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株式譲渡をわかりやすく解説!メリット・デメリットと4種類の手続きについて

近年、中小企業による株式譲渡が増加しています。

そんな株式譲渡について、「一体どのような取引なのか?」「株式譲渡にはどんなメリットがある?」などの疑問をお持ちの方も多いはず。

本記事では、株式譲渡の概要とともに、メリット・デメリット、必要な手続きや書類を紹介します。

株式譲渡とは

株式譲渡とは、売り手企業の株主が、保有する株式の一部またはすべてを第三者へ譲渡することで、会社の経営権を移転させる方法です。

M&Aにおける会社売却の1つであり、日本では主に中小企業の会社取引に用いられます

株式譲渡が成立すると、経営者・株主が入れ替わり、対象企業におけるすべての資産・契約・社内システムなどが買い手企業へと統合。

また、法人格もそのまま買い手企業へと統合されるため、会社の形を変えることなく譲渡できます。

本記事では、株式譲渡の種類と事業譲渡との違いを解説します。

3種類の株式譲渡

ひとえに株式譲渡といっても、株式の買付方法によって下記の3種類に分類されます。

  • 相対取引
  • 市場買い付け
  • 公開買い付け(TOB)

それぞれの方法について詳しく見てみましょう。

相対取引

相対取引とは、非上場企業の株式を買い付ける際に用いられる手法です。

非上場企業の株式を集めるには、対象企業の株主との直接交渉が必要です。

経営者が会社の株式の過半数以上を保有する場合は、経営者の合意を得られさえすればスムーズに株式譲渡が成立します。

一方、複数の株主が分散して株式を保有する場合、それぞれの株主から買い付ける必要があるため、交渉が長期化する恐れがあります。

市場買い付け

市場買い付けは、上場企業の株式を株式市場から買い付ける手法です。

株式市場では一定量の株式が流通しており、短期間で多くの株式を集められる点が特徴です。

ただし、発行済株式総数と潜在株式総数の合計5%を取得した場合、内閣総理大臣へ大量保有報告書の申請が必要です。(5%ルール)

そのため、買い付け動向が外部に漏れる恐れがあるほか、大量の株式を取得する場合には、株価の高騰を引き起こす可能性があるなどのデメリットもあります。

公開買い付け(TOB)

