M&Aが一般化しつつある近年、WEBサイトの売買を目的としたM&Aが注目されています。
しかし、「WEBサイトM&Aってどんな取引なの?」「どんなメリット・デメリットがあるのかな?」とお考えの方も多いはず。
本記事では、WEBサイトM&Aの概要と、メリット・デメリット、成功のポイントを紹介します。
WEBサイトM&Aに興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
WEBサイトM&Aとは?
WEBサイトM&Aとは文字通り、WEBサイトを売却・買収する取引のこと。
会社の株式などを取引する通常のM&Aとは異なり、取引の主体がWEBサイトである点が特徴です。
インターネットやクラウドサービスが普及したことで、近年さまざまなWEBサイトM&Aがおこなわれています。
また、取引されるサイトの種類も多岐にわたり、ECサイトやアフィリエイトサイト、企業のオウンドメディアなども含まれます。
以前のWEBサイトM&Aといえば、GoogleがおこなったYouTubeの買収など、大企業間による取引が一般的でした。
しかし近年、WEBサイトM&Aを専門とするマッチングサービスや仲介会社が登場するなど、取引のハードルが下がっている傾向があります。
実際、個人が所有するWEBサイトを買収する事例もあるため、比較的身近な取引になりつつあります。
本章では、WEBサイトM&Aの概要として、主な取引手法と譲渡対象について紹介します。
WEBサイトM&Aにおける主な取引手法
WEBサイトM&Aに用いられる主な取引手法は、以下の2つです。
- 事業譲渡
- 株式譲渡
事業譲渡とは、企業が保有する特定またはすべての事業を切り出し、売却する手法です。
事業譲渡は、会社が保有する不動産や人材、在庫やノウハウなどを自由に選択して取引できるため、比較的自由度の高い手法といえます。
また、売り手側の法人格を残したまま、両者で取り決めた資産のみを移転できるため、WEBサイトM&Aでは最もオーソドックスな手法です。
買い手側としても自社が求める資産のみを買収できるため、コストを抑えつつM&A目標を達成できる点が魅力です。
2つ目の株式譲渡は、企業が保有する株式を売買し、会社の経営権を譲渡する手法。
事業譲渡とは異なり、会社全体を取引の対象としている点が特徴です。
株式譲渡は、特定の資産を売買するのではなく、株式の譲渡のみをおこなうため、取引にかかる手続きが容易な点が魅力です。
ただし、売り手側としては、大きなリターンの代わりに会社の経営権を失うため、実行においては株主や役員の承認が求められます。
WEBサイトM&Aの譲渡対象
事業譲渡による取引の場合、譲渡対象は売り手と買い手が話し合い、最終的な契約書に明記されることで決まります。
もちろん取引内容によっても異なりますが、一般的には以下の契約や権利が譲渡対象に含まれます。
権利義務 | 例 |
ドメイン・サーバーに関する権利義務 |
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プログラム・コンテンツの権利義務 | WEBサイト内のプログラム、コンテンツ、デザインの使用権や財産権 |
会員やユーザーに関する権利義務 |
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各種契約関連の権利義務 |
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そのほか | 従業員の雇用契約・ノウハウや技術 |
また、株式譲渡の場合は、会社が保有する全ての資産・権利・契約が取引対象に含まれます。
ひとえにWEBサイトM&Aといっても、取引手法によって譲渡対象が異なる点に注意が必要です。
WEBサイトM&Aのメリット
WEBサイトM&Aには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、売り手側・買い手側それぞれにおける、WEBサイトM&Aのメリットを紹介します。
【売り手側】WEBサイトM&Aのメリット
売り手側がWEBサイトM&Aをおこなうメリットは、以下の2つです。
- 事業の最適化を実現
- 譲渡利益の享受
1つ目のメリットは、事業の最適化を実現できることです。
事業として複数のWEBサイトを運営する会社にとって、収益性の低いサイトや不採算なサイトは事業の障害になりかせません。
WEBサイトを運営していくのにも、多くの時間・労力・コストがかかるため、こうしたWEBサイトを他の会社に譲渡するのは、経営戦略の1つとして有効な選択肢でしょう。
また、WEBサイトM&Aでサイトを譲渡することで、これまでかけていたリソースを主力事業に投入できるため、全社的に見ても、経営の最適化が期待できます。
2つ目のメリットは、WEBサイト売却による譲渡利益の享受です。
WEBサイトM&Aの価格相場は、月間売上高の20〜30ヶ月分が一般的とされています。
また、アクセス数やコンテンツ量・質などの価値を適正に評価されれば、さらに高額な取引になるケースも見られます。
これら多額のキャッシュを一度に獲得できる点は、WEBサイトM&Aの魅力と言えるでしょう。
【買い手側】WEBサイトM&Aのメリット
一方、買い手側がWEBサイトM&Aに取り組んだ場合、以下のメリットが期待できます。
- WEBサイト開設の期間やコストを短縮できる
- 節税対策
1つ目のメリットは、WEBサイト開設の期間やコストを大幅に短縮できることです。
仮にイチからWEBサイトを構築し、収益化まで持っていくには、ドメインやサーバーの用意、コンテンツ制作やセキュリティ対策など多くの時間とコストがかかります。
