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M&Aにおけるシナジーとは?今さら聞けない基本を解説

企業同士のM&Aに関する報道では、頻繁に「シナジー」や「シナジー効果」という言葉を耳にします。

M&Aを活用することで、売上やコスト削減など、さまざまなシナジーに期待できます。しかも、その効果は1+1が2になる以上の、10にも100にもなる可能性を秘めています。

今回はM&Aにおけるシナジーの基礎知識やシナジーの種類、およびM&Aによって大きなシナジーを得た事例について解説します。

M&Aにおける「シナジー」とは

シナジー(synergy)とは、もともと薬学や生理学、生物学分野において、「2つ以上の要素が相互に作用することによって、単体で得られる以上の結果を上げること」を表す専門用語です。

ビジネス分野においては、「2つ以上の企業ないし事業が統合することにより、単独よりも大きな成果を挙げること」を指しており、「戦略的経営の父」として知られるアメリカの経営学者イゴール・アンゾフが、世界で初めてビジネスの分野で用いました。

M&Aによって2つ以上の企業ないし事業が統合することで、1社だけでは成し得ない売上・収益の増加、大幅なコスト削減、商品開発の技術力の向上といったシナジー効果が期待されます。

たとえば、家具や寝具の製造・販売メーカー(買い手)が、ホームセンターを展開している企業(売り手)をM&Aによって買収、ホームセンター事業に新規参入を図るとします。

買い手企業は、売り手企業が持つ商品開発能力や販売チャネルを取り込むことで、1から新規事業へ参入するよりも格段に早く事業を展開して、売上やコスト削減の面で大きなシナジー効果を得ることができます。

なお、シナジー効果とは逆で、2つ以上の企業が統合することでマイナスの効果が生じることを「アナジー効果」と言います。

M&Aにおけるシナジーの4分類

M&Aにおけるシナジー効果は、以下の4種類に分類されます。

– 売上シナジー

– 研究開発シナジー

– コストシナジー

– 財務シナジー

それぞれのシナジー効果について、詳しく見ていきましょう。

売上シナジー

売上シナジーとは、2つ以上の企業や事業がM&Aによって協力関係を築いたり、経営を多角化したりして、別々に運営していたときよりも大きな売上をもたらすことを指します。

簡単に言うと、売上においてM&Aによる効果が1+1=2ではなく、1+1が2以上になることを期待するシナジーです。

たとえば、売上高5,000万円の企業と3,000万円の企業が、販売チャネルの増加を見込んでM&Aを実施、一年後の売上高が1億円になった場合、売上シナジーがもたらされたことになります。

M&Aにおけるシナジー効果の4分類において、もっともポピュラーで定量化しやすいという特徴もあります。

研究開発シナジー

研究開発シナジーとは、高い技術力を保有する企業同士が、M&Aによってそれぞれの得意な研究分野を融合させ、商品開発の技術力を向上させることです。

たとえば、医療用医薬品のノウハウを持つ企業と、一般用医薬品のノウハウを持つ企業がM&Aを実施して共同開発を行えば、単独ではできなかった医薬品を開発できる可能性があります。

製品開発に限らず、管理システム、社員教育プログラム、研修プログラムなど、M&Aの当事者企業が双方の経営資源の強みを活かしたシナジー効果に期待できます。

比較的定量化しにくいというデメリットこそあるものの、シナジー効果がもたらされれば、企業の長期的な競争優位性が得られます。

コストシナジー

コストシナジーとは、2つ以上の企業がM&Aによって1つになることでスケールメリットを得、生産や物流などのコストを削減することを指します。

たとえば、同じ原材料で製品を製造している企業同士がM&Aを行い、そのスケールメリットを活かして原材料を大量購入することで、生産コストの低下が図れます。

M&Aによって企業の規模を拡大すれば、それだけ大量仕入や物流の統一、価格交渉力の強化などが可能になります。コストを削減したぶん利益が増えることになるため、コストシナジーは売上シナジーと同様の効果に期待できます。

