大手ソフトウェア会社のオラクル。オラクルはこれまで多くの企業を買収してきました。そのオラクルが買収の方針としているのは、財務回収の達成と株主への価値創出、カスタマー・サービスと製品サポートに一貫して取り組むという姿勢です。
今回の記事では、オラクルについて日本法人の今期決算情報を中心にこれまでの買収の歴史やその考え方について解説していきます。
目次
ORACLEの企業概要
ORACLEは1977年創業、アメリカのテキサス州に本社を置くソフトウェアの会社です。2019年の時点では、ソフトウェア会社の中でMicrosoftに次いで第二位の企業とされています。
DBMS(データベース管理システム)を中心に、企業ソフトウェアの開発や販売事業をメインとしています。そして、近年では企業買収により市場でのシェアを伸ばしている企業です。
さらには、クラウドコンピューティング分野(主にSaaS/PaaS/IaaS)にも力を入れており、2020年の時点で世界6位の売上高を誇っています。
日本法人は、日本オラクル株式会社の名称で1985年に設立され、2000年に東京証券取引所1部へ上場しました。国内の競合には、日本マイクロソフトやアマゾンウェブサービスなどがあります。
日本ORACLE(オラクル)の決算状況
日本オラクルの第三4半期決算短信(日本基準)は以下の通りです。
- 営業成績(累計)
2023年5月期第3四半期 | 2022年5月期第3四半期 | 前年比 | |
売上高(百万円) | 163,226 | 153,506 | 6.3% |
営業利益(百万円) | 52,610 | 51,557 | 2.0% |
経常利益(百万円) | 52,815 | 51,649 | 2.3% |
四半期純利益(百万円) | 36,624 | 35,793 | 2.3% |
1株当たり四半期純利益(円銭) | 285.80 | 279.44 | ー |
潜在株式調整後1株当たり四半期純利益(円銭) | 285.75 | 279.34 | ー |
- 財政状況
2023年5月期第3四半期 | 2022年5月期 | |
総資産(百万円) | 232,530 | 236,868 |
純資産(百万円) | 140,439 | 125,355 |
自己資本比率 | 60.4% | 52.9% |
- セグメント別売上
セグメント | 2022年5月期第3四半期 | 2023年5月期3四半期 | |||
金額 | 構成比 | 金額 | 構成比 | 前年比 | |
百万円 | % | 百万円 | % | % | |
クラウドライセンス&オンプレミスライセンス | 27,889 | 18.2 | 30,939 | 19.0 | 10.9 |
クラウドサービス&ライセンスサポート | 99,049 | 64.5 | 105,100 | 64.4 | 6.1 |
クラウド&ライセンス | 126,938 | 82.7 | 136,040 | 83.3 | 7.2 |
ハードウェア・システムズ | 10,622 | 6.9 | 11,274 | 6.9 | 6.1 |
サービス | 15,945 | 10.4 | 15,911 | 9.7 | 0.2 |
合計 | 153,506 | 100 | 163,226 | 100 | 6.3 |
- 全従業員のリモートワークへのシフト
- 顧客企業への安定的なサービスの提供
- 営業体制の構築を継続して実施
以上の取り組みにより、売上高163,226百万円(前年同期比6.3%増)、営業利益52,610百万円(前年同期比2.0%増)、経常利益52,815百万円(前年同期比2.3%増)、当期純利益36,624百万円(前年同期比2.3%増)と営業利益、経常利益および当期純利益ともに、過去最高を達成しています。
出典:2023年5月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕|日本オラクル株式会社
外資系企業の日本法人の決算
日本企業では、通常、日本の会計基準に基づいて帳簿や各時期の決算資料を作成します。しかし、親会社が海外である場合、その親会社の国の会計基準に基づいてこれらの資料を作成する必要があったり、国際財務報告基準(IFRS)や国際会計基準(IAS)の基準を意識したりする必要があります。
国際財務報告基準(IFRS)と国際会計基準(IAS)とは、国際会計基準審議会(IASB)が定めた会計基準で、日本での適用が認められています。そのため外資系となる企業は、親会社の指示に従いながら、日本の会計基準も意識して各資料を作成します。
ORACLEにおけるM&Aの考え方
次に、ORACLEのM&Aの考え方について見てみましょう。ORACLEは、M&Aなどの企業買収に関して、公式Webサイト上で以下の通り言及しています。
買収活動を通じてオラクルが目指しているのは、製品サービスの強化とイノベーションの加速を図り、お客様の需要を満たすまでの期間を短縮して、パートナーのビジネスチャンスを拡大することです。オラクルの合併買収方針を貫いているのは、オラクルの財務回収を達成し、株主にとっての価値を創出しながら、カスタマー・サービスと製品サポートに一貫して取り組むという姿勢です。
ここから見えるのは、オラクルは買収した企業と協力して、製品の開発や販売、そして、新規事業参入の時間短縮をシナジー効果の重点としているということです。
ORACLEにおけるM&Aの歴史
では実際に、オラクルはこれまでどのような企業を買収してきたのでしょうか。米オラクルが他社を買収した歴史について紹介します。
