実は「slack(スラック)」というビジネスチャットツールを運営していたSlack Technology社が、2021年7月にSalesforce(セールスフォース)に買収されました。
近年、企業の買収が増えているなかで、
- Slackを買収したSalesforceはどんな会社なんだろう?
- 買収した目的や効果はなんだろう?
と疑問に思う方も多いです。
そこでこの記事では、slack買収に関する疑問をM&A×ITに強みを持つM&A会社が解説します。
具体的には、
- Slackを買収したSalesforceの企業概要
- 買収(企業買収)した目的や効果
- Salesforceの重要戦略
の順にご紹介します。
この記事を読むことで、Slack買収によるSalesforceの発展と今後の戦略がわかります。
目次
- 1 slackを買収した「セールスフォース」とは?
- 2 企業概要
- 3 事業内容
- 4 Slack買収の概要
- 5 買収したのは売上を上げたいわけではない!
- 6 slackを買収した2つの目的
- 7 ①自社開発した社内向けツールの発展
- 8 ②パートナー企業間の円滑なコミュニケーション
- 9 買収・合併による3つの効果
- 10 ①官公庁などに導入が可能
- 11 ②自社開発ツールの利用者の拡大
- 12 ③slack新機能との相乗効果を期待
- 13 salesforce(セールスフォース)の3つの重要戦略
- 14 ①データ管理や分析ツール開発の企業に出資
- 15 ②リモート環境の整備
- 16 ③カスタマーサービスの自動化
- 17 まとめ:slack買収でビジョン促進!salesforceは働き方の変革を目指す
slackを買収した「セールスフォース」とは?
出典:salesforce
slackを買収した「セールスフォース」とは、セールスフォースが提供するビジネスアプリケーションの名称でもあり、社名としても使われています。
下記ではセールスフォース社の概要や事業内容を解説します。
企業概要
セールスフォース社とは、多くの商談を成立させるためのクラウド型のソフトウェアを提供している企業です。
セールスフォース社の企業と顧客の関係性を管理する顧客関係管理(CRM)「Customer 360」を使用することで、営業やカスタマーサービス、マーケティングなど顧客データを中心に仕事を進めることができます。
セールスフォースの製品を使うことで、さまざまな業界に合わせた最適な問題解決ができます。以下に製品の対象になる15業種を示します。
- 金融サービス
- 医療とライフサイエンス
- 通信
- 消費財
- 公共機関
- 小売
- 製造
- メディア・エンタメ
- 輸送とホスピタリティ
- 自動車
- エネルギーと公益事業
- 高等教育
- 初等・中等教育
- 社会貢献
- 非営利団体
事業内容
セールスフォース社の事業は大きく5つの部門それぞれにコンセプトがあります。
部門 | コンセプト |
デジタル | デジタルマーケティングを駆使して顧客とより深くつながる |
セールス | 世界No.1の顧客関係管理(CRM)で道を切り開く |
サービス | 顧客に合わせた情報やサービスを素早く提供するすることで一流の体験を提供する |
マーケティング | 優れた製品でさまざまな業界の顧客対応をサポート |
IT | あらゆる職種や部門で従業員よりスピーディに成果を上げる |
マーケティングから営業、商談、受注後のサポートサービスまで、営利非営利活動を1つのサービスでトータルサポートします。
Slack買収の概要
セールスフォース社がSlackを買収した額は277億ドル(約2.9兆円)と公表されています。
金額の類似例では、MicrosoftによるSkypeの買収額が85億ドル(約8923億円)やFacebookによるWhat’s Appの買収額が190億ドル(約2兆円)などがあります。
日本の2021年度の防衛費予算が大体6兆円なので、とてつもない数字だということがわかります。
それだけの膨大な金額を出してまで、セールスフォース社は「Slack社を買収したい」と考えたのです。
買収したのは売上を上げたいわけではない!
