法人の税金は、主に法人税が中心で、会社の所得規模により税率が変化します。所得の大小に比例して、納税するべき税金も変わるのです。
税務署や税理士は、正しい納税のルールを教えてくれますが、税金対策や節税方法を教えてくれないことも多くあります。税金対策を実践しているつもりでも、細かいところまで手が届いておらず、更に節税できる可能性があるかもしれません。
今回は、税金対策について、ポイントや具体的な方法や注意点を詳しく解説していきます。
目次
- 1 法人における税金の仕組
- 2 法人の税金対策のポイント
- 3 損金や控除制度で納税額を減らす
- 4 投資で納税額を減らす
- 5 会社や従業員のための費用を節税に当てる
- 6 具体的な法人税への対策方法12選
- 7 課税対象になる所得額を減らす
- 8 役員報酬を増やす
- 9 出張費の計上・出張旅費規程の作成
- 10 共済制度に加入
- 11 HP代やサーバー費用を経費で落とす
- 12 書籍代、セミナー代を経費で計上
- 13 未払い計上の項目を確認する
- 14 損金を増やし所得額を減らす
- 15 減価償却資産を全額一括で処理
- 16 決算賞与の実施
- 17 特別控除制度を利用する
- 18 別会社設立
- 19 雇用促進税制の活用
- 20 エンジェル税制
- 21 社用車を導入する
- 22 社用車にカーナビを設置する
- 23 オフィスの家賃を前払いにする
- 24 法人用の生命保険に加入する
- 25 健康診断を実施する
- 26 社内旅行を計画する
- 27 広告宣伝費に予算を割く
- 28 在庫を処分する
- 29 売却損
- 30 廃棄損
- 31 評価損
- 32 取引先との交際費を経費にする
- 33 法人が税金対策をする場合の注意点
- 34 計画的に節税する
- 35 不明瞭な会計処理を避ける
- 36 無駄に出費をしない
- 37 法律を遵守する
- 38 法人の税金を正しく理解して自社に合った税金対策をしよう
法人における税金の仕組
法人の税金は、個人の税金よりも大きな額になるため、節税により大きなお金が会社に残ります。
税務署や税理士は、正しい税金の納め方をサポートしてくれる存在ですが、節税の方法を教えてくれるわけではありません。自分たちで知識を得て、正しい節税のノウハウを知った分だけ、節税効果が大きくなります。
法人の税金は「法人税」、「法人住民税」、「法人事業税」の3種類に分かれ、集約して「法人税等」と呼ばれます。
3つの税金の金額は、益金から損金を差し引いた所得に税率を掛けます。その数値から、各種控除を差し引き算出したものが納税金額になります。
税率は所得によって異なり、8百万円以下の場合は15%、8百万以上の場合は23.2%です。
法人の税金対策のポイント
法人の税金対策のポイントはいくつかあります。今回は主な3つを紹介します。
- 損金や控除制度で納税額を減らす
- 投資で納税額を減らす
- 会社や従業員のための費用を節税に当てる
1つずつ詳しく見ていきましょう。
損金や控除制度で納税額を減らす
代表的なものは、損金を増やす・控除制度を利用する等で納税額を減らす方法です。
どのような項目が損金として計上できるのか、どのような控除制度があるのか、情報を収集し、自社が該当するのかを精査する必要があります。
投資で納税額を減らす
損金や控除についてはよく知られていますが、投資で納税額を減らす方法を知っている人が少ないのではないでしょうか?
投資で納税額を減らすには、2つの種類があります。
- 設備・環境を整備のために投資し、消費活動をする
- 会社の将来のために投資をする
この2つを、どのタイミングで実施するのかが重要になります。自社の利益を定期的に把握し、より良いタイミングで決断できるようにしましょう。
会社や従業員のための費用を節税に当てる
従業員のために福利厚生を充実させる・保障のために保険や共済制度に入るなどの方法で、自社の従業員のために使ったお金を、節税に当てる方法もあります。
これらの保険料や福利厚生費は、損金に当てはまるものも多いため、その分納税額が減り、節税を実現できるのです。
具体的な法人税への対策方法12選
この項では、より具体的な法人税の対策方法12選を紹介します。
課税対象になる所得額を減らす
所得額は、売上から費用(経費)を差し引いて計算するため、費用の金額が大きい分、課税対象になる金額が低くなり、節税しやすくなります。
費用(経費)は、収益を得るために事業で使用したお金です。費用(経費)になる項目は多く、把握できていないものがあるかもしれません。それらを細かく確認・把握すると、節税できる可能性も必然的に高くなります。
- 役員報酬を増やす
- 出張費の計上・出張旅費規程の作成
- 共済制度に加入
- HP代やサーバー費用を経費で落とす
- 書籍代、セミナー代を経費で計上
- 未払い計上の項目を確認する
それぞれ具体的に説明します。
役員報酬を増やす
役員の報酬は、損金として計上できます。そのため、役員の報酬を増やす・役員の人数を増やすなどの方法で役員報酬を増やす手法は、頻繁に使われる節税対策です。
しかし、一人当たりの報酬を増やしすぎると、個人で収める住民税や所得税も増えるため、バランスが取れた適切な報酬額を設定することが重要になります。
