『BOXIL(ボクシル)』や『BALES(ベイルズ)/Biscuet(ビスケット)』などのSaaS事業を展開するマネーフォワード。
マネーフォワードは2012年に設立。2017年に上場して以来、5年連続で毎年40%前後ずつ売上を伸ばしている企業です。
ここまで高成長を遂げている企業の背景には何があるのでしょうか。
本記事で、マネーフォワードが上場してからの経営戦略や過去のM&A実績についてお伝えしていきます。
目次
マネーフォワードの経営戦略について
株式会社マネーフォワードのグループは以下4つの成長戦略を掲げています。
- バックオフィス向け最適化されたGo SaaStoMarketプラットフォームとしての提供価値向上と戦略の実現
- 大きな成長余地を有する複数事業への継続的な投資と、事業ドメイン間のシナジー創出
- 既存のアセットを活用した新たな事業/ プロダクトの開発
- 過去のPMI実績に示された、規律あるM&A(グループジョイン)戦略の遂行
4つ目の「M&A(グループジョイン)」が本記事の主軸であり、具体的には
- PMI(Post Merger Integration)のノウハウの蓄積によるグループジョイン後の成長加速
- グループジョインした企業の起業家・経営陣がグループ全体の経営に従事し、経営力を強化
としています。
マネーフォワードはM&Aでグループを拡大していくだけでなく、ジョイン側(売り手企業)の経営陣を退任させることなく、グループ全体の事業・経営に参加させるといった戦略をとっています。
マネーフォワードの急成長の背景にはM&A戦略
マネーフォーワードは上場来5期連続で、売上高・営業利益・EBITDAの期初見通しを達成し、急成長を遂げています。
その背景にはM&A戦略が成長の要因の一つとなっていると考えられます。
2017年の上場後、株式会社クラビスがマネーフォワードにグループジョインをしてから、毎年M&Aで企業を買収。
売上成長率は毎年40%前後の伸びを見せております。
SaaS企業のグループジョイン
近年では特にSaaS事業に力を入れており、マネーフォワードはSaaS×Fintech領域で国内最大級のユーザー基盤とプロダクトラインナップを提供するほどの企業になりました。
ここまでの高成長を支えているのが、SaaS事業のARR(Annual Recurring Revenue)です。
ARRとは、毎年確定して入る収益のことで、2021年度は112億2700万円。2022年度は約168億超を見込んでいます。
さらに、代表の辻氏は、2023年11月期にはARR200億円を目指したいと目標を掲げています。
グループジョイン後の各企業の業績成長
マネーフォワードの2021年11月期決算資料によると、2017年にグループジョインしたクラビス、2018年にグループジョインしたナレッジラボ、2019年にグループジョインしたスマートキャンプは、いずれもジョイン後、50%を超える成長を見せています。
マネーフォワードは継続的なM&Aにより各事業の売上高を伸ばし、グループ全体の業績を右肩上がりにし続けているのです。
マネーフォワードの過去のM&A
マネーフォーワードの過去のM&A実績は以下のとおりです。
年月 | ジョイン企業 |
2017年11月 | 株式会社クラビス |
2018年7月 | 株式会社ナレッジラボ |
2019年11月 | スマートキャンプ株式会社 |
2020年8月 | 株式会社アール・アンド・エーシー |
2021年12月 | HiTTO株式会社 |
2022年5月 | 株式会社Next Solution |
マネーフォワードが国内最大級のSaaS企業となった転機が、2019年のスマートキャンプ株式会社のグループジョインではないでしょうか。
スマートキャンプはSaaS事業を中心とし、『BOXIL』『BALES』など複数の事業を展開している企業です。
もともとベンチャーキャピタルから資金調達をしていたスマートキャンプの株を、マネーフォワードが全て買い取り、さらに経営陣が持つ株式の一部を約20億円で買い取ることで、計72.3%の持分を取得しました。
これによりスマートキャンプはマネーフォワードの子会社となり、SaaS事業を強化していくきっかけとなりました。
その後も、事業拡大のために毎年M&Aでグループジョインを実現していき、今では急成長企業として注目されています。
まとめ:マネーフォワードから学ぶM&A戦略
マネーフォワードは2017年の上場以来、バックオフィス向けSaaSを中心とした法人向けサービスの売上を中心に成長してきました。
その成長の背景にあるのが、M&Aによるグループジョインです。
マネーフォワードのように、「M&Aを経営戦略の一つにする」という企業は少なくありません。
スマートキャンプはM&Aでグループジョインした時点での平均年齢は「28.5歳」でした。
そのような若い会社であっても、事業・コンテンツがしっかりしていて将来性があると感じられた場合は、マネーフォワードのような大手企業からグループジョインを持ちかけられることがあるということが、これまでのM&A実績からもわかります。
資金力不足やリソース不足により、会社の成長が伸び悩んでいる場合は、M&Aでの売却やグループジョインという手段も検討材料の一つかもしれません。