会社を気持ちよく閉幕させる際には、清算人が重要です。清算人は、終わりを迎える企業の最後の責任を担う人のことです。
しかし、具体的にどのような職務内容や役割、選定方法があるのか、経営者でも知らない人が多いです。
会社経営には長けているものの、法律や清算手続きについての知識に自信がない人々にとって、清算人の知識不足は将来的に大きな不安材料となります。
清算手続きを誤ることで、追加コストや法的責任、会社の信用失墜といった避けたい未来につながる可能性があるのです。
この記事は、清算人の基本情報や職務内容と役割、選定方法などをわかりやすく解説します。
記事を最後まで読むことで、清算人としての責任と役割を明確に理解できるため、法律的なリスクや問題を未然に防ぐための実践的な知識が得られます。
清算手続きをスムーズかつ効率的に進めることで、会社と関係者への影響を最小限に抑えられるでしょう。
目次
清算人とは清算中の会社の業務を執行する人
清算人は、会社が解散する際に清算プロセスの責任を持って管理・実行する人です。
具体的には以下のような役割を担います。
- 会社の資産を現金化
- 債権者への債務を弁済
- 残余財産を株主に分配する
清算人は会社の事業終了までの間、財産の評価や売却、債権の回収、法的手続きの遵守などの清算活動を、継続的に進める責任があります。
ただし、清算人が責任を果たさない場合、法的な責任を問われる可能性があるので注意が必要です。
清算人になるためには、通常特定の資格が必要とされますが、国や地域によって異なります。
また、清算人の任期は数ヶ月〜数年に及ぶこともあり、すべての法的手続きが終了した時点で清算人の役割は終了となります。
適切な資格と知識を有する清算人を選出することは、スムーズで公正な清算プロセスを保証する上で不可欠です。
清算人の職務内容と役割
清算人の職務内容と役割は多岐にわたり、会社の清算プロセスにおいて極めて重要な役割を果たします。
清算活動を通じて、清算人は会社を公正かつ効率的に解散させるためのキーパーソンです。
下記では、清算人の職務内容と役割について詳しく解説します。
現務の結了
清算人の職務内容の中で「現務の結了」は、会社が解散する過程で最初に取り組むべき重要なステップです。「現務の結了」は会社法第481条に定められています。
(清算人の職務)
第四百八十一条 清算人は、次に掲げる職務を行う。
一 現務の結了
二 債権の取立て及び債務の弁済
三 残余財産の分配
引用元:会社法
現務の結了の具体的な内容は以下のとおりです。
- 進行中のプロジェクトの終了
- 未完の契約の解消
- 事業活動の停止
現務の結了により、会社の資産が正確に評価されて清算の準備が整います。
清算人は会社の財産を保全することで、清算プロセスを円滑に進めるための基盤を築きます。
残余財産の分配
清算人にとって「残余財産の分配」は、清算プロセスの最終段階の重要な責務で、会社法第481条に定められています。
(清算人の職務)
第四百八十一条 清算人は、次に掲げる職務を行う。
一 現務の結了
二 債権の取立て及び債務の弁済
三 残余財産の分配
引用元:会社法
清算人は、会社の負債を全て清算した後の残余財産を、株主に対して法律や定款に基づき分配する必要があります。
残余財産の分配は、会社の資産を公正に評価した後、債権者への支払いを完了した上で行わないといけません。
正確な財産の評価と公平な分配は、清算人の責務を果たす上で最も重要な要素の一つです。
債権の取立て及び債務の弁済
清算人が担う「債権の取立て及び債務の弁済」は、清算プロセスにおける中核的な活動です。
清算人は、会社の債権を回収した資金を用いて債権者に対する債務を弁済することで、債権者との間の法的な義務を解消させます。
日本の会社法によると、清算人は「清算に必要な行為」に値する債権の回収や債務の支払いができます。
責務の適切な実行によって、清算人は会社の財務を正確に清算できるため、すべての債権者に対する公平な扱いが保証できるのです。
正確な債権回収と公正な債務弁済は、清算プロセスの透明性と公正性を保持して、最終的に会社の清算を円滑に進められるでしょう。
