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介護業界におけるM&Aの事例5選!現状や今後の動向は?

主に事業承継対策としてM&Aが注目され、日本でも欧米に遅れて、M&Aの成立件数が増えてきました。

なかでも介護業界は、深刻な人材不足や低水準で推移する介護報酬を背景として、業界再編の動きが進んでいます

業界再編の手段の一つとしてM&Aの存在感が高まっています。

この記事では、介護業界におけるM&Aの現状や、売却事業者が確認すべきポイントについて解説します。

介護業界について

介護業界とは、高齢者や障害者などを対象として住まいと介護サービスを提供している業界です。

介護業界は被介護者が在宅で介護サービスを受けられる「居宅サービス」、福祉施設に入所して介護サービスを利用する「施設サービス」に大別されます。

さらに「施設サービス」は、有料老人ホームや介護サービス付きの住宅に分けられます。

介護サービスの継続的な提供には介護職員の確保、清掃事業者及び給食事業者との協働が必要になります。

介護業界の現状

総務省統計局の調査「高齢者の人口」(2021年9月15日推計)によれば、65歳以上の人口は前年の2020年から22万人増加し、3,640万人となりました。

高齢者の総人口に占める割合は29.1%と世界最高です。

今後も高齢化が進展することで、介護市場の需要は拡大すると予測されています。

現在は需要に供給が追いつかず、介護職員の不足が深刻化しています。

少子化によって介護業務の担い手が減少している中で、需要と供給のギャップが加速しています。

介護業界のM&Aの動向

介護業界におけるM&Aは、同業他社によるものだけではなく、異業者によるM&Aも増加傾向にあります。

介護市場は拡大傾向にありますが、深刻な人材不足、競争の激化、介護報酬のマイナス改定といった影響を受けて、経営が圧迫される事業者が少なくないためです。

一方で買い手は、既存事業の拡大を目指す同業他社や、住宅業界・建設業界など介護業界との親和性が高い異業種からの参入が多いです。

また、大手を中心に介護需要の高まっている中国へ進出する事業者もいます。

介護業界におけるM&Aの事例5選をご紹介

市場が拡大する介護業界へのM&Aは同業同士、異業種問わず拡大する見込みです。

M&Aが活発化する介護業界ですが、ここからは介護業界におけるM&Aの事例について紹介します。

成功事例として参考にしてみてください。

ALSOKが株式会社ケアプラスを子会社化

2018年6月に国内警備大手のALSOKは、在宅訪問マッサージを提供するケアプラスの株式を全部取得し、買収すると発表しました。

ALSOKは2012年に介護業界に参入し、警備系の利点を活かした緊急通報サービスなどを提供していましたが、今回のM&Aによって顧客である高齢者向けのサービス内容の充実を目指しています。

損保ジャパンがメッセージを買収

2016年3月、損害保険会社の損保ジャパンは、有料老人ホーム、介護付き住宅を運営するメッセージを買収、子会社化しました。

保険業界が斜陽産業といわれて久しい中で、損保ジャパンは自社のリスク管理技術やデジタル技術を応用して、介護業界に参入しました。

損保ジャパンは2016年12月に「ワタミの介護」を買収し、介護業界2位となっています。

ソニーライフケアがゆうあいHDを子会社化

2017年7月にソニーグループ傘下のソニーライフケアが、首都圏で介護事業を展開するゆうあいHDを買収しました。

運営するライフケアデザインの経営リソースと合わせて、介護事業を拡大したい考えです。

ソニーグループは銀行、保険などの金融事業を展開しており、介護事業の買収と既存事業とのシナジー効果によって、介護事業を第4の柱に位置づけています。

学研HDがメディカル・ケア・サービスを子会社化

2018年9月に、教育事業を運営する学研HDが、有料老人ホームを展開するメディカル・ケア・サービスを子会社化しました。

学研HDはすでに2004年に介護事業に参入しており、今回のM&Aによって既存事業の拡大を図るとともに、サービス付き高齢者向け住宅と認知症治療の関連性を高めて、高齢者を対象としたビジネスを拡大したい考えです。

小僧寿しが、けあらぶを子会社化

2016年6月に寿司チェーンを展開する小僧寿しが、シニア向けのコミュニティサイト「マッチスター」や介護業界向けの求人サイト「SCOUTME KAIGO」を運営する介護福祉グループけあらぶを買収。

これによって、介護サービスを利用する高齢者に対して、けあらぶを通じて、小僧寿しの寿司食品の提供を開始します。

介護事業者が売却する場合の確認事項

事業承継対策や経営状況が厳しくなって、M&Aによる事業売却を検討している事業者の方もいらっしゃると思います。

ここからは、介護事業者が売却する際に確認しておくべき事項についてまとめてみました。

主な確認事項は以下の3点です。

  • 経営状況
  • 建物のメンテナンス状況
  • 利用者の属性

売却を検討する前にそれぞれのポイントについて理解しておきましょう。

経営状況

まずは経営している事業の現状を把握しましょう。

入居者が集まらない、介護職員の人材不足などによって収益が上がらない介護事業は、「どうしても安く買収したい」と考えている買い手以外は売却するのは難しいかもしれません。

自社の介護事業が買い手にとって魅力的な事業であるかという点を検証しましょう。

検証ポイントとして以下の点が挙げられます。

  • 入居者が集まらないのは価格設定に問題があるのか、それともサービスの質が原因か
  • 介護職員の採用が難航しているのは、給与水準に問題があるのか
  • 離職率は業界平均水準か、そうでないなら給与水準に問題があるのか、労働環境か