しかし、WEBサイトM&Aで、すでに一定の収益を上げているサイトを買収することで、これらの時間・コストを大幅に削減できるのです。
また、EC事業や自社ブランドの認知度向上を目的に、新規事業を立ち上げる場合でも、短期間で事業を開始できる点が大きな魅力です。
2つ目のメリットは、減価償却による節税効果が期待できることです。
WEBサイトの機能によっては、税務上、ソフトウェアと同じ扱いとなり、減価償却却期間が設けられます。
WEBサイトの買収金額を5年にわたって経費計上することで、会社の利益を抑え、法人税の節税効果が期待できます。
ただし、買収するWEBサイトがソフトウェアに該当しなければならないため、その点には注意が必要です。
WEBサイトM&Aのデメリット
WEBサイトM&Aにはメリットのみならず、デメリットも存在します。
本章では、売り手・買い手双方におけるデメリットを紹介します。
【売り手側】WEBサイトM&Aのデメリット
WEBサイトM&Aを行うデメリットには、以下のようなものが挙げられます。
- 税金がかかる
- 収入が少なくなる
- 競業禁止になる
1つ目のデメリットは、売却金額に対して税金がかかることです。
WEBサイトM&Aは一般的なM&Aと同様、個人なら所得税や個人事業税、消費税などが課せられます。
また、法人の場合は、売却益に対して法人税や消費税が発生します。
売却時の金額の20%ほどは税金で引かれるため、手元に残る売却益が少なくなる点に注意が必要です。
2つ目のデメリットは、事業の売却に伴い、一時的に収入が少なくなることです。
WEBサイトM&Aで事業を売却すると、それまで得ていた収入が見込めなくなります。
他の採算事業がある場合は問題ありませんが、WEBサイトに関連する事業のみの会社では、売上や収入が落ち込み、会社を存続できなくなる恐れがあるため、計画的にM&Aへ取り組むことが大切です。
3つ目のデメリットは、M&A直後にWEBサイト事業と関連する事業ができなくなる恐れがあることです。
会社法では買い手側の利益を守るため、M&A取引後の一定期間に競業を禁止する事項が定められています。
M&A契約を締結する際に、具体的な期間や事業範囲を取り決め、競業避止義務を設定するのです。
【買い手側】WEBサイトM&Aのデメリット
買い手側にとってのデメリットは、以下の2つが挙げられます。
- 買収後に手を加えにくい
- リスクやトラブルも引き継ぐ
1つ目のデメリットは、買収したサイトに手を加えにくいことです。
取引の段階である程度収益が上がっているサイトは、新たに手を加えるとかえって収益が落ち込む恐れがあります。
また、売却側独自のコンテンツやプログラムが使用されている場合、それを理解する人材も譲渡しないとその後の運営が困難でしょう。
そのため、M&Aを実行する際は、サイトの外部・内部を把握し、シナジーが期待できるサイトを選定することが大切です。
2つ目のデメリットは、リスクやトラブルを引き継ぐ可能性があることです。
M&Aでは、ユーザーによる損害賠償請求や外部サービスとのトラブルなど、事業の収益性に関わるリスクも承継されます。
場合によっては、取引後に想定していた収益を得られなくなる恐れがあるため、交渉やデューデリジェンスでこれらのリスクを明らかにしておくことが大切です。
WEBサイトM&Aを成功させるためのポイント
WEBサイトM&Aを成功させるには、以下3つのポイントが大切です。
- WEBサイトに関する必要情報を積極的に提供する
- コンテンツの権利所在を把握する
- 外部機関への報告を徹底する
ここでは、上記3つのポイントを順に紹介します。
WEBサイトに関する必要情報を積極的に提供する
売り手側としてWEBサイトM&Aに取り組む場合、候補企業への積極的な情報提供が重要です。
事業やWEBサイトに関する情報を積極的に提示することで、買い手側はシナジー効果の有無や価値を評価しやすくなるためです。
また、自社事業の魅力だけでなく、顕在的・潜在的なリスクを伝えることで、取引後のトラブルを回避できるでしょう。
万が一、情報開示を怠って買い手企業に不利益をもたらすと、損害賠償責任や補償責任を課せられる恐れもあるため、売り手側は積極的な情報開示が求められます。
コンテンツの権利所在を把握する
WEBサイトM&Aでは、コンテンツやデザイン・プログラムなどをまとめて承継します。
この時注意したいのが、各コンテンツの権利所在です。
外部のライターやエンジニア、デザイナーが作成したコンテンツの場合、著作権や使用権が必ずしも自社にあるとは限りません。
権利の所在によっては、一部のコンテンツを承継できない恐れがあるため、あらかじめ権利所在を把握しておくと良いでしょう。
外部機関への報告を徹底する
WEBサイトのサーバーやドメイン、セキュリティ対策は、外部機関を利用するケースが多く見られます。
ただ、M&A後は、契約者が自社から買い手側に移転するため、その旨を外部機関へ報告する必要があります。
また、交渉段階で買い手側に対し、契約内容や条件を共有し、その後のトラブルを回避すると良いでしょう。
専門家のサポートのもとWEBサイトM&Aを成功させよう
本記事では、WEBサイトM&Aの概要と、メリット・デメリット、成功のポイントを紹介しました。
M&Aが一般化しつつある近年では、企業のみならず個人間のWEBサイトM&Aも多数行われています。
しかし、M&Aを成功させるには、以下のポイントが重要です。
- WEBサイトに関する必要情報を積極的に提供する
- コンテンツの権利所在を把握する
- 外部機関への報告を徹底する
また、交渉や取引では専門的な知識が求められるため、不安な方は、M&A仲介会社などのサポートを受けるとよいでしょう。