清算人は清算結了を行って会社を終わらせる
会社の清算プロセスにおいて、清算人は最終的に清算結了を行って会社を終わらせないといけません。
清算人は、すべての債権の回収と債務の支払いを完了させ、残余財産の分配を行った後、法的手続きを通じて会社を解散させます。
清算人が責任を果たすことで、会社が法的にも財務的にも完全に閉鎖されたことを保証します。
清算人による清算結了の実行は、会社が法的存在を終えるために不可欠です。
清算人の義務
清算人は、清算プロセスを適切に管理するために、法律により定められた複数の義務を負います。
清算人が負う義務は、公平かつ透明性のある方法で行動することで、会社の利益や債権者の権利を保護するために設けられています。
下記で詳しく清算人の義務を解説するので参考にしてください。
報告義務
清算人の「報告義務」は、透明性と信頼性を確保するために不可欠な義務です。
報告義務により、清算人は清算プロセスの進行状況や財務状況について、債権者や株主に定期的に報告を行う必要があります。
また、清算事務が終了した際は遅れることなく決算報告をしないといけません。(会社法第507条)
第五百七条
清算株式会社は、清算事務が終了したときは、遅滞なく、法務省令で定めるところにより、決算報告を作成しなければならない。
2 清算人会設置会社においては、決算報告は、清算人会の承認を受けなければならない。
3 清算人は、決算報告(前項の規定の適用がある場合にあっては、同項の承認を受けたもの)を株主総会に提出し、又は提供し、その承認を受けなければならない。
4 前項の承認があったときは、任務を怠ったことによる清算人の損害賠償の責任は、免除されたものとみなす。ただし、清算人の職務の執行に関し不正の行為があったときは、この限りでない。引用元:会社法
関係者がいつでも正確な情報を得られることで、清算の透明性が高まります。
忠実義務
清算人の「忠実義務」は、会社の利益を最優先に考え、自己利益や第三者の利益を会社の利益よりも優先させないことを指します。
清算人は、公平かつ透明性の高い方法で清算プロセスを遂行することで、すべての関係者に対して公正であることを保証するためです。
清算人が忠実義務を守ることにより、債権者や株主を含むすべての利害関係者の信頼を獲得できるため、清算プロセスの公正性と透明性を確保できます。
競業避止義務
清算人には「競業避止義務」が課せられています。競業避止義務は、清算人が清算対象の会社と利害関係が競合するような行為を避ける義務です。
目的は、清算プロセス中に清算人の個人的な利益が会社の利益を優先することを防ぐためです。
たとえば、清算人が自身の利益のために、会社の資産を不適切に処分すると、競業避止義務に違反する行為となります。
会社法においても、清算人が清算業務を行う際は、会社の利益を最優先する行動を取ることが求められています。
競業避止義務を守ることで、清算プロセスの公正性が保証されるため、債権者や株主の信頼を維持できるのです。
利益相反取引の制限
清算人に課せられた「利益相反取引の制限」は、清算プロセスの公正性と透明性を守る上で極めて重要な義務です。
利益相反取引の制限は、清算人が自身の利益を追求することで、会社や債権者の利益を損なうことを防ぐためです。
具体的には、清算人が清算プロセス中に、自身または関係者が経済的利益を得る取引を行うことを制限しています。
また、会社法第356条では、清算人が自己の利益と会社の利益が競合する可能性のある場合は、あらかじめ株主総会の承認を得ることを義務付けています。
(競業及び利益相反取引の制限)
第三百五十六条 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。引用元:会社法
利益相反取引の厳格な管理は、すべての関係者にとって公平な清算を保証する上で重要な役割を果たします。
清算人は誰がなる?4つの選定方法
清算人の選定は、会社の清算プロセスを円滑に進めるための重要な要素です。
下記では、会社の閉幕に重要なキーパーソンを選定する方法を4つ詳しく解説します。