関連記事:役員報酬を活用して節税する方法とは?中小企業の節税テクニックを解説
出張費の計上・出張旅費規程の作成
出張費の中には、交通費・宿泊費・接待費など、経費として落とせる項目が多くあります。これらを経費で落とせば、税金対策になります。
出張費を経費で落とす場合には、税務調査対策も兼ねて出張旅費規定を作成しましょう。
出張旅費規定は、どのような項目をいくらまで経費で落とせるのか、できる限り具体的に定めるのがポイントです。
共済制度に加入
共産制度は、小規模企業共済を指します。小規模企業共済の掛け金は、支払った分だけ経費として計上して節税できます。
小規模企業共済に加入しておくことで、事業が廃業になった際でも退職金を受け取れます。一定の条件を満たせば、事業融資を受けられるほか、老後の保障としても有効でしょう。
HP代やサーバー費用を経費で落とす
会社のホームページ運営のための費用も、経費で落とせる場合があります。ドメイン取得費を経費で落とす・レンタルサーバー代を年払いにして経費で落とすなどの方法があります。
書籍代、セミナー代を経費で計上
事業で必要な書籍代やセミナー参加の費用も経費として計上できます。この場合、自社の経営や、事業に関係があるものに限定されるため注意しましょう。
未払い計上の項目を確認する
未払い計上とは、将来に債務が確定しているものを指します。
例えば、3月を決算月としている場合、2月分や3月分の支払いは銀行口座からの引き落としやクレジットカードの引き落とし日の関係で、3月末以降になることがあります。
これらの支払いを決済時に未払い計上として申告すると、経費が増えるため、課税対象額が低くなり節税できる仕組みです。
未払い計上の具体的な項目は、賃料や固定資産税、従業員への給料、光熱費、保険料、通信代など、毎月支払いのあるものの多くが該当します。
他にも、ショッピングモールの出店費用なども該当する場合があります。
未払い計上できる項目は、多くのものが該当するため、1つ1つの支払いが小さくても、合わせると大きな額になります。
損金を増やし所得額を減らす
損金とは、資本や取引を除いた資産の減少となる損失です。法人の税務用語として使われていますが、具体的にどの項目が損金の対象なのでしょうか?
損金が増えると税務上の利益が減り、課税される額が少なくなります。しかし、発生した全ての費用が損金になるのではなく、上限や決まりがあります。
この項では、損金として扱われていない項目を損金に回し、所得額を減らす以下の2つの方法を紹介します。
- 減価償却資産を全額一括で処理
- 決算賞与の実施
減価償却資産を全額一括で処理
「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」と呼ばれる制度があります。この制度は、30万円未満の減価償却資産を取得した場合、購入にかかった金額を一括で損金にできる制度です。
該当するかどうかは、会社の規模によります。自社が該当するかどうか、ぜひ調べてみてください。
決算賞与の実施
決算の前後で給与を支給すると、損金として計上できます。
予想よりも大きな利益が出た際に税金とのバランスを見て使われることの多い手法で、未払いでも損金として計上できます。
節税だけでなく、社員のやる気を引き出すのにも効果的です。
特別控除制度を利用する
特別控除制度とは、国や自治体が実施している制度です。条件を満たすと一定額の税金を控除してくれます。具体的なものとしては以下のものがあります。
- 別会社設立
- 雇用促進税制の活用
- エンジェル税制
別会社設立
子会社やグループ会社を設立すると、さまざまな節税効果が期待できます。
新会社の設立は、売上げが1000万円以下の場合、消費税免除となり、資本金1億円以下の会社には軽減税率が適用されます。
消費税免除や軽減税率の適用も大きな節税になります。事業が好調ならぜひ検討してみましょう。
雇用促進税制の活用
一定の地域で、フルタイム・無期限の雇用を増やすと税金の控除を受けられる制度です。
決められた条件を満たすと、法人税の控除を受けられるため、事業の拡大を検討する企業におすすめの制度です。
出典:厚生労働省|雇用促進制度
エンジェル税制
エンジェル制度とは、起業家に投資をした際に受けられる控除制度です。対象となる投資先は決まっており、投資した額を控除してもらえます。
事業の一貫で、投資活動をする際におすすめの方法です。優遇措置にはいくつかの種類があるため、詳細は中小企業庁の公式ページで確認してみましょう。
社用車を導入する
個人で使用している自家用車がある場合、社用車に変更し、取得費用を経費として計上しましょう。
燃料費や、有料交通費・車検の費用・自動車保険も経費として計上できます。
カーリースとして車を使用している場合も、法人向けリースプランで、末期に翌年度のリース料を一括で支払えば、リース代を全て経費として計上できます。
社用車にカーナビを設置する
社用車は通常、固定資産となり減価償却の対象となります。そのため、1年の経費に計上できず、節税対策は出来ないということになります。
しかし、後からカーナビを設置した場合、車両とは別の固定資産として取り扱われ、経費としての計上が可能となります。