対策可能な課題であれば、対策を講じることで買い手を見つけることができます。

建物のメンテナンス状況

介護事業を買収する買い手は買収後に介護施設のリフォームを検討している場合があります。

介護施設のリフォーム費用を検討するために、建物の価値が重要なポイントになります。

具体的な検討ポイントは以下のとおりです。

  • メンテナンスの状況
  • 立地条件
  • 所有形態(自己所有、賃貸)
  • 契約内容
  • 投資状況(過剰投資になっていないか)
  • 周辺の介護施設と比較した、老朽化の状況

介護施設は不動産事業という側面がありますので、条件によっては不動産評価額が高くなり、買収価格を上げることができます

利用者の属性

介護事業は利用者の属性によって収益性が異なります

収益性によって介護事業の売却の難易度が変わります。

最近では、パーキンソン病や認知症など特定の病気を抱える高齢者を対象とする専門的な介護施設がありますが、専門性があると収益性が高くなります。

また、介護の必要性が高い利用者が多いほど、サービスの利用料が高くなりますので、収益性が高くなる傾向にあります。

一方で介護の必要性が低い方を対象としている介護施設や専門性がない介護施設は利用料が相対的に低く、収益性が悪くなります。

また、外部の医療機関との連携や利用者の親族の属性も評価ポイントになります。

買い手が介護事業を買収するメリット

活発化する介護業界のM&A。

買い手企業の目線から介護事業者を買収するメリットについて見ていきましょう。主なメリットは以下の3点です。

  • 有資格者の確保
  • 経営ノウハウの獲得
  • シェアの拡大

以上の3つのメリットは同業同士の買収や異業種参入の場合も同様です。

それぞれのメリットについて解説します。

有資格者の確保

介護業界は、深刻な人材不足も背景にあり、資格がなくても勤務できるようになってますが、要介護者の自宅で介護や生活援助を行う訪問介護の場合は資格が必要です。

また、利用者に施設をアピールするために介護福祉士や認知症介護士などの有資格者が在籍することが望ましいです。

既存の介護事業者を買収することで、有資格者を獲得することができます。

介護業界は深刻な人材不足ですので、有資格者は争奪戦であり、多忙な業務のなかで人材を一から養成することは困難です。

有資格者が在籍する介護事業者の買収によって、有資格かつ現場で豊富な経験のある介護職員を獲得できます

経営ノウハウの獲得

異業種から介護事業に参入する場合や、専門性の高い介護事業を始める際に当てはまります。

異業種から介護事業を一から立ち上げるよりも、すでに経営の技術やノウハウを持っている事業者を買収するほうがスムーズに始めることができます

また、同じ介護事業であっても、特定の病気を持つ患者を対象としている介護事業を始める場合には、既存事業の経営リソースがうまく活用できないこともあります。

その場合でもM&Aによって、すでに現場のニーズや対象に関する技術を持っている事業者を獲得すれば、スムーズに事業拡大ができます。

シェアの拡大

介護業界は需要が高い業界ですが、異業種からの参入が相次ぎ、競争が激化しています。

東京商工リサーチによれば、介護事業者の倒産件数は最高を更新しています。

主な要因は、介護報酬のマイナス改定と介護業界における競争の激化です。

今後も、経営体制が未熟な事業者や収益基盤が脆弱な事業者は、淘汰される状況が続きそうです。

したがって、同じエリアや同じような属性の利用者を対象とする同業他社を買収することで、単純なシェアを拡大できます。

シェアの拡大によって、競争に負ける可能性を減らし、他の競合他社に対して、規模の面で優位に立てます

介護業界でのM&A実施による利害関係者のメリット

介護業界におけるM&Aといえば、売り手と買い手のメリットが注目されがちで、利用者や従業員には関係のない話のように思えるかもしれません。

しかし、介護事業の利用者や現場で働く従業員などの利害関係者にとってもメリットがあります。

M&Aの買い手、利用者、従業員の3者にとってメリットがあるのがM&Aであり、だからこそM&Aの成立件数が増えているといえるでしょう。

利用者のメリット

介護業界は、介護職員の人材不足や無資格者の増加によってサービスの質が悪化しているという不満が利用者に存在します。

特に人材面では、頭数を揃えるために経験やスキルが未熟な職員が多数働いているのも事実です。

しかしM&Aによって、事業者の規模が拡大したり、大手介護事業者の子会社となったりすることで、人材不足の解消や設備の改修が実施されれば、サービスの質が向上します

利用者が満足のいくサービスを享受することが可能となり、結果として顧客満足度が向上すると考えられます。

従業員のメリット

介護職員の労働環境の改善、待遇・福利厚生の向上が期待できます

介護事業者の圧倒的多数は中小事業者ですが、経営体力が乏しく、給与水準が低い傾向にあります。

大手事業者に買収されれば、収益基盤のしっかりした大手の給与水準に引き上げられ、待遇の改善が期待できます

また、買収によって単純な職員の数が増えるため、業務の負担軽減につながりますので、慢性的な残業から解放されるかもしれません

また、介護の仕事は3K、つまり「きつい」「汚い」「危険」というイメージがありますが、大手では可能な限り、3K状態が改善されるよう取り組みを行っていることが多いようです。

M&Aは介護業界の切り札になる

人材不足や競争の激化に悩む介護業界にとって、M&Aは経営の切り札となりうる選択肢です。

M&Aについて疑問や不安がある事業者は、株式会社パラダイムシフトに相談してみましょう。

株式会社パラダイムシフトは、2011年の設立以来、M&Aのサポートを行っています。

特にIT領域のサポートに定評があるので、介護事業の売却に興味がある人はぜひ株式会社パラダイムシフトに相談しましょう。