大きくなる効果です。これにより得られた余剰資金は、資金の需要が多く、勢いのある部署や部門に分配します。単独では調達できなかった資金を獲得できる上、勢いのある部署に投資することで事業拡大につなげられるでしょう。

しかし、M&Aでは片方の企業の業績が良くないケースも多いため、財務シナジーをメインとしたM&Aはそれほど多くないのが現状です。

研究開発シナジー

研究開発シナジーは、M&Aの実施により、双方の技術ノウハウを融合し、新しい技術の開発につなげるシナジー効果です。双方のノウハウが合わさることで、これまでのお互いの知識や経験を活かし、新しい分野の研究ができるかもしれません。

統合により研究・開発のための資金を削減できる複合的な効果も期待できます。研究開発の力が強くなり、よりレベルの高い研究ができるなどのメリットが生まれます。

経営シナジー

経営シナジーは、双方の経営のノウハウを共有することで生まれるシナジー効果です。異業種の企業がM&Aで統合した場合には、片方の企業が新しい市場に新規参入する形になります。

その際にも、売り手企業と買い手企業のこれまで培った経営や知識を合わせれば、今までよりもさらによい経営戦略を練られるでしょう。

クロスセリングの手順

次に、クロスセリングを実施する手順について解説します。クロスセリングは単純に実施するだけでなく、正しい手順で準備し、実施していく必要があります。

  1. LWP分析の実施
  2. 顧客の分類(マッピング)
  3. 顧客の選定

以上の3つに分けて詳しく解説していきます。

LWP分析で顧客状況を把握

LWP分析とは、顧客リスト(List)、顧客や自社の行動内容(What)、受注頻度(Pace)の頭文字を取った、顧客を分類・ランク付けする考え方です。

顧客リストでは、対象となる顧客を漏れなく洗い出し、エクセルなどにリスト化します。そして、購入につながる確率が高い順に、ポテンシャル別に分けてタグ付けしていきます。

さらに、受注頻度を確認するために顧客との接点もタグ付けしましょう。

顧客の分類(マッピング)

LWP分析で顧客のタグ付けが終わったら、タグを整理してランク付けします。これらのタグをマップに落とし込んでいきましょう。

マップは「顧客の実績」と「拡大余地」の2軸で作成し、A〜Dの4つにカテゴリーに分類します。各カテゴリーの意味付けは以下のとおりです。

  • A:実績が高く、拡大の余地も持ち合わせている
  • B:拡大の余地があり、開拓先の候補
  • C:現状の実績を維持する
  • D:ビジネスの余地が見込みづらい顧客

このように顧客を分類することで、各顧客に対して、どのようにアプローチすればいいのかが明確になります。

顧客の選定

マッピングの分類を元に、顧客を選定して、どのようにアクションを起こしていくかを検討しましょう。

最も見込みのあるAのエリア内の顧客にアプローチし、余地があればBの顧客に対してもアプローチするという考え方を基準にします。そして、具体的にどの顧客にどのようなアプローチをするのか決めていくと効果的です。

この一連の作業を実施してからアプローチすることで、無駄な時間を省いて、効率的な営業活動ができ、クロスセリングにもつながりやすくなります。

M&Aで異なる2社が統合された場合、お互いの顧客については把握していません。しかし、この作業を実施することで、お互いの顧客や商品の特徴を把握できます。

そして、M&Aの成果を出すまでの時間を大きく短縮できるでしょう。

クロスセリングのポイント

クロスセリングのポイントは、顧客の購買意欲を効果的に刺激していく点にあります。追加でおすすめする商品が、全く興味のないものである場合、購入しようという気持ちにはなりません。

購入しようとしている商品が、関連性のあるものや合わせて使用できるものである場合、顧客の購買意欲を刺激できる可能性が高まるでしょう。

効率的にクロスセリングを実施するには、「A商品の購入を検討している顧客に対しては、Bの商品もおすすめする」など、マニュアル化することもおすすめです。

M&Aのクロスセリングにおいては、M&A実施後に双方の顧客を分析・分類するようにしましょう。どの顧客にどのようにお互いの商品やサービスをアプローチしていくのか入念に準備することで、そのあとの成果に大きく影響します。

M&Aを実施して、クロスセリングによるシナジー効果を発揮しよう

今回の記事では、クロスセリングについて解説しました。クロスセリングは、顧客に追加で商品をおすすめして客単価を上げる手法です。

M&Aの現場では、M&Aを実施した売り手企業と買い手企業が、顧客を共有することで生まれる相乗効果と言う意味で使われます。

クロスセリングは、顧客を把握・分類した上で、どのようにアプローチしていくのか決めると効率的です。今回紹介したLWP分析を活用することで、顧客の分類がさらにスムーズになるでしょう。

M&Aにおけるシナジー効果は、コストシナジーや経営シナジーなど様々ですが、クロスセリングにおけるシナジー効果は販売面のシナジー効果に分類されます。販売面でのシナジー効果は、M&Aの大きなメリットとして、検討段階から大きな主軸として考えられます。

パラダイムシフトは2011年の設立以来、豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。

M&Aで自社を売却したいと考える経営者や担当者の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。