会社の業績が芳しくない場合に、事業の継続を諦めるという選択肢があり、これを倒産や破産と呼びます。
倒産=会社及び事業がなくなるということはわかっていても、実際の倒産の流れや手続きについてはよくわからないという方も多いと思います。
この記事では、倒産の概要や倒産を選択した後はどうなるのか、その場合の手続きや必要な費用などについて解説します。
目次
- 1 倒産とは?
- 2 倒産という用語
- 3 倒産と破産の違い
- 4 会社が倒産・破産したその後
- 5 会社がなくなる
- 6 業界に影響することがある
- 7 従業員の仕事がなくなる
- 8 社長の個人資産がなくなる可能性がある
- 9 会社の倒産(破産)手続きをする流れ
- 10 1.弁護士などに法律相談
- 11 2.債権者に破産通知
- 12 3.従業員の解雇
- 13 4.裁判所に破産申立
- 14 5.破産手続開始決定
- 15 6.資産の換価
- 16 7.債権者への説明
- 17 8.債権者への配当
- 18 倒産(破産)手続きの費用
- 19 弁護士費用
- 20 裁判所費用
- 21 会社が倒産(破産)した後に受ける社長のペナルティー
- 22 自己破産が周知される
- 23 信用情報機関に登録される
- 24 倒産(破産)手続きを確認して、新しいスタートを
倒産とは?
「倒産」という言葉は一般的によく使われる言葉であり、新聞やニュースでも頻繁に登場しますが、実は正式・法的な定義はありません。
1952年に東京商工リサーチが発表した「全国倒産動向」のレポートにおいて、初めて使い始めたことで一般的になりました。
一般的には業績が悪化し、会社の債務が返済できず、事業継続が困難であるため、企業活動を廃止する場合に使われています。
倒産という用語
倒産とは会社の業績が悪化して、債務の返済が困難になったり、事業活動を続けることが難しくなったりした状態を指します。
倒産には法的倒産と私的倒産があり、法的倒産には、会社更生法や民事再生法を申請する「再建型」と、破産や特別清算などの「清算型」があります。
倒産に至る理由は様々ですが、最も代表的な要因は、不渡手形を出して銀行取引停止処分を受けた場合です。2回の不渡りを出すと銀行取引が停止され、融資を受けて資金調達を受けたり、新しく手形を発行したりすることができなくなります。
また、事業の継続に必要な人員が集められなかったり、資金などの必要な経営資源が欠落したりして、倒産に至るケースがあります。
このような場合にはいずれも事業の継続が困難になり、倒産に至ることが多いようです。
倒産と破産の違い
倒産と破産はよく混同される言葉ですが、明確な違いがあります。
結論から言えば、破産は倒産の一種です。倒産には、会社更生法や民事再生法の適用を申請する「再建型」と破産・特別清算などの「清算型」があります。
つまり、倒産という手続きには破産、特別清算、民事再生、会社更生、特定調停、私的整理などの方法があり、破産は倒産の手段の一つです。
債務超過などによって事業の継続的な運営が困難になった場合には、破産手続きをすることによって、会社が負っていた負債が免除されます。
その代わりに現在保有している財産や事業をすべて清算することになり、会社の財産や事業は破産管財人によって、会社の債権者に公平に分配されます。
会社が倒産・破産したその後
会社が倒産・破産したあとその後、実際にどうなるのかわからない、想像ができないという方も多いのではないでしょうか?まず、前提として以下のことが起こります。
- 会社がなくなる
- 業界に影響することがある
- 従業員の仕事がなくなる
- 社長の個人資産がなくなる可能性がある
一つずつ詳しく見ていきましょう。
会社がなくなる
会社が破産・倒産すると、会社はなくなります。
まずは、会社(法人)の破産手続きが開始されて、これが完了に至ると、該当する会社の法人格は消滅します。さらに、開業の際に登録した商業登記も、破産手続きにより廃止したことが記されて閉鎖されます。
業界に影響することがある
会社が破産・倒産した場合、仕入先など取引に関係する会社に少なからず影響するでしょう。
例えば、なんらかの製品を生産する会社であったなら、その製品を仕入れて販売していた会社が、その製品を販売できなくなります。また、その製品を生産するために材料や部品などを仕入れていた会社があったなら、その仕入れがなくなったことにより業績が悪化してしまうかもしれません。
その製品のシェア率が大きければ尚更です。場合によってはその業界自体に大きな影響を与えてしまうこともあるでしょう。
従業員の仕事がなくなる
会社の破産手続きを完了させるためには、従業員の解雇手続きが必ず必要です。
会社がなくなってしまった場合、従業員の仕事はなくなり露頭に迷うこととなります。しかし、財団債権や解雇予告手当など、会社が倒産してから一定の期間は従業員が生活難にならないような制度が整っています。
さらに、会社が倒産した場合は会社都合での退職となるため、失業保険の面で通常の退職よりも優遇されるでしょう。
しかし、従業員の仕事がなくなってしまい、迷惑をかけてしまうことに変わりはありません。そのため、会社を破産・倒産を決定したときには、できるだけ早く、誠意を持って会社の状況や倒産する旨を説明するようにしましょう。
