M&AはMergers and Acquisitionsの略称で、日本語に訳すと「合併と買収」です。
企業の株式を購入して、経営権を確保するというプロセスがあるため、株式の購入費用が必要になります。
大企業であれば、M&Aの買収資金を全額自己資金で賄うこともできるかもしれませんが、資金に余裕がない場合はM&Aを断念しなければなりません。
そのようなときに活用したいのがM&Aの関連の補助金です。
この記事では、M&Aの補助金について解説します。
目次
M&Aの補助金とは
M&Aの補助金とは、M&A実施時に一定の要件を満たすことで国や地方自治体から支給される補助金です。
日本では中小企業が全企業の99%を占めており、多くの中小企業では経営者の高齢化が進んでいます。
そのため、事業が好調であり世界最先端の技術を有しているにも関わらず、廃業してしまうことも。
円滑な事業承継やM&Aをサポートするために、補助金制度が創設されています。
今回ご紹介する補助金は事業承継・引継ぎ補助金、事業承継補助金、経営資源引継ぎ補助金の3種類です。
M&Aの補助金1.事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金とは、中小企業庁が実施している制度です。
事業承継・引継ぎ補助金の制度は、事業承継や事業再編、事業統合など経営者が交代を機に、新しい取り組みを行う事業者に対し、経営革新実施費用の一部を補助する制度です。
事業承継・引継ぎ補助金の補助金は、以下2種類の類型があります。
- 事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)
- 事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)
これから事業を譲渡したい方や、事業や企業の買収を希望する方、事業承継や事業再編をきっかけに新しいチャレンジをしたい方は積極的に活用しましょう。
類型1.経営革新
事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)は、事業承継や事業の引き継ぎを契機に、中小企業に対し費用の一部を補助する制度です。
制度の対象は、以下2つに挑戦する中小企業です。
- 事業の再構築や設備投資
- 販路拡大などの経営革新
事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)は、【Ⅰ型】創業支援型、【Ⅱ型】経営者交代型、【Ⅲ型】M&A型の3つに分かれています。
【Ⅰ型】創業支援型
他の事業者が保有している経営資源を引き継いで創業した事業者への支援制度。
補助率:2/3、補助上限額は400万円
【Ⅱ型】経営者交代型
親族内承継等により経営資源を引き継いだ事業者への支援制度。
補助率:2/3、補助上限額は400万円
【Ⅲ型】M&A型
M&Aにより、経営資源を引き継いだ事業者への支援制度。
補助率:2/3、補助上限額は800万円
参考:令和2年度第3次補正予算 事業承継・引継ぎ補助金 創業支援型 経営者交代型M&A型【公募要領】
M&A型のみ補助上限額が他と異なる点に注意が必要です。
類型2.専門家活用
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)とは、M&Aを実施する際にM&Aの仲介業者に支払う手数料やデューデリジェンスにかかる費用、企業概要書作成費用など専門家を活用する際に費用の一部が補助される制度です。
この制度はさらに【Ⅰ型】買い手支援型、【Ⅱ型】売り手交代型の2つに分かれています。
【Ⅰ型】買い手支援型は事業再編・事業統合等に伴う経営資源の引継ぎを行う予定の中小企業者等が対象です。
譲受後にシナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれ、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれる場合に支給されます。
補助率は2/3、補助上限額は400万円の補助を受けられるものです。
【Ⅱ型】売り手交代型は事業再編・事業統合等に伴う経営資源を譲渡する予定の中小企業者等が対象です。
地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業等を行っており、事業再編・事業統合により、これらが第三者により継続されることが見込まれる場合に支給されます。
補助率は2/3、補助上限額は400万円の補助を受けられるものです。
補助金の受付期間・申請方法
事業承継・引継ぎ補助金の申請は2021年6月11日(金)から受付が開始されます。
受付期間は2021年7月12日(月)18:00までとなっています。
補助金の交付の可否は2021年8月中旬に決定することになっていますが、正確な決定日は申請者やその時の状況によって異なるようです。
本事業における補助事業期間は、交付決定日から最長で2021年12月31日(金)までとなっており、交付決定日以前に発生した経費は原則補助対象となりません。
したがって、交付決定日から2021年12月31(金)までに必要な事業を実施しましょう。
