かつてM&Aや事業売却といえば、製造業などの特定の業種や売却価額の大きい案件が中心というイメージがありました。
しかし、インターネットの発達によって多数のWebメディアが登場したことで、売却価額の小さい売買取引も盛んに行われるようになりました。
現在のWebメディアの売却相場は、月間利益の12ヶ月分(1年)から24ヶ月分(2年)程度。
企業だけではなく、個人レベルでもWebメディア事業への参入が可能で、個人の売り手も多数存在します。
Webメディアの登場によって、M&Aや事業売却が人々の生活により身近なものになっているのです。
記事では、市場規模を含めたWebメディアの売却動向や相場、売却のメリット・デメリットなどを解説します。
目次
Webメディアの売却とは?
Webメディアの売却とは、Webメディアを第三者に譲渡することで、売却益を獲得することを指します。
Webメディアとは、Webを媒体として情報を発信しているメディアを指します。
テレビやラジオ、雑誌などのマスメディアとは区別して理解する必要があるのです。
代表的な例として個人で運営するブログやYouTube、twitterなどのSNS、まとめサイトなどが挙げられます。
これらのWebメディアは企業だけではなく個人でも運営可能であり、主に広告収入や購読料を売上としています。
売上の大きいWebメディアは第三者に譲渡することができるので、個人であっても大きな金額を獲得可能です。
Webメディアの売却動向
少し古いデータではありますが、矢野経済研究所が公表した「2008年版サイト売買市場白書」によれば、サイト売買市場は2005年度に4,000万円であったのが、2008年度に23億円、2010億円に85億円と急拡大しています。
また、Webメディアの売買に特化したM&A仲介会社も多数誕生しており、インターネットで検索すると、多数のM&A仲介会社が表示される状況です。
このようにWebメディアの売買市場が拡大している背景には、インターネットの発達とそれに伴う個人運営のWebメディアの増加があります。
個人レベルで運営しているWebメディアであってもSEOで上位を獲得している場合や買い手とシナジー効果が期待できる場合には、売却価額が大きくなります。
Webメディアを売却するメリット
インターネットの発達によって、個人レベルで運営されるブログやYouTubeなどのWebメディアも増えています。
企業だけではなく個人レベルでのWebメディアの売買も盛んになっていますが、運営するWebメディアを売却するメリットはなんでしょうか?
ここでは、Webメディアを売却するメリットを解説します。
売却益の獲得
Webメディアを売却する最大のメリットは売却益の獲得です。
通常、会社を売却する場合には自社株を売却して、対価として現金を獲得できます。
Webメディアの場合、交渉によって媒体自体に価格がついて、売却されます。
ただし、企業がWebメディアを運営している場合、事業譲渡としてWebメディアを売却する場合と運営者である企業自体を売却する場合もあるのです。
後者の場合、通常のM&Aと同様に自社株を売却する方法によって譲渡されます。
売却益を獲得して、主力事業に注力したり、新しい事業への投資に利用したりすることも可能です。
個人運営の場合、生活資金に充当することもできます。
メディア運営から解放される
ブログやYouTubeなどのWebメディアの運営には多大な費用や労力が必要になります。
例えば、ブログの場合、SEOを意識したうえで、ほとんど毎日新しい記事を更新しているメディアもあります。
また、ブログの運営には独自ドメインの取得やレンタルサーバー代、ブログテーマの購入費といった様々な費用が発生するのです。
大規模に運営している場合には、ブログ全体の最適化や管理、ライターへの発注、支払い業務といった作業が発生します。
Webメディアを売却すれば、運営のための労力や定期的に発生する費用から解放されます。
メディアの運営に疲れていたり、SEOに対応できないと感じたら、売却を検討していいかもしれません。
ブランド力の向上
小規模なメディアや個人運営のメディアの場合、知名度やブランド力に劣る傾向があります。
SNSなどを活用して、インフルエンサーとなっても、継続的な投資ができなければ、すぐに廃れてしまうでしょう。
運営するWebメディアを売却して、大手メディアや有名メディアの傘下に入れば、そのブロンドやロゴを使うことで、格段にブランド力が高まります。
知名度が高まり、メディアの閲覧者が増加したり、宣伝広告のための投資が増加することで、視聴者や閲覧者が増加するでしょう。
自分の手は離れることになりますが、大手メディアの下で素早い成長が可能になります。
従業員の雇用確保
Webメディアは毎年多数誕生していますが、いつの間にか更新されなくなったり、サイト自体が消えることも珍しくなく、廃業が多いのが実態です。
Webメディアの運営に従業員を雇用している場合、メディアの運営を止める判断をした場合、仕事がなくなります。
従業員がいなくてもフリーランスに依頼している場合、事業を支えてくれた人の仕事がなくなってしまいます。
しかし、廃業する前にWebメディアを売却できれば、事業が存続し、働いている人も仕事の継続が官能です。
Webメディアの廃業を検討している場合、売却という選択肢がないか考えてみましょう。
Webメディアを売却するデメリット
Webメディアの売却には様々なメリットがあり、サイト売買市場が拡大している要因となっています。
