インターネット上でプレイできるゲームアプリやiPhoneやAndroid向けのアプリが急速に普及しています。
令和3年版総務省の情報通信白書によれば、2020年時点のモバイルアプリ市場は259億ドル、モバイルゲーム市場は201億ドルという巨大市場であり、今後も拡大する見込みです。
これらのアプリはM&Aによって譲渡することが可能であり、アプリのM&A市場も盛り上がっています。
アプリは小規模な中小企業や個人レベルでも制作可能ですので、人気アプリを開発すれば、大きなリターンが見込めます。
記事では、アプリのM&Aの特徴やM&Aのスキーム、高く売却するポイントなどについて解説しましょう。
目次
アプリのM&Aとは
アプリのM&Aとは、開発したアプリやアプリ開発会社をM&Aによって他社に売却することです。
アプリとは、アプリケーションソフトの略称であり、特定の用途や目的のために作られた、コンピューターのソフトウエアを指します。
ここでは、アプリのM&Aの特徴について詳しく解説しましょう。
M&Aによって売却できるアプリの種類
M&Aによって売却できるアプリには、「Webアプリ」と「ネイティブアプリ」の2種類があります。
Webアプリとは、Web上で提供されるアプリであり、飲食店の予約サイトやECサイトなどが例として挙げられます。
ネイティブアプリとは、スマホやパソコンなどの端末のOSの機能で使えるアプリです。
メールやSNS、ゲームアプリなどをダウンロードして使います。
「アプリ」という場合には、ネイティブアプリを指すことが多いです。
アプリ市場の動向
総務省が発表した令和3年版情報通信白書によれば、国内のモバイルアプリ市場は2016年に126億ドルから2020年には259億ドルと約2倍に増加しています。
アプリ市場は今後も拡大する見込みであり、2023年には365億ドルになると予想されているのです。
なかでも消費者向けのモバイルゲームが市場拡大を牽引しており、2020年のモバイルアプリ市場259億ドルのうち201億ドルを占めています。
今後は、ゲームだけではなく、SNSや健康管理、翻訳などのアプリの成長が予想されています。
アプリのM&Aの対象範囲
M&Aといえば、買い手が売り手を会社ごと買収するというイメージが強いかもしれません。
しかし、アプリのM&Aでは、買収の対象範囲にさまざまなパターンがあります。
会社ではなく、アプリを買収するといったアプリのM&Aの対象範囲を解説します。
アプリ単体のM&A
アプリ事業を保有する企業ではなく、アプリのみを買収するパターンです。
複数のアプリを開発、運営している場合に一部もしくは全部のアプリを買収します。
個人レベルでアプリを開発し、売却するM&Aを目指す場合に適したパターンと言えます。
アプリを開発している企業が売り手の場合、アプリのみを売却するので、社員や他の事業は社内に残り、会社が存続するのです。
ただし、アプリ運営の経験がない企業が買い手の場合、運営や保守のノウハウがなく、事業運営に苦労することがあります。
アプリ開発会社のM&A
アプリのM&Aといってもアプリを買収しないケースがあります。
アプリではなく、アプリ開発会社をM&Aによって買収するケースです。
アプリ開発会社とは、サービスをアプリ上で提供したい企業の依頼を受けて、アプリを開発する会社です。
新しくアプリ市場に参入したい場合にアプリ開発会社を買収することで、アプリ開発に必要な社員や技術、設備を取得します。
一からアプリ開発会社を設立し、人材や設備を集めるよりもアプリ開発会社を買収するほうが事業が軌道に乗るまでの時間を短縮できます。
アプリ事業のM&A
アプリ事業を丸ごと買収するパターンです。
このパターンでは、アプリを開発する開発会社とアプリを運営するアプリ運営会社をM&Aによって買収します。
これによって、アプリの開発から運営までを自社で一貫して行うことができます。
自社のサービスをアプリ上で提供したい時に外注することなく、アプリの開発からその後の運営までを内製化できるため、コストの削減につながるでしょう。
アプリ開発市場に参入したい場合や自社サービスをアプリ上で提供することを検討している場合に有効な方法です。
アプリのM&Aのスキーム
アプリのM&Aには、いくつかの種類があることを解説しました。
