スタートアップは、創業・新規事業展開・事業拡大にあたり、資金調達が不可欠です。
ただ、実績がないスタートアップが資金調達をするには、いったいどうすればよいでしょうか?
この記事では、スタートアップにおすすめの資金調達手段や、事業フェーズに応じた資金調達手段についてご紹介します。
資金調達を成功させ、ビジネスアイデアを実現し、事業を軌道に乗せましょう。
目次
- 1 資金調達方法、3つの代表的なパターンとは
- 2 資金調達の方法1.アセットファイナンス
- 3 資金調達の方法2.デッドファイナンス
- 4 資金調達の方法3.エクイティファイナンス
- 5 スタートアップ企業におすすめの資金調達方法4選
- 6 おすすめ1.日本政策金融公庫の融資
- 7 おすすめ2.エンジェル投資家からの出資
- 8 おすすめ3.ベンチャーキャピタルからの出資
- 9 おすすめ4.助成金・補助金の活用
- 10 スタートアップ企業の資金調達、ポイントは成長フェーズ
- 11 ポイント1.シード期
- 12 ポイント2.アーリー期
- 13 ポイント3.ミドル期
- 14 ポイント4.レイター期
- 15 スタートアップが資金調達方法に悩んだ時は、専門家に相談
資金調達方法、3つの代表的なパターンとは
一般的に資金調達方法には大きく分けて、以下の3つがあることを理解しておきましょう。
- アセットファイナンス
- デットファイナンス
- エクイティファイナンス
一言で表現すると、アセットファイナンスは、自己所有資産を活用する資金調達方法。
デットファイナンスは、融資や手形割引による資金調達方法。
エクイティファイナンスは、株式などの発行による資金調達方法。
上記の資金調達方法の特徴やメリット・デメリットを理解して、場面に応じて使い分けることが重要です。
資金調達の方法1.アセットファイナンス
アセットファイナンスとは、会社が所有する資産や債権の信用力を裏付けに資金調達する方法です。
不動産や動産、売掛債権、知的財産権などの資産がもたらす収益を担保として資金を得ます。
したがって、企業の信用力が低下していても問題ありません。
「所有する資産を証券化して融資を受ける」と言い換えることもできます。
アセットファイナンスは保有する資産をオフバランス化することで、保有資産を圧縮・資産変動リスクの低減・財務体質の改善や経営の効率化が期待できます。
一方で、キャッシュフローをもたらすことが期待できる資産を所有している場合のみ、活用できる方法です。
アセットファイナンスには、以下があります
- ファクタリング
- 保有資産の売却(不動産、有価証券、自動車、機械設備、過剰在庫など)
資金調達の方法2.デッドファイナンス
デットファイナンスとは、自社の信用力にもとづいて借入や社債の発行、手形割引などによって資金を調達する方法です。
銀行が企業に融資をする間接金融が一般的であった日本では、デットファイナンスが最も人気のある資金調達方法となっています。
デットファイナンスは豊富な資金調達手段が存在し、金利の支払いが損金計上されるため節税効果も期待できます。
自己資金に対してレバレッジをきかせることも可能で、比較的大きな金額の調達が可能です。
一方で、デットファイナンスは返済義務を負うものであり、返済の分だけ将来のキャッシュフローが減少します。
したがって、信用力が高くない企業には負担が大きくなる・企業の信用力が低下するといったことも想定されます。
デッドファイナンスには、以下があります。
- 銀行融資
- 日本政策金融公庫からの融資
- 手形割引
- 私募債
資金調達の方法3.エクイティファイナンス
エクイティファイナンスとは、企業が株式などを発行して、投資家に購入してもらうことで資金を調達する方法です。
デットファイナンスと異なり、調達した資金に返済義務がなく、利息の支払いコストがかかりません。
また、株主の増加に伴って、自己資本が増強され、財務体質が強化されることになります。
しかし、株主が増えることで経営の一貫性や安定性が失われる・物言う株主によって会社の経営権が握られる可能性があります。
また、株式数の増加により、1株あたりの価値の希薄化をまねき、既存の株主から反発される可能性もあります。
また、金利を支払う代わりに株主に対して、収益に比例して配当金を支払う必要があります。
エクイティファイナンスには、以下があります。
- ベンチャーキャピタル(VC)からの出資
- エンジェル投資家からの出資
スタートアップ企業におすすめの資金調達方法4選
ここでは、スタートアップ企業にとっておすすめの資金調達方法(アセットファイナンス・デットファイナンス・エクイティファイナンス)を紹介します。
概要だけではなく、活用するメリット・デメリットについても解説。
それぞれの資金調達手段を理解し、自社の状況や将来像に合った資金調達方法を選択しましょう。
おすすめ1.日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫は政府が100%出資する政府系金融機関であり、無担保で中小企業やスタートアップ企業、個人事業主への支援を目的に設立されています。
日本政策金融公庫には様々融資制度がありますが、「新創業融資」はスタートアップでも借りやすいのが特徴です。
新創業融資制度を利用するメリットは以下の5つです。
- 返済期間が長い
- 低金利で借りられる(2.41~2.80%)
- 担保や保証が必要ない
- 融資審査の難易度が低い
- 将来的に他の金融機関から融資を受けやすくなる
一方で、新創業融資制度にデメリットがないわけではありません。
一般的に新創業融資制度のデメリットは以下の2つです。
- 必ず審査に通るわけではない(甘く見ていると通らない)
- 融資審査が長く、1ヶ月以上の時間が必要
特に、融資審査が長い点に注意が必要です。
スタートアップの場合は資金繰りに苦労し、早急に資金が必要であることが多いですが、審査に時間がかかるので、早急な資金調達には向いていません。
