会社の廃業には、多くの手間と費用がかかるため、どのように営業を止めるか悩む経営者の方も少なくないでしょう。
「今はそこまで手間やお金をかけられないが、事業を一旦停止したい」という経営者の方にとって、有効な選択肢となるのが会社の休眠です。
一方で正しく手続きしないとリスクも伴うため、「税金はどうなる?」「維持費用や手続きの手順は?」といった疑問を事前に解消しておくことが重要です。
本記事では、会社を休眠・復活させる具体的な手続きの流れや、税金・費用の仕組みを分かりやすく解説します。リスクや廃業との違いも網羅していますので、参考になれば幸いです。
目次
- 1 会社の休眠とは?廃業との違いや選ばれる理由
- 2 休眠会社の定義と会社法上の位置づけ
- 3 休眠と廃業(解散・清算)やみなし解散との違い
- 4 会社を休眠させるメリット
- 5 事業活動の再開が迅速かつ簡単にできる
- 6 取得済みの許認可をそのまま維持できる
- 7 廃業(解散・清算)に比べて手間や費用を節約できる
- 8 会社を休眠した場合にかかる税金
- 9 法人税や消費税などの支払いは発生しない
- 10 自治体によっては「法人住民税の均等割」が免除される
- 11 不動産を所有している場合は固定資産税が課税される
- 12 会社の休眠・維持にかかる費用
- 13 休眠手続き自体にかかる費用(官公庁への支払)は無料
- 14 休眠期間中の維持費用(税務申告の税理士報酬や均等割など)
- 15 会社を休眠・復活させる手続きの流れ
- 16 会社を休眠させる際の手続きと必要書類(異動届出書など)
- 17 休眠中に行うべき手続き(毎年の税務申告・役員の変更登記)
- 18 会社を休眠から復活させる際の手続きと必要書類
- 19 会社を休眠させる際の注意点・デメリット
- 20 最後の登記から12年経過すると「みなし解散」になるリスク
- 21 借金がある会社は休眠ではなく「破産・清算」の検討を
- 22 休眠させずM&Aで会社を売却(売買)する選択肢もある
- 23 まとめ:会社の休眠は放置厳禁。手続きや維持費を正しく理解して最適な選択を
会社の休眠とは?廃業との違いや選ばれる理由

事業を一時的に停止したいと考えた際、最初に理解しておきたいのは「会社の休眠」という状態の正確な意味です。
以下では、休眠の定義や会社法上の取り扱い、そして完全に事業をたたむ廃業やみなし解散との違いについて解説します。
休眠会社の定義と会社法上の位置づけ
休眠とは、文字どおり会社の事業活動を一時的に停止し、活動を休止する状態です。
税務署や自治体などの関連機関へ異動届出書(休眠の届け出)を提出すると、対外的に事業を行っていないことを示します。
ただし、休眠状態であっても法人格は消滅せず、登記簿上は会社として存続し、いつでも事業を再開できます。
なお、会社法においては最後の登記から12年を経過した株式会社を休眠会社と定義しています(会社法第472条)。
自発的に事業を停止する実務上の休眠と、登記を長年放置した結果として法律上定義される休眠会社は意味合いが異なるため、混同しないように注意が必要です。
休眠会社の確認方法については、こちらの記事でも詳しく解説されていますので、あわせてご確認ください。
休眠と廃業(解散・清算)やみなし解散との違い
休眠と廃業(解散・清算)の最大の違いは、法人格が残るか消滅するかです。
廃業手続きを行うと、会社の資産と負債を整理する清算が行われ、最終的に法人格は完全に消滅します。一度廃業すると、同じ会社として事業を再開できません。
一方で、みなし解散とは、最後の登記から12年が経過した会社(会社法上の休眠会社)に対し、法務大臣による官報公告などが行われた後、法務局の職権で強制的に解散させられる制度です。
みなし解散となると、自発的な廃業と同様に会社は解散したとみなされ、事業活動を継続できません。自ら選んで事業を一時停止する休眠とは異なり、放置によるペナルティに近い性質を持っています。
会社を休眠させるメリット
