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楽天の買収における考え方。今期決算や買収の歴史を解説

数多くのM&Aを実施して企業の力を拡大してきている楽天グループ。グループの傘下や関連会社には私たちの知っている企業やサービスも数多くあります。

しかし、2023年2月に発表された昨年度の決済では大幅な赤字と発表されました。そこにはどのような原因があるのでしょうか。

今回の記事では楽天の決算から見える今後の進路や、楽天がこれまで実施してきたM&Aの歴史について詳しく解説していきます。

楽天の買収における考え方

楽天はインターネット関連のサービスを中心とする事業を展開する企業です。日本最大級のECサイト楽天ショッピングを始め、スポーツや不動産、携帯通信、金融など様々な事業を展開するグループ会社を有しています。

1997年に創業し、2000年のジャスダック上場以降、事業提携や買収などM&Aの相乗効果で事業を拡大させていきました。その手法として上げられるのが、コングロマリットの手法です。

コングロマリットとは、異業種の会社を合併や買収などで自社に取り込み、複合的な効果を上げている企業です。楽天はこの手法で大幅な発展を遂げ、今や日本を代表する大企業となりました。

具体的には、楽天ショッピングでの買い物の際に楽天カードを使用したり、楽天カードの引き落とし口座を楽天銀行に指定したりなど、さまざまな繋がり方があります。

一度は耳にしたことのある方の多いかもしれませんが、世間ではこれを「楽天経済圏」とも呼ばれています。楽天ショッピングを軸として、生活の様々なシーンで楽天サービスを使用することで、そのユーザーは楽天ポイントを貯めていき、運用していくのです。

楽天の決算データから見る業績

誰もが知っている企業であるからこそ、楽天の決算が気になる方も多いのではないでしょうか。この章では楽天における今期の決算情報について詳しく解説していきます。

2023年2月に発表された決算状況によると、2022年12月期の最終的な損益は3728億円の大幅な赤字となります。前年比は1338億円の赤字で、さらに赤字を拡大させる形となってしまいました。

出典:2022年度決算短信・説明会資料|楽天

決算資料を見ると、月々の売上高は増加傾向にあるものの、営業利益の赤字も並行して拡大しています。売り上げ増加の効果が利益とならない理由については以下のことが考えられるでしょう。

  • 競争環境が悪化したことによるコストの負担拡大
  • 新規事業の導入によるコストの増加

それだけでなく、最近の楽天グループでは様々な分野の改悪も目立っており、経営が厳しいのではないかとの見方を示す意見もあります。

楽天の赤字は携帯電話事業が原因?

楽天は前述の通り様々な分野の事業を抱えています。そのため、一概にどの事業が原因で赤字になったと言うのがわかりにくい傾向にあるでしょう。しかし、一部では携帯電話事業が原因ではないかと言われています。

楽天グループは以下のセグメントに分かれています。

  • インターネットセグメント(楽天市場、楽天ブックスなど)
  • フィンテックセグメント(楽天カード、楽天銀行、楽天証券など)
  • モバイルセグメント(楽天モバイル、Rakuten TVなど)

上記2つのインターネットセグメントとフィンテックセグメントは共に黒字の業績を残していますが、モバイルセグメントのみが赤字の業績となっていることからもその理由がわかります。

また、携帯電話業界の視点で見ると他の大手3社(ドコモauソフトバンク)の親会社は、企業価値10兆円前後の時価総額であるのに対し、楽天モバイルは1兆円程度と大幅に下回っています。このことからも楽天モバイルの赤字が脱却できない限り、楽天グループ全体の経営が良くなる可能性は薄いでしょう。

