インターネットを駆使して業務を効率化させるSaaSは、現代の私たちの生活や働き方に大きな変化をもたらしました。最近でも、SaaS業界における成長率の上昇はとどまることを知りません。そのような中で、M&Aも活発に進められています。
今回の記事ではSaaS業界の動向やメリットを、M&Aを成功させるための ポイントについて解説します。
目次
SaaS(サース)とは?
SaaS(サース)は、「Software as a Service」の略称で、パソコンやスマートフォンにソフトウェアをダウンロードせずにインターネット上を通して利用するツールのことです。
サーバーやネットワークを利用するコンピューターの土台を提供する「IaaS」と、インターネット上でアプリやソフトウェアを動かす土台「Paas」と「Saas」の3つはクラウドサービスと呼ばれます。
IaaSやPaasのサービスには、Amazonが提供する「Amazon Web Services(AWS)」やGoogleの提供する「Google Cloud Platform(GCP)」などがあります。
SaaSのサービスは、ソフトウェア自体を指すため、「Gmail」や「Office365」などの3大クラウドサービスのソフトだけでなく、チャットオフィスやウェブ会議ツール等もSaaSの主要なツールです。
SaaS業界の動向
SaaS業界の最近の動向はどのようなものなのでしょうか?SaaSは新しい分野であるため、業界の動向は頻繁に変化していきます。
最近のSaaS業界の伸び率は15%以上の成長を見せており、今後さらに成長して大きな業界となることが予測されます。
SaaS系の企業によるスタートアップ企業による多額の資金調達や融資がされたり、株式上場が積極的に実施されている面からもその勢いは拡大していることがわかります。
国内ならずアメリカなどの海外でもSaaSの市場は活況的で、投資家から注目を集めています。今後は飲食や建築、旅行業界など、各業界に特化したSaaSの開発がさらに拡大していくでしょう。
SaaS業界のM&Aのポイント
SaaS業界でM&Aをする際には、しっかりとSaaS業界の動向を把握してから進めていくことが重要です。
SaaS業界に参入して事業を拡大していくためには、前提の条件として、その分野の専門知識を持った人材が必要です。その際に人材を採用して、育てるには長い時間がかかるでしょう。しかし、その技術を持っている企業、すなわち、その人材が所属する企業とのM&Aを成功させれば、大きな時間の短縮になります。
一般企業とSaaS企業のM&Aはもちろん、SaaS企業同士のM&Aが実施される事例もあります。理由は、同じSaaS業界通しでM&Aをすることで高い技術力を共有し、それぞれがまだ持っていない新たな技術を生み出せるからです。それができれば、大きなシナジー効果となります。
SaaS業界M&Aのメリット
次に、SaaS業界企業M&Aをするメリットについて、買い手企業と売り手企業、それぞれの目線から見てみましょう。
買い手企業のメリット
SaaSは、今までにはない革新的なサービスを提供しているスタートアップ企業なども多く、将来性が大きいのが特徴的です。これらを自社に取り入れ、革新的なアイディアの取得と、シナジー効果を狙う事例が多く見られます。
事実、IT企業とSaaS系のサービスを提供する企業の相性は良く、シナジー効果を発揮できることも多いでしょう。SaaS系の企業には、前述の通り、その技術に特化した人材も在籍します。そのような人材を獲得ことは大きなメリットです。
シナジー効果を生み出せれば、自社の弱点を補強・克服し、成長する時間も短縮できます。これにより、速やかSaaS市場へ参入できるでしょう。
売り手企業のメリット
スタートアップ企業の場合、M&Aで会社を譲渡することで、イグジットを果たすことができます。
イグジットとは、M&Aでの自社売却で、起業した際の資金を回収し、売却利益を得ることです。起業当初からイグジットを目的として会社を成長させる起業家もいます。
SaaSは比較的に新しい業界で成長率も大きいと予測されるため、そのような起業家にとっては大きなメリットとなります。
イグジットを目的としない通常のM&Aでも、後継者不足で会社を存続させられない場合などに倒産させることなく従業員の雇用を守ることもできます。
SaaS業界M&Aのデメリット
次にSaaS業界のM&Aデメリットについて考えてみます。
買い手企業のデメリット
まずは、買い手企業側のデメリットについて、そのデメリットは、想定していたシナジー効果が発揮されなかったり、自社の従業員と売手企業の従業員の折り合いが付かず、M&Aをしたのに逆に生産性が低下してしまう点にあります。
そうすると買収の支払い金額のみが嵩み、回収できないと言う問題が発生します。
さらに優秀な人材の獲得を目的にM&Aをしても、その人材が退職や転職などで流出してしまう可能性もあります。
この問題は、想定していたシナジー効果を生むことが難しくなり、M&Aをした意味が薄れてしまいます。そのならないためには、M&Aの実施前に売り手企業と話し合い、できる限り買収前と同じ待遇で向かえ入れる努力が必要でしょう。