以下では、廃業ではなく休眠を選ぶ代表的な3つのメリットを解説します。
事業活動の再開が迅速かつ簡単にできる
休眠の大きなメリットは、事業を再開したくなった際に迅速に対応できる点です。
会社の法人格がそのまま存続しているため、税務署や自治体などに事業再開の届け出を提出するだけで、速やかに従前の法人として事業を再開できます。
休眠であれば、設立の手間を省き、機動的に事業の再開が可能です。社長の体調不良や一時的な経営環境の悪化など、将来的に状況が好転する可能性がある場合に適しています。
取得済みの許認可をそのまま維持できる
事業を行う上で不可欠な許認可をそのまま維持しやすいことも、休眠を選択する重要な理由です。
建設業や宅地建物取引業など、許認可が必要な事業の場合、廃業すると取得済みの許認可はすべて失効し、再開時には一から申請・審査を受け直す必要があります。
一方、会社を休眠状態にしておけば、更新手続きなどの要件を満たしている限り、取得済みの許認可を維持できるケースが多くあります。
ただし、許認可の種類や管轄の官庁によって休業中の取り扱い(届け出の要否や期限など)が異なるため、事前に確認しておくことが必要です。
廃業(解散・清算)に比べて手間や費用を節約できる
廃業手続きを回避すると、解散や清算にかかるコストを大幅に抑えられます。
会社を正規の手順で廃業させるためには、株主総会の決議を経て解散登記と清算人選任登記を行い、さらに官報への公告(債権者への申し出の催告)を行った後、最終的に清算結了登記を行う必要があります。
これらの登記費用や官報公告費用だけでも約7万〜8万円程度かかり、専門家に依頼すれば総額30万円〜50万円以上になるケースも珍しくありません。
休眠であれば、各種届け出の提出のみで事業を停止でき、高額な費用や時間を大幅に節約できます。
会社を休眠した場合にかかる税金
以下では、休眠期間中の税金について、発生するものと免除されるものに分けて解説します。
法人税や消費税などの支払いは発生しない
休眠中は営業活動がなく所得も売上もゼロとなり、法人税・消費税ともに納税額は発生しません。
ただし、休眠中であっても預貯金の利息収入や未回収の売掛金が入金された場合は所得とみなされるケースがあるため、事業に関連する取引は完全に停止しておくことが重要です。
自治体によっては「法人住民税の均等割」が免除される
法人税が発生しない場合でも注意すべきは、法人住民税の均等割です。
均等割とは、会社が赤字、あるいは休眠中で利益がゼロの場合でも、法人として存在する限り毎年定額で課される税金です。
資本金や従業員数に応じて金額が決まり、都道府県民税・市区町村民税を合わせて最低でも年間約7万円が課税されます。(金額は自治体により異なります)
(参考:総務省「令和7年度 法人住民税・法人事業税 税率一覧表」)
しかし、多くの自治体では、会社が休眠状態にある旨の異動届出書を提出すると、この均等割の免除や減免を受けられる制度を設けています。
免除の基準や手続きの要件は各市区町村や都道府県によって異なるため、休眠手続きを行う際に管轄の自治体へ確認し、適切な申請が重要です。
不動産を所有している場合は固定資産税が課税される
休眠中の会社名義で土地や建物などの不動産を所有している場合は、事業活動の有無にかかわらず固定資産税が毎年課税されます。
固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している者に対して課される地方税です。
休眠中も不動産の所有権は法人にあるため納税義務は継続し、車両を所有している場合の自動車税も同様です。
休眠前に売却や名義変更を検討するか、所有し続ける場合は毎年の納税資金をあらかじめ確保しておきましょう。
会社の休眠・維持にかかる費用

廃業に比べて初期費用を抑えられる休眠ですが、完全にコストなしで永続的に維持し続けられるわけではありません。
休眠手続きそのものにかかる費用と、休眠期間中に発生するランニングコストの両面を正しく把握しておきましょう。
