バイアウトは、経営の悪化や後継者不足の際に経営陣や従業員が会社の株式を買取る方法です。
企業を買収して営業権を獲得するM&Aの手法の1つでもあります。
それとは別でイグジットを目的として実施されるケースもあり、他社の株式を過半数以上取得し、経営権を得るという意味でも使われます。
今回はバイアウトの種類や手順、ポイント・注意点などを経営者の視点で解説します。
バイアウトのポイントや注意点を理解し、経営戦略の一つになるかどうか、考えてみましょう。
目次
- 1 バイアウトとは
- 2 バイアウトとM&Aの違い
- 3 バイアウトとイグジットの違い
- 4 MBO(マネジメントバイアウト)とは
- 5 MBOのメリット
- 6 MBOのデメリット
- 7 MBOの具体的な手順
- 8 EBO(エンプロイー・バイアウト)とは
- 9 EBOのメリット
- 10 EBOのデメリット
- 11 EBOの具体的な手順
- 12 LBO(レバレッジド・バイアウト)とは
- 13 LBOのメリット
- 14 LBOのデメリット
- 15 LBOの具体的な手順
- 16 バイアウト(事業売却)を成功させるポイント
- 17 ポイント1 起業時からバイアウトを視野に入れる
- 18 ポイント2 自社の企業価値を正確に算出する
- 19 ポイント3 専門家に依頼する
- 20 バイアウト(事業売却)の注意点
- 21 注意点1 従業員の待遇に注意を払う
- 22 注意点2 買い手企業の要望を正しく取り入れる
- 23 注意点3 経営者が保有する株式を残すことも考慮
- 24 バイアウトを考えるなら自社の状況を見極めておく
バイアウトとは
バイアウトは、会社の株を従業員や他の経営者が買い取ることを指します。
また、ある会社の株式の過半数以上を習得し、経営権を握ることと定義する場合もあります。
前者のバイアウトは主に、経営者不足や業績悪化などを立て直すために使われる手法です。
バイアウトには、誰が会社の株を買うかにより、以下の3つの種類に分けられます。
- MBO(マネジメントバイアウト)
- EBO(エンプロイー・バイアウト)
- LBO(レバレッジド・バイアウト)
バイアウトとM&Aの違い
バイアウトとは会社の経営が悪化した際に経営者や従業員が自社を買収することです。この買収で投資した資金を経営再建の費用に当て、会社を再建することを目的としています。
企業の譲渡・承継する点でM&Aと類似しますが、M&Aは他社を買収して利益拡大を目指す反面、バイアウトは業績が悪化する自社の立て直しを図ります。手法は似ていますが目的は異なるのです。
バイアウトはアメリカで好まれる手法ですが、近年では日本でも身近になってきています。
バイアウトとイグジットの違い
バイアウトとイグジットは似ている手法ですが完全に一致するものではありません。
イグジットは会社売却の意味を言います。バイアウトやIPOと呼ばれる株式公開で株式を売却し投資した資本を回収するための手法です。
近年ではM&Aを活用して、親族以外に株式を公開し売却するイグジットも増加しています。
MBO(マネジメントバイアウト)とは
MBOとは、会社の本部や経営陣が後継者となり、オーナーや既存の株主から株式を買収します。
マネジメントバイアウトの略称です。
MBOを実行する場合、特別目的会社を設立し、株を買収する資金を金融機関から調達します。
株の買収後は、特別目的会社と譲渡会社が合併し譲渡会社が経営権を握ります。
上場企業の場合は、株主か経営者が株主から自社株式を買い取り、上場を廃止する際にも使われる手法です。
また、自社の特定の事業を買い取り、独立した経営をすることを目的とする場合もあります。
このように独立させることで、株主に対する短期的な利益の向上を見込め、会社を成長させるための戦略となります。
経営の効率化や敵対的買収から身を守る手段として活用されることもあるでしょう。
MBOのメリット
MBOは、株式を外部の株主から買い取ります。
経営権が外部に移らないので、外部の意見に影響を受けません。
自社のペースでスムーズに経営戦略を進めて会社を立て直せます。
中長期的に経営改善を図りたいときに有効な手法と言えるでしょう。
MBOのデメリット
MBOのデメリットは上場が廃止になる点です。
上場を廃止すると既存の株主から反発を受ける可能性があります。
上場が廃止になると株式は非公開になり、資金調達が困難になることも考えられます。
そのため、MBOを実行したあと、どのように資金調達をするのか考えてから実施するようにしましょう。
株式を非公開にすると、経営の監視力が低下することも考えられるため、注意が必要です。