楽天による近年の買収の歴史

次に、楽天がこれまでどのような企業に対しM&Aを実施してきたのか見てみましょう。

月日内容
2005年10月13日東京放送(現:TBSホールディングス)の全発行済み株式の15.46%を取得
2007年7月31日東京電力が保有する楽天コミュニケーションズ株式会社の全株式を買収、子会社化
2009年2月10日イーバンク銀行の連結子会社化
2009年12月ビットワレットを連結子会社化
2014年4月1日
楽天トラベル株式会社を吸収合併する
2015年03月25日楽天証券がFXCMジャパン証券を子会社化
2015年05月29日子会社の楽天証券、香港におけるFX事業を取得
2016年09月05日フリマアプリ「フリル」を展開していたFablic社を完全子会社化
2016年10月28日
住友商事からECサービス会社爽快ドラッグの発行済み全株式を取得
2018年08月31日
トレイダーズHD傘下、「みんなのビットコイン」の全株式を取得
2019年07月09日
楽天モバイルがDMMよりMVNO事業とインターネットサービス事業を会社分割で承継
2019年09月19日台湾のプロ野球チーム「ラミゴ モンキーズ」運営会社の全株式を譲渡により取得
2021年03月12日
日本郵政グループと連携強化のための資本業務提携
2021年08月04日楽天グループの子会社 Rakuten USA, Inc. がAltiostar Networks, Inc. を完全子会社化
2021年08月25日ぐるなびと資本業務提携

以上のように、楽天は多くの買収やM&Aにより子会社を増やしていき、現在のように大規模な企業グループとなりました。

記憶に残る楽天の買収案件

この章では、楽天のM&Aの中でも特に記憶に残る買収や提携の案件について紹介します。

日本郵政との提携

楽天と日本郵政は、2020年12月に業務提携を発表しました。このニュースをメディアでも大々的に取り上げられていたため、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。

内容は、商品の配送業務に関して連携を強めていくというものでした。

具体的には、EC事業に対して郵政と提携を強化し、商品配送の低コスト化と迅速化を図る。モバイル事業については郵政内でのモバイル提携窓口の開設などを実施するとのことです。

実際、楽天は郵政内に楽天モバイルの店舗を展開し、その店舗に専任の人材を設置していました。しかし、2023年4月でその内の200店舗を閉店し、チラシを設置する方針に切り替えるとされています。

上述の通り、2023年の決算でも、楽天グループの大幅な赤字は楽天モバイルから来ていることもわかります。このことから、さらなる赤字拡大を防ぐための施策なのかもしれません。

楽天のTBS買収事件

楽天のTBS買収事件とは、楽天がTBSに対し敵対的な買収を仕掛け、訴訟にまで発展した出来事です。

2005年の10月、楽天はTBS(当時は株式会社東京放送)の公開株式15%を取得します。楽天側としては、将来的な経営権の獲得を見越した経営統合の提案としての買い付けでした。しかし、TBSはそれに反対したため、敵対的な買収という形になってしまったのです。

TBSは楽天の買収を阻止するために、テレビの放送許可を別会社である株式会社TBSテレビへ移行しました。同時に、認定放送持株会社に移行するための吸収分割を実施しました。

認定放送持株会社は、特定の株主が3分の1以上の議決権を持つことができません。そのため、楽天が思い描いたTBSの経営権の獲得は不可能となったのです。

そのため、楽天は経営権の取得を諦めて、TBSに対して全ての株式の買取を要求しました。しかし、TBSは合意せず訴訟へと発展しました。

東京地裁が出した判決は、「楽天が1株当たり約3100円にて取得・保有していたTBSの株式を1株当たり1,294円で売却しなければならない」と言う結果で楽天は何度も不服申し立てをしましたが東京地裁はそれを受け入れませんでした。

結果として、この楽天のTBS売却は完全な失敗に終わってしまったと言うことになります。

イーバンク銀行の連結子会社化

楽天グループは2009年にイーバンク銀行との資本業務提携を締結して、イーバンクは楽天の連結子会社になりました。イーバンクの優先株式を199億8000万円で買取り、提携した当初は楽天の役員4人をイーバンク銀行に派遣していました。

業務の連携について、決済や相互顧客の連携・紹介、金融開発や電子マネーを共同開発するとされていました。資本業務提携から10年以上が経過し、名称も楽天銀行と変わりました。現在では口座を開設している人も多く認知度の高い銀行として知れ渡っています。

このM&Aは、同年にビットワレットを連結子会社化し、Edyを開発した件と合せて、楽天の金融業界参入の代表となるものとも言えるでしょう。

出典:イーバンク銀行株式会社の連結子会社化について

企業買収で楽天の赤字は回復するのか?

今回は楽天の今期決算から見る楽天の経営状況や、M&Aにより事業拡大を続けてきた楽天の歴史について詳しく解説しました。今期の決済は大幅な赤字となっていましたが、この赤字を縮小させるため楽天グループでは様々な施策を施しています。

そして、これまでのM&Aにより事業拡大を続けて成功してきた大企業としての実績もあります。今後、楽天がどのような事業政策を進めていくのか注意深く見ていく必要がありそうです。

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