「資金調達のシリーズとはどんな意味なのか?」との疑問をお持ちではないでしょうか。
資金調達の用語で、シリーズA・シリーズBなどがあります。
シリーズとは、企業の資金調達に関連した重要な用語です。
この記事では、資金調達のシリーズ解説、資金調達を成功させるポイントを解説します。
目次
- 1 資金調達のシリーズ・ラウンドとは?
- 2 各ラウンドに分類される企業の成長過程
- 3 ラウンドごとの資金調達の特徴(シード・アーリー・シリーズABC)
- 4 ラウンド1.シード
- 5 ラウンド2.アーリー
- 6 ラウンド3.シリーズA
- 7 ラウンド4.シリーズB
- 8 ラウンド5.シリーズC
- 9 資金調達を成功させるために重要な2つのポイント
- 10 ポイント1.資金調達の目的を明確化
- 11 ポイント2.出資先からの信用を獲得
- 12 シードからシリーズAにおける資金調達先ごとの注意点
- 13 エンジェル投資家からの資金調達
- 14 VCからの資金調達
- 15 日本政策金融公庫からの資金調達
- 16 銀行からの資金調達
- 17 シリーズ・ラウンドの内容を理解して資金調達を成功させよう
資金調達のシリーズ・ラウンドとは?
資金調達の現場では、シリーズAやシリーズBなどの用語をよく耳にします。
このシリーズAやシリーズBとは投資する際の目安となる用語で、企業の成長過程を段階ごとに分類したものです。
資金調達のシリーズは、投資ラウンドともいいます。
投資ラウンドは、アメリカのシリコンバレーが発祥です。
その後、日本でスタートアップ市場が拡大したことに伴い、投資ラウンドの概念が広がりました。
引用:資金調達ラウンドとは?|Paid
企業の成長過程は、基本的にシードからシリーズCまでの5段階に分類されます。
状況に応じて、エンジェルやシリーズD・E・Fと続く場合もあります。
各ラウンドに分類される企業の成長過程
各ラウンドに分類される、企業の成長過程は下記の通りです。
- シード:起業・商品のリリース前の状態
- アーリー:起業・商品のリリース直後
- シリーズA:事業の本格スタート、顧客が増え始める段階
- シリーズB:顧客の獲得に目処がつき、商品の拡充を実施する段階
- シリーズC:経営が安定し、新規事業・新製品の開発をする段階
ラウンド1・2のシードとアーリーには、スタートアップ企業が分類されます。
両者の違いは起業前がシード、そして企業後がアーリーです。
両者は十分な事業利益を得られていない状態のため、資金繰りに悩まされるケースが多いです。
その後、事業を本格的にスタートし始めると、シリーズAに分類されます。
シリーズAでは、事業利益が出始めまずが、依然として油断できない状態です。
ラウンド4のシリーズBは、顧客獲得に目処がつき、既存商品の拡充に動き出す段階です。
シリーズBからは、会社規模の拡大や株式上場に動き出すケースも多くなります。
ラウンド5のシリーズCともなると、資金調達を必要としないほど経営が安定します。
ただし、シリーズCの企業は新規事業や規模拡大の動きを加速させるため、資金調達は大規模になります。
ラウンドごとの資金調達の特徴(シード・アーリー・シリーズABC)
シードからシリーズCでは、資金調達の特徴が大きく異なります。
以下の各ラウンドで、どのような資金調達が実施されるのか解説します。
- シード
- アーリー
- シリーズA
- シリーズB
- シリーズC
ラウンド1.シード
シード期での資金調達には、下記の特徴があります。
- 調達資金は500万円前後
- 資金調達先が限られる
- 資金調達にかかる期間は1週間から2ヶ月
シード期は、起業前の段階で必要となる資金が少ないため、調達資金の目安は500万円前後です。
ただし、他の事業での信用や実績がある場合には、さらに大きな額の調達が可能なケースもあります。
多くの場合、起業前のシード期では出資者が限られ、VCや銀行からの資金調達は困難です。
シード期の主な出資先は、以下の3つです。
- 個人投資家
- シードアクセラレータ
- 政策金融公庫
限られた資金調達のチャンスを掴むには、投資家を納得させられる具体的かつ現実的な事業計画が必要です。
資金調達にかかる期間は出資先によって大きく異なるため、自社の資金調達計画に合った出資先を探しましょう。
ラウンド2.アーリー
アーリー期の資金調達の特徴は、以下2つです。
- 調達資金は2,000万円〜5,000万円
- 資金調達の選択肢が広がる
アーリー期は会社を設立して間もないため、事業が軌道に乗るまで赤字になるケースが多いです。
起業前のシード期よりも高額な資金調達となり、リスクが高いと判断されやすくなります。
そのため、複数の出資先から分散して資金調達をするのが有効です。
出資先を分散させることで、資金を調達しやすいのみならず、投資家に株式のシェアが集中することを防げます。
アーリー期では、個人投資家からの出資以外に、地方自治体や信用補正協会などが融資に応じやすくなります。
ただし、融資には返済義務があるため、その点には注意が必要です。
ラウンド3.シリーズA
シリーズAの資金調達は、下記の特徴があります。
- 調達資金は数千万円~2億円と高額になる
- VCや金融機関からの資金調達が可能
シリーズAでは本格的に事業がスタートし、軌道に乗せるまであと1歩の状態です。
そのため、広告宣伝や人材の追加などにより、高額な調達資金が必要です。
シリーズAでは、VCや投資家の方から出資を打診してくることもあります。
高額な調達資金のため、その打診を受けたくなりますが、高額な出資を受ければ株式のシェアを大幅に受け渡すことになります。
アーリー期と同様に投資家のシェアを抑えるよう、調達額の制御が必要です。
