M&AはMergers and Acquisitionsの略称で、日本語に訳すと「合併と買収」です。企業の株式を購入して、経営権を確保するというプロセスがあるため、株式の購入費用が必要になります。
大企業であれば、M&Aの買収資金を全額自己資金で賄うこともできるかもしれませんが、資金に余裕がない場合はM&Aを断念しなければなりません。
「M&Aしたい企業はあるけど全額自己資金は難しい…」、そんなときに活用したいのがM&A関連の補助金です。
M&A関連の補助金としての側面を持っているのが、「事業承継補助金」と「経営資源引継ぎ補助金」です。両補助金は令和2年度に統合され、新たに「事業承継・引継ぎ補助金」になりました。
さらに、令和6年度(2025年度)からは「事業承継・引継ぎ補助金」の名称が「事業承継・M&A補助金」に変更され、M&A関連の施策・支援枠が強化されました。
この記事では、M&Aの3つの補助金について詳しく解説します。
目次
M&Aの補助金とは

M&Aの補助金とは、M&A実施時に一定の要件を満たすことで国や地方自治体から支給される補助金です。日本では中小企業が全企業の99%を占めており、多くの中小企業では経営者の高齢化が進んでいます。事業が好調で世界最先端の技術を有していても、残念ながら廃業してしまうことも少なくないです。
そこで、円滑な事業承継やM&Aをサポートするために、3つの補助金制度が創設されました。
- 事業承継・M&A補助金
- 事業承継補助金
- 経営資源引継ぎ補助金
下記では、それぞれの補助金について詳しく解説するのでぜひご覧ください。
M&Aの補助金1.事業承継・M&A補助金

