昨今、運送業界ではドライバーの長時間労働などが問題視されていたのをご存知でしょうか?
しかし、2024年の3月から施行される働き方改革関連法でドライバーの労働時間が規制されます。これにより運送業界や配送業界に様々な問題が浮き彫りになっており、2024年問題と呼ばれています。
今回の記事では、運送業界における2024年問題に触れ、今後どのように変化改善していくべきかを解説しています。
目次
- 1 運送業界の今後
- 2 業界そのものがなくなることはない
- 3 ネット販売で輸送量はさらに増加
- 4 ドライバー問題
- 5 AIやロボットの導入
- 6 運送業界が抱える2024年問題とは?
- 7 年間時間外労働時間の上限の設定
- 8 改正改善における基準告示
- 9 2024年問題における運送業界の懸念
- 10 運送業・輸送業の売上減少
- 11 ドライバーの収入減少と人材不足
- 12 運送業界の売上利益減少
- 13 荷主への影響
- 14 2024年問題における今後の改善策
- 15 運送業界ができる改善策
- 16 荷待ち時間の改善
- 17 手作業をなくす
- 18 リードタイムと物流コストの適正化
- 19 消費者ができる改善策
- 20 再配達をなくす
- 21 まとめ買いをする
- 22 運送業界の今後の取り組み
- 23 XDの導入
- 24 政府機関の対応
- 25 M&Aなど事業形態の変更も検討
- 26 運送業界は今後も発展、現在は大きな変化を遂げるとき
運送業界の今後
まずは、運送業界が今後どうなっていくのか、予測できる近い未来について解説します。
業界そのものがなくなることはない
運送業界の全体に関して、前提としてこの業界がなくなることはありません。理由は、私達の生活上、必要な物資などすべてを自分だけで運ぶのは不可能であるためです。
AIやDXなどで業界が脅かされ、例えこれらが進出し、物資を運ぶのが人間でなくなったとしても、業界自体そのものが無くなることはありません。
しかし、テクノロジーの進出により大きな変化が訪れる可能性が高いでしょう。
ネット販売で輸送量はさらに増加
輸送量に関して言えば、今後さらに増大することは明白です。近年はインターネットショッピング・通販の市場が急激に成長し輸送量は増大しており、インターネットショッピング・通販なしでは生活できない人もたくさんいます。
これに対して、運送業界の人員は確保できておらず、早急な対策が必要です。
ドライバー問題
輸送量が増大する中で、ドライバー不足とドライバーの高齢化が問題視されています。
若い世代では、平均給与の低さから輸送業で働きたいと考える人が少なく、働き世代である20代から30代の人材をどのように確保するかが大きな課題となっています。このように若い働き世代が少ないことからドライバーの平均年齢が上がり高齢化が浮き彫りになっています。
AIやロボットの導入
運送業界では、人材不足とドライバーの高齢化の対策としてAIやロボットを導入しています。倉庫作業やトラックの運転でのロボット導入や、ドローンを使った配送などこれまでになかった新たなビジネスモデルも続々と登場しています。
これらが今後普及されていけば、今までとは異なる業界体制となりうるかもしれません。
運送業界が抱える2024年問題とは?
次に運送業界が抱える2024年問題について詳しく解説します。
2024年問題とは、2019年4月に施行された働き方改革関連法によって発生する問題です。2024年4月から適用されるため、多くの業界で2024年問題と呼ばれています。運送業界での2024年問題は以下の2つです。
- 年間時間外労働時間の上限の設定
- 改正改善における基準告示
年間時間外労働時間の上限の設定
1つ目は、自動車運転を伴う業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に設定されていることです。2024年3月まで、運送業界ではこの設定が猶予されていましたが、2024年4月からは運送業界でも適用されます。さらに、月60時間を超えた場合の時間外労働の賃金は従来の25%から50%に引き上げられます。
自動車運転者以外の年間時間外労働時間の上限は720時間ですが、将来的には自動車運転者の上限も同じく720時間以内になると言われており、さらなる仕組みの改善が求められています。
改正改善における基準告示
2つ目は、自動車運転者の連続運転時間、休憩時間、労働時間などにおいて改正改善における新たな基準が告示されていることです。ここではその一部を紹介します。
時間の種類 | 新たな基準 |
拘束時間 | 年間の総拘束時間が3,300時間、1カ月の拘束時間284時間を超えない。 1日の拘束時間は15時間まで。 |
休息時間 | 労働時間継続9時間を下回らない |
連続運転時間 | 連続運転時間は4時間を超えない |
※例外あり
運送業界ではこれにより様々な諸問題が発生しますが、合わせてドライバー一人一人の労働環境は改善されることが予測されます。
2024年問題における運送業界の懸念
2024年問題における運送業界の問題にはどのようなものがあるのでしょうか。この章では以下の4つについて解説します。
- 運送業・輸送業の売上減少
- ドライバーの収入減少と人材不足
- 運送業界の売上利益減少
- 荷主への影響
運送業・輸送業の売上減少
2024年問題における法改正によりドライバーの稼働時間は著しく減少し、これにより配送能力も低下することになります。さらに時間外労働の賃金が引き上げられることにより人件費も上昇、利益率を圧迫することとなります。
