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M&Aのメリット・デメリットを売り手と買い手の視点で解説

  • M&Aはどんなメリット・デメリットがあるの?
  • 売り手側と買い手側でメリット・デメリットは違うの?

M&A(エムアンドエー)とは、Mergers and Acquisitions(合併と買収)の頭文字を取った略語で、企業の「合併と買収」を意味します。

会社の株式や事業を他社へ譲渡・承継することは、売り手側と買い手側どちらもメリットがあるため、M&A件数は増加し続けているのが現状です。

この記事はM&Aを検討している売り手側の企業の方に向けて、M&Aを行うと自分の会社や事業にどのようなメリットとデメリットがあるのかを解説していきます。

解説する具体的な項目は以下の通りです。

  • M&A売り手側のメリット7つ
  • M&A売り手側のデメリット4つ
  • M&A買い手側のメリット6つ
  • M&A買い手側のデメリット5つ

この記事を読むことで、M&Aで悩んでいる企業の方の背中を押すことができます。

M&A売り手側のメリット7つ

M&Aは難しい決まりや条件があるため、「なかなか踏み込めない」と感じてはいないでしょうか。

また、事業譲渡・承継を行うということは知っていても、実際にどのようなメリットがあるのかわからないという人もいるでしょう。

この項では、売り手側のメリットを実際に経営する方の視点で紹介します。

メリット1.後継者(承継者)問題の解決

人工の減少や少子化が問題になっている最近の日本では、子供自体の数が少なくなり事業の後継ぎが上手くいかない実態が増えています。

子供や親戚の中で後継者が不在、もしくは事業を継がせたくないと考える人もいます。

バブル崩壊から始まり、リーマンショックなどの経済不信が続いているため、事業を行うことへのハードルを感じる後継者世代が増えたことも一因と言えるでしょう。

しかし、努力して継続・拡大した家業や事業を、後継者が不在という理由で途絶えさせてしまうことに抵抗を感じる経営者が多くいることも事実です。

家業や伝統産業であれば、なおさら「自分の世代で廃業させてしまうわけにはいかない」と考える方も多いのではないでしょうか。

親族内で後継者を決めた場合でも、育成期間には数年を要することもあり、育成のために自身の労力や従業員の尽力が必要です。

M&Aで他の企業へ事業承継・譲渡を行えば、廃業させずにそのままの状態で事業を継続させることができます。

M&Aを選ぶことは後継者問題を解決し、事業をより良い方向へ導きやすいと言えるでしょう。

メリット2.従業員の雇用確保

事業を継続させるべきか考えたとき、一番に浮かぶのは従業員の顔ではないでしょうか。廃業するときに懸念なのは従業員たちの次の職場です。

今まで苦楽をともにした従業員たちのことを考えると廃業し、働く場所をなくしてしまうのは心が痛みます。

転職活動を行える従業員もいますが、家庭の事情や経験値などの問題で容易に転職活動ができない人もいるでしょう。

M&Aで事業承継を行えば、従業員の雇用は今まで通りに確保できます。

また、安定した企業に吸収されると、従業員の素質や努力により昇給できたり、雇用条件がさらに良くなったりすることも。

企業の規模が大きくなることで、新たなキャリアステップにつながる可能性もあります。

買い手側からの視点でも、既存の従業員をそのまま雇用できることは、自社にない技術を得ることができ、経験者や有能な人材を得ることができるので大きなメリットになります。

メリット3.事業継続・事業拡大

M&Aで事業承継・譲渡を行うことで、廃業を考えていた事業を継続させることができます。

売り手側と買い手側、双方の力を合わせて事業を行うことで、技術力の強化や向上から、事業拡大を図ることもできます。

双方の技術やノウハウを組み合わせ、新しい取り組みなどに挑戦することで、自社だけでは生み出せなかったサービスを提供する可能性も広がります。

その結果、新規事業への参入や、海外進出を視野に入れることもでき、売り手側と買い手側、お互いにメリットがあると言えるでしょう。

M&Aは技術や豊富な経験をお金で買うという考え方もできます。特殊な技術や経験を習得し、事業を軌道に乗せるには長い時間と人件費が必要です。

また、特定の事業へ新規参入するには許可や認可を取る必要があり、手続きに膨大な労力がかかります。

新規事業への参入を考える買い手側からの視点でも、事業を軌道に乗せるまでの時間を短縮できるため、大きなメリットがあると言えるでしょう。

メリット4.廃業コストの節約

現在行っている会社や事業を廃業させる場合、どのような費用が必要なのでしょうか?

