プレスリリースとは、企業や組織の新規情報をステークホルダーに届けるために事実を文書や資料としてまとめた公式文書です。
具体的には資金調達の事実や自社の新商品の発売、新規事業の開始といった最新の情報が掲載されています。
ベンチャー企業やスタートアップ企業など、業歴は浅いものの革新的なサービスを提供している企業が資金調達に成功した時に、プレスリリースを配信することがあります。
これまで企業のPR手段としては掲載料の高いテレビや新聞、低コストだが信用性に欠けるSNSなどがありましたが、プレスリリースはそれらに代わるPR方法として注目を集めています。
この記事では、資金調達に成功した事実をプレスリリースで配信するメリットや配信の際の注意点、そして具体的な記載事項を解説します。
目次
資金調達に成功したらプレスリリースを配信すべき理由
ベンチャー企業やスタートアップ企業にとって生命線とも言える資金調達。
資金調達に成功したということはそれだけ魅力ある商品やサービスを持っているということです。
その事実をプレスリリースで配信することで絶大なPR効果が得られます。
しかし、資金調達に成功してもプレスリリースによって事実を公表するかどうかは企業によって対応が分かれています。
ここからは、資金調達に成功した企業がプレスリリースを配信すべき理由について解説します。
自社の商品やサービスを告知できる
投資家から資金調達を行う企業のほとんどはベンチャー企業やスタートアップ企業です。
資金調達に成功するということは、業歴の浅い企業が投資家から資金を集めるだけの画期的な商品やサービスを開発できたということです。
プレスリリースによって、資金調達に成功したことを告知すれば、商品やサービスの革新性や将来性にお墨付きがあることを広く認知してもらえます。
読んでいる人はどのような商品やサービスを提供しているのか気になることでしょう。
様々な投資家が読んでいることを想定して、商品やサービスの魅力を専門家でない人でもわかるように記載するとよいでしょう。
企業PRの費用対効果が高い
従来、企業PRの方法といえばテレビや新聞が中心であり、これらの媒体は掲載料が高いのが特徴でした。
近年では、SNSの普及によって広告活動が安価で実施できますが、SNSには情報の信用性という問題があります。
資金調達に成功したという事実を記載したプレスリリースを自社メディアで配信すればコストはかかりません。
また、配信サービスを利用しても、低コストで実施可能であり、かつ効果が高いです。
資金力に乏しいベンチャー企業やスタートアップ企業であっても気軽に利用でき、さらに「資金調達に成功した魅力のある企業」として認知してもらえるプレスリリースは効果絶大です。
投資の呼び水になる
有望な投資先を探している投資家や投資ファンドはさまざまな業界が発行するプレスリリースを投資判断の材料としています。
新しく投資をするときには投資によって大きなリターンを得られるかどうかを精査します。
業歴の浅い企業は過去の利益推移から、今後の成長性を見極めることが難しいので、調査に時間がかかってしまいます。
しかし、既に資金調達に成功している企業であれば、一定の信用があり、有望な投資先である可能性が高いと判断できるのです。
したがって、資金調達に成功したことが記載されているプレスリリースを発行することで、それを読んだ投資家からさらなる資金調達が期待できます。
取引関係を拡大できる
信用のあるメディアで配信されたプレスリリースには投資家や大企業など様々な人が注目しています。
資金調達に成功したという事実をプレスリリースに記載して配信すれば、一般人だけではなく業界の権威と言われる人の目にもとまるでしょう。
資金調達に成功したということは革新的かつ魅力のある商品やサービスを提供していることが投資家に認められたということです。
プレスリリースを通じて、他社が自社や商品・サービス内容に関心を持ち、業務提携などのきっかけになるかもしれません。
プレスリリースの内容が世間で話題になれば、そのブームにあやかろうとして取引を持ちかける企業も現れるでしょう。
資金調達時のプレスリリース配信の注意点
資金調達に成功したベンチャー企業やスタートアップ企業がプレスリリースを配信すると絶大な効果を得られることがあります。
しかし、単に資金調達の事実をプレスリリースに掲載して、配信しても想定していた効果が得られない可能性があります。
ここでは、配信の効果を最大限高めるために検討するべきプレスリリース配信の注意点について解説します。
読者の多い配信メディアを選ぶ
プレスリリースを配信するときには掲載するメディアを選定することになります。
配信しても読んでくれる人が少なければPRの効果は期待できません。
読者の多い配信メディアを選んで、配信しましょう。
メディアによっては、自社のプラットフォームだけではなく、大手新聞社や大手検索エンジンなど大手メディアに転載されるメディアがあります。
複数の大手メディアに転載されることで、読者が増えて、大きなPR効果が期待できます。
競合がいる場合にはプレスリリース配信を遅らせる
プレスリリースを読んでいるのは将来の投資家や提携相手だけではありません。
自社の競合他社もプレスリリースを読むことができます。
ベンチャー企業やスタートアップ企業は知名度が低く、革新的な商品やサービスを持っていても、認知されていないことがあります。
しかし、プレスリリースを配信することで商品やサービスの内容が広く知られることになります。
自社よりも規模が大きく、資金の豊富な企業がアイデアを参考にして、参入してくる可能性があります。
したがって、経営者の中には資金調達に成功してもあえてプレスリリースの配信を遅らせる人もいるようです。