とくに同業種の企業同士がM&Aを実施した場合、大きなコストシナジーが生じる傾向にあります。

 財務シナジー

財務シナジーとは、M&Aによって資金調達力を増強したり、節税したりすることを指します。

とくに財務状態の良い優良企業同士のM&Aで見られ、一方の企業が債務超過を抱えているような場合には財務シナジーが発生しません。

このような特徴があることから、4つのシナジーのなかでもっとも効果が得にくいと考えられます。

 M&Aにおけるシナジーを測定するためのフレームワーク

ここまで、M&Aにおけるシナジーの4分類について解説しました。しかし、M&Aにおけるシナジー効果の測定は簡単にできるものではありません。

そこでここからは、M&Aにおけるシナジーを測定するためのフレームワークをご紹介します。ぜひシナジー効果を測定する際に実践してみてください。

アンゾフの成長マトリクスとは

アンゾフの成長マトリクスとは、「戦略的経営の父」とも呼ばれるロシア系アメリカ人の経営学者のイゴール・アンゾフ(1918-2002)氏によって提唱された、事業を成長させる際に利用されるマトリックスのことです。

アンゾフの成長マトリクスでは、成長戦略を「製品」と「市場」の2軸におき、それをさらに「既存」と「新規」に分けられており、さまざまな戦略を練ることが可能となっています。

4つの成長マトリクスに沿った戦略

アンゾフの成長マトリクスでは、4つの成長マトリクスに沿った戦略が展開されています。それぞれに特徴があるので、一つ一つ解説していきます。自社はどのような戦略を取ればいいのか検討しながらご覧ください。

市場浸透戦略

市場浸透戦略は、「既存市場」×「既存製品」で構成されており、競争力を高めるために同業他社を買収するなどの戦略が多く用いられます。

既存の市場と既存の製品から戦略を練るため、他の戦略と比較してリスクが低いことが特徴です。競合と差別化をしつつ、自社の強みをアピールする必要があります。

新市場開拓戦略

新市場開拓戦略は、「新市場」×「既存製品」で構成されており、他の市場の同業他社を買収する戦略が一般的です。

新商品を開発して既存の顧客に販売することになるので、市場浸透戦略に比べてリスクがあります。既存の顧客のニーズに応えられる商品作りや他社との差別化が、事業成功のカギになるでしょう。

新製品開発戦略

新製品開発戦略は、「既存市場」×「新製品」で構成されており、ブランド力の獲得や技術取得を目的とした買収戦略が用いられます。

新規の顧客を開拓する必要があるため、上記の戦略によって認知を広げ、顧客のニーズに合わせた商品を発売しなければなりません。市場を開拓する必要があるため調査や分析を徹底的に行う必要があります。

多角化戦略

多角化戦略は、「新市場」×「新製品」で構成されており、「水平型」「垂直型」「集中型」「集約型」の4つの型に細分化されています。

新商品を開発して新規顧客に販売する必要があるため、アンゾフの成長マトリクスの中で一番リスクが高い戦略と言えるでしょう。時間もコストも要するため慎重かつ迅速に戦略を実行する必要があります。

M&Aにおけるシナジー効果の定量化と取引価値

ここまで、アンゾフの成長マトリクスについて解説しました。ではM&Aにおけるシナジー効果の定量化と取引価値にはどのような関係があるのでしょうか。M&Aをするうえで大切なポイントになるので、必ず把握しておく必要があります。

M&Aにおけるシナジーの価値とは

M&Aにおけるシナジーの価値は必ずしも取引価格に反映させるわけではありません。発現可能性の低いシナジー効果を反映させてしまうと、シナジー効果を実現できなった際にリスクを背負うことになります。

しかし、当然ながら売却側は少しでも高い価格で売却しようと考えます。そのため発現可能性の高いシナジー効果は取引価格に反映させるケースがあります。

シナジー効果の定量化や取引価値の決め方

シナジー効果の定量化や取引価値の決め方は以下のステップを通じて実施されます。

・考えられるシナジー効果をまとめる

・それぞれのシナジー効果の定量化する

・定量化したシナジー効果を踏まえて、最終的な企業価値評価を行う

シナジー効果を定量化する際には、今回ご紹介したマトリックスを上手く活用すると効果的な分析ができるでしょう。最終的な企業価値評価にも反映されるので慎重に行う必要があります。

シナジー効果を考慮してM&Aを進めよう

M&Aにおけるシナジー効果の基礎知識を解説しました。

「M&Aは時間を買う」とも言われます。自社が欲する技術やノウハウ、人材、販路などをM&Aによって手に入れることで、売上やコスト削減などさまざまなシナジー効果に期待できます。

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