廃業費用に関する手続きは具体的に以下の項目があり、会社の規模が大きいほど費用がかさむ傾向にあります。

廃業コストは、以下3つです。

  • 1.登記手続き

個人の意思で事業を廃業するためには登記手続きが必要です。手続きの費用は3万円〜4万円ほどで、手続きを行う司法書士や税理士に支払う金額は数10万円ほどです。

  • 2.在庫や設備の処分費用

廃業時に在庫を抱えている場合は、安い価格で売り切るか、費用をかけて処分する必要があります。営業や運営で使用していた設備も同様、買取り先が見つかることもありますが、見つからない場合は処分費用を支払う必要があります。

  • 3.物件の現状復帰

賃貸物件で事業を行っている場合、廃業に伴い契約終了となります。契約内容により、借りていた物件を現状復帰させる必要があり、工事費用なども廃業時にかかる費用です。

M&Aを選択した場合、登記手続きは必要なくなり、在庫や設備、物件は買い手側の企業にそのまま譲渡することになり負担が少なくなります。

廃業を行う作業は自身や従業員の精神的労力も要します。M&Aは廃業コストを節約できるだけでなく労力を抑える点からもメリットがあります。

メリット5.主力事業に注力

M&Aの中でも会社分割や事業譲渡の制度を利用することで、複数ある事業のうち、いくつかの事業を譲渡し、主力となる事業を残す方法もあります。

複数の事業を行うことは幅広い経営につながりますが、一つ一つの事業に対する力量は物理的に少なくなるでしょう。

不採算の事業や軌道に乗っていない事業を譲渡すると、その事業に使っていた費用や従業員を主力事業へ回すことが可能です。

M&Aをきっかけに主力事業のみに集中することで、事業拡大・成長が期待できるでしょう。

メリット6.事業整理、経営資源の集中

複数の事業を展開する中で、利益の少ない事業や採算の合わない事業がある場合、その事業だけをM&Aで譲渡することも可能です。

採算の合わない事業を保持し、複数の事業を行うよりも主力かつ、利益のある事業のみを残すことで、会社全体の利益を上げることにつながります。

M&Aで事業を売却することにより、売却利益を得ることもできます。売却利益は残した事業費にあてることができ、経営資源を集中させる役割も果たします。

また、M&Aは事業整理を行うことができることも大きなメリットです。

メリット7.創業者利益の獲得

事業をM&Aで承継・譲渡すると、創業者は売却利益を獲得できます。

売却利益は引退後の生活資金に当てることができ、退職金のかわりにもなります。

M&Aでは有形、無形すべての資産が買い手側に引き継がれるため、仮に負債がある場合にはその負債も買い手に引き継がれます。

廃業した場合、これらの負債はなくなりません。

そのため、M&Aは創業者の利益を最大限に増やすことのできる方法と言えるのです。

M&A売り手側のデメリット4つ

M&Aはメリットとなる点が多くありますが、デメリットがあるのも事実です。

デメリットを事前に理解しておくことで、回避することもできるので、ぜひ確認してみてください。

デメリット1.承継先が見つからない

M&Aの承継先が見つからない可能性も念頭に置いておかなければなりません。

M&Aの価値は「今後の利益をどのくらい見込めるか」という視点で決定するため、事業や会社の規模や信頼度だけでなく、市場や業種の動向も関係しています。

そのため、今後の利益が見込めない場合は承継先が見つからない可能性もあります。

譲渡先が見つからない場合や希望する価格で譲渡できない場合、売却額を下げながら慎重に検討することが必要です。

解決方法として、借り入れを繰り上げ返済し、キャッシュフローの見直しを行ったり、設備などを整え事業の将来性を上げる方法があります。

また、譲渡先の候補が見つかっても、交渉中に双方の合意に至らずに終わってしまうこともあります。

そのため、仲介業者に依頼する際には、希望の譲渡価格や、いつまでに譲渡したいかなど細かく要望を伝えましょう。

デメリット2.統合後の従業員への負担

統合を行った後のデメリットとして、従業員の負担があげられます。

統合後は売り手側の従業員の労働環境が変化することが多く、負担をかけてしまうのが現状です。

社内で使用していたシステムや組織が変わったり、仕事内容そのものも変わったりすることも多く、一から新しく仕事を覚えることになります。

新しい人間関係で負担を感じる従業員も多く、従業員によっては新しい会社に勤めることと同じほどの負担がかかってしまうこともあります。

優秀な人材や経験豊富な従業員が流出してしまうことは、買い手側も避けたいと考えています。

そのために、統合前に従業員にきちんと経緯を説明し、理解を得た上で従業員のモチベーションの維持に努めることが大切です。

デメリット3.統合後の雇用状況の変化

統合後の従業員に対する雇用状況の変化も視野に入れておくべき項目です。

M&Aの中でも株式譲渡の場合は雇用契約も譲渡されますが、事業譲渡の場合は事業だけを承継するため、売り手側の従業員は買い手側の企業と新たな雇用契約を結びます。

