ベンチャー企業とは、設立から間もないものの革新的な技術や先進性の高いサービスを提供している企業を指します。
この記事では、ベンチャー企業が資金を調達する場合にどのような方法があるのか、それぞれの選択肢の特徴について解説します。
目次
- 1 なぜベンチャー企業にとっての資金調達が必要なのか
- 2 資金調達の方法1.融資
- 3 日本政策金融公庫の新創業融資
- 4 銀行融資
- 5 信用保証協会の融資
- 6 資金調達の方法2.出資
- 7 ベンチャーキャピタル
- 8 エンジェル投資家
- 9 資金調達の方法3.その他
- 10 クラウドファンディング
- 11 助成金・補助金
- 12 社債
- 13 ファクタリング
- 14 資金調達の注意点
- 15 出資者が経営に介入する場合がある
- 16 融資を受けたら返済する必要がある
- 17 時間がかかる場合がある
- 18 資金調達を成功させるポイント
- 19 資金調達計画を立てる
- 20 投資契約書の作成には弁護士に相談する
- 21 信用を得る
- 22 企業規模に合った金融機関を選ぶ
- 23 資金調達の目的や調達金額を明確にする
- 24 資金調達は、信頼できる専門家に相談しよう
なぜベンチャー企業にとっての資金調達が必要なのか
新規事業を育成しているベンチャー企業は、アイディアがあっても資金が足りないという状況に陥りがちです。
しかし、資金調達は事業の成長を左右し、いかにスピード感を持ってビジネスを展開できるかがカギとなります。
安定的な資金調達が可能になれば、スピーディーに事業を展開し、新規事業を育てることにつながります。
したがって、資金調達によって資金に余裕があることはベンチャー企業にとって非常に重要であると言えます。
資金調達の方法1.融資
「融資」というと何となく聞いたことはあっても「よくわからない」という方も多いのではないでしょうか。
融資とは銀行などの金融機関からお金を借りることを意味します。
融資は企業が資金を調達する上で最も伝統的な手法であり、上場・非上場、大手・中小企業を問わず広く活用されています。
融資を活用することで事業の成長期に自己負担額を軽減することができます。
一方であくまで金融機関からの借入ですので、元金に利息をつけて返済する義務があります。
日本政策金融公庫の新創業融資
ベンチャー企業におすすめの融資の手法の一つに日本政策金融公庫の「新創業融資」という融資制度があります。
日本政策金融公庫は政府系の金融機関であり、日本政府が100%出資しています。
新創業融資は事業を創業して間もない経営者向けの融資であり、無担保・無保証で最大3,000万円(うち運転資金1,500万円)の融資を受けることができます。
日本政策金融公庫が中小企業やベンチャー企業の支援を目的に設立されているため、民間の金融機関よりも低金利かつ返済期間も長く、審査にも通りやすいというメリットがあります。
審査項目が複数あり、面談も必要ですが、順調に進めば、最短2週間で資金調達が可能です。
ベンチャー企業が最初に検討すべき融資と言えるでしょう。
銀行融資
銀行融資はプロパー融資とも呼ばれ、メガバンクや地方銀行などの民間の金融機関からの資金を借り受けて資金調達する方法です。
業種や規模を問わず多くの企業で活用されている資金調達方法であり、融資額が政府系の金融機関よりも大きいので、必要な額の資金を獲得することができます。
しかし、民間の金融機関は自社の利益を追求するため借入金が確実に返済されることを重視します。
創業したばかりのベンチャー企業は実績が少なく、一定の実績や経営者の信用がなければ融資審査に通りにくいのが現実です。
また、融資を受ける場合は利息を返済する必要がありますが、政府系の金融機関よりも利率が高いので、資金調達後の負担となる可能性があります。
信用保証協会の融資
信用保証協会とは信用保証協会法を基に設立されている公的機関であり、中小企業の資金調達を支援しています。
日本全国のすべての都道府県にあるので気軽に相談することができます。
信用保証協会の融資は制度融資と呼ばれ、プロパー融資を受けられない企業が信用保証協会に保証料を支払って、万が一返済できないときに金額の80%を返済するという保証をしてもらい、融資を受ける方法です。
プロパー融資と比較して、事業を立ち上げたばかりで実績が少ない場合でも制度融資を活用することで資金調達ができる場合があります。
形式的には信用保証協会に依頼し、保証してもらうことになっていますが、実務上は金融機関に紹介されて、信用保証協会の保証を受けることが多いようです。
資金調達の方法2.出資
出資はエクイティファイナンスとも呼ばれる資金調達方法です。
ベンチャー企業やその事業の成長に期待する投資家に株式を交付して、資金を集める方法です。