おすすめ2.エンジェル投資家からの出資
エンジェル投資家とは、将来有望な起業家やベンチャー企業、スタートアップ企業へ投資する個人投資家のことを指します。
エンジェル投資家は主にキャピタルゲインの獲得を狙って投資をしますが、欧米ではエンジェル投資家による投資は一般的です。
エンジェル投資家から出資を受けることのメリットは以下の3つです。
- 元起業家が多く、経営に関するアドバイスが期待できる
- 出資なので返済義務がなく、十分な資金がなくても資金調達が可能
- 実績がなくても事業ビジョンに共感して出資してくれる
特に、エンジェル投資家から実体験に基づく経営アドバイスがもらえることが魅力的です。
エンジェル投資家のなかには、上場やM&Aに関する知識が豊富な方も多く、事業を成長させたい人にとっては心強い味方です。
一方で、エンジェル投資家から出資を受けることで、以下のようなデメリットが考えられます。
- 必要以上に経営に関与してきて、自由に意思決定ができない
- エンジェル投資家を探すのに時間がかかる
おすすめ3.ベンチャーキャピタルからの出資
ベンチャーキャピタルとは、自己資金や投資ファンドを設立し、投資家から集めた資金でベンチャー企業やスタートアップ企業に投資をおこないます。
そして、その企業が上場した後に、キャピタルゲインを得ることを目的にした組織のことです。
ベンチャーキャピタルから出資を受けることのメリットは、以下の通りです。
- 経営スキルやノウハウに関するアドバイスを期待できる
- 出資なので、返済義務がない
- 無担保・無保証で資金調達が可能
- 信用力が向上し、金融機関の融資を受けやすくなる
ベンチャーキャピタルは、多くの企業を上場へと導いた実績を持ちます。
したがって、経営のアドバイスやサポートを受けることが可能です。
起業して間もないスタートアップには頼もしい存在です。
一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 投資目的であり、安定した株主ではない
- 経営に干渉され、自由な意思決定ができない
ベンチャーキャピタルの目的は投資であり、意向に沿った経営をする必要があるので、自由に意思決定ができないリスクがあります
おすすめ4.助成金・補助金の活用
助成金や補助金は国や地方公共団体が提供している制度であり、起業家やスタートアップ企業を対象としているものが多く存在します。
様々な制度があり、それぞれ特徴が異なりますが、一般的なメリットは返済義務がなく、資金調達のコストが小さい点です。
一方で、デメリットは以下のとおりです。
- 審査が厳しいことが多い
- 必要な資金の全額を賄えない
- 受取までにタイムラグがある
スタートアップ企業の資金調達、ポイントは成長フェーズ
スタートアップ企業は、事業の成長フェーズにあわせて資金調達をすることが大切です。
それぞれの事業フェーズにあった資金調達方法を解説いたします。
ポイント1.シード期
シード期とは、起業する前の段階のことで、経営理念や方針は決まっているものの、提供するサービスや商品を開発している段階です。
スタートアップ企業にとって、事業がシード期にあたる場合、以下の資金調達方法が適しています。
- エンジェル投資家からの出資
- ベンチャーキャピタルからの出資
- 日本政策金融公庫の融資
たとえば、起業して間もないケースの場合は、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資が効果的です。
ポイント2.アーリー期
アーリー期とは、事業を展開し、売上が上がっている段階です。
事業展開直後は、商品やサービスの開発コストや広告コストがかさみ赤字となるケースがあり、収益性は低いのが一般的です。
スタートアップ企業にとって、事業がアーリー期にあたる場合、以下の資金調達方法が適しています。
- ファクタリング
- エンジェル投資家からの出資
- ベンチャーキャピタルからの出資
たとえば、民間の金融機関から融資を受けるのが難しいケースの場合は、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資が効果的です。
ポイント3.ミドル期
ミドル期とは、持続的な成長に向けて事業展開を進める段階です。
利益は低収益の場合が多いですが、黒字化が見え始めています。
成長のため、人材育成・人材確保の人件費、設備投資など、大きな資金を必要とする段階です。
スタートアップ企業にとって、事業がミドル期にあたる場合、以下の資金調達方法が適しています。
- ベンチャーキャピタルからの出資
- 銀行の融資
- 助成金や補助金
たとえば、会社の信用力が高まっているケースの場合は、銀行融資が効果的です。
ポイント4.レイター期
レイター期とは、商品やサービスの認知度が高まり、社会的信用も確立されている段階です。
IPOやM&Aも視野に入っています。
スタートアップ企業にとって、事業がレイター期にあたる場合、以下の資金調達方法が適しています。
- 銀行の融資
- ファクタリング
たとえば、事業が黒字化しているケースの場合は、銀行からの融資が効果的です。
スタートアップが資金調達方法に悩んだ時は、専門家に相談
事業を展開して間もないスタートアップにとって「資金調達は難しい」というイメージがあります。
しかし、実は資金調達の選択肢はたくさん。
スタートアップにとって、資金調達方法次第で事業の拡大や新規事業の開拓に大きな影響を与えます。
したがって、それぞれのメリット・デメリットを把握し、企業の成長ステージや目的によって使いわけ、自社の経営をスムーズにすることが重要です。
VC目線からみたスタートアップの資金調達については、こちらの記事で詳しく解説されています。あわせてご確認ください。
参考:VC目線からみたスタートアップの資金調達とは|エクイティファイナンスと資本政策 |CPASS
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