ラウンド4.シリーズB
シリーズBの資金調達の特徴は3つあります。
- 先を見据えた資金調達にシフト
- VCや金融機関からの資金調達がメイン
- 補助金や助成金による資金調達も可能
一番の違いとしては、資金調達の目的が経営基盤の形成から、先を見据えた資金調達にシフトすることです。
シリーズAまでは、事業を軌道に乗せるために資金運用を実施しました。
対してシリーズBは、規模拡大や株式上場(IPO)を見据えて資金調達をします。
調達額も数億円を超えることが多く、複数のVCや金融機関から調達するケースが多いです。
また、国や地方自治体から優良企業として認められ、補助金・助成金を受け取れる可能性があります。
ただし、補助金や助成金には複雑な手続き・融資条件などもあるため、会計士などの外部機関にサポートを求めることをお勧めします。
ラウンド5.シリーズC
シリーズCの資金調達の特徴は、下記の2つです。
- 事業拡大のための資金調達が増加
- 株式公開による資金調達が実施される
シリーズCの企業では黒字化に目処が立つため、M&Aなど事業拡大への動きが加速します。
資金調達方法もこれまでとは異なり、金融機関からの融資や株式公開が主流です。
金融機関からの融資も、1つの金融機関が代表して交渉し、同一の契約内容で複数の金融機関から融資を受けるシンジゲートローンへと変化します。
シリーズCは他のラウンドに比べ、高額な資金を短期間で調達する必要があるため、より効率的な調達方法がとられます。
資金調達を成功させるために重要な2つのポイント
投資ラウンドの中でも、スタートアップ企業のシード期とアーリー期は、会社の信用が少なく資金調達に苦戦します。
しかし、下記2つのポイントを実行することで、資金調達がより成功しやすくなります。
- 資金調達の目的を明確化
- 出資先からの信用を獲得
ポイント1.資金調達の目的を明確化
資金調達では、「なぜ資金を集め、どう使うのか?」のように目的の明確化が大切です。
その理由は、出資側としても出資後に利益を回収できないリスクが大きいためです。
資金調達を成功させるためには、出資側を納得させるような事業計画や資金調達計画を提示する必要があります。
また、資金調達の目的を明確化することで、目的達成に必要な金額が具体化されます。
これにより、現実的な資金調達計画を作成できるようになり、調達方法や調達先を選定しやすくなります。
資金調達をする際には、目的を具体的かつ現実的に示すことが大切です。
ポイント2.出資先からの信用を獲得
資金調達を成功させるためには、出資先からの信用を獲得しなければなりません。
出資者たちは、企業の財務状況や事業計画書などをもとに企業の信用度を判断します。
しかし、判断材料の少ないスタートアップ企業の場合、経営者の人間性が会社の信用に影響するケースも少なくありません。
資金調達の場では、出資先からの信用が得られるような言動や姿勢を示すことが大切です。
シードからシリーズAにおける資金調達先ごとの注意点
資金調達では、出資先によってさまざまな注意点があります。
注意点の具体例は以下です。
- エンジェル投資家
- VC(ベンチャーキャピタル)
- 日本政策金融公庫
- 銀行
適切な資金調達先を選べるよう、それぞれの注意点を解説します。
エンジェル投資家からの資金調達
エンジェル投資家からの資金調達では2つの注意点があります。
- 経営に関与してくる
- まとまった額の出資を受けにくい
エンジェル投資家の中には、経営に関与してくる投資家も存在します。
投資家が経営に関与することを不満に思う方は、調達額の分散が有効です。
また、エンジェル投資家からの出資は、VCや金融機関に比べ小額になるのが一般的です。
仮に多額の資金が必要な場合は、VCや金融機関にあたってみましょう。
VCからの資金調達
VCからの資金調達では、2つの注意点があります。
- 将来性がないと足ぎりの可能性
- 責務によるプレッシャー
VCの目的は、成長性を認めた会社に出資して利益を得ることです。
出資を受けた後、思うような業績をあげられなかった場合、VCは出資金の回収に動き出す可能性があります。
さらに、VCは投資先の企業が成長しなければ利益が得られないため、経営者に対して過度なプレッシャーをかけることもあります。
そのため、VCからの出資を受ければ経営に関与されることは想定しておきましょう。
日本政策金融公庫からの資金調達
日本政策金融公庫からの資金調達では、2つの注意点があります。
- 審査期間が長い
- 繰上げ返済ができない
日本政策金融公庫からの資金調達は低金利である反面、審査に1ヶ月程かかるため注意が必要です。
短期間での資金調達を望む場合には、自社が保有する売掛債権を売却するファクタリングが有効です。
日本政策金融公庫からの資金調達では、中小企業の場合、繰上げ返済ができません。
定められた返済期限にしたがって返済しなければならないため、注意が必要です。
銀行からの資金調達
銀行からの資金調達では、下記に注意が必要です。
- 審査基準が厳しい
- 返済期限が長い
銀行からの融資は審査基準が厳しく、スタートアップ企業では融資を受けられないケースがあります。
また、融資を受けられたとしても返済期限が5年から10年と長いため注意しましょう。
長期間の返済では、経営が圧迫される可能性があります。
銀行からの融資を受ける際には、自社の返済能力に見合った金額設定を心がけましょう。
シリーズ・ラウンドの内容を理解して資金調達を成功させよう
資金調達のシリーズ・ラウンドについて解説しました。
シリーズとは、企業の成長過程を段階別に表したものです。
資金調達をする上では、目的の明確化と信用の獲得が重要なポイントです。
出資先の注意点に気をつけ、資金調達を成功に導きましょう。