休眠手続き自体にかかる費用(官公庁への支払)は無料
会社を休眠させるための手続きそのものには、法定の費用はかかりません。
税務署や都道府県税事務所、市区町村の役場へ提出する異動届出書の用紙代や提出手数料などは無料です(参考:国税庁)。
また、年金事務所に対する社会保険の資格喪失手続きや、労働基準監督署への雇用保険に関する手続きなども、すべて無料で行えます。
もしこれらの手続き書類の作成や提出を、税理士や社会保険労務士などの専門家に代行依頼する場合は、数万円程度の報酬が発生しますが、自身で行えば費用はかかりません。
休眠期間中の維持費用(税務申告の税理士報酬や均等割など)
休眠中も法人格が存続している以上、維持費用が発生する点には注意が必要です。
まず、前述した通り自治体によっては法人住民税の均等割が免除されず、毎年納付を求められる場合があります。
免除されない場合、東京都23区内であれば資本金1,000万円以下・従業員50人以下の法人でも年間最低7万円が課税されます。(参考:東京都主税局「法人事業税・法人都民税」)
均等割の金額や免除条件は自治体によって異なるため、管轄の自治体にご確認ください。
さらに重要なのが、休眠中であっても原則として毎年、税務申告(確定申告)が義務付けられている点です。売上がゼロであってもゼロ申告を行う必要があります。
休眠会社の申告であれば通常の顧問契約より安価に設定されることが多いですが、それでも年間数万円〜10万円程度の税理士報酬が維持費として発生します。
なお、税理士報酬は事務所や依頼内容によって大きく異なるため、複数の事務所に見積もりを取ることをおすすめします。
休眠はあくまで一時停止であり、維持のためのランニングコストがかかることを理解しておきましょう。
会社を休眠・復活させる手続きの流れ
手続きを怠ると不要な税金やトラブルの原因になります。以下では、正しい流れと必要書類を解説します。
会社を休眠させる際の手続きと必要書類(異動届出書など)
会社を休眠させる際の手続きは、主に関係各所への届け出が中心です。
事業停止の事実を公的に証明するため、以下の順序で適切に処理していくことが求められます。
- 税務署への届け出:管轄の税務署に対し、異動届出書を提出します。異動事項の欄に休業と記載し、休業を開始する年月日を明記します。
また、給与の支払いがなくなる場合は、給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書も併せて提出します。 - 自治体(都道府県・市区町村)への届け出:都道府県税事務所および市区町村の役場に対しても、異動届出書を提出します。
この手続きが、前述した法人住民税の均等割の免除申請に直結するため、非常に重要です。自治体によっては独自の休業届フォーマットを用意している場合もあります。 - 年金事務所への届け出:役員報酬をゼロにする、あるいは従業員を解雇・退職させる場合は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格を喪失します。
健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届を年金事務所に提出し、社会保険料の請求を止めます。 - 労働基準監督署・ハローワークへの届け出:従業員を雇用していた場合は、労働基準監督署やハローワークにて労働保険や雇用保険の廃止手続きを行います。
休眠中に行うべき手続き(毎年の税務申告・役員の変更登記)
休眠期間中も会社法・税法上の義務は継続します。特に注意が必要なのが毎年の税務申告と役員変更登記です。
事業活動がなくても、決算期が来れば法人税や消費税、地方税の申告書を作成し、提出しなければなりません。
2年連続で期限内の申告を怠ると青色申告の承認が取り消され、将来事業を再開した際に過去の赤字(欠損金)を繰り越せなくなるなどの税務上の不利益が生じる可能性があります。
また、見落としやすいのが、役員の変更登記です。