新しく雇用契約を結ぶ際には、その企業の制度で契約を結ぶことになるので、退職金や他の条件が変わってしまうことも視野に入れなければなりません。

買い手側は、統合後に売り手側企業の人材が流出することを避けたいと考えているため、大幅な待遇の低下は多くありません。

しかし、雇用条件が変わる可能性があることを従業員に丁寧に説明し、従業員の信頼を得ることで、モチベーションの低下を防ぐこともできるでしょう。

また、統合後に従業員を大切にしてくれるかどうか、買い手側の企業を十分に見極めることも必要です。

交渉の段階から従業員の待遇維持を盛り込み交渉を行うことをおすすめします。

デメリット4.統合前の取引先への対応

統合後には顧客や仕入先などの取引先の条件が見直されます。

買い手側の方針により、担当者の変更や契約条件が更新され、良い関係を築いてきた企業の信頼を失ってしまう可能性があります。

条件の変化で取引きが停止にならないよう、交渉段階で買い手側へ取引先を細かく引き継ぎ、大幅な条件の変更を防ぐことが大切です。

取引先へは状況を丁寧に説明し、担当者や顧客の理解を得る必要があります。

M&A買い手側のメリット6つ

M&Aによって買い手側の企業なりのさまざまなメリットが存在します。

下記では、M&Aで買い手側が獲得できるメリットを6つ詳しく解説します。

メリット1.ノウハウと技術の獲得できる

M&Aをした買い手側のメリットの1つ目は、「ノウハウと技術を獲得できること」です。

他社の優れた技術やノウハウを獲得することで事業規模の拡大や経営基盤の強化ができるだけでなく、生産の規模が大きくなることで製品1つあたりのコストを下げることができます。

また、これまで注力できなかった分野の最新トレンドや革新的な技術、生産ノウハウへのアクセスも可能となり、競争優位性を築く手助けになります。

実際の政府調査で、事業譲渡や吸収合併などで企業再編を行なった企業の労働生産性が向上しているというデータがあります。

つまりM&Aは、生産性の効率化により収益増加の機会が広がり、市場での地位強化が期待できます。

メリット2.競争力を強化できる

M&Aをした買い手側のメリットの2つ目は、「競争力を強化できること」です。

M&Aを通じて他社の人材を獲得することで、M&A先のノウハウや技術、市場シェアを獲得でき競争力の強化が可能だからです。

さらに、規模の拡大によりコスト削減や効率化が実現し、収益性を向上させるチャンスも生まれます。

競争の激しい市場で存在感を示し、成長を遂げるためにM&Aは有力な戦略と言えます。

メリット3.シナジー効果が期待できる

M&Aをした買い手側のメリットの3つ目は、「シナジー効果が期待できること」です。

シナジー効果とは、複数の企業が統合することで販売や設備、技術などの機能を相互に活用し、M&Aの効果を総和以上に高めることを指します。

例えば、販売網や生産設備、技術ノウハウを共有することで、生産・販売が効率化してコスト削減が実現できるでしょう。

シナジー効果はM&Aの成功において非常に重要であり、企業が成長し競争環境で優位性を築くことが期待できます。

メリット4.市場の変化に対応できる

M&Aをした買い手側のメリットの4つ目は、「市場の変化に対応できること」です。

現代の市場はインターネットの発展やデジタル決済の普及により急速に変化し、消費者行動も変化しています。

M&Aを通じて他社の専門知識やリソースを取り入れることで、変化の激しい市場に柔軟な対応ができます。また、新たな市場に進出するための足がかりを得ることも可能です。

競合他社を買収することで市場シェアを拡大し競争力を高めた企業は、長期的な成長と持続可能な競争力を確保できます。

メリット5.短期間で事業を多角化できる

M&Aをした買い手側のメリットの5つ目は、「短期間で事業を多角化できること」です。

M&Aを通じて新たな事業領域に進出し、多角的な収益源を獲得できます。

自社で新規事業を立ち上げるよりも迅速で低リスクで済むので、市場への参入がスピーディーです。また、異なる業界や地域での展開が可能となり、リスク分散ができます。

買い手側の企業は、経済の変動や競争の激化に対して強い耐性を持つ企業となるので、安定した成長を促進します。

短期間で多角化することは企業の持続的な成功に寄与するのです。

メリット6.外国市場への参入が容易になる

M&Aをした買い手側のメリットの6つ目は、「外国市場への参入が容易になること」です。

新規市場へ進出するためには市場の理解や規制への適合、現地でのパートナー、ネットワークの構築など多くの課題があり、時間とコストがかかります。

しかし、M&Aによって既存の外国企業を取得することで外国市場へのアクセスが迅速かつ効率的に行えます。
さらに、買収対象企業の現地ノウハウやリソースの有効活用でシナジー効果を発揮できるので、市場参入のリスクを軽減できます。