申請方法は「電子申請(Jグランツ)」のみでの受け付けとなります。
これは経済産業省が運営する補助金の電子申請システムであり、最初にアカウントを取得する必要があります。
M&Aの補助金2.事業承継補助金
中小企業庁が実施しているM&Aの関連の補助金であり、中小企業の事業承継を円滑にするための「事業承継・世代交代集中事業」という政策が背景にあります。
後継者不足によって廃業の可能性がある中小企業をM&Aによって承継する場合に中小企業庁が費用の一部を補助する制度です。
こちらの制度は令和2年度に実施されたものですが、令和3年度も同様に制度が実施される可能性があります。
令和2年度の制度では2つの類型が有り、【Ⅰ】経営者交代タイプと【Ⅱ】M&Aタイプに分かれています。
類型1.経営者交代タイプ
【Ⅰ】経営者交代タイプは親族内承継やM&Aを通じた経営者交代による承継の後に新しい取組を行った方を補助する制度です。
具体的な補助対象は以下のとおりです。
人件費、店舗等借入費、設備費、申請書類作成費用、知的財産権等関連経費、原材料費、謝金、旅費、マーケティ ング調査費、広報費、会場借料、外注費、委託費、在庫処分費、解体費及び処分費、移転・移設費
想定されるケースとしては精密プラスチック工場を経営していた先代が、同業他社で役員を務めていた息子に社長の座を承継した場合に息子が、 先代が培った技術と新たに導入した機械設備を活かして、新製品の開発による医療機器分野への進出を図る場合などです。
類型2.M&Aタイプ
【Ⅱ】M&Aタイプとは合併、会社分割、事業譲渡、株式交換・株式移転、株式譲渡など経営者交代のないM&Aなどによる事業承継が対象となっています。
そして、事業承継の後に新しい取組を行った方が補助の対象となっています。
具体的な補助対象は以下のとおりです。
人件費、店舗等借入費、設備費、申請書類作成費用、知的財産権等関連経費、原材料費、謝金、旅費、マーケティ ング調査費、広報費、会場借料、外注費、委託費、在庫処分費、解体費及び処分費、移転・移設費
想定されるケースとしては同じ印刷業を営みながらも異なる生産過程に強みを持つ二社が合併を決断し、お互いの強みを活かして 本業の効率化を目指すとともに、新たに個人顧客の小口注文への対応を強化し、新規顧客獲得を図る場合などです。
M&Aの補助金3.経営資源引継ぎ補助金
経営資源引継ぎ補助金は、令和2年度第一次補正予算に盛り込まれた補助金制度です。
新型コロナウイルスの感染拡大による経営悪化の影響が懸念される中小企業を支援することや、経営者の高齢化や後継者不足解消のために設けられた補助金制度です。
こちらの制度は新型コロナウイルスによる影響が懸念された令和2年度に実施されたものですが、令和3年度も同様に制度が実施される可能性があります。
令和2年度の制度では2つの類型が有り、【Ⅰ】買い手支援型と【Ⅱ】.売り手支援型に分かれています。
類型1.買い手支援型(1型)
買い手支援型(1型)とは事業再編・事業統合等に伴う経営資源の引継ぎを行う予定の中小企業・小規模事業者であり、以下の全ての要件を満たす方が対象です。
- 事業再編・事業統合等に伴う引継ぎの後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること。
- 事業再編・事業統合等に伴う引継ぎの後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること。
類型2.売り手支援型(2型)
売り手支援型(2型)とは事業再編・事業統合等に伴い経営資源の引継ぎが行われる予定の中小企業・小規模事業者であり、以下の要件を満たす方が対象です。
- 地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行っており、事業再編・事業統合等により、これらが第三者により継続されることが見込まれること。
補助金の受付期間・申請方法
令和3年度の申請受付期間は公表されていませんが、令和2年度の場合はオンライン申請と郵送申請が有り、それぞれ申請受付期間が異なりました。
オンライン申請の場合は2020年7月13日(月)~8月22日(土)19:00、郵送申請の場合は2020年7月13日(月)~8月21日(金)となっていました。
原則としては事務局が本補助金事業のWebサイト上に設置するオンライン申請フォームより 交付申請を行うことになっていますが、オンライン申請による交付申請が困難な場合は、郵送による交付申請も可としていました。
補助金が気になる方へ。信頼できるM&A専門家に相談しよう
今回はM&Aに関連する3つの補助金制度についてご紹介しました。
M&Aは取引そのものやM&A後にもお金が掛かります。
M&Aを活用することで資金に余裕のない中小企業でもM&Aを進めることができます。
しかし、その一方で経営に忙しい経営者の方が申請手続きをすべてこなすのはハードルが高いです。
したがって、補助金の利用にあたっては信頼できる専門家に相談するのが一番です。
パラダイムシフトはM&Aのサポートをしているアドバイザーです。
特にIT領域のM&Aに特化しており、M&A補助金のご相談も可能。
M&A補助金の利用を検討している経営者の方は、お気軽にお問い合わせください。