株式会社の取締役の任期は原則2年ですが、非公開会社(譲渡制限会社)では定款の定めにより最長10年まで延長できます(監査役も同様)。
休眠中であっても役員の任期が満了した場合は、法務局で役員の重任(再任)や退任の変更登記を行う義務があります。
これを怠ると登記懈怠(とうきけたい)となり、代表者に対して100万円以下の過料(罰金に相当するもの)が科されるリスクがあるため、スケジュール管理を徹底してください。
会社を休眠から復活させる際の手続きと必要書類
状況が好転し、会社の事業を再開(復活)させる際の手続きは、休眠時と同様に各機関への届け出によって行います。
まず、税務署、都道府県税事務所、市区町村の役場に対して、再び異動届出書を提出します。
異動事項に事業再開と記載し、再開日を申告すると、税務上の手続きが復活します。
次に、役員に報酬を支払う場合や、従業員を新たに雇用する場合は、年金事務所に新規適用届を提出して社会保険に再加入します。
従業員を雇う場合は、労働基準監督署やハローワークへの労働保険・雇用保険の加入手続きも必要です。
会社を休眠させる際の注意点・デメリット
会社の休眠には多くのメリットがある一方で、放置することの法的なリスクや、根本的な問題解決にならないケースも存在します。以下の注意点とデメリットについて解説します。
最後の登記から12年経過すると「みなし解散」になるリスク
休眠の最大の注意点は、長期間放置することによるみなし解散のリスクです。
株式会社は、最後の登記(役員変更登記など)が行われた日から12年が経過すると、会社法上の休眠会社に該当します。
この状態になると、法務大臣から「事業を廃止していないなら届け出るように」という官報公告が行われます。
この公告から2ヶ月以内に、まだ事業を廃止していない旨の届け出や、必要な登記申請を行わないと、法務局の職権によって強制的にみなし解散の登記がされてしまいます。
みなし解散となると、会社は清算の目的の範囲内でしか存続できなくなり、通常の事業活動を再開できません。
知らないうちに解散状態になる事態を防ぐため、休眠中の登記管理は必須です。
借金がある会社は休眠ではなく「破産・清算」の検討を
「返済が苦しいので、一時的に会社を休眠させて当面を乗り切りたい」と考える経営者もいますが、休眠によって借金(債務)は消滅しません。
金融機関からの融資や取引先への買掛金、未払いの税金や社会保険料などがある状態で休眠しても、支払い義務はそのまま残ります。
債務整理や法人破産の手続きは複雑なため、早い段階で弁護士や税理士などの専門家への相談を検討してください。
休眠させずM&Aで会社を売却(売買)する選択肢もある
事業を継続できない場合、廃業や休眠を選ぶ前に検討したいのがM&A(企業の合併・買収)による会社の売却です。
休眠を検討するような事業を停止した法人であっても、M&Aで買い手がつく可能性があります。
特に、長年の業歴がある会社や、取得が難しい特定の許認可を保有している会社、過去にクリーンな税務申告を続けてきた会社などは、他企業にとって魅力的な買収対象です。
会社を売却できれば、休眠中の維持費用や廃業のコストがかからないだけでなく、経営者自身に創業者利益(売却益)が入る可能性もあります。
また、従業員の雇用や取引先との関係を維持できるケースも少なくありません。
まとめ:会社の休眠は放置厳禁。手続きや維持費を正しく理解して最適な選択を
会社の休眠は、廃業にかかる多大な手間と費用を節約しつつ、将来の事業再開に向けた選択肢を残せる有効な手段です。
各種役所への異動届出書の提出などを適切に行うと、法人税や消費税がかからず、均等割の免除を受けられる可能性もあります。
休眠はあくまで一時停止の手段であり、完全な放置が許されるわけではありません。M&Aによる売却も含め、自社にとって最適な選択肢を慎重に検討してください。
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