オフィスの家賃を前払いにする
先の項で賃料は未払いの計上可能な項目として紹介しました。これのより大きな当期分は大きな節税となります。しかし、節税としても高価があるのは最初の1年だけで、それ以降は税金の繰越対策として考える必要があります。
しかし、賃料を短期前払費用とすることで経費として計上できるようになります。短期前払費用は、1年以内に受けるサービスなどを指し、支払い時にまとめて経費として計上します。
法人用の生命保険に加入する
法人向けの保険には、種類により、保険料を損金にできるものもあります。
また、保険料の一部から全額を損金にでき、掛け捨てでない保険に加入すれば解約時に現金が戻るものあります。
実質的な節税にはなりませんが、計画的に加入する、納税を繰り越すことができます。
保険に入る本来の意味は、従業員やその家族を保証することです。万一の場合にも安心できるほか、福利厚生を充実させる効果もあります。
関連記事:法人保険の節税はできない!基本用語や仕組みを徹底解説。
健康診断を実施する
健康診断・人間ドックの費用も、福利厚生費として計上できます。条件として、社員全員を対象とし、費用は会社が負担することが条件となります。
社内旅行を計画する
社員旅行の実施は、条件を満たせば、福利厚生費として計上できる場合があります。
社員旅行は4泊以内で、一人当たりの旅費10万円程度が、福利厚生費として計上できる条件です。
ただし、社員の過半数以上の参加が必要・従業員の家族や同伴者の分は計上できないなどの制約があるため注意が必要です。
広告宣伝費に予算を割く
会社の広告としてかけた費用は経費として計上できます。広告宣伝費として落とせる費用は幅広く、具体的には以下のものが挙げられます。
- 会社のパンフレット作成
- 会社の看板やポスターの作成費
- 雑誌や新聞への掲載費用
- 商品やサービスのチラシ作成
- 会社のホームページ作成の費用
- インターネット広告の作成費や維持費用
広告宣伝費に予算をさくことで節対策だけでなく、会社の宣伝効果もあり大きなメリットとなります。
在庫を処分する
在庫を要する業種や企業の場合、現在ある在庫は資産として残っていることになります。これらの商品を不良在庫として処分、または、値引きして販売し、損金として計上できます。
不良在庫に関する経費には、売却損、廃棄損、評価損の3種類があり、それぞれの意味は以下の通りです。
売却損
不良な商品在庫や固定資産を原価よりも安く売却し、その際に発生した費用を経費として計上することができます。
廃棄損
不良な商品在庫や固定資産の中で売却できないものは全額を経費として計上できます。
評価損
不良な商品在庫や固定資産の中で、評価額が原価を下回った場合、その差額を全額経費にできます。
これらを処分した場合には、破棄処分証明書を保管しておくのを忘れないようにしましょう。
取引先との交際費を経費にする
取引先との交際費の中にも経費として計上できるものがあります。特に、接待時に発生する飲食費が代表的です。しかし、交際費として計上できる金額の限度は会社の規模によって異なるので注意が必要です。
交際費の詳細については国税庁のホームページに詳細が記載してあるため確認してみましょう。
法人が税金対策をする場合の注意点
最後に法人が税金対策をする上での注意点について紹介します。
- 計画的に節税をする
- 不明瞭な会計処理を避ける
- 無駄に出費をしない
- 法律を遵守する
注意点は以上の4点です。
計画的に節税する
法人での節税は計画的に実施することをお勧めします。節税対策は実施した場合と実施していない場合で納税額は大きく変わります。
決算の1年前には計画を立て、丁寧な会計資料を作成しましょう。判断が難しい場合には実行せず税理士に相談することをおすすめします。
不明瞭な会計処理を避ける
節税対策をむやみに多く実施していると、適切な納税ができず、不明瞭な会計処理が多くなってしまいます。これを避けるためには経営管理のための資料を作成することをおすすめします。
無駄に出費をしない
損金を増やしたいからと無駄に出費をしすぎてしまうと、会社の経営に支障をきたす恐れがあります。会社の経営に支障をきたさない範囲で健全な節税を心がけましょう。
法律を遵守する
今回紹介した節税方法過度にしてしまうと違法となる恐れがあります。税務署に指摘されてからでは、多くの時間と労力がかかり、精神的にも支障をきたすだけでなく、法人としての信用を下げる結果となるかもしれません。
節税は法律を遵守し、納税の義務を守った範囲内で実施しましょう。
法人の税金を正しく理解して自社に合った税金対策をしよう
今回の記事では、法人の税金対策について、ポイントや具体的な方法、注意点について解説しました。
節税について、意識する・意識しないとでは、納税金額に大きな差が出ます。
今回紹介した税金対策で、当てはまるものはぜひ活用して節税に活かしてみてください。
パラダイムシフトは2011年の設立以来、豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。
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