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【ひな形付き】清算結了の決算報告書の書き方!注意点も交えて解説

清算結了の登記時に求められる、決算報告書。

決算報告書の記載方法は会社法で定められているため、誤った書き方をすると受理されません

では、決算報告書をどのように作成すれば良いのでしょうか。

本記事では、清算結了の決算報告書の書き方について、注意点も交えて解説します。

また法務局が提供する、決算報告書のひな形も解説しているため、ぜひ参考にしてください。

【基礎知識】清算結了登記までの流れをおさらい

清算結了登記とは、会社の​​資産や負債、債権など残余財産を分配・処分する手続きのことです。

会社解散が、法人格のみを消滅させる手続きであるのに対し、清算結了登記は、法人格の消滅と残余財産の分配を内包する言葉です。

清算結了登記が完了するとその会社は消滅し、元の状態への復元ができなくなります

では、決算報告書は、清算結了登記のどのタイミングで作成すれば良いのでしょうか。

この章では、清算結了登記までの流れを下記の8手順に分類して紹介します。

  1. 株主総会で解散の決議と清算人を選任
  2. 法務局で解散・清算人を登記申請
  3. 財産目録・貸借対照表を作成
  4. 債権者保護手続き
  5. 解散事業年度の確定申告書を提出
  6. 資産の現金化と分配(清算確定申告書)
  7. 決算報告書の作成と清算結了の登記

それぞれ詳しくみていきましょう。

1.株主総会で解散の決議と清算人を選任

株式会社が会社解散をするには、株主総会で「解散に係る決議」をおこないます。

解散に係る決議は、特別決議で採決される事項。

特別決議を採決するには、下記の条件を満たす必要があります。

  • 議決権の過半数(50%)を持つ株主が出席
  • 出席した株主のうち2/3以上の賛成

また解散に係る決議とともに、会社の清算作業を担当する清算人を決議するケースが一般的です。

清算人の決議は、普通決議で採決されます。

 2.法務局で解散・清算人を登記申請

株主総会で、解散と清算人が可決された日から2週間以内に、解散と清算人の登記手続きが必要です。

登記手続きは、本社がある地域を管轄する法務局で実施します。

手続きでは、下記3つの書類が必要です。

  • 株式会社解散及び清算人選任登記
  • 株主総会の議事録
  • 清算人の就任承諾書

また、登記手続きでは、合計3万9000円(解散登記:3万円 清算人選任登記:9000円)の登録免許税がかかります。

あらかじめ用意しておくとスムーズに申請できるでしょう。

3.財産目録・貸借対照表を作成

株主総会で選任された清算人は、会社の財務状況を調査して財産目録と貸借対照表を作成します。

作成した財産目録と貸借対照表は、株主総会の承認を得たのち、会社で保管します。

 4.債権者保護手続き

債権者保護手続きとは、会社の解散など債権者に大きな影響を及ぼす際におこなう、保護処置のことです。

清算人は会社が解散した主旨を債権者へ通達し、債権を申し出るよう「官報公告」をおこないます。

官報公告の期間は、2ヶ月以上の一定期間内と定められているため、注意してください。

また、会社側が債権者を把握している場合は、個別に債権の申し出をしなければなりません。

官報公告は、官報を管理する「全国官報販売協同組合」のホームページから申請できます。

申請の手順は下記の通りです。

入力フォームの申し込みステップ
【1】掲載する公告を選択チェック。
【2】掲載申込書の内容情報をフォームに入力。
【3】公告原稿をフォームに入力。
【4】入力内容をご確認の上送信。
【5】送信完了。(ご記入のメールアドレスに確認メールが届きます。)
引用:官報公告の申込方法について|全国官報販売協同組合

5.解散事業年度の確定申告書を提出

会社の解散日から2ヶ月以内に、税務署へ確定申告書を提出します。

提出する確定申告書は、事業年度開始日から解散日までのもの

また、法人税等の納付もおこないます。

6.資産の現金化と分配(清算確定申告書)

清算人は、財産目録や確定申告書を参考に、残余財産の現金化と分配をおこないます。

まずは、債権の回収と債務の支払いを済ませ、資産が債権を上回る場合は、株主へ分配します。

7.決算報告書の作成と清算結了の登記

会社の清算が完了したのち、本記事の本題である決算報告書の作成に取り掛かります

作成した決算報告書は、株主総会での承認が必要です。

この承認を受けた日から2週間以内に清算結了登記の申請をおこないます。

これらの手続きが完了すると、法人格が完全に消滅し、復元できなくなります。

清算結了に必要な決算報告書の書き方

先述のとおり、決算報告書の記載方法は、会社法で定められています。

本章では、法務局が提供するひな形を交えて、清算結了に必要な決算報告書の書き方を紹介します。

【ひな形付き】決算報告書の記載事項

決算報告書の記載事項は、会社法の施行規則150条で下記のように定められています。

法第五百七条第一項の規定により作成すべき決算報告は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。
この場合において、第一号及び第二号に掲げる事項については、適切な項目に細分することができる。
一 債権の取立て、資産の処分その他の行為によって得た収入の額
二 債務の弁済、清算に係る費用の支払その他の行為による費用の額
三 残余財産の額(支払税額がある場合には、その税額及び当該税額を控除した後の財産の額)
四 一株当たりの分配額(種類株式発行会社にあっては、各種類の株式一株当たりの分配額)
引用:会社法施行規則(平成十八年法務省令第十二号)|e-Gov法令検索

