M&Aの相手を見つけるため、重要な資料となるのがロングリスト。ロングリストの作成後は、ターゲット・スクリーニングを経てショートリストを作成し、M&Aの相手となる企業の候補と交渉に入ります。
では、ロングリストは、だれがどのようなタイミングで作成するのでしょうか?
今回の記事では、M&Aにおけるロングリストの意味や、作成手順とポイントについて、ショートリストにも触れながら解説していきます。
今回の記事を読むことで、M&Aのロングリストやショートリストの知識を得ることができます。
目次
M&Aにおけるロングリストとは?
ロングリストとは、M&Aを実施する相手企業の候補を、一定の基準でリストアップしたものです。売り手企業は譲渡先の候補を、買い手企業の場合は譲受先の候補をリストアップするということになります。
ここで言う一定の基準とは、候補先の企業の抽出条件を意味します。希望に合うM&Aの相手が見つかるような条件を当事者が自ら決定します。
ロングリストは、20社前後で済むケースから、100〜200社と多岐に渡ることもあります。その後、依頼主とM&Aのアドバイザーの話し合いで候補先を絞り込んだものをショートリストと言います。
ロングリストの作成から、ショートリストを作成するまでの対象企業を絞り込む過程をターゲット・スクリーニングと呼び、依頼主とM&Aのアドバイザーや仲介業者と協力しながら進めるのが特徴です。
ターゲット・スクリーニングの過程を経て、ショートリストにあがった企業へ、依頼主の名を伏せてM&Aを打診していきます。
ロングリストの作成方法
実際のロングリストは、どのようにターゲット・スクリーニングを進めて作成していけばいいのでしょうか?
結論から言うと、ロングリストの作成方法において、必須事項が決められているわけではありません。基準や項目において必要となる事項は、それぞれの企業によって異なるため、自社が必要である基準や項目を自身で決定します。
その条件を元に、M&Aを希望している企業の中から相手先の候補になる企業を抽出していきます。
ロングリストの記載項目
ロングリストの記載項目は、前述の通り、決められたルールはありません。譲渡先を検討するとき、整理しやすいように自社が必要と考える項目を載せていきます。
例えば、以下のような項目が代表例です。
- 会社名
- 代表者名
- 所在地
- 主な商品やサービス
- 資本金
- 売上・利益
- 従業員数
これらの項目を、エクセルなどの表で1つにまとめるのがおすすめです。ロングリストに掲載する企業は、多ければ100社〜200社をピックアップします。そのため、これらをまとめると文字通り、とても長いリストになります。
ロングリストと合わせて把握したいショートリストの作成方法
ロングリストを作成した後は、ショートリストの作成に入ります。ターゲット・スクリーニングの段階では、売り手企業とM&Aのアドバイザーが話し合い、候補先を選んだり、候補企業にM&Aを打診したりして絞り込みます。
ショートリストに挙がった企業に対しては、実際にM&Aの交渉を進めると仮定して情報を集めることが大切です。そのため、より細かい情報を入手して記載しましょう。
ショートリストの記載項目
ショートリストは、ロングリストの記載項目に加えて、さらに細かい項目を記載します。具体例では以下のような項目が挙げられます。
- 役員構成
- 主要取引先
- 主要銀行
- 時価総額
- 株主構成
- 過去数年の売上・利益などの推移
- 会社の強みと弱み
- 想定できる自社とのシナジー効果
- 自社とM&Aを実施した場合に想定されるリスク
これらを記載することで、M&Aの可能性を確かめることができて、交渉材料にも役立ちます。しかし、実際にこれだけの情報を手に入れるのは簡単ではありません。
上場企業であれば、ある程度の情報は開示されています。しかし、そうでない場合、詳しい情報を入手するのが難しい場合が考えられるでしょう。
その際は、企業のホームページにアクセスしてみることをおすすめします。または、該当の企業に営業をしたり、調査会社に依頼したり方法も考えられます。
ロングリストとショートリストの作成手順
ロングリストやショートリストはどのような手順で作成するのでしょうか?基本的な作成手順は以下の通りです。
- リストアップの基準を決定する
- 情報を収集し、ロングリストを作成する
- 条件を絞り込みショートリストを作成する
- ショートリストにある企業の中で優先順位を付ける
ロングリストに載せる企業の基準は、具体的には、以下のような項目が例えられます。
- 企業の規模
- 大まかな売上
- 業種
- 希望価格
これらの条件を元に、M&Aを希望している企業の中から該当する企業を探し、ロングリストを作成します。ロングリストを元に、M&Aアドバイザーと共にショートリストの条件を検討します。
場合によっては、ロングリスト作成後に、候補先企業に名前を伏せて打診することもあります。ショートリストの作成後は、優先順位の高い企業の中から交渉していくのが一般的です。
ロングリスト作成のポイント
次に、ロングリスト作成時のポイントを紹介します。ポイントおさえてロングリストを作成することは、自社の条件に合ったM&Aの相手先を見つけることにつながると言えるでしょう。
M&Aの見通しを持つ
M&Aのロングリストは、依頼主が自身で作成することをおすすめします。なぜなら、ロングリストで候補に挙がる企業は、M&Aの目的や希望の条件により変わるためです。M&Aアドバイザーは、ロングリストに挙がった企業を見て、依頼主の希望を判断していきます。
シナジー効果を考慮する
対象企業とM&Aを実施することで、経済的な相乗効果は発揮されるでしょうか?ロングリストに載せる条件を検討するとき、シナジー効果を十分に発揮出来るかどうか考えることは非常に重要です。
シナジー効果とは、買い手企業と売り手企業、2つの企業の力を合わせて発揮される相乗効果を指します。双方の強みやノウハウを役立て、事業や売上げを拡大できるのかどうか考えてみましょう。
希望や要件を明確にする
ロングリストを作成する際、希望や要件などの抽出条件は、明確に決定してから作成に移りましょう。希望や条件が曖昧なまま作成すると、選定に余計な時間をとられてしまったり、自社と相性の良い企業を見落としてしまったりする可能性もあります。
また、明確な条件や希望を定めることで、選定に主観が入るのを防ぎ、一定の基準で候補先企業を選定できます。これにより、自社にとって良いM&Aの相手を見つけることにつながるでしょう。
専門家に依頼する
ロングリストの作成が、自社では難しいと判断する場合、専門家に依頼する方法も考えられます。
M&Aアドバイザーの中には、ロングリストの作成が得意な人もいれば、そうでない人もいます。そのため、ロングリストの作成も合わせて依頼したいと考えているなら、アドバイザーとの契約前に確認してみるのも良いでしょう。
良い買い手企業を見つけるために正しいロングリストの作成を。
今回の記事では、M&Aの候補先を見つけるために重要な「ロングリスト」と「ショートリスト」のそれぞれの意味や、作成方法と手順について解説しました。
ロングリストは、M&Aの相手となる企業の条件を定め、それに合う企業を探し出してリスト化したものです。掲載する企業の条件は、当事者の希望を元に決定するため、記載項目がそれぞれ異なります。
ショートリストは、ロングリストの中の企業を絞り込み、さらに詳しく調べて、M&Aの候補先を絞り込んだリストです。ロングリスト作成からショートリスト作成まで、ポイントを押さえて進めていくことで、遠回りすることなく、M&Aの相手として相応しい企業と出会えるでしょう。
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