2011年10月 | コールセンターやソーシャルネットワークに優れたRightNow Technologies, Inc.を買収。 |
2014年6月 | ホスピタリティ向け業者のためのソフトを展開するMICROS Systemsを買収。 |
2014年7月 | カスタマーサービスのためのクラウドを展開するTOA Technologiesとの買収を発表。 |
2016年1月 | Webサイト強化のため大手ブロバイダーAddThisを買収。 |
2016年4月 | 建設業界の管理クラウドを展開するTexturaとの買収を発表。 |
2016年11月 | NetSuiteを買収。クラウドERPソリューション強化を目的とする。 |
2016年11月 | クラウドの監視・制御・最適化のためDynを買収。 |
2017年4月 | デジタル測定のクラウド組織Moatを買収。信頼できる測定と分析能力を手に入れる。 |
2018年4月 | マーケター向けにブランド保護・危険回避をするGrapeshotを買収。 |
2018年5月 | データ整理のためのツールを展開するDataScience.comを買収。 |
2018年9月 | クラウドアプリケーションのプラットフォームを展開するIridizeを買収。 |
2018年10月 | AIやクラウドエンジンを展開しるDataFoxを買収。意思決定の最適化を目指す。 |
2019年6月 | Oxygen Systemsの買収。ブラジルで事業を展開する業者へ向けてサービスを提供。 |
2019年10月 | 店舗やECを接続するためのロイヤルティ・ソリューションを提供するCrowdTwistを買収。 |
2020年3月 | 公益事業者の設備を監視・制御のためのシステムを展開するLiveData Utilitiesを買収。 |
2020年4月 | 動画コンテンツ作成のためのSauce Videoを買収。 |
2020年11月 | Nor1買収。AIにより旅行者へホテルをパーソナライズするMerchandisingが追加される |
2021年4月 | EC・ロジテクス・小売に関するコネクタの大手ブロバイダー FarAppを買収。 |
2021年6月 | GloriaFoodを買収。グローバルなオンライン注文システムの機能が追加される。 |
2021年12月 | AIの最適化のためFederosを買収。オラクルの機能拡張に成功。 |
2021年12月 | 医療情報技術を提供するCERN(サーナー)を買収。 |
2022年1月 | VereniaのNetSuite CPQビジネス買収を発表。 |
2022年5月 | 人材は人件費の管理をするソリューションの開発・販売をしているAdi Insightsを買収。 |
2022年6月 | 健康に関する分析情報を展開するCernerを買収。 |
2022年8月 | Oracle APEXのUI最適化を目的にFOEXを買収。 |
2022年10月 | Smartvid.io, Inc.(Newmetrix)の知的財産を含む一部資産を買収。 |
以上の通り、オラクルはこれまでに多くの企業を買収してきました。そして近年では、2件の買収で注目を集めました。
- 医療情報技術を提供するCERN(サーナー)買収
- TikTokの実質的な買収
次の章でこの2件の買収に関して詳しく解説します。
米ORACLEによるサーナーの電撃的買収
2021年12月、米ORACLEは、米CERN(サーナー)の買収を発表しました。買収額は約283億ドル(約3兆2110億円)で、これまでのオラクルの買収の中では最大規模の買収となりました。
CERN(サーナー)は、ヘルスケアに関するソリューション企業で、電子カルテなどの医療ITのサービス、ハードウェア、機器などを世界中に展開しています。
オラクルは世界有数のソフトウェア会社ですが、近年はAmazonやMicrosoftに遅れを取っていると言われていました。しかし、この買収でオラクルは、ヘルスケア業界へ向けてテクノロジー分野で大きな足がかりを得たと言えるでしょう。
オラクルの最高経営責任者(CEO)サフラ・カッツはこの買収について、「直ちにオラクルの利益に直結する」と説明しました。
米ORACLEによるTikTokの実質的な買収
次に、米ORACLEによるTikTokの実質的な買収について解説します。
この出来事は、2020年、当時のアメリカ大統領だったDonald Trump氏が中国のソーシャルメディアアプリ「TicTock」と「WeChat」のダウンロードを禁止する大統領令を発したことが発端でした。
この法令は、国家の情報漏えいや安全性を維持するための法令でした。
しかし、そこにオラクルとWalmartが「TikTok Global」という新会社を設立して突如参入しました。そして、オラクルはこのTikTok Globalの株式を12.5%取得、Walmartは7.5%取得したのです。
これは、オラクルとWalmartがTicTockを実質的に買収したことになります。そして、TicTockはアメリカでの事業停止を逃れたことになりました。
参考:Tiktokを買収したのはオラクル!他にも買収しようとした企業が
成長戦略としての企業買収で規模拡大を目指すORACLE
今回の記事では日本オラクルの今期決算情報やオラクル全体のM&Aの歴史とその考え方について解説いました。
オラクルはこれまで多くの企業を買収していますが、近年のCERN(サーナー)の買収とTikTokの実質的な買収は特に話題となりました。
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