近年、M&Aを行う中小企業が増えてきています。
その背景にあるのは、中小企業が抱えている課題が多様化していることです。
課題の解決策としてM&Aが有効なことも多いですが、M&Aには種類があり各課題に応じて適したものを選択するスキルが大切になってきます。
この記事では、M&Aの種類について解説します。
大企業と中小企業にわけ、それぞれで多く採用されているM&Aの種類についても紹介するので、参考にしてください。
目次
広義・狭義でみるM&Aの種類とは?
M&Aとは、Merger(合併) and Acquisition(買収)の略です。
このM&Aには、広義のM&Aとその1部だけを指す狭義のM&Aがあります。
狭義のM&Aは権利の移転を伴うものだけですが、広義のM&Aは企業間の協力であれば権利の移転を伴わないものもあります。
権利とは、業務命令権・人事権・施設管理権の3つのことです。
ここでは、広義のM&Aと狭義のM&Aの違いについて解説します。
狭義のM&A:権利の移転を伴う
企業間で権利の移転を伴うM&Aの種類を狭義のM&Aといいます。
M&Aというと、一般的に狭義のM&Aを指すことが多いです。
権利の移転が伴うことにより、買い手企業は、会社規模の拡大や、売り手企業を子会社化するなどの組織の再編成を行うことが出来ます。
売り手企業は、権利を移転させることによって出る利益や、大企業の子会社となり事業拡大ができるなどのメリットがあります。
狭義のM&Aの中には、合併・買収・分割と3つにわかれており、さらに3つそれぞれに細分化された手法があります。
そのため、自社にとって1番効果的なM&A手法を選択するためには、正しい知識が必要です。
広義のM&A:権利の移転を伴わない
企業間で権利の移転を伴わないものも含めたM&Aを広義のM&Aといいます。
広義のM&Aは、狭義のM&Aに加えて、業務提携・資本提携・合弁会社の3つがあります。
広義のM&Aにのみ含まれる業務提携・資本提携・合弁会社には、権利の移転がありません。
そのため、各企業の独自性が損なわれることはないのが特徴です。
独自性を確保したまま行うことが出来るため、会社内の組織運営や社内ルールを変える必要もありません。
また、不測の事態が起きたときには、解散もスムーズに行えるなどリスクが小さいこともメリットとして挙げられます。
業務提携とは、2つの会社が協力して業務を行うことを指し、資本提携とは、株式の取得すること一定の支配権を得たうえで事業の協力を行うことを指します。
合弁会社とは、複数の企業が資本を出し合い協力して会社運営を行うことです。
合弁会社は、以下の2つに大別されます。
- 共同出資により新しく会社を設立する
- 既存の会社の株式を買収し、共同経営を行う
狭義のM&Aの種類1.会社の権利すべてを譲渡
売り手企業の発行済み株式を全て買い手企業に譲渡することにより、会社の権利すべてを譲渡することができます。
この場合、売り手企業はすべて吸収されるため、消滅してしまいます。
これにより売り手企業のメリットは次の通りです。
- 倒産コストがかからない
- 従業員の雇用が守られる
- 売り手企業の経営者の個人保証がなくなる
ここからは、会社の権利すべてを譲渡するM&Aの種類で、大企業・中小企業がそれぞれよく使う手法を紹介します。
大企業:株式交換・株式移転・合併
大企業に多いのは、株式交換、株式移転、合併です。
株式交換・株式譲渡の場合、完全子会社化による親子会社関係を創設します。
株式交換と株式譲渡の違いは、親会社を新設するかどうかという点です。
株式交換とは、すでに存在する会社に子会社となる会社の発行済み株を取得させます。
株式譲渡とは、親会社を新設し、その会社に子会社となる企業の発行済み株を取得させます。
また、合併とは2社以上の企業が1つの企業になることです。
合併には、次の2通りがあります。
- 吸収合併:1つの既存の企業が合併相手の企業を吸収して1社になる。
- 新設合併:新設された企業に、合併を行うすべての企業が吸収され1社になる。
中小企業:株式譲渡
中小企業で多いのは、株式譲渡です。
株式譲渡では、全ての発行済み株式を譲渡すること以外にも、必要な株式だけを譲渡することも出来ます。
必要な株式だけを譲渡する場合には、会社の権利すべてを譲渡とはなりません。
また、非上場企業では株式譲渡の中でも相対取引で行われます。
相対取引とは、株主から直接株式を買い取る方法です。
相対取引は、株主と個別に交渉を行うため、株主が多い場合は時間がかかります。
そこで上場企業では、株式市場から株式を買う市場買付けや、あらかじめ株の買付期間・買付株数・買付価格を公開したうえで、株主から売却を促す公開買付け(TOB)が行われます。
狭義のM&Aの種類2.会社の一部の権利を譲渡
会社の権利の一部を譲渡する場合は、会社の権利すべて譲渡する場合に比べて、売り手企業が消滅せず存続するということが大きな違いです。
そのため売り手企業は、会社の全てを譲渡する場合に比べて目的が大きく変わります。