社長の個人資産がなくなる可能性がある
会社を倒産させた多くの場合、社長自らも自己破産する必要があります。それは、たとえ会社の倒産であったとしても社長個人が会社の資金繰りのために融資を受けていることが多いためです。
会社が倒産したことにより、これらの個人名義で借入れした融資の返済も滞ってしまうでしょう。ここで自己破産すれば、社長個人の債務における返済義務もなくなるのです。
しかし、自己破産した場合、預金だけでなく、土地や建物、家具など20万円を超える資産は裁判所が選任した破産管財人に処分されます。
社長はその後、賃貸物件で生活することになる他、一部の職業に就けないなどの制限があります。
会社の倒産(破産)手続きをする流れ
ここからは会社の破産手続きの流れについて解説します。手続きのポイントについても合わせて説明するので確認しましょう。
主な手続きは以下の通りです。
- 弁護士などに法律相談
- 債権者に破産通知
- 従業員の解雇
- 裁判所に破産申立
- 破産手続開始決定
- 資産の換価
- 債権者への説明
- 債権者への配当
これら全ての手続きに短くても5ヶ月程度、長い場合は10ヶ月程度かかります。
それぞれの手続きについて具体的に見てみましょう。
1.弁護士などに法律相談
倒産手続きの最初のステップは、弁護士への法律相談です。事業の継続が困難になり、倒産すべきかどうか迷ったら弁護士に相談に行きましょう。
まずは弁護士へ、倒産にあたって不安なことや疑問点を聞きましょう。
「倒産手続きはどのように進むのか」「従業員や取引先にどのように説明すればいいのか」など、疑問に思うことがあると思います。
倒産の手続きにあたっては、多くの必要書類があります。代表的な書類には以下のものがあります。
- 会社の全部事項証明書
- 貸借対照表・損益計算書
- 清算貸借対照表、確定申告書
- 従業員名簿、賃金台帳
- 不動産の全部事項証明書
- 賃貸借契約書
- 預金通帳・取引明細書(2年分)
- 車検証、売掛金や未収入金の明細
- 自動車の価格査定書
- 株式・投資信託の明細
- 保険証書・証書
- 保険の解約返戻金証明書
これらの書類は弁護士が作成してくれるものと自分で用意するものがあるので、弁護士の指示に従って提出しましょう。
2.債権者に破産通知
弁護士は倒産手続きの依頼を受けると、会社の代理人となり、債権者に対して「受任通知」を送付します。
受任通知の送付によって、債権者からの支払い請求がストップし、債務から解放されます。
また、これ以降は弁護士が代理人として債権者との連絡の窓口となるので、債権者と直接連絡を取ることがなくなります。
これによって債権者への対応から解放されるので、会社の負担は大きく減ることになりますので、多くの経営者がホッとするようです。
また、無用なトラブルを避けるため、弁護士に無断で債権者と勝手に連絡を取ることは避けましょう。
3.従業員の解雇
会社が破産する場合に経営者にとって気がかりなのは、従業員の処遇だと思います。
結論から言えば、会社や事業そのものがなくなるので、従業員に解雇通知をし、従業員は仕事を失うことになります。
この場合の従業員とは、正社員、パート、アルバイト、嘱託職員など全ての従業員が対象となります。
従業員に対しては説明会などを実施し、倒産の決定や解雇の事実、給与の扱い、雇用保険や社会保険の手続きについて説明します。特に、給与については労働基準法に定めがありますので、丁寧に説明しましょう。
具体的には、労働基準法20条によって、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当の支払い義務が発生します。
4.裁判所に破産申立
倒産手続きにあたっては、作成した必要書類や添付書類を揃えて、裁判所に破産の申立をする必要があります。
破産申立に必要な書類には、例として以下のようなものがあります。
- 破産手続開始申立書
- 債権者一覧表
- 債務者の一覧表
- 委任状
- 財産目録
- 報告書
- 取締役会議事録
なお、これらの書類のうち、ほとんどは弁護士が作成して代理人として提出しますので、基本的には弁護士に任せておけば問題ありません。
また、会社の経営者が直接裁判所に赴いて申立をする必要はなく、弁護士が行います。裁判所は、記録をもとに要件を満たしているかを確認して、破産手続開始決定・特別清算開始の命令を下します。
5.破産手続開始決定
裁判所が破産申立を認めた場合は、破産手続きが開始され、破産開始の決定が官報に掲載されます。
具体的には、破産手続きを進める破産管財人を決定します。
破産管財人は、会社と無関係の第三者の弁護士が選ばれます。
破産管財人は、破産法・会社法の特別清算の章に定められた項目についての調査や、債権者への配当等の業務を行い、経営者は財産を勝手に処分できなくなります。
ちなみに債権者も同様に、財産の差し押さえや強制執行が行えなくなります。
裁判所は債権者に対して、破産手続きの開始通知を発送し、債権者は保有する債権を債権届出書に記載して、裁判所に提出します。
6.資産の換価
破産管財人は、会社の財産を現金化して債権者に債務を返済するために資産の売却や回収を行います。
これについては破産法第34条に規定があります。