近年は日本企業と海外企業のM&Aが増加していることから、M&Aが海外市場参入への有効な手段になっていることは間違いないでしょう。

M&A買い手側のデメリット5つ

M&Aの買い手側企業にはメリットだけはでなく、デメリットも存在します。

買い手側企業のデメリットは、訴訟に巻き込まれたり許認可を引き継げない可能性があったりします。

下記では、M&Aを行う買い手側企業のデメリットを5つ詳しく解説します。

デメリット1.訴訟に巻き込まれるリスクがある

M&Aをした買い手側のデメリットの1つ目は、「訴訟に巻き込まれるリスクがあること」です。

買収後に意図しない退職給付引当金や未払い給与など、簿外債務やトラブルを引き継ぐ可能性があり訴訟につながることがあります。

訴訟は企業にとって財務的な負担と時間の浪費を招き、業績や評判に悪影響を及ぼす可能性があるので注意しないといけません。

M&Aにおいては潜在的なリスクに対する適切なデューデリジェンスと法的アドバイスが不可欠です

リスクを最小限に抑えてスムーズな統合を実現するために、事前の財務調査などの慎重な計画と実行が求められます。

デメリット2.許認可を引き継げない場合がある

M&Aをした買い手側のデメリットの2つ目は、「許認可を引き継げない場合があること」です。

買収対象企業が許認可を必要とする事業を行っている場合、買い手企業がその許認可を引き継げない可能性があります。

許認可を引き継げない問題は、売り手企業の法令違反が発覚したり必要な許認可が取得されていなかったりする場合が多いです。

買収が実現しても事業運営が困難になるか、新たな許認可を取得するための手続きやコストが発生します。

リスクを回避するためには、事前に許認可の有効性や引継ぎ可能性を詳細に調査して慎重に計画を立てることが重要です。

デメリット3.シナジー効果が発揮されないケースがある

M&Aをした買い手側のデメリットの3つ目は、「シナジー効果が発揮されないケースがあること」です。

買収前に事前に計画したシナジーが実現せず、買収後に期待される協力や効果が現れないことがあります。

事前に計画した以上に業務統合がスムーズに進まず、文化やシステムの違い、組織の調整などが課題となり予想通りの利益や効率向上が得られない場合があります。

シナジー効果が発揮されないと、予想以上のリスクや財務負担をもたらしキャッシュフローが悪化してしまいます。

十分な準備と評価を行い、シナジー効果を最大限に引き出すための取り組みが求められます。

デメリット4.買収額が膨らみ過ぎることがある

M&Aをした買い手側のデメリットの4つ目は、「買収額が膨らみ過ぎることがあること」です。

初めは予算内で買収を計画しても、交渉や競合他社との競り合いによって買収額が急増することがあります。予想以上の資金を投入してしまうことで、企業の財務状況が悪化します。

M&Aをする際は、適切な価格を見極め買収の目的と予算を明確に設定することで、財務リスクを最小限に抑える戦略が求められるでしょう。

計画段階から、シナジーを考慮した妥当な買収金額の算出を慎重に行うことが成功の鍵です。

デメリット5.従業員が不満をもつことがある

M&Aをした買い手側のデメリットの5つ目は、「従業員が不満をもつことがあること」です。

M&Aによって組織の変化や文化の違い、統合に伴う人員整理などが不安や不満を引き起こすことがあります。

労働低下や評価システムの変化によって、モチベーション低下や離職率の増加につながり業績や生産性に悪影響を及ぼす可能性があります。

従業員の不安や不満を最小限に抑え、適切なコミュニケーションや支援を提供することがM&Aの成功に不可欠です。

M&Aのメリット・デメリットを理解して、会社と従業員のためにより良い選択を

大切な会社を守るためにM&Aを選択することは事業拡大などの利点もありますが、従業員やその家族の生活を守ることにもつながります。

M&Aを良い選択とするにはよりよい買い手企業を見つけて承継・譲渡するために、売り手側がメリットとデメリットを細かく理解して交渉や契約をすることが大切です。また、従業員の声を聞きトラブルを予防する対策を講じましょう。

将来のビジョンやリスクを考慮して経営陣が慎重に判断することが、会社と従業員のためになる選択をする鍵になります。

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