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ストックオプションと株価の関係は?権利行使で株価は下落する?

東京証券取引所「東証上場会社 コーポレート・ガバナンス白書2023」によると、東証上場会社でインセンティブ付与に関する施策を実施している企業のうち29.3%がストックオプション制度を採用しています。

特にベンチャー企業が多いグロース市場では割合が79.7%に上ります。

ベンチャー企業の経営者の中にはストックオプション導入を検討している方も多いかもしれません。
しかし、株価への影響も気になります。

本記事では、ストックオプションと株価の関係に注目して、権利行使の株価への影響や制度導入のメリットなどを解説します。

株価から考えるストックオプション行使のタイミング

ストックオプションとは、従業員に特定の株式を将来的に一定の価格で購入する権利を与えるものです。

権利行使の仕組みは次のとおりです。

企業が従業員に対して一定の株式を割り当てます。

この株式を購入する権利を従業員に与えることで、従業員は将来の株価上昇による利益を享受することができるのです。

従業員は、一定の期間内にそのオプションを権利行使することができますが、購入価格は通常、発行時の株価や市場価格に基づいて設定されます。

例えば、企業が従業員に1株10,000円で株式を購入する権利を付与したとしましょう。

企業の成長や業績改善によって株価が15,000円に上昇したタイミングで権利を行使します。

株価がさらに上昇し、20,000円になった時に株式を売却すれば、10,000円の利益が確定します。

株価との関係で考えるストックオプションのメリット

ストックオプションを導入することで会社や従業員にどのようなメリットがあるのでしょうか。

ストックオプションと密接な関係にある株価との関係からストックオプションのメリットを解説します。

市場の評価を高められる

ストックオプションは、企業が従業員に対して提供する一種の福利厚生と見ることができます。

「従業員を大切にする会社」として知られれば投資家から高い評価を得られるでしょう。

そのような会社に投資を検討する投資家も多いので、株価の上昇につながる可能性があります。

また、ストックオプションは、企業の従業員に対してモチベーションを高め、経営者や株主との利益共有を促すために導入されることがあります。

IPOを目指すベンチャー企業などに導入されることが多いですが、IPO実現時の株価上昇の恩恵を受けるストックオプション保有者の従業員のモチベーション向上の起爆剤となるでしょう。

結果的に業績向上につながり、市場から高い評価を受け、株価が上昇するかもしれません。

株価が低い時には行使しなくてよい

ストックオプションは従業員に株式の購入権を与えるものであり、従業員が将来の株価上昇による利益を享受する機会を持つことができます。

しかし、権利行使は従業員自身の裁量に委ねられています。

株価が低い時には利益を得られませんが、権利を行使する必要はありません。

行使の判断が従業員自身の裁量に委ねられているということは、損失を被る心配がないということです。

一般の株式投資では、購入後に株価が低迷すれば、損失を被ります。

しかし、ストックオプションは、事前に決められた購入価格より株価が上昇しない間は権利行使しなければいいのです。

この時点で株式を購入していないので、損失が発生しません。

ただし、権利を行使した後に株価が下がり売却のタイミングを逃す可能性や行使しない間に期限切れとなり、権利を失うことはあり得ます。

ストックオプションの株価への影響

ストックオプションと株価には密接な関係があります。

ストックオプションが従業員に付与されたり、従業員によって、行使されることで株価にどのような影響があるのでしょうか。

ストックオプションの株価への影響を解説します。

価値の希薄化による株価下落

ストックオプションを付与された従業員が権利を行使すると、新たに自社株式が市場に供給されます。

企業の利益や資産に変化はありませんが、自社株式の供給が増えるので、1株当たりの利益や資産は減少し、株式の価値が希薄化するのです。

価値の希薄化や市場での株式の需要と供給のバランスが変化することで、投資家にとって株式の魅力が低下し、売り注文が増加すれば、株価の下落につながる可能性があります。

ただし、ストックオプションの発行数が少ない場合、株式の価値や需要と供給に与える影響が小さいので、株価に影響しないこともあります。

株価に影響を与える程に大量のストックオプションが一度に行使されることは稀であり、株価の下落を気にしすぎる必要はないでしょう。

業績改善による株価上昇

ストックオプションは、従業員に将来の報酬を関与させるため、経済的なインセンティブを提供します。

従業員は、業績が向上し、株価が上昇するほど、キャピタルゲインを得ることができます。

その結果、従業員のモチベーションや忠誠心が高まり、業績向上に寄与する可能性があるのです

従業員のモチベーション向上と業績改善の相乗効果によって、1株当たりの株式の価値が向上すれば、株価が上昇する可能性があります。

また、 ストックオプションは、企業が優れた人材を獲得し、留任させるための手段としても機能する場合があります。

企業の成長に寄与するインセンティブ制度であることを投資家に理解してもらえれば、将来の業績向上を期待され、株価が上昇するかもしれません。

株価に影響しない

ストックオプションの付与により株価が上昇する、ストックオプションの行使によって株式の価値の希薄化を招く、といった話は理論上の話です。

ストックオプションの付与や行使自体が直接的に株価に影響を与えるわけではありません。株価は、市場の需要と供給のバランスや企業の業績、経済状況など多くの要素によって形成されます。