セールスフォース社がSlack社を買収したのは、単純に売上をアップさせたいわけではありません。
なぜなら、Slack社は2019年以降利益がプラスに転じたことがないからです。
コロナ禍以降、売上とユーザー数は驚異的に伸びていますが、研究投資が一因となり年間約300億円の赤字を計上し続けていました。
なのでセールスフォース社は、slack単体で売上を上げることは考えておらず、自社ツールとつなげることでツールのアップデートを狙っています。
slackを買収した2つの目的
Slack社を買収した目的が売上ではないなら、他に何があるのでしょうか。
下記ではセールスフォース社がslackを買収した本当の目的を2つ解説します。
①自社開発した社内向けツールの発展
セールスフォース社は自社開発した社内向けツール「Customer 360」の発展のために、Slack社を買収して「Slack」を導入しました。
セールスフォース社がSlackを導入した理由は、他のコミュニケーションツールよりセキュリティ対策が万全で、安全な連携ができる機能があるからです。
セールスフォース社のアプリケーションは全世界で15万社が利用しているので、世界中の経営者や営業、マーケティング、エンジニアなどがSalesforceというプラットフォームを通じて、日々販売戦略を練っています。
そのSalesforceにSlackを導入したことで機能を向上させて、よりオープンでグローバルな販売戦略を打ち出せるようになりました。
ゆくゆくは、強固なセキュリティを持ちながら企業間でシステムを連携させることで、業務効率を大幅に向上できる仕組みなどもできるのではないでしょうか。
②パートナー企業間の円滑なコミュニケーション
セールスフォース社は、2022年に日本で提供を開始した「Net Zero Cloud(ネット・ゼロ・クラウド)」のコミュニケーションにSlackを使っています。
ツールに組み込まれたSlackを使うことで、外部の取引先ともリアルタイムな進捗状況などを共有できるからです。
Net Zero CloudはCO2排出量の算出状況の管理以外にもさまざまな機能が備わっているので、Slackを使ってCO2削減スコアの悪い取引先とのディスカッションやアンケートを自動生成することもできます。
Slackを導入したことで、これまで叶わなかった企業間の円滑なコミュニケーションができるようになりました。
買収・合併による3つの効果
Slack社を買収した目的が売上ではないことが分かりましたが、実際にどのような効果があるのでしょうか。
下記では買収による3つの効果を解説します。
- 官公庁などに導入が可能
- 自社開発ツールの利用者の拡大
- slack新機能との相乗効果を期待
①官公庁などに導入が可能
一つ目の買収による効果は、Slackを官公庁などにも導入できるようになったことです。
セールスフォース社が2021年の12月に「ISMAP(イスマップ)」の認定を受けたからです。
これまでの原則として、各政府機関はISMAPに認定されていないクラウドサービスは導入できませんでした。
しかし、セールスフォース社が導入に必要なセキュリティ基準などのガイドラインに準拠していると認定を受けたことで、買収・合併されたSlackが官公庁などに導入できるようになりました。
これにより、すでに導入されている民間企業や自治体とのコミュニケーションに加えて、政府機関のコミュニケーション、そして一般市民への情報連携ができる未来が見えつつあります。
②自社開発ツールの利用者の拡大
二つ目の買収による効果は、セールスフォース社の自社開発ツール「Customer 360」の利用者拡大です。
なぜならセールスフォース社は近年のDX時代の中で「人=資産」と考えているので、ツール利用者を増やすことが資産を増やすことにつながるからです。
Slackの利用者数は買収前の2019年時点で1,000万人を超えており、以降も年間100万人規模で増えていると言われています。
なので「人=資産」と考えているセールスフォース社が、32倍もの価値があると判断して277億ドルで買収したのも頷けます。
③slack新機能との相乗効果を期待
最後の買収による効果は、SalesforceとSlackの相乗効果への期待です。
現状のSlack機能にあるスケジュール送信機能やすぐに音声通話ができる「ハドル」などはすでに全世界で好評を得ています。
しかし、セールスフォース社は既存の機能だけではなく、新機能との相乗効果を狙っています。