事業承継・引継ぎ補助金とは、中小企業庁が実施している制度です。
事業承継・引継ぎ補助金の制度は、事業承継や事業再編、事業統合など経営者が交代を機に、新しい取り組みを行う事業者に対し、経営革新実施費用の一部を補助する制度です。
参考:事業承継・引継ぎ補助金Webサイト
事業承継・引継ぎ補助金の補助金は、以下2種類の類型があります。
- 事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)
- 事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)
これから事業を譲渡したい方や、事業や企業の買収を希望する方、事業承継や事業再編をきっかけに新しいチャレンジをしたい方は積極的に活用しましょう。
事業承継・引継ぎ補助金は、2025年度(令和6年度補正)から「事業継承・M&A補助金」と名称を変更されました。
公募枠
事業承継・M&A補助金には、目的や状況に応じて選べる4つの公募枠が用意されています。
- 事業の引継ぎを後押しする「事業承継促進枠」
- 専門家のサポートを受ける「専門家活用枠」
- M&A後の統合を支援する「PMI推進枠」
- 廃業や再挑戦を応援する「廃業・再チャレンジ枠」
それぞれの特徴を理解することで、自社に最も合った活用方法を見つけられるでしょう。
事業承継促進枠
事業承継促進枠は、今後5年以内に親族や従業員へ事業を引き継ぐ予定がある中小企業や小規模事業者を対象とした補助金制度です。対象となる経費は以下のとおりです。
- 機械装置の導入
- 特許取得にかかる費用
- 専門家への謝金や旅費
- 外注費
上記のようにさまざまな費用が経費として認められています。
補助金の上限額は基本800万円ですが、一定の賃上げを実施すれば最大1,000万円まで拡大可能です。補助率は中小企業で1/2、小規模事業者で2/3となり、規模の小さな事業者には手厚い支援が用意されています。
事業承継促進枠は、事業承継の準備に必要な投資を後押しし、スムーズな引継ぎを実現するための枠組みと言えます。
専門家活用枠
専門家活用枠は、M&Aを進める「買い手」「売り手」どちらの立場でも使える補助制度です。対象となるのはM&Aプロセスに必要な専門家への依頼費用で、デューデリジェンス費用や仲介手数料や表明保証保険料などです。
補助上限は通常600〜800万円ですが、デューデリジェンス(DD)費用があると200万円の上乗せが可能です。一定条件を満たす中堅企業では、2,000万円まで拡大される場合があります。補助率は、「買い手」側で最大2/3、「売り手」側は業績などに応じ最大2/3となり、専門家への支援が受けやすい枠組みです。
ただし、専門家活用枠を使うためには、申請の前に対象となる専門家が「M&A支援機関登録制度」に登録されていないといけないので必ず確認しましょう。
PMI推進枠
PMI推進枠は、M&A後の経営統合(PMI:Post Merger Integration)をスムーズに進めるために設けられた補助金です。統合の際に必要な専門家への依頼費用や設備投資などの経費が対象です。M&Aによって譲り受けた経営資源を活かし、生産性向上につながる投資に活用されます。
例えば、設備導入や業務統合のためのシステム導入などが該当し、投資で非効率な部分を改善しコスト削減が期待される取り組みに使えます。補助上限は800万円〜1,000万円で、150万円の廃業・再チャレンジ枠との併用も可能です。
廃業・再チャレンジ枠
廃業・再チャレンジ枠は、M&Aがうまくいかず、今の事業をやめて新しい挑戦を考えている中小企業や個人事業主を助けるための補助枠です。対象となる事業を廃業するときにかかる経費は以下のとおりです。
- 廃業の手続き費用
- 在庫品の処分費
- 古い設備の解体費
- 貸していた場所の原状回復費
- 設備の移転や移設費用
補助率は3分の2以内で、補助上限は最大150万円です。他の補助枠(事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠)と一緒に申請できるため、廃業・再チャレンジ枠は新しいスタートを応援してくれる制度です。
補助金の受付期間・申請方法
12次公募(令和6年度補正予算)では、公募要領が2025年7月18日(金)に公開され、申請受付期間は2025年8月22日(金)から9月19日(金)17時までと定められています。締切厳守で期日を過ぎた申請は受け付けられません。申請方法は、インターネットによる電子申請「jGrants(J-グランツ)」経由のみです。
ファイルを添付する際には、パスワードは設定しないよう注意事項に記載があります。申請には事前にGビズIDプライムアカウントの取得が必要で、取得には1〜3週間程度かかることも気を付けなければいけません。GビズIDアカウントを作成したい方はこちらの記事をご覧ください。
M&Aの補助金2.事業承継補助金

事業承継補助金は、後継者不足によって廃業の可能性がある中小企業をM&Aによって承継する場合に中小企業庁が費用の一部を補助する制度です。(※令和2年度に経営資源引継ぎ補助金が統合され、「事業継承・M&A補助金」となりました。)
中小企業庁が実施しているM&Aの関連の補助金であり、中小企業の事業承継を円滑にするための「事業承継・世代交代集中事業」という政策が背景にあります。
事業承継補助金には以下の2つの類型があります
- 経営者交代タイプ
- M&Aタイプ
下記ではそれぞれの特徴を詳しく解説していきます。
類型1.経営者交代タイプ
経営者交代タイプは、親族内承継やM&Aを通じた経営者交代による、承継の後に新しい取り組みを行った方を補助する制度です。具体的な補助対象の一例は以下のとおりです。
- 人件費
- 店舗等借入費
- 設備費
- 広報費
- 外注費
例えば、工場を経営していた先代が同業他社で役員を務めていた息子に社長の座を承継した場合、息子が先代が培った技術と新たに導入した機械設備を活かして、新製品の開発による医療機器分野への進出を図る場合などです。
類型2.M&Aタイプ
M&Aタイプとは、合併や会社分割、事業譲渡、株式交換など経営者交代のないM&Aなどによる事業承継をし、事業承継の後に新しい取り組みを行った方が補助対象です。具体的な補助対象の費用は以下のとおりです。
- 申請書類作成費用
- 知的財産権等関連経費
- 外注費、委託費
例えば、同じ印刷業を営みながらも異なる生産過程に強みを持つ二社が合併を決断し、お互いの強みを活かして本業の効率化を目指す場合です。新たに個人顧客の小口注文への対応を強化し、新規顧客獲得を図るために補助金が活用できます。
M&Aの補助金3.経営資源引継ぎ補助金