破産法 第334条
第1項 破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は,破産財団とする。
第2項 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は,破産財団に属する。
このように、破産すると会社の財産すべてが破産財団に属することとなり、破産管財人によって換価処分されます。
個人の破産のように自由財産制度は存在しません。
7.債権者への説明
裁判所の破産手続き開始決定日から2~3ヶ月後に、裁判所において債権者集会が開催されます。
債権者集会では、破産管財人より会社の資産の状況や債権者より届出のあった債権の認否の結果などが報告され、これに応じて裁判所が必要な決定を行います。
通常は1回ですが、必要に応じて2回以上開催されます。
債権者集会には、依頼者の方と一緒に代理人弁護士も同席します。
また、債権者の側も債権者本人が参加することはほとんどなく、裁判官や破産管財人と会社の代表者および会社の代理人弁護士で行われます。
8.債権者への配当
破産管財人が会社の財産をすべて換価した後に、得られた資金で税金や社会保険料・未払い賃金などを支払います。
支払い後もまだ資金が残る場合は、会社の債権者に対して債務の額に応じた配当を行います。
しかし、資金が残らない場合は配当は行われないほか、抵当権がついた債権を保有する債権者に優先的に配当されるので、配当があってもほとんどもらえない債権者もいます。
配当が完了すれば、破産手続きは終了です。
会社や事業は消滅しますが、これによって債務の支払い義務がなくなります。
これによって経営者は一切の債務より解放されて、新しいスタートを切ることとなるのです。
倒産(破産)手続きの費用
会社が破産する場合に必要な費用には、弁護士に支払う費用と裁判所に納める費用があります。
これらの弁護に支払う費用に、裁判所に納める費用を足した額が会社が破産するために必要な費用です。
破産費用=弁護士に支払う費用+裁判所に納める費用
それぞれについてどの程度費用がかかるのかを確認しましょう。
弁護士費用
会社の倒産手続きを弁護士に依頼した場合に、必要な費用や具体的な内訳は弁護士事務所や担当する弁護士によって異なります。
かなりバラツキがありますが、相場としては50~150万円程度です。
内訳としては着手金と実費があります。
着手金とは、会社の破産手続きを受任することの対価であり、破産手続きの完了の有無に関係なく返還されません。
一方では実費とは、破産手続きを進めるにあたって弁護士が依頼者に代わって立て替えた費用です。
具体的には以下のようなものがあります。
- 交通費
- 切手代
- 遠方宿泊費
これらの金額は会社の債権者の人数や債務の総額によって変動し、一般的には、債権者と負債が多いほどかかる金額も高額になる傾向があります。
裁判所費用
破産手続きをするためには、裁判所に申立手続きをする必要があります。
この際に裁判所に納める費用として予納金があります。
予納金の額は全国の裁判所によって多少の違いはありますが、少額の管財の場合は20万円以上、管財事件となった場合には50万円以上かかることもあります。
弁護士費用と同様に、債務の額が大きいほど予納金も多額になる傾向にあります。
予納金を納める余裕がない場合は、会社の生命保険の解約返戻金、売掛債権、所有不動産などで代替できます。
会社が倒産(破産)した後に受ける社長のペナルティー
前の章で説明した通り、会社が倒産すると多くの場合、社長個人も自己破産します。これにより、どのようなペナルティーを受けるのでしょうか?
自己破産が周知される
1つ目は、社長が自己破産したという事実が周囲に知られてしまうという点です。
会社を倒産させた際に社長が自己破産するということは、多くの人が知っている事実です。取引先や会社の従業員、債権者などには知られていると考えるのが妥当でしょう。さらに、一般の人の目に触れることは少ないかもしれませんが、自己破産したという事実は官報に掲載に掲載されます。
しかし、住民票や戸籍謄本など、公的書類に自己破産したと記載されることはありません。
信用情報機関に登録される
自己破産をした場合、信用情報機関が管理する信用情報にその旨が記載されます。信用情報機関とは、個人の金融契約における情報を管理している機関です。
この情報の中で、自己破産など金融事故が記載されたものをブラックリストと呼ぶことがあります。ブラックリストに情報が載っている場合、クレジットカードの新規作成ができなかったり、ローンの申請が通らなかったりと、金融系のサービスを使用できなくなります。
このブラックリストは通常5年〜10年という機関で抹消されるルールになっています。
倒産(破産)手続きを確認して、新しいスタートを
破産手続きについての解説はここで終了です。
破産手続きを開始することによって、会社の債務の支払い義務が消滅します。債務から解放されたら新しいスタートを切ることとなり、新たな事業を始めることもできます。
しかし、破産手続きといっても最初は分からないことも多いでしょう。
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