会社の一部の権利を譲渡する売り手企業の目的は、集中と撤退です。
経営がうまくいっている事業に集中する、反対に経営がうまくいっていない事業から撤退する、そして会社の利益率を上げることを目的に、M&Aが行われます。
また買い手企業にとっては、より必要なものだけに絞り選択することができるというメリットがあります。
ここでは、会社の一部の権利を譲渡する大企業・中小企業がそれぞれよく使う手法を紹介します。
大企業:会社分割
大企業で多いのは、会社分割です。
会社分割とは、売り手企業の事業の一部またはすべての権利と義務を買い手企業に譲渡する手法です。
会社分割はおおきく吸収分割と新設分割があり、さらに4つの手法にわかれます。
事業の引き渡し相手 | 事業を引き渡した対価の受取り相手 | 手法名 |
既存の他企業 | 売り手企業 | 分社型吸収分割 |
既存の他企業 | 売り手企業の株主 | 分割型吸収分割 |
新設企業 | 売り手企業 | 分社型新設分割 |
新設企業 | 売り手企業の株主 | 分社型新設分割 |
また、共同新設分割という手法もあります。
共同新設分割とは、2社以上の売り手企業がそれぞれの事業を分割し、新設会社に引渡す手法のことです。
中小企業:事業譲渡
中小企業で多いのは、事業譲渡です。
事業譲渡は、売り手企業の事業の一部またはすべてを買い手企業に譲渡する手法です。
事業譲渡のメリットは、次の通りです。
- M&Aの買い手企業が見つかる可能性が高い
- 従業員の雇用の確保
- 事業の売却により利益を得る
- 会社が存続する
- 後継者問題が解決する
事業譲渡では、どの事業を売却するか選ぶことが出来ます。
これにより、買い手企業もより必要なものだけに絞って購入することが出来るため、M&Aが行える可能性は高いです。
中小企業で多いM&Aの種類は、株式譲渡と事業譲渡
中小企業には、「中小企業基本法」という定義があり、定義の枠の中で適したM&A手法を選択することになります。
すると、中小企業でよく使う手法はおのずと偏り、株式譲渡と事業譲渡に集中します。
株式譲渡と事業譲渡は、中小企業の売り手側にとってメリットが大きいM&A手法です。
どのようなメリットなのか説明します。
株式譲渡と事業譲渡は売り手のメリットが大きい
株式譲渡と事業譲渡で共通する売り手のメリットは次の4つです。
- 手続きが少ない
- 売り手企業の経営者が利益を得られる
- 従業員の雇用が守られる
- 個人保証がなくなる場合もある
さらに事業譲渡では、M&Aの契約がきまる可能性が高いというメリットもあります。
その理由は、事業譲渡では、売却する事業の中でも細かく設定できるため、買い手企業も必要なものだけを買うことができるためです。
株式譲渡のように全てを譲渡することで、買い手企業は利益だけではなく責務や義務も承継されます。
買い手企業のリスク管理の面からみても、M&Aで事業譲渡が多いことがわかります。
M&Aは専門家の仲介・サポートが不可欠
M&Aは、企業の課題解決において非常に有効な経営戦略の1つですが、1社だけで行うことは不可能です。
必ず、売り手企業と買い手企業や協力企業など2社以上で行われます。
M&Aで成功確率を大きく上げるためには、専門家の仲介やサポートが必要です。
専門家の仲介やサポートがあることで、M&Aの1番重要なポイントである、それぞれの企業の課題に対してwin-winになる相手企業とマッチング出来る可能性が大きく変わってきます。
M&Aは、特に中小企業であれば大きな決断になります。
面識のない会社と安易に出来ることではないため、信用のおける仲介会社が間に入ることが重要です。
また、企業情報を多く持っているM&Aを専門的に行っている企業に依頼できれば、M&Aの相手企業を見つけやすいです。
M&Aの相手企業が決まった後にも、すべてのプロセスを完了するまでにやらなければならないことが多くあります。
そのため、M&Aに対して専門知識が豊富な仲介会社がいることで、安心して行うことができます。
M&Aの種類を理解して、専門家に相談しよう
今回は、M&Aの種類について解説しました。
M&Aは経営戦略の1つなため、何を達成したいのかなど目的を定めることが重要です。
今回紹介したM&Aの種類と照らし合わせて、それぞれの会社の目的に合うM&Aを選んでください。
また、M&Aにおいて最も重要なポイントが、買い手企業が見つかるかどうかです。
相手企業を見つける際に、M&Aを専門的に行っている企業に依頼することで、可能性は飛躍的に上がります。
M&Aを専門的に行っている企業といっても、得意な業界・専門知識が豊富な業界は異なります。
たとえば、パラダイムシフトはIT関係のM&Aに精通しています。
企業にとって大切なことは、M&Aが完了した次に何をするかです。
M&Aを行うことで終わりではないため、次の行動を考えるためにも専門的な知識のあるM&A企業にサポートを依頼することをおすすめします。