経営資源引継ぎ補助金は、令和2年度第一次補正予算に盛り込まれた補助金制度で、経営者の高齢化や後継者不足解消のために設けられた補助金制度です。(※令和2年度に事業承継補助金と統合され、「事業継承・M&A補助金」となりました。)
以下のように2つの類型があります。
- 買い手支援型(1型)
- 売り手支援型(2型)
ここからは、経営資源引継ぎ補助金2つの類型について詳しく解説します。
類型1.買い手支援型(1型)
買い手支援型(1型)とは、事業再編・事業統合等に伴う経営資源の引継ぎを行う予定の中小企業・小規模事業者であり、以下の全ての要件を満たす方です。
- 事業再編・事業統合等に伴う引継ぎの後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること。
- 事業再編・事業統合等に伴う引継ぎの後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること。
補助対象となる経費には、設備投資やシステム導入、外注費、技術導入に関する費用などです。補助金の上限額は800万円程度で、一定の条件を満たせば1,000万円まで拡大されます。買い手企業が地域や業界での成長を加速させることが期待されています。
類型2.売り手支援型(2型)
売り手支援型(2型)とは、事業再編・事業統合等に伴い経営資源の引継ぎが行われる予定の中小企業・小規模事業者であり、以下の要件を満たす方です。
- 地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行っており、事業再編・事業統合等により、これらが第三者により継続されることが見込まれること。
補助対象となる経費には、事業譲渡に伴う専門家への報酬や登記関連費用、契約書作成費用などが含まれます。補助金の上限額は150万円程度で、補助率は2/3以内となっています。売り手企業がスムーズに経営資源を承継先へ引き渡し、地域経済や雇用の安定につなげられるでしょう。
補助金の受付期間・申請方法
令和3年度の申請受付期間は公表されていませんが、令和2年度の場合はオンライン申請と郵送申請があり、それぞれ申請受付期間が異なりました。
オンライン申請の場合は2020年7月13日(月)~8月22日(土)19:00、郵送申請の場合は2020年7月13日(月)~8月21日(金)となっていました。
原則としては事務局が本補助金事業のWebサイト上に設置するオンライン申請フォームより 交付申請を行うことになっていますが、オンライン申請による交付申請が困難な場合は、郵送による交付申請も可としていました。
補助金が気になる方へ。信頼できるM&A専門家に相談しよう

M&Aは中小企業の未来を守る重要な手段ですが、株式取得や統合には大きな資金が必要です。そんなとき心強いのが「事業承継・M&A補助金」をはじめとする各種制度です。
事業の引継ぎや統合を円滑に進めるための費用を支援してくれるため、挑戦のハードルを大きく下げてくれます。ただし、制度ごとに要件や申請方法が異なるため、専門的な知識が欠かせません。まずは信頼できるM&A専門家に相談し、自社に最適な補助金の活用方法を確認しましょう。
行動を起こすことで、未来の成長と事業継続のチャンスをつかめるはずです。
M&AアドバイザリーとしてM&Aに関連する一連のアドバイスと契約成立までの取りまとめ役を担っている「株式会社パラダイムシフト」は、2011年の設立以来豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。
パラダイムシフトが選ばれる4つの特徴
- IT領域に特化したM&Aアドバイザリー
- IT業界の豊富な情報力
- 「納得感」と「満足感」の高いサービス
- プロフェッショナルチームによる適切な案件組成
M&Aで自社を売却したいと考える経営者や担当者の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
またM&Aを成功させるためのコツについて全14ページに渡って説明した資料を無料でご提供しますので、下記よりダウンロードしてください。