代表取締役がなる(代表清算人)
清算人の選定方法の一つは、代表取締役がなるケースです。
代表取締役が清算人になるメリットは、代表取締役が社内で最も会社の事業や財務状況を深く理解している可能性が高いからです。
会社を深く理解している人が清算人を務めたほうが、清算プロセスを迅速かつ効率的に進められます。
しかし、代表取締役が清算人になるには、株主の同意が必要となる場合が多く、会社法や定款で定められた手続きに従う必要があります。
裁判所が清算人を選ぶ
清算人の選定方法には、裁判所が清算人を選ぶケースがあります。
裁判所が選定するのは、会社の解散が特定の問題によって複雑な状況にある場合です。
裁判所は、専門知識や経験、中立的な立場を持つ人物を清算人として選定することで、清算プロセスが透明かつ公正に行われることを保証するのです。
裁判所による清算人の選定は、債権者や株主間の利害対立を解決へと導くことで、清算プロセスを円滑に進めるためのよい手段となるでしょう。
株主総会で清算人を選ぶ
清算人は株主総会で選ばれる場合があり、会社の解散に際して最も一般的です。会社の株主が集まり、清算を行う人物または団体を選定します。
株主総会による選出は、会社に対する株主の意志を反映させるという点で重要な意味を持ちます。
株主は、会社の運営や財務状況に精通している、または特定の専門知識を有する人物を清算人として選ぶことができるため、清算プロセスの透明性と効率性が確保できるのです。
株主総会での清算人の選定は、会社の利害関係者が直接関与することで、公平かつ公正な清算プロセスの実施を保証するでしょう。
定款で定められた人がなる
清算人になる方法には、定款で定められた人がなる場合もあります。
定款で定められた人が清算人になる大きなメリットは、清算プロセスが始まる前から清算人が誰であるかが明確になっていることで、解散の際の混乱を避けて迅速な対応ができることです。
清算人は、会社の事業や財務状態に精通している人がなったほうが、効率的かつ効果的に清算プロセスを遂行できます。
定款による清算人の指名は、事前の計画と準備を重視する会社にとって適切な選択肢となるでしょう。
まとめ:清算人は責任をもって気持ちよく会社を閉じよう!
清算人は、会社の清算プロセスにおいて極めて重要な役割を担う人です。
清算人の職務は以下のように多岐にわたります。
- 会社の事業や契約などを終了させる
- 会社の資産を現金化する
- 債権者への債務を弁済する
- 残余財産を株主に分配する
しかも、清算人は、報告義務や忠実義務、競業避止義務、利益相反取引の制限など、厳格な義務の下で行動しなければなりません。
清算人が持つ責任と権限は、清算プロセスを進める上で、会社や債権者、株主、従業員の未来に大きな影響を与えます。
そのため、清算人は専門知識と公平な判断力を持ち合わせて、関係者全員に対して透明性を保ちながら責任を持って行動することが求められます。
会社を気持ちよく閉じるためには、清算人が公正かつ効率的に職務を遂行し、すべてのプロセスを適切に管理することが重要です。
名誉を持って会社の歴史に幕を閉じ、すべての関係者が納得のいく結末を迎えられるようにしましょう。
M&AアドバイザリーとしてM&Aに関連する一連のアドバイスと契約成立までの取りまとめ役を担っている「株式会社パラダイムシフト」は、2011年の設立以来豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。
パラダイムシフトが選ばれる4つの特徴
- IT領域に特化したM&Aアドバイザリー
- IT業界の豊富な情報力
- 「納得感」と「満足感」の高いサービス
- プロフェッショナルチームによる適切な案件組成
M&Aで自社を売却したいと考える経営者や担当者の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
またM&Aを成功させるためのコツについて全14ページに渡って説明した資料を無料でご提供しますので、下記よりダウンロードしてください。