また、これまでの経営陣が引き続き経営を指揮するため、企業の本質や体質を変えるのは難しいと言えます。
MBOの具体的な手順
MBOの具体的な手順は以下の通りです。
- 経営陣がSPC(特別目的会社)を設立
- SPCが金融機関やファンドから資金を調達
- MBO対象企業の株式をSPCが取得
- MBO対象企業がSPCの子会社となり合併
SPCはMBO対象企業の受け皿となる実体のない会社です。MBO対象企業の株式を取得したのち、子会社化し最終的には合併します。
EBO(エンプロイー・バイアウト)とは
EBOはエンプロイー・バイアウトと呼ばれ、従業員が後継者として経営権を得る手法です。
従業員が会社の株を買い取り、事業を継承することを目的とし、後継者問題に直面する中小企業でよく使われます。
経営陣が株式を買い取るMBOと違なるのは、従業員が自社の株を買い取り、新たに経営に介入する点です。
複数の従業員が自社の株式を買い取り、外部からの買収を防ぐこともあります。
EBOのメリット
EBOのメリットは、一緒に働き、苦楽を共にした従業員に会社を継承できる点にあります。
オーナーや経営者の身内に後継者がいない場合に有効な手段です。
既存の経営陣ではなく従業員が新たに経営するため、企業を再編できる可能性も高くなります。
EBOのデメリット
EBOのデメリットは、資金の調達が難しい点にあります。
一従業員の個人の資金力で、会社の株を買い占められるほどの資金力がある人は多くありません。
金融機関等の支援を受けて自社の株を買い取ってもらう必要がありますが、審査が厳しく資金調達が困難になることも考えられます。
EBOの具体的な手順
EBOの具体的な手順は以下の通りです。MBOの手順と大きくは変わりませんが、資金調達の方法が異なります。
- 後継者となる従業員がSPC(特別目的会社)を設立
- SPCが金融機関やファンドから資金を調達
- EBO対象企業の株式をSPCが取得
- EBO対象企業がSPCの子会社となり合併
EBOは後継者となる個人が資金を調達します。組織である経営陣とは異なり、個人であるため、株価の決定には従業員の資産を重視します。
この際、後継者となる従業員は議決権を得るために3分の2以上の株式を取得する必要があります。そのため、資金が足りない場合には借り入れをして賄うことになります。
LBO(レバレッジド・バイアウト)とは
LBOは、買い手企業が売り手企業のキャッシュフローを担保にして買収する手法で、レバレッジド・バイアウトと呼ばれます。
売り手企業の資産や将来期待されるキャッシュフローを元に、金融機関から資金を調達します。
LBOは社内の人が株式を買うMBO・EBOに対して、社外の人が株式を買い取ります。
買い手企業は、該当企業を買収後に借入金を負債にできるため、キャシュフローから負債を返済するだけになります。
少ない自己資金で買収金を確保するために使われる手法です。
売り手企業に将来性がある場合や、独自の技術がある場合には高いリターンを望めます。
LBOのメリット
LBOのメリットは買い手企業が少ない資金で会社を買収できる点にあります。
バイアウトの後経営がうまくいけば、少ない資金で大きなリターンを得ることが可能です。
また、買収にかかった資金返済の利子を損金算入して計上できるため、節税にもなります。
さらに、売り手企業の現経営者は譲渡益を受け取れる点もメリットです。
LBOのデメリット
LBOのデメリットは、買収後の企業再生がうまくいかなかった場合にリターンを得られない点です。
これはバイアウトの失敗を意味します。
バイアウトの金利は高額で、多額の利子を支払わなければなりません。
そのためリスクが高く、あまり実施されないのが現状です。
LBOの具体的な手順
EBOの具体的な手順について見てみましょう。
- 買収者(企業)がSPC(特別目的会社)を設立
- LBO対象企業を調査
- SPCが金融機関やファンドから資金調達
- SPCがLBO対象企業を買収
- LBO対象企業がSPCの子会社となり合併
- 借入金の返済を実施
買収者(企業)はLBOの対象となる企業を調査して資産やキャッシュフローを評価・把握します。これは、LBOを失敗に終わらせないための重要な行為です。
その後、金融機関などから買収のための資金を調達してM&Aを実施、買収完了後にLBO対象企業を子会社化します。完了後は借入金の返済を進めることになります。
バイアウト(事業売却)を成功させるポイント
バイアウトは、会社の株式を過半数以上買収して会社の経営権を得ると定義されることもあります。
また、創業者が事業を売却する意味で「バイアウトする」というように使うこともあります。
バイアウトを成功させるためのポイントはあるのでしょうか?