しかし、Webメディアを売却してしまうと、自分の手を離れることになるので、コントロールが利きません。
その結果、被る損害やデメリットについても理解しておきましょう。
ここでは、Webメディアを売却するデメリットを解説します。
売却可能性がアルゴリズムの更新に左右される
一般的に「アルゴリズム」とは、グーグルのアルゴリズムを指します。
ブログやYouTubeなどグーグルのプラットフォームを利用する場合、このアルゴリズムが重要です。
アルゴリズムとは、検索KWに対する検索順位を決めるルールであり、これが更新されると今まで多くの視聴数や閲覧数を持っていたWebメディアの業績が一気に悪化することがあります。
したがって、これまで成績の良かったWebメディアを売却しようと思っても、買い手を探している時にアルゴリズムが変更になると、買い手が見つからなかったり、Webメディアの価値が一気に下がってしまうことがあります。
買収先が見つからない可能性がある
閲覧数・視聴数が多かったり、知名度の高いWebメディアであれば、買い手がすぐに見つかるかもしれません。
しかし、膨大なWebメディアが存在する中で目立つことは容易ではありません。
毎年新しいWebメディアが誕生するため、市場は供給過多であり、買い手を見つけることは容易ではありません。
また、不当な価格を提示するバイヤーも存在し、これまで丁寧に育成してきたWebメディアを金儲けの道具としか思っていない買い手もいます。
納得のいく価格で買収し、買収後もしっかり運営してくれる買い手を見つけることは簡単なことではないのです。
無形資産であるため買収価格の算定が難しい
Webメディアのように物理的形状を持たない資産を無形資産といいます。
不動産や機械設備と異なり、Webメディアのような無形資産は価値評価が難しいです。
また、現在は高い価値があっても状況次第で価値が低下する恐れがあり、買い手はリスクを織り込んだ価格を提示してきます。
ただでさえ、買い手は「できるだけ安く買いたい」と思っているので、リスク分を過大評価されると、ほとんど利益が出ません。
条件を一方的に受け入れるのではなく、希望価格を提示して、粘り強い交渉が必要になります。
Webメディアの売却相場
Webメディアは無形資産であり、売却価額の算定が困難ですが、相場の目安が存在します。
Webメディアの売却相場は月間の利益の12ヶ月分(1年)から24ヶ月分(2年)程度です。
利益とは、営業利益を指していて、諸経費としてレンタルサーバー代、広告宣伝費、人件費などを差し引いて求められます。
ただし、この売却相場は変動するので、売却のタイミングを見極める必要があります。
また、交渉によっては、相場以上の価格で売却することも可能です。
月のPV数や利益が小さくても、今後の成長性が見込めると判断されると、30ヶ月分から40ヶ月分程度で売却されることもあります。
高く売却できるWebメディアの特徴
売却価額の相場はありますが、工夫次第で相場以上の価格で売却することもできます。
ただし、これらの対策はWebメディアの運営中に実施すべきものですので、売却に向けて長期的に準備しましょう。
フォロワーの多いSNSと連携している
Webメディアへの流入元としてグーグル検索が挙げられますが、アルゴリズムの更新次第で流入数が変化するので、安定しているとは言えません。
TwitterやInstagramといったSNSでインフルエンサーとしての地位を確立している場合に、SNSとWebメディアを連携させ、SNSから流入する経路を確保しておけば、流入数や利益が安定します。
Webメディアの育成と並行して、SNSアカウントを運用して、フォロワーを獲得しておきましょう。
需要の高いKWで上位を獲得している
グーグルやYouTubeなどで検索数の多いKWで上位を獲得していれば、多くの視聴者や閲覧者を流入させることができているということです。
また、単に検索するが多いだけではなく、商品やサービスの購入に結びつきやすいKWで上位を獲得していれば、価値はさらに上がります。
さらに注目したいのはニーズの明確なKWです。
例えば、「食器洗い機」というKWですが、よりも「食器洗い機 国産 壊れにくい」といったKWの方が、ユーザーのニーズが把握しやすいです。
このようなKWで上位を獲得していれば、価値は上がります。
PV数が多い
PV数、つまり何人がWebメディアを読んだり、視聴したかという指標は明確です。
PV数が多ければ、数字を根拠として、Webメディアの価値の高さをアピールできます。
PV数が多いということは、Webメディアに広告宣伝を掲載すれば、多くの人の目にとまるということです。
強力な広告宣伝の武器として使えるため、Webメディアの売買市場では有利に働きます。
当然のことですが、PV数を増やす努力をしておきましょう。
Webメディアの売却はメリットが多い
この記事では、Webメディアの売却動向や売却することで得られるメリット、高く売れるメディアの特徴を解説しました。
Webメディアの売買市場は拡大を続けており、個人・企業問わず売却のチャンスがあります。
Webメディアの供給が多いため、差別化を図り、価値を高めることは容易ではありませんが、長期に渡って価値を高める努力をすることで、納得のいく価格で売却できるでしょう。
Webメディアの売却については、株式会社パラダイムシフトに相談しましょう。
株式会社パラダイムシフトは、IT領域の国内最大のM&Aアドバイザリーであり、Webメディアを含むIT領域に強みを持ちます。