一度に付与、行使されるストックオプションの数は全体に比べてわずかであることが多く、株価に影響を与えないことが多いようです。

ストックオプション同様に株価に左右される制度

ストックオプションは株価の上下によって保有者が権利を行使する可能性が変動します。

「新株予約権」「新株予約権付社債」「譲渡制限付株式」などストックオプション同様に株価に左右される制度が存在します。

新株予約権

新株予約権は、企業が株式を発行する際に、将来的に一定の価格で新たな株式を購入する権利を保有する金融商品です。

ストックオプションが自社の従業員や取締役に付与される一方で新株予約権は一般に市場で販売されます。

株価に影響される点はストックオプションと同様ですが、行使方法が異なるのです。

ストックオプションの行使価格は一般的に発行時の株価や市場価格に基づき決定され、権利保有者は事前に設定した権利行使価格で株式を取得できます。

新株予約権は「購入する権利」ですので、購入する数や行使日を明らかにして、現金等によって株式を購入しないといけません。

株価が上昇すると、購入者は権利を行使し、株式を購入しますので、株価の上昇が大きいほど利益を得ることができます。

新株予約権付社債

新株予約権付社債は、企業が発行する社債の一種です。

この社債には、将来的に一定の条件で株式に交換する権利を保有する新株予約権が付属しています。
株価に影響される仕組みや権利行使の方法は新株予約権と同様です。

具体的には、社債の保有者は一定の期間内に、株価や時期など所定の条件で新株予約権を行使することができます。

行使された場合、新株予約権に基づいて株式を発行し、社債保有者は株主となるのです。

保有者は、新株予約権付社債に投資することにより、利息収入を得ながら将来的な株式への転換の可能性を持つことができます。

ただし、株価の動向や行使条件などによって、最終的な収益は変動する可能性があります。

譲渡制限付株式

譲渡制限付株式は、企業が従業員や役員に対して発行する株式の一種であり、譲渡に際しての一定の制限が課された株式です。

ストックオプション以外にも企業が従業員や役員に株式を付与することがありますが、これらの制度には企業の業績向上や株主との利益共有を促進する目的があります。

しかし、譲渡制限付株式では、株式の譲渡に一定の制約が課されるのです。

これによって、従業員や役員が短期間で株式を売却することが制限されます。

譲渡制限付株式を付与された従業員は、株価上昇によるキャピタルゲインを得ることは難しいですが、株価上昇による配当利回りを得られる可能性があるでしょう。

ストックオプション同様に従業員には業績向上のインセンティブが発生し、将来の利益増加や1株当たりの価値向上を期待した投資家によって高い評価を受け、株価が上昇する可能性があります。

株価から考えるストックオプションの注意点

ストックオプションに関連して従業員には税金が課され、税額は株価に影響を受けます。

また、従業員の利益を最大化するためには、発行時点の株価に注意を払う必要があるでしょう。

税金や利益を考慮したストックオプションの注意点を解説します。

売却価格が株価を上回る分に課税される

ストックオプションは株式を購入する権利ですが、事前に設定された「行使価格」と行使時の「時価」の差額は「株式譲渡所得」ではなく、「給与所得」です。

株式譲渡所得の税率は一律で約20%ですが、給与所得の税率は最大で55%に達します。

課税のタイミングは「売却時」ではなく「行使時」ですので、売却資金で税金を支払うことが難しい可能性があります。

株式を売却した場合、「行使価格」と「売却価格」の差額が「株式譲渡所得」です。

税率は一律で約20%ですが、株価が大幅に上昇した場合には課税額が高額になるかもしれません。

例えば、10,000円で購入し、15,000円で売却すれば、差額の5,000円に課税され、納税額は20%の1,000円になります。

株価が安い時に発行する

ストックオプションは、事前に設定した権利行使価格で従業員が株式を購入する権利を付与する制度です。

売却時の価格が権利行使価格を上回る分が利益となります。

従業員の利益を考慮すると、権利行使価格が低いことが必要です。

ストックオプションの権利行使価格は、オプションを発行する時点での現在の株価に基づいて決定されます。

そのため、株価が安い時に発行することで、権利行使価格が低くなり、従業員はより多くの利益を獲得することができます。

ストックオプションは株価の上下を利用した仕組み

本記事では、ストックオプションと株価の関係に注目して、権利行使の株価への影響や制度導入のメリットなどを解説しました。

上場企業でインセンティブ付与に関する施策を実施している企業のうち約3割、ベンチャー企業で約8割が導入するストックオプション制度は導入によって、株価に影響があるかもしれません。

会社だけでなく従業員のメリット、注意点を考慮し、導入の是非を決定しましょう。

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