公開買付けはTOBとも呼ばれ、上場企業の株式を市場以外で買い付ける手法です。

買付け時には、買付ける株数・価格・期間を株主へ通知する必要があります。

公開買付けは、不特定多数の株主から買付ける際に用いられ、市場の株価よりも割高で取引(プレミアム)されるケースが一般的です。

日本では、対象企業の経営陣から了承を受けたうえで買付ける友好的TOBが大半ですが、過去には事前通知・合意なしに、買付けをおこなう敵対的TOBもありました。

株式譲渡と事業譲渡の違い

株式譲渡とよく似た用語として、事業譲渡が挙げられます。

事業譲渡とは、社内における一部またはすべての業務を切り出し、買い手企業へ譲渡する手法です。

売り手企業は売却した事業の対価として、キャッシュを受け取ります。

一方の株式譲渡は、売り手企業が発行する株式を譲渡することで、会社の経営権を買い手企業へ移転させることが目的。

譲渡後には、買い手企業の子会社になります。

つまり、特定の事業のみを取引する事業譲渡に対し、株式譲渡は会社そのものを取引する手法といえます。

ただ区分上、事業譲渡・株式譲渡はいずれも、M&Aにおける会社売却に分類されます。

それぞれ取引の内容が大きく異なるため、双方の違いを明確にしておくと良いでしょう。

株式譲渡と会社合併の違い

株式譲渡と会社合併の違いも理解しておく必要があります。

会社合併は複数の企業を1つに統合するM&Aの手法です。会社合併は対象企業の権利義務全てが統合される新しい企業へと引き継がれ、対象企業は消滅します。

会社合併には2つの種類があり、吸収合併新設合併です。

吸収合併は対象企業の一方が消滅しもう一方に吸収される手法で、吸収した企業はそのまま存続します。

それに対し、新設合併は対象企業のすべての企業が消滅し新しい会社を設立します。双方の権利や義務はこの新しい会社へと引き継がれるのです。

株式譲渡のメリット

株式譲渡には一体どのようなメリットがあるのでしょうか。

本章では、売り手企業・買い手企業それぞれが得られるメリットを紹介します。

売り手企業メリット

株式譲渡で売り手企業が得られるメリットは、下記の3つです。

  • 事業譲渡よりも税金を安く抑えられる
  • 株式譲渡にかかる手続きが簡便
  • 経営者は株式譲渡の対価を得られる

1つ目のメリットは、事業譲渡よりも税金を安く抑えられることです。

後に詳しく解説しますが、株式譲渡にかかる税金が約20%なのに対し、事業譲渡では約30%もの税金がかかります。

いずれも譲渡益に対して税金が課せられるため、実効税率が低い株式譲渡の方が、経営者の利益を最大化しやすいのです。

2つ目のメリットは、株式譲渡にかかる手続きが簡便なこと。

M&Aには株式譲渡・事業譲渡以外にも、会社合併や事業提携など、さまざまな手法が存在します。

しかし、株式譲渡以外の手法は、会社の資本・事業など特定の部分のみを切り出して取引するため、各種手続きが煩雑化しがちです。

一方の株式譲渡は、経営権(会社のすべて)を丸ごと買い手企業へ移転させる取引のため、簡便な手続きですみ、短期間でクローズするケースも見られます。

3つ目のメリットは、経営者が株式の譲渡対価を得られることです。

株式市場で株式を売却する場合は小口の購入が多く、まとまった金額の確保には多くの時間がかかります。

しかし、会社の経営権確保を目的とした株式譲渡は、発行株式の過半数以上を買収するため、短期間でまとまった金額を確保できます。

買い手企業のメリット

株式譲渡で買い手企業が得られるメリットは、下記の2つです。

  • 経営基盤の強化
  • 短期間で必要資源を確保できる

買い手企業が得られる一番のメリットは、経営基盤の強化につながることです。

会社法で定められた権利によると、会社の総発行株式のうち50%以上を取得した場合は、対象企業の経営権を取得できます。

また、総発行株式の100%を取得した場合は、支配権を取得でき、完全子会社化を実現できます。

これにより、買収した会社の経営判断を反対なく推し進められるため、技術力・ブランドを自社に統合することで、経営基盤の強化が可能です。

2つ目のメリットは、短期間で必要資源を確保できることです。

会社を大きく成長させるには、人材や技術力などさまざまな資源が必要です。

しかし、これらの資源を一から集めるには、膨大な時間とコストがかかります。

場合によっては、資源確保が長期化し、企業の成長時期を取り逃がす恐れもあるでしょう。

その点株式譲渡は、自社が求める資源を保有する企業を丸ごと取得できるため、短期間で必要資源を確保できます。

株式譲渡のデメリット

多くのメリットがある株式譲渡ですが、注意すべきデメリットも存在します。

本章では、売り手企業・買い手企業、それぞれの立場からデメリットについて紹介します。

売り手企業のデメリット

売り手企業が注意すべき株式譲渡のデメリットは、下記の2つです。

  • 株式の50%以上を売却した場合、支配権を失う
  • 必ずしも買い手がつくとは限らない

1つ目のデメリットは、株式譲渡により会社の経営権・支配権を失うことです。

株式譲渡で発行済み株式の50%以上を譲渡すると、取締役の専任などの重要度が高い特別決議を、単独で可決できなくなります。

その点事業譲渡は、一部の事業のみを切り出して譲渡するため、会社の経営権や法人格を残せます。

2つ目のデメリットは、必ずしも買い手がつくとは限らないことです。

株式譲渡では会社の資産のみならず、負債や賠償なども譲渡されます。

リスクを抱える恐れがある買い手企業は、売り手企業を慎重に精査するため、会社の財務状況によっては買い手がつかない可能性があります。

ただ、あまりにも買い手がつかない場合は、事業譲渡へ切り替えるなどの対処がおすすめです。

買い手企業にとってもメリットのある条件を提示できれば、候補企業が見つかる可能性も高まります。

買い手企業のデメリット