特許を申請したり、事業領域で実績を重ねて参入障壁を築いてから、プレスリリースを配信するのです。
資金調達した時のプレスリリースの書き方
資金調達に成功した時に配信するプレスリリースのPR効果を最大限高めるために、書き方を工夫をしましょう。
必要な情報をしっかり盛り込み、商品やサービスの魅力が伝わる内容であれば、高いPR効果が得られるでしょう。
ここからは、資金調達した時のプレスリリースの書き方について解説します。
誰から資金調達したのか
誰から資金調達したのか、つまり誰が出資者なのかを記載します。
プレスリリースの文頭に記載することが多いようです。
出資者が1社の時もあれば複数ある時もあるでしょう。
複数の出資者がいるということはそれだけ期待が大きいということです。
プレスリリースには出資者の社名だけではなく、コメントや写真を掲載することもあります。
特にコメントがもらえる場合には第三者の推薦状のように客観的な公表を受けていることをアピールできます。
どのように資金調達したのか
資金調達といっても金融機関からの融資や投資ファンドによる出資など様々な形態があります。
資金調達の形態について記載することで、返済の必要のある融資なのか、それとも返済の必要はないが議決権を取得された出資なのか、など財務状況や経営権の在り方が読み手に伝わります。
金融機関の場合には地元の信用公庫や日本政策金融公庫による創業融資、投資ファンドの場合には第三者割当増資による資金調達が多いようです。
いずれの場合でも、文頭で「誰から」「どのように」資金調達したのかを記載します。
いくら資金調達したのか
資金調達に成功した金額について記載します。
金融機関による創業融資の場合には調達額に大きな差が生まれにくいですが、出資の場合には出資額に大きな違いが生じます。
自社の企業規模に比較して、大きな金額の調達に成功している場合にはそれだけ商品やサービスに革新性や成長性があるということです。
また、資金調達を実施する前に目標金額を公表している場合には計画以上の資金調達に成功することで投資家からの評価が高まるでしょう。
ちなみに複数社の出資を受けている場合であってもそれぞれの企業からの調達額を記載する必要はありません。
記載する金額は調達した総額で十分です。
資金の使い道
調達した資金の用途や目的を記載します。
資金調達はそれ自体が目的ではなく、調達した資金で投資を行いリターンを得るために行います。
資金の使い道は商品やサービスの将来像でもあります。
実際のプレスリリースを参考に記載事項を見てみましょう。
- 事業拡大に伴い採用強化(転職サイト運営)
- 新しい錠剤の開発費用(医薬品製造)
- 顧客からのシステム改善要望に対応するため(行政への電子申請サポートサービス)
- 新商品開発とマーケティング拡大(オンラインキャリア相談サービス)
このように明確な資金使途を記載することで、事業のさらなる発展に期待を持ってもらうことができます。
資金調達後の方針
資金調達に成功した現時点での今後の方針や目指すべき姿について記載します。
会社の経営理念と重なるミッションを表明しましょう。
先程の実例を参考に記載事項を見てみましょう。
- 人の暮らしや企業の未来をデザインします(転職サイト運営)
- 公共性や公益性を重んじ、次世代の医療機器開発や新産業の創出に寄与します(医薬品製造)
- 「安心して働ける世界を作る」というミッションを実現します(行政への電子申請サポートサービス)
- 誰もが自分に合った働き方ができる社会の実現を目指します(オンラインキャリア相談サービス)
未来への意気込みのようなもので、プレスリリースの末尾に記載します。
資金調達時のプレスリリースのサンプル
資金調達時に関係なくプレスリリースの様式や書き方に特別な決まりはありません。
ここでは、実際のプレスリリースを参考にサンプルをご紹介します。
〇〇株式会社
東京都〇〇区〇〇町20番地
代表取締役社長〇〇
【プレスリリース】資金調達に関するプレスリリース
〇〇株式会社(以下、当社)は、〇〇年◯月に実施した第三者割当増資により総額37億4,000 万円の資金調達を完了したことをお知らせします。
当社は、✕✕株式会社および✕✕株式会社を引受先とする、総額37億円の第三者割当増資を実施致しました。
これにより累積資金調達総額は約50億円となり、引き続き〇〇(事業名)へ投資するとともに、事業における採用を強化してまいります。
【引受先各社からのコメント】
・✕✕株式会社 代表取締役社長✕✕氏
(会社、商品、サービスについてのコメント)
当社は、〇〇及び〇〇を製造販売する医療機器製造事業者です。
(経営理念やミッションを記載)
・株式会社〇〇について(自社の情報を記載)
所在地:〒111-1111 東京都〇〇区〇〇町20番地
代表者:代表取締役社長〇〇
設立日:2000年1月1日
資本金:1,000,000円(資本準備金含む)
事業内容:〇〇
会社URL: http〇〇
資金調達に成功したらプレスリリースを配信しよう
この記事では、資金調達に成功した事実をプレスリリースで配信するメリットや配信の際の注意点、プレスリリースのサンプル例を解説しました。
資金調達時にプレスリリースを配信することで、自社の商品やサービスのPR効果や新たな投資を呼び込む効果が期待できます。
競合他社の状況を見ながら、ときにはプレスリリースの配信を遅らせる必要がありますが、プレスリリースを配信することで大きな利益を得られると考えてよいでしょう。
資金調達やプレスリリースの配信については株式会社パラダイムシフトに相談して下さい。
株式会社パラダイムシフトはIT領域のM&AアドバイザーとしてM&Aのサポート事業を行っています。