融資と異なり、返済義務がなく、負債ではなく資本金が増えるため、財務状況が改善され、信用度が向上します。
出資はベンチャー企業に人気の資金調達方法と言えるでしょう。
ベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタル(VC)とは高い成長が予想される未上場のベンチャー企業やスタートアップ企業に出資する投資ファンドです。
出資した企業が上場(IPO)した後に保有している株式を売却することによってキャピタルゲインを得ることを目的としています。
ベンチャーキャピタルの出資を受けることによって、経営についてアドバイスがもらえる・ベンチャーキャピタルのネットワークを活用して取引先を開拓することができます。
上場を目指しているベンチャー企業にとって、ベンチャーキャピタルは有力な候補です。
しかし、出資を受けることによって経営への影響力が増し、干渉を受けるという懸念もあります。
エンジェル投資家
エンジェル投資家とは、将来成長が見込めそうなものの創業まもなく資金調達手段が限られているベンチャー企業を支援する個人投資家のことです。
起業を経験し、事業を売却後にエンジェル投資家になる人や実際に事業を経営している人も多く、アイデアや計画次第では出資を受けることができます。
資金を出資するだけではなく、エンジェル投資家の経営経験を活かした経営のアドバイスをもらうことやネットワークを活用して取引先を紹介してくれることもあります。
エンジェル投資家もベンチャーキャピタル同様に上場後に株式を売却して、キャピタルゲインの獲得を狙います。
資金調達の方法3.その他
ベンチャー企業の資金調達方法の代表的なものは、融資や出資です。
しかし、それ以外にもいくつか資金調達方法は存在しており、選択肢は多くあります。
ここでは、クラウドファンディング、助成金・補助金、社債、ファクタリングを解説します。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて事業やアイデアに共感した不特定多数の人から少額ずつ資金調達をする方法です。
融資や出資と比較すると調達できる金額は少なくなりますが、クラウドファンディングで資金調達に成功し、事業が軌道に乗った例もあります。
融資のように厳しい審査も不要で、手軽に資金を集めることができます。
インターネットを通じて多くの人に企業を認知してもらうきっかけにもなるため、魅力的な選択肢です。
しかし、資金調達に成功するためには人々の注目を集める面白いアイデアや社会問題を解決するビジネスモデルが必要となりますので、簡単な手法ではありません。
助成金・補助金
補助金や助成金は国や地方自治体、その他の公的機関が提供している制度を活用して資金を調達する方法です。
銀行融資と異なり、返済の必要がないためベンチャー企業でも利用ハードルが低い点が特徴と言えます。
ベンチャー企業や中小企業を支援する目的で創設された制度もあり、基準さえ満たせば支援を受けられるので、有力な選択肢です。
しかし、種類にもよりますが、申請の手続には準備が必要であり、時間もかかります。
また、申請してから受給するまでに1年程度かかる場合もあります。
そのため、早急に資金が必要な場合には不向きです。
社債
社債は債券の一種であり、企業が資金調達のために発行します。
株式による資金調達と異なり、社債権者には経営への参加権がないため、経営に干渉されずに資金調達が出来るのは大きなメリットです。
また、融資の利子よりも金利が低く、資金調達後の負担も少なく済みます。
一方で社債は負債ですので、財務状況が悪化するほか、社債権者に金利を支払う必要があります。
ファクタリング
ファクタリングは売掛債権を買ってもらうことで資金調達をする方法です。
一般的な取引方法として商品を販売した後に入金を待ちますが、期日通りに振込がされない場合は資金繰りに窮することがあります。
しかし、ファクタリングを活用すれば売掛債権を現金化して資金繰りの改善が期待できます。
緊急に資金が必要な場合には融資や出資では間に合いませんが、ファクタリングであれば、最短で即日に審査・振込がされます。
一方で売掛債権の額面以上の資金調達はできないため、必要資金分を満たせない場合があります。
おすすめファクタリングサービスについては、こちらの記事で詳しく解説されています。あわせてご確認ください。
参考:【ガチ検証】即日入金してくれる審査が早いおすすめファクタリングサービス!個人事業主や少額でもオンラインでOK | 専門家の相談室
資金調達の注意点
次に、資金調達の際の注意点について解説します。
出資者が経営に介入する場合がある