また、4号の「一株当たりの分配額」では、下記2点を記載しなければなりません。

  • 残余財産の分配を完了した日
  • 金銭以外の場合は、財産の種類と価額

法務局が提供する決算報告書のひな形は、下記の通りです。

引用:必要書類記載方法|法務局

ただし、上記のひな形は先ほど紹介した記入事項を、上から並べただけのもの。

実務では会社の実情を考慮し、1号・2号を細分化するなど事実に近い決算報告書を作成してください。

また法務局は決算報告書以外にも、清算結了登記に必要な「株式会社清算結了登記申請書」・「株主総会議事録」のひな形を公開しています。

必要書類の記載方法でお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。

必要書類記載方法|法務局

残余財産の算出方法とは?

決済報告書に記載が必要な残余財産は、どのように算出するのでしょうか。

先述の法務局から引用した決算報告書のひな形にある赤字の記載事項のうち、1から2を差し引くと残余財産を算出できます。つまり、次の計算式で求めます。

「残余財産」=「債権の取立て、資産の処分その他の行為によって得た収入の額」ー「債務の弁済、清算に係る費用の支払その他の行為による費用の額」

残余財産がプラスの場合は、株主へ分配する必要があるため、1株当たりの財産額を算出します。

ただし、残余財産が、必ずプラスになるとは限りません。

債務超過の場合には、残余財産が残らず、マイナスになる場合もあります。

この場合は、会社を清算できないため、下記の方法を取らざるを得ません。

  • 破産手続きを申請
  • 特別清算を申請
  • 他の会社へ合併・売却

清算結了の登記申請後に必要な手続き

先ほど、清算結了の登記が完了したら、法人格が完全に消滅し、復元できなくなると紹介しました。

しかし、清算結了を完了した後も、やらなければならない手続きがあります。

それは、各公的機関でおこなう清算結了の届出です。

清算結了の届出が必要な公的機関は、下記の4つです。

  • 市区町村役場
  • 税務署
  • 労働基準監督署機関
  • 社会保険事務所

公的機関へ届け出る書類は、「登記事項証明書」と「異動届出書」の2つです。

登記事項証明書は、清算結了の登記後に発行してもらえる証明書です。

登記事項証明書は、登記所や法務局証明サービスセンターの窓口で請求できます。

また、最近ではインターネットを利用した、オンライン請求にも対応しています。

自身の受け取りやすい方法を選択すると良いでしょう。

異動届出書は、各公的機関で受け取れる書類です。

法人の住所や所轄の税務署などの記載項目があります。

ただ、国税庁が公開しているPDFには、記載要領も含まれるため、そちらをダウンロードすることをおすすめします。

異動届出書PDF|国税庁

清算結了の登記・決算報告書作成での注意点

清算結了の登記や決算報告書を作成する際は、下記の3点に注意が必要です。

  • 決算報告書の記載方法は「会社法施行規則」に従う
  • 債務超過がある場合は破産・特別清算を申請
  • 清算結了登記には期限が設けられている

それぞれ順に紹介します。

決算報告書の記載方法は「会社法施行規則」に従う

先述のとおり、決算報告書の記載内容は、会社法の施行規則で定められています

唯一、変更が許されているのは、「債権の取立て、資産の処分その他の行為によって得た収入の額」と「債務の弁済、清算に係る費用の支払その他の行為による費用の額」の細分化のみです。

万が一記載内容に誤りがあると法務局で受理されず、清算結了ができません

自社での作成が難しい場合は、司法書士事務所やなどの専門家へ依頼すると良いでしょう。

債務超過がある場合は破産・特別清算を申請

2つ目の注意点は、債務超過がある場合に清算結了登記による会社の解散ができないことです。

決算報告書を策定する段階で、債務超過が明らかになれば、清算結了の登記が受理されなくなります。

しかし、債権者に債権を放棄してもらう場合や、役員個人が債権を引き受ける場合は、債権結了を登記できます。

つまり、会社に債権が残らない状態にできるのであれば、問題なく会社解散を実行できるのです。

万が一、会社の債権を処理できない場合は、下記いずれかの選択を取らなければなりません。

  • 破産手続きを申請
  • 特別清算を申請
  • 他の会社へ合併・売却

清算結了登記には期限が設けられている

3つ目の注意点は、清算結了登記にさまざまな期限が設けられていることです。

清算結了登記に係る期限をまとめると、下記の通りです。

  • 会社解散と清算人の登記手続き:株主総会から2週間
  • 債権者保護手続き:会社解散から2ヶ月以上の一定期間
  • 税務署への確定申告書提出:会社解散から2ヶ月以内
  • 清算結了登記の申請:決算報告書の承認から2週間以内

万が一、上記の期限を過ぎた場合、会社解散ができなくなる恐れがあるため注意が必要です。

清算結了の決算報告書作成は注意点を踏まえ迅速に済ませよう

本記事では、清算結了の決算報告書の書き方について、注意点も交えて解説しました。

決算報告書の記載内容は、会社法で細かく定められています

また、清算結了登記には、さまざまな期限が設けられています。

清算結了の決算報告書作成・登記申請は、注意点を踏まえて迅速におこないましょう