ここでは、M&Aの対象によってスキームを使い分ける必要があります。
ここでは、事業譲渡と株式譲渡という2つのスキームを解説します。
事業譲渡
事業譲渡とは、特定の事業とそれに係る資産を売買するスキームです。
特定の事業を選択して、売買するので会社組織は存続します。
譲渡したい事業を選択して、会社の存続に必要な事業は残せる点がメリットです。
不採算事業の切り離しに用いられることが多いです。
買い手としても特定の事業に紐づいた簿外債務を承継することを回避できます。
一方で事業や資産ごとに契約を締結するので、手続きに手間と時間がかかるでしょう。
例えば、譲渡する事業に所属する社員を継続雇用する場合、個別に雇用契約を締結しなおす必要性が発生します。
また、税金の点でもデメリットに注意が必要です。
株式譲渡では、法人税が30%かかりますが、事業譲渡ではさらに10%の消費税が加算されます。
事業譲渡が適しているケース
事業譲渡が適しているケースはアプリ単体を対象とするM&Aを実施する場合です。
事業譲渡では、会社の特定の事業を選択して、売却することができます。
会社が複数のアプリ事業を経営している場合やアプリ事業以外の事業を経営している時に売却したいアプリを特定して、売却できます。
株式譲渡
株式譲渡とは、自社株式を売買することで会社の経営権を譲渡する方法です。
企業の価値を算定し、価値に相当する株式を譲渡します。
株式譲渡は、頻繁に活用されるスキームであり、手続きが比較的容易です。
最大のメリットは譲渡益にかかる税金が抑えられる点です。
企業が自社を売却した際には法人税約30%がかかり、個人の場合には所得税と住民税を合わせた20.315%がかかります。
事業譲渡スキームでは、法人税に加えて、消費税がかかるので、株式譲渡では税金を抑えられます。
一方で、買い手としては、簿外債務も承継することになるので、注意が必要です。
株式譲渡が適しているケース
株式譲渡が適しているケースはアプリ開発会社もしくはアプリ事業全体を対象とするM&Aを実施する場合です。
株式譲渡では、企業の自社株式を第三者が全部取得することで、会社自体を買収します。
アプリ開発会社の全株式を取得すれば、アプリ開発会社自体を買収することができます。
また、アプリ事業のみを経営している企業の場合、会社を買収すれば、アプリの運営権も取得できるのです。
アプリのM&Aの相場と売却価額を左右する要素
アプリ事業や開発会社を売却する、もしくは買収する場合に相場を知っておくことが重要です。
相場以下で買いたたかれるリスクや相場以上の不必要な出費を避けるべきでしょう。
実際のところ、アプリ事業に関しては双方の交渉によって決定される所が大きいです。
最も参考になるのはジャンルや登録者数といった条件面で類似したアプリの売却価額でしょう。
しかし、アプリのトレンドの移り変わりの速さによって、現在人気のあるアプリも短命に終わることがあるでしょう。
ですので、アプリ事業の売却価額を算定する時にはM&Aアドバイザーなどの専門家の意見が必要になります。
アプリ開発会社の場合、自社株の評価額に営業利益数年分を加算した金額が目安となります。
ただし、会社自体を譲渡するケースにおいても売り手と買い手の交渉次第で価格が決定されるようです。
続いて、M&Aの売却価額を左右する要素について見ていきましょう。
アプリユーザーの数
アプリユーザーの数は最も明確な指標です。
ユーザーが多いアプリであれば、現在赤字であっても将来性を期待されて、高く売却できるかもしれません。
高額での売却を目指すならば、ユーザー数を伸ばすことを考えましょう。
ただし、ユーザー数とともにアクティブユーザーの数も重要です。
継続して課金してくれるユーザーの数がわかる指標です。
アカウント数
ユーザーの数が実際にアプリを利用している人の数であるのに対して、アカウント数はダウンロード数を示しています。
ダウンロード数はアプリの知名度や認知度を測る指標であり、ダウンロード数が多いということは集客に成功していることを意味します。
アプリ内に無料会員と有料会員の2種類を用意している場合、アカウント数の中でも有料アカウントの数は収益性を説明する上で有利でしょう。
iOSとAndroidの両方に対応している
iOSかAndroidに対応していないと、スマートフォンでアプリを利