投資家やファンドに出資してもらった際には、出資者の執行に沿った経営をしなければならないことがあります。また、出資者がその後の経営に介入してくることが考えられます。
出資者との意見が対立してしまうと企業の運営がうまくいかなくなることも考えられるでしょう。
そのため、出資による資金調達は経営方針を変更しなければならないということを視野に入れておく必要があります。
融資を受けたら返済する必要がある
銀行などの金融機関からの融資を受けて資金を調達した際には、当然ですが利子を乗せた金額での返済義務があります。
融資を受けたあとに返済できない事態にならないよう、入念な返済計画を立てた上で融資を受けることが重要です。
時間がかかる場合がある
助成金や補助金などで資金を調達した場合、面接や面談、書類審査など多くの工程があります。
これらを全て完了した後に、資金が手元に来ることになります。そのため、出資や融資と比べて、時間がかかることが考えられます。
すぐに資金を必要としている場合には注意が必要です。
資金調達を成功させるポイント
最後に資金調達時のポイントについて紹介します。
資金調達はベンチャー企業にとって不可欠であると同時に、気をつけるべきポイントもあります。これらを知ることで、不必要なトラブルや問題を回避しましょう。
資金調達計画を立てる
資金調達前の必ず資金調達計画を立てましょう。
具体的には、資金調達までに必要な期間や掛かる手数料、資金調達できる見込額、資金調達が経営権に及ぼす影響などです。
資金調達の失敗例として、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資に会社の経営権を握られてしまった・融資の審査や出資の手続きに時間がかかり必要な時までに資金調達ができない、ということがあります。
このような資金調達の失敗を未然に防ぐために、事業計画を立案し、計画的に資金調達をすることが重要です。
投資契約書の作成には弁護士に相談する
投資契約書とは、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルから出資を受けることが決まった場合に締結する文書です。
出資側が準備した契約書を経営者が確認することになりますが、経営者側に財務や法務の知識がないと不利な契約を強要されることも。
出資は、ベンチャー企業のように創業から間もない場合でも、手軽に資金調達できるというメリットがあります。
一方で、最悪の場合は会社の経営権を奪われる・経営に過度に干渉されることになります。
透視契約書を締結する場合は投資契約書のレビューの経験が豊富な弁護士などの法律の専門家に相談し、内容をチェックしてもらいましょう。
信用を得る
資金の調達を成功させるためには、融資してくれる金融機関や投資してくれる投資家など、相手から信用を得る必要があります。
このとき、株式の信用によって対外的な信用を得ることができます。
相手方にとって魅力的である企業と認知してもらうためには、経営方針や戦略・事業内容を明確にして魅力のあるものにする必要があるでしょう。
企業規模に合った金融機関を選ぶ
融資により資金を調達する際には、自社の企業規模に合う金額と金融機関を選択することが重要です。
小規模の企業に大きな金額を融資してくれる金融機関はありません。そしてなにより、自社の身の丈にあっていない大きな金額を返済することは経営を圧迫しかねません。
そのため、自社に合う金額と金融機関に決める必要があります。
資金調達の目的や調達金額を明確にする
なぜ資金を調達するのか、目的や金額を明確にしましょう。
何のためにいくら必要なのか具体的に考えることで、本当に必要な金額や返済期間も明確化します。
購入したい資材の金額やこれを購入したことで見込める売上げなど、なるべく具体的に考えることがポイントです。
資金調達は、信頼できる専門家に相談しよう
今回の記事では、ベンチャー企業の資金調達方法や注意点・ポイントについて解説しました。
創業からまもなく、実績の少ないベンチャー企業であっても資金調達することは可能です。資金調達方法を活用して、資金繰りの安定を目指しましょう。
しかし、資金調達に関して知識の浅い経営者の場合は、資金調達を活用することに躊躇してしまうこともあると思います。
その場合は、信頼できる専門家に相談することがおすすめです。
パラダイムシフトは、IT領域に特化しM&Aの専門業者です。
2011年の設立以来、豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。M&Aに精通している仲介会社を利用すると、安心してM&Aを成功させることが出来ますので、是非ご検討ください。
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