予告している新機能としては、Slack上で従来より高度な条件やサードパーティーも含めたデータの取り扱いができるようになるだけではなく、「ブロックを選択」「ドラッグ&ドロップ」するだけで自動でプログラミングできるようになるツールです。
Salesforceを扱っている政府機関や民間企業、一般市民がこの機能を使えるようになることで、コミュニケーションプラットフォームとして急速な発展をしていくでしょう。
salesforce(セールスフォース)の3つの重要戦略
セールスフォース社は世界のソフトウェア企業の上位10社に入る大企業です。
主力商品であるSaleseforce製品で成功を収めた一方で、戦略的M&Aやベンチャーキャピタル投資でも事業を広げています。
下記ではセールスフォース社の買収や投資、提携から3つの重要戦略を解説します。
- データ管理や分析ツール開発の企業に出資
- リモート環境の整備
- カスタマーサービスの自動化
①データ管理や分析ツール開発の企業に出資
現代の企業は、顧客とのやり取りや社内業務から生まれる膨大なデータから次の施策を判断するために、データの可視化と共有を重要視している。
セールスフォース社はこれを可能にするために2019年、タブローソフトウェア社を157億ドルで買収しました。
ビジネスユーザーはタブローソフトウェア社のデータ可視化機能と共有しやすい一覧表示画面により、組織のデータを自由自在に活用できるようになりました。
さらに、この分野で膨大なデータから知見を見いだすために人工知能(AI)に注目するようになり、2021年に米ナラティブ・サイエンス社(Narrative Science)を買収しました。
ナラティブ社の機械学習技術はデータを分析して物語調に伝えるので、技術に詳しくない人でも理解できます。
セールスフォース社は2020年以降、データ・分析会社15社以上に出資してデータ会社とも提携していることから、「統合・分析・AI分析」にフォーカスした戦略を打ち出しています。
②リモート環境の整備
新型コロナウイルスの流行を受け、企業はデジタルとクラウドを駆使したリモートワーク(テレワーク)が進んでいます。
新たな環境で2020年12月にセールスフォース社はスラック・テクノロジーズ社を買収したことで、さらにデジタルとクラウドの進化を進めることになります。
セールスフォース社はSlack内で契約書類の編集やファイル共有、クラウド環境のモニタリングなど多くの業務をこなせるようにするため、電子署名やデータのオンライン管理・共有に特化した企業と業務提携することでリモート環境を続々と整備しています。
セールスフォース社は、リモート環境で働くチームでも共同作業できるオンラインホワイトボードを開発した企業や従業員の分身が出社して一緒に働くバーチャルオフィスを手掛ける日本のoVice(オヴィス)にも手を広げていて、Salesforceの製品のリモート整備が加速しています。
③カスタマーサービスの自動化
セールスフォース社はカスタマーサービスが収益を生まない部門だと判断して、カスタマーサービスの自動化に商機を見出しました。
2019年にフィールドサービス管理ソフトを手掛ける米クリックソフトウェア・テクノロジーズ社を買収し、AIを活用して電話解析し、知見を提供するイスラエルのボノボAIも傘下にしました。
両社のサービスは大きく異なりますが、いずれも顧客体験の改善を優先しています。
セールスフォース社はカスタマーサービス分野への投資を積極的に行い、単純な問い合わせは自動で速やかに解決し、人はもっと複雑なタスクに集中して生産性を上げることが狙いです。
まとめ:slack買収でビジョン促進!salesforceは働き方の変革を目指す
SlackはITエンジニアのコミュニケーションプラットフォームとして支持されて、業界・職種関係なく広範囲なニーズを満たすプラットフォームとして急速な発展をしてきました。
そんなSlackを買収したセールスフォース社は、コロナ禍でクラウド革命を進めていくにあたり、Slackの拡張性と機能が新たな働き方に大きな変革をを与えると考えています。
世界中のSlackコミュニティにインパクトを与えて、今後どのようにSlackを統合・運営していくのか、新しい時代のクラウド革命を牽引するセールスフォース社に注目しましょう。
パラダイムシフトは2011年の設立以来、豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。
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