買い手企業が注意すべき株式譲渡のデメリットは、下記の2つです。

  • 潜在的リスクを抱える恐れがある
  • 想定した株式を集められない恐れがある

買い手企業が注意すべき一番のデメリットは、潜在的リスクを抱える恐れがあることです。

先述のとおり、株式譲渡では会社の資産に加え、簿外債務や損害賠償、訴訟も譲渡されます。

実際の会社取引では、こうしたリスクを事前に把握するための調査(デューデリジェンス)が行われますが、限られた時間で顕在化できるリスクには限界があります。

そのため買い手企業はこうしたリスクと将来性を総合的に考慮し、買収先を精査しなければなりません。

2つ目のデメリットは、想定した株式を集められない恐れがあることです。

売り手企業の株式を複数の株主が分散して保有する場合は、対象株主と直接交渉をしなければなりません。

ただし、株式を売却するかは株主の一存で決まるため、交渉が決裂する可能性もあります。

株式譲渡における4つの手続き

株式譲渡で売り手企業に必要な手続きは、下記の4つです。

  • 株式譲渡の承認請求
  • 取締役会での譲渡承認
  • 株式譲渡契約の締結
  • 株主名簿の書き換え

本章では、上記4つの手続きについて紹介します。

手続き1.株式譲渡の承認請求

最初におこなうのが、株式譲渡の承認請求です。

株式譲渡の承認請求とは、発行株式に譲渡制限が設けられている場合に必要な手続きです。

決まった書式は存在しませんが、一般的に下記の要項を記載します。

  • 株式の種類
  • 譲渡予定の株式数
  • 買い手企業名・経営者名

手続き2.取締役会での譲渡承認

株式譲渡の承認請求が完了した後、取締役会で株式譲渡の認否を決議します。

また取締役会が存在しない会社では、株主総会で決議をおこないます。

万が一承認が否決された場合は、譲渡制限内のみでの株主譲渡が可能です。

手続き3.株式譲渡契約の締結

買い手企業との交渉を進め、双方が合意にいたると、株主譲渡契約を締結

契約書には、交渉段階で合意された株主数や譲渡価格などを盛り込みます

手続き4.株主名簿の書き換え

株式譲渡後におこなうのが、株主名簿の書き換えです。

株主としての権利が認められるには、株主帳簿に株主の記載が必要です。

譲渡取引が完了しただけでは、株主の権利が譲渡されないため注意しましょう。

株式譲渡でかかる税金

株式譲渡にかかる税金は、下記の3つです。

  • 所得税:15%
  • 住民税:5%
  • 復興特別所得税:0.315%

上記の税金は、株式譲渡による利益に対してかかります。

そのため、譲渡価格から取得費やコンサルティング委託料などの諸経費を差し引く必要があります。

たとえば、株式譲渡価格1億1,000万円、必要経費1,000万円の場合にかかる税金は下記の通りです。

1億1,000万円(株式譲渡価格)ー1,000万円(必要経費)=1億円(譲渡所得)

1億円(譲渡所得)×20.315%(実効税率)
=2031万5千円(税金)

株式譲渡に必要な書類

次に株式譲渡の際に必要な書類について解説します。

必要な書類は取締役会を設置しているか、していないかによって分かれます。

取締役会を設置している会社に必要な書類

会社で取締役会を設置している場合に必要な書類は以下のものがあります。

  • 株式譲渡承認請求書
  • 株式譲渡承認通知書
  • 株式譲渡契約書
  • 取締役会議事録
  • 株主名簿
  • 株式名義書換請求書
  • 株主名義記載事項証明書

取締役会を設置している場合には、取締役会で株式譲渡の承認を取ります。そのために取締役議事録が必要です。

取締役会を設置していない会社に必要な書類

取締役会を設置していない場合、株主総会で株式譲渡の承認を取ります。このことから株主総会に関する資料を準備することが必要です。

  • 株式譲渡承認請求書
  • 株式譲渡承認通知書
  • 株式譲渡契約書
  • 株主総会招集に関する取締役の決定書
  • 臨時株主総会招集通知
  • 臨時株主総会議事録
  • 株主名簿
  • 株式名義書換請求書
  • 株主名簿記載事項証明書交付請求書
  • 株主名簿記載事項証明書

株式譲渡前に確認すべき2つの注意点

株式譲渡を検討している方は、下記の2点に注意が必要です。

  • 株式の譲渡制限がついているか
  • 株券を発行しているか

上記2つの注意点を、順に紹介します。

注意1.株式の譲渡制限がついているか

1つ目の注意点は、株式の譲渡制限がついているかです。

先述のとおり、会社の株式に譲渡制限がある場合、株式譲渡の承認請求が必要です。

一般的に中小企業の株式には、譲渡制限が設けられているため、株式譲渡をご検討中の方はあらかじめ確認しておくと良いでしょう。

注意2.株券を発行しているか

2つ目の注意点は、株券発行の有無です。

2006年以前の株式譲渡では、株券の発行が法律で定められていましたが、法改正に伴い株券不発行が認められました。

しかし、すでに株券を発行している会社が株式譲渡を行う場合は、株券を交付しなければ効力を得られないため注意が必要です。

自社がすでに株券を発行している場合は、株式譲渡契約に加え、株券の交付手続きも合わせて行うようにしましょう。

注意点を踏まえ、株式譲渡を成功させよう

本記事では、株式譲渡の概要とともに、メリット・デメリット、必要な手続きや書類を紹介しました。

株式譲渡とは、会社が発行する株式を譲渡することで、会社の経営権を移転させるM&A手法の1つです。

事業譲渡よりも実効税率が低く、経営者の利益を最大化できる点が魅力です。

ただ、株式譲渡には専門的な知識が必要な上、いくつかの注意点もあるため、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。

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