この項では、バイアウトを成功させるためのポイント3つを詳しく紹介していきます。
- 起業時からバイアウトを視野に入れた経営を意識する
- 自社の企業価値を正確に算出しておく
- バイアウトの知識のある専門家に依頼する
1つずつ詳しく見ていきましょう。
ポイント1 起業時からバイアウトを視野に入れる
起業したときから、バイアウトの時期を視野に入れて経営戦略を進めるのが大切です。
バイアウトについて逆算して考えると、的確な時期を見定められ、経営戦略上でも最良の判断ができます。
起業時に自分が会社を売ることは考えづらいですが、常にバイアウトを視野に入れ、少しずつ企業価値を高めていくと高額でバイアウトできるのです。
ポイント2 自社の企業価値を正確に算出する
次に、バイアウトを成功させるために大切なのは、自社の企業価値を正確に認識することです。
企業価値の評価によって、バイアウトの金額は大きく変動します。
評価方法も数多くあるため、自社がより高額でバイアウトできる評価方法を選ぶことも大切です。
自社を客観的に評価するのは難しいため、専門家への依頼も検討しましょう。
ポイント3 専門家に依頼する
バイアウトを検討している際は、第三者機関である専門家に依頼するのが一般的です。
具体的には、M&Aの仲介会社やバイアウトファンドが挙げられます。
M&Aの仲介会社は、会社や事業を売却する事を専門にしたコンサルティング会社です。
企業価値評価や買収価格を上げるための方法を、専門的な視点で見てくれます。
バイアウトファンドは、投資家から資金を集め、業績不振の会社へ投資し、後の利益を投資家へ還元するための会社です。
事業継承や企業再生に特化したファンドもあります。
自社にあったバイアウトファンドに依頼することで、自社の企業価値を高めてより高額でバイアウト成功させられるでしょう。
バイアウト(事業売却)の注意点
次にバイアウトの注意点を見ていきます。
注意点は以下の3つです。
- 従業員の待遇には細心の注意を払う
- 買い手企業の要望を正しく取り入れる
- 経営者が保有する株式を残すことも考慮する
注意点1 従業員の待遇に注意を払う
バイアウト後は、役員や従業員の待遇に十分な注意を払いましょう。
バイアウトが従業員の雇用に影響してはいけません。
しかし、経営者が変わると、雇用条件が変わることは避けられない部分でもあります。
従業員が少しでも今と同じ雇用条件で働けるよう、買い手企業へ交渉しましょう。
従業員を派遣、出向させる場合は、詳細を丁寧に説明して、理解を得るための努力が大切です。
注意点2 買い手企業の要望を正しく取り入れる
バイアウトを実施したときには、買い手企業からの要求や要望があることが予想されます。
バイアウトの目的は、会社の再建や売り上げ、利益を伸ばすことです。
そのために、製品やサービスの向上を求められます。
従業員の不満や反発がでないよう、事前にどのような要求をされるのか確認しておくと良いでしょう。
注意点3 経営者が保有する株式を残すことも考慮
バイアウトを実施する際は、株式の保有者について考えておく必要があります。
売り手企業の経営者が保持する株式は、買い手企業に譲渡されます。
このとき、一般的には全ての株式を譲渡して、売り手企業は買い手企業の完全子会社になります。
もし、株式の一部を売り手企業の経営者に残したい場合は、買い手企業に交渉しましょう。
バイアウトを考えるなら自社の状況を見極めておく
今回はバイアウトの種類やポイント・注意点について解説しました。
- MBO(マネジメントバイアウト)
- EBO(エンプロイー・バイアウト)
- LBO(レバレッジド・バイアウト)
バイアウトは以上の3種類に別れ、MBOとEBOは社内の人物が自社株式を買取る方法で、後継者不足などの問題を解決します。
LBOは社外の人物が他社の株式を買いとり、リターンを得る手法です。
バイアウトは他にも、他社の株式を過半数以上取得するという意味で使われることもあります。
バイアウトを成功させるためには、起業時からバイアウトを視野に入れ、企業価値を高めていきましょう。
実際にバイアウトを実施すると決めたら、自社にあった専門業者への依頼をおすすめします。
パラダイムシフトは2011年の設立以来、豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。M&Aに精通している仲介会社を利用すると、安心して行うことが出来ますので、是非ご検討ください。
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