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海外M&Aとは?日本企業の事例やメリット、種類などを解説

海外M&Aとは、買収企業または被買収企業のいずれか一方が外国企業であるM&Aを指します。

グローバル化が進展し、厳しさを増すグローバル競争のなかで日本企業は対外直接投資を増やし、海外M&Aに注力しています

これまでは国内市場を主たる営業基盤としてきた伝統的な企業であっても大きく方向転換をして、海外M&Aを進める事例が増えています。

制度や言語、文化の違いによる困難が見込まれても海外に進出する理由はなんでしょうか。そして国内のM&Aや海外の現地法人設立という方法ではなく、海外M&Aを採用する理由はどこにあるのでしょうか。

この記事では、海外M&Aの特徴や実施するメリット、実際に海外M&Aを成功させた日本企業の事例についてご紹介します。

海外M&Aとは

海外M&Aは、クロスボーダーM&Aとも呼ばれています。

「クロス」は「超える」、「ボーダー」は「国境」という意味ですので、海外企業を対象としたM&Aを指します。

具体的には買収企業、被買収企業というM&Aの当事者のうちいずれか一方が海外企業であるM&Aを指します。

いずれか一方ですので、日本企業ではなく、海外の企業同士のM&Aも海外M&Aに含まれます。

野村證券によれば、2015年の世界の海外M&Aは約555兆円と過去最高に達しました。

ジェトロ(日本貿易振興機構)によれば、世界のM&A件数は新型コロナの影響で減少しているものの、長期的には増加傾向にあります。

買収企業として、日本企業の海外M&A件数は世界で6位、被買収企業としては20位となっています。

海外M&Aのメリット

日本企業は買収企業としても被買収企業としても海外M&Aでは目立つ存在となっています。

特に買収企業としては世界で上位になっており、今後さらに対外投資が拡大すると予想されます。

このように日本企業が積極的に海外M&Aを進める背景には何があるのでしょうか。

ここからは、日本企業が海外M&Aを実施するメリットについて解説します。

海外市場の開拓

海外M&Aが増加している背景には構造的な国内市場の縮小という問題があります。

日本は少子高齢化の影響で消費者が減少し、商品やサービスが売れにくくなっています。

海外M&Aによって、海外市場へのアクセスを獲得することで、日本市場で販売していた商品やサービスを海外市場に持ち込み、市場を開拓できます

M&Aをせずに海外市場へ参入する場合には、言語や文化の違いのほかに法律や税制の違いがあり、運営に莫大な時間と労力が必要となります。

しかし、海外M&Aによって、海外での事業立ち上げにかかる時間と労力を大幅に省略できます。

商品開発力の強化

日本と海外では商慣習や人気の製品、人々の行動様式などが大きく変化します。

買収した海外企業と協業する中で日本では獲得できなかったような技術やノウハウが誕生したり、海外企業が保有する商品や技術、人材を積極的に取り入れることができます。

その結果、日本では誕生しなかったような商品やサービスの開発が期待されます。

日本では希少性が高い海外市場で開発した商品やサービスを日本に逆輸入することで、ヒット商品を生み出したり、新しい市場を開拓できるかもしれません。

大きな利益を獲得できる可能性があり、日本企業からすると大きなメリットになります。

経費削減

経費の削減効果で最も大きいのは人件費です。

日本では、高度経済成長によって人件費が大幅に増加し、企業にとって大きな負担になっています。

海外企業を買収し、生産拠点を移管することで、同じ性能、同じ数量の商品を安い労働力によって、生み出すことができます

また、発展途上国では、材料費や資源が国内で調達するよりも安い場合もあり、全体的に経費の削減効果があります。

日本国内と海外現地の拠点や設備の統合、仕入れ機能の集約などによって、組織全体としての効率性が向上するので、生産性向上によるコスト削減も期待できます。

海外M&Aの手法

海外M&Aにおける買収の手法では、国内M&A同様に被買収企業の自社株を買収企業が買い取ることで、経営権を獲得する株式譲渡が最も一般的です。

しかし、国内M&Aではほとんど見られない「三角合併」や「LBO」という特殊なスキームが活用されることがあります。

れぞれのスキームについて解説します。

三角合併

三角合併とは、M&Aによって、存続する親会社が消滅する子会社から自社株を受け取る対価として、親会社の自社株や現金を子会社に交付することで、子会社の株式を獲得し、経営権を獲得する方法です。