売り手企業のデメリット
売り手企業のデメリットは、買い手企業のデメリット同様、M&Aに納得のいかない従業員が離職してしまう恐れがある点です。
その最大の理由としては、M&Aの譲渡以降に従業員の待遇が現在の待遇よりも悪化したり、労働環境が悪くなったりするためです。この問題を回避するためには、譲渡前に従業員一人一人に丁寧にM&Aについて説明するとともに、買い手企業とも従業員の待遇について十分に議論する必要があります。
また、売り手企業の社長自身のデメリットとして社長としての肩書がなくなるため喪失感に駆られる経営者も少なくありません。そのため譲渡後に退職した後何をやるかどうかあらかじめ考えておくと言う方法もあります。
SaaSの種類とそのM&A
次に、SaaSのソフトにはどのようなタイプがあるのかを見てみましょう。
- マーケティング・ソフトウェア
- データ解析
- 文書・プロセス管理
- Eコマース(EC)
- クラウドストレージ・システム管理
- 取引書類作成
- セキュリティソフト
- 勤怠管理
これらがSaaSの主要ソフトの一例です。1つずつ詳しく解説していきます。
*SaaS業界のM&Aについての記事はこちら
マーケティング・ソフトウェア
マーケティングソフトウェアはSaaSの中でも最も成長率の高い分野です。現在では、自社市場の分析や解析など、ほとんど企業がマーケティング力を求めています。そのような際に、M&AでSaaS系のマーケティングソフトウェアを扱う企業と力をあわせれば、大きなシナジー効果を生み出せるでしょう。
データ解析
データ解析のソフトウェアは、ビックデータを扱う企業や機会が増えたため、急速に必要となりました。
今後もその拡大が予測されるでしょう。そのため、データ解析ソフトウェアを扱うSaaS企業をM&Aで買収したいという企業も増えることが予測されます。
文書・プロセス管理
文書の処理や管理をしてくれるSaaS系のソフトウェアは、ビジネスにおいてとても重要と言えるでしょう。最近では、時間や場所にとらわれない働き方をする人や、それを推奨する企業も増えています。そのことからもこれらの文書管理やそのプロセスを管理するソフトが重要になってきます。
SaaS系のソフトウェアならこのような場合でもクラウド上でやり取りできるため、M&Aでも人気のある分野です。
Eコマース(EC)
ECサイトやオークションサイトなどのEコマースもSaaSの一種です。このジャンルの市場規模は、既に大きなものですが、クラウド上で商品の出品から支払い金の受領までを完結させられるSaaSは、今後もさらに拡大する傾向にあります。
クラウドストレージ・システム管理
近年、SaaS型のクラウドシステムが大きく普及しました。これまで、パソコンやスマートフォンのデータを保存するためには、HDDやSSDなどの外部装置を使用してきました。
このような企業をM&Aで買収・合併して自社のシステムをクラウド上で管理する事例も多く見られます。
取引書類作成
ビジネスの際には、見積書、納品書、請求書、領収書など、多くのの取引書類を作成します。
これまで、取引書類はexcelなどのオフィスソフトなどを使って作成していました。しかし、これらを1枚ずつ、1種類ずつ作成していくのはとても時間がかかります。このような場合に専用のソフトを使用して短時間で各書類を作成することができます。
SaaSソフトならクラウド上で作成した書類を違う書類に変換したり、すぐにメールなどで送信したりできるため、業務の効率化に大きく貢献します。
セキュリティソフト
セキュリティソフトを自社開発するためには多くの時間と費用、専門知識を持つ人材が必要です。セキュリティソフトはウイルスに侵されないように常に最新のものでなければなりません。
そのため、優秀な人材を確保して安定したSaaSのセキュリティサービスを構築する目的としても、M&Aの人気があります。
勤怠管理
勤怠管理は人の手で処理すると多くの手間と時間がかかります。SaaSならタイムカードも不要で、それぞれの従業員の勤務時間を毎月計算する手間も省けます。取引書類の作成と同様、業務の効率化に大きく貢献するでしょう。
SaaS業界のM&Aを成功させるためには、自社と相手企業の分析が不可欠
今回の記事では成長の著しいSaaS業界のM&Aについて業界の動向やM&Aをする際のメリットとポイントを解説しました。
SaaSビジネスのKPIについては、こちらの記事で詳しく解説されています。あわせてご確認ください。
参考:MRRって何?SaaSビジネスのKPI、重要指標について解説!|CSjob
SaaS業界のM&Aは、今後もしばらくは活発に実施されるでしょう。人気の分野であるため、M&Aを考える際にはM&Aのマッチングサイトに登録したり、仲介業者と契約して、自ら新しい情報を取得していく必要があります。
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