2024年問題は輸送業や配送業に深刻な影響を及ぼすと言っても過言ではありません。
ドライバーの収入減少と人材不足
元々運送業界は拘束時間と労働時間が他の業種に比べて長いことが問題視されていました。しかし、働き方改革関連法が施工されることでドライバーの稼働時間が少なくなり、長時間労働分の収入がなくなるため、ドライバーの収入が低くなることが考えられます。
これにより運送業界の離職が増えたり、新たな人材確保がさらに難しくなったりするでしょう。
運送業界の売上利益減少
ドライバーの労働時間が減少すると配達量も少なくなり売上利益が減少します。しかし、中小企業では月60時間を超えた時間外労働の賃金が25%から50%に上がるため、ドライバーの対価は上がることになります。
荷主への影響
2024年問題はドライバーだけでなく荷主への影響も考えられます。
ドライバーの稼働時間減少と人手不足により全体の配送能力は低下します。運送会社は売上確保のため輸送料を値上げする流れとなりますが、これにより商品の配送コストが上がり荷主の利益率が低下することが考えられます。
さらには、配送能力の低下により顧客満足度の低下や売上機会の損失を招くことも考えられるでしょう。
2024年問題における今後の改善策
ではこの2024年問題においての改善策はどのようなものがあるのでしょうか。運送業界と消費者それぞれの目線で見てみましょう。
運送業界ができる改善策
- 荷待ち時間の改善
- 手作業をなくす
- リードタイムと物流コストの適正化
運送業界ができる改善策には以上のものがあります。
荷待ち時間の改善
荷待ち時間とは、荷主が荷物の積み下ろしをする際にドライバーが待機している時間のことです。荷待ち時間は、ドライバー自身でコントロールすることが難しく、長時間労働の最大の原因となっています。現在は、これを改善するために予約システムの導入や積荷役の増員など業務の効率化が進みつつあります。
手作業をなくす
運送会社の積荷作業は、荷物を傷つけないように手作業でおこなわれます。この作業をパレット化することで手作業の割合が少なくなり作業が効率化されます。パレットでの積荷作業はDXとの相性も良く、待ち時間の削減や負担の軽減につながるでしょう。
リードタイムと物流コストの適正化
商品の発注から到着までの日数をリードタイムと言いますが、このリードタイムを短く設定した販売方法は積載に空きを生む結果となり、配送者の無理な労働に繋がる可能性があります。そのため、適正なリードタイムを設定して、ドライバーが安全で効率的に輸送できるような仕組みをつくらなければなりません。
物流コストの適正化については、近年は配送物量の増加とともに配送料を抑える傾向にありますが、この流れにのらずに適正な送料を設定してドライバーの労働環境を整える必要があります。
消費者ができる改善策
- 再配達をなくす
- まとめ買いをする
消費者ができる改善策には以上のものがあります。
再配達をなくす
宅配便の個数はここ数年で大きく倍増しています。これに伴い再配達の割合も上昇しており、配送業者の労働時間を増加させる原因の一つとなっています。消費者一人一人が再配達をなくすよう意識することで配送業者の負担を軽減できるでしょう。
配送時に配送時間を指定したり、配送業者のWebサイトから配送の曜日や時間をあらかじめ指定したりすることをおすすめします。
まとめ買いをする
インターネットショッピング・通販をする際には、なるべくまとめ買いをして配送の回数を抑えるよう心がけてみましょう。企業内で備品を発注する際にはコスト削減のためにも、配送のタイミングを考えてみることをおすすめします。
そうすることで、配送する回数を減らし配送会社の負担軽減になります。
運送業界の今後の取り組み
最後に、運送業界の問題を改善するためにすべき今後の取り組みについて解説します。
XDの導入
運送業界における長時間労働改善のため重要なことはXDの導入です。例えば、車両管理や予約受付、積荷の管理などでITシステムを導入することで人の手を返さず業務を進めることができ、ドライバーが長時間労働をせずとも配送能力を下げずにサービスを提供することにつながります。
政府機関の対応
今回の労働基準改正や他にも燃料の高騰などを運賃に反映できれば、運送業界の売上維持にもつながります。しかし、その都度の荷主と交渉するのは難しいのが現実です。
そこで、経済産業省は価格交渉が実施されることの多い3月と9月を価格交渉推進月間として、下請中小企業振興法に基づいて助言や指導の実施を検討しています。
価格交渉に応じない荷主に対して政府機関が介入することにより、交渉が成立しやすくするのが狙いです。荷主との運賃交渉が実現すれば、従業員の賃金を維持して運送会社の負担を軽減することができるのでしょう。
M&Aなど事業形態の変更も検討
様々な手を打っても問題が解決しない場合には、M&Aなどで事業形態の変更を検討することも視野に入れましょう。これにより人材の確保や労働条件の改善に効果的です。
M&Aを実施する際には、M&AアドバイザリーやM&A仲介業者など、専門知識を持つ業者へ依頼する流れになります。
運送業界は今後も発展、現在は大きな変化を遂げるとき
今回の記事では運送業界の今後について問題視されている事柄、とりわけ2024年問題について解説しました。
運送業界では、ドライバーの長時間労働が問題となっており、これを改善するために様々な仕組みを変えていく必要があります。特にAIやDXなどITシステムを導入して改善することが重要です。
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