例えば、海外に子会社A社を持つ日本企業B社が海外企業C社を買収する時にA社とC社の間で三角合併を実施することでC社をB社に傘下に置きます。

会社法では、親会社から子会社に交付する対価の種類に制限はなく、現金以外にも株式を利用することができます

したがって、株式譲渡のための多額の現金が手元にない場合に代替手段として、自社株を交付します。

LBO

LBOは”Leveraged Buyout”の略称であり、日本語では「レバレッジ・バイアウト」です。

被買収企業の資産や将来的に生み出されるキャッシュフローを担保として、銀行等の金融機関から借入れを行い、買収する方法です。

買収時点で手元に十分な買収資金がなくても金融機関からの資金調達によって、M&Aが実施できる点がメリットです。

ただし、借入れの際には返済期間にわたって、安定的なキャッシュフローが生み出されることを証明する必要があります。

また、LBOによるM&Aを実施した後に被買収企業の業績が悪化した場合には、借入れ金の返済ができず、莫大な借金を抱えるリスクがあります。

日本企業による海外M&Aのタイプ

海外M&Aとは、買収企業、被買収企業というM&Aの当事者のうちいずれか一方が海外企業であるM&Aの取引を指します。

海外M&Aは、買収企業、被買収企業のどちらか、あるいは両方が海外企業かによってさらに細分化されます。

ここからは、日本企業による海外M&Aのタイプについて解説します。

In-Out

In-Out型のM&Aとは、日本企業が海外企業を買収する海外M&Aを指します。

少子高齢化による国内市場の縮小に対応する形でアジアやアメリカ、ヨーロッパを中心とする新しいマーケットに日本企業が参入する時に実施されます。

近年では、日銀の異次元緩和による円安の影響もあり、In-Out型のM&Aが増加傾向にあります。

買収相手が欧米企業の場合には、買収資金が莫大になることが多く、子会社が買収したことで経営が傾く日本企業の事例も多く見られます。

Out-In

Out-In型のM&Aとは、海外企業が日本企業を買収する海外M&Aを指します。

Out-In型はインバウンドM&Aとも言われています。

近年のM&A関連の法規制に緩和によって、海外企業が日本国内に子会社を設立し、子会社が日本国内の被買収企業を買収して、孫会社にするという手法がさかんになっています。

中小企業であっても、自社は子会社を売却することを考えているのであれば、Out-In型のM&Aは検討に値します。

ただし、ジェトロ(日本貿易振興機構)によれば、日本企業を対象とするM&A件数は世界で20位、金額ベースでは21位となっており、Out-In型のM&Aはさかんではありません。

日本は高いビジネスコスト、日本市場の特殊性、消費者の要求の高さ、規制や許認可の難易度などから敬遠されがちです。

Out-Out

Out-Out型のM&Aとは、海外企業が海外企業を買収する海外M&Aを指します。

一見すると日本企業は関係ないように思われますが、日本企業の海外子会社が海外の企業を買収する時に用いられる用語です。

グローバル化が進み、既に多くの日本企業が海外進出を果たしています。

ほとんどが海外に子会社を持っていますが、日本国内の企業が海外企業を買収するよりも、現地にある子会社が現地の海外企業を買収するほうが手続き面でもコスト面でも容易です。

このような場合に、日本企業の子会社によるOut-Out型のM&Aが実施されます。

海外M&Aの事例

実際に実施された海外M&Aの事例を見ていきましょう。

海外M&Aは国内M&Aに比べて、成約金額が大きいので、多額の資金が必要になります。

したがって、必然的に大企業によるM&Aが大半を占めています。

ここから紹介する海外M&Aを成功させた日本企業も大企業となっています。

大手コンビニチェーン

2020年8月、国内のコンビニ最大手A社がアメリカのコンビニエンスストア大手を約2.3兆円で買収しました。

日本国内のコンビニ市場は既に飽和状態にあると言われており、今後大幅な成長は見込めません。

持続的な成長を続けるためにもA社は海外市場の開拓を選択しました。

この海外M&Aによって、A社はアメリカで3,900店舗を獲得し、人口の多い50 の都心部のうち 47 の地域に店舗を展開することができました。

大手キャリア

2016年に国内の携帯キャリア大手B社はイギリスの半導体設計大手を約3.3兆円で買収しました。

通信会社と半導体設計会社のM&Aによって、シナジー効果を発揮し、世界中の市場に知的所有権を浸透させることを目的としています。

この買収によって、B社はすでに飽和状態であった国内市場だけではなく、海外市場を開拓するとともに半導体技術を吸収することに成功しています。

ただし、M&Aから4年後に米国の半導体大手に4.2兆円で売却しています。

海外M&Aには大きな可能性がある

この記事では、海外M&Aの特徴や日本企業が海外M&Aを実施するメリット、M&Aに活用される手法や種類について解説しました。

あらゆる業界で日本国内の市場が縮小する中で海外市場の開拓や経営コストの削減といった効果が得られる海外M&Aはメリットが多く、多くの日本企業が続々と進出しています。

大企業のみならず、中小企業にも海外進出の波がきており、海外M&Aには大きな可能性があると言っていいでしょう。

しかし、国内M&Aと比べると、情報の入手が難しく、法規制や税制などの専門的な知識も必要になるので、リスクが高くなります

海外M&Aを検討するときには自社単独で進めるのではなく、M&Aについて実績や知見が豊富にある専門家に相談しましょう。

株式会社パラダイムシフトは2011年の設立以来、IT領域のM&Aアドバイザーとして、M&Aのサポートを実施しています。

海外M&Aを検討している経営者の方はぜひ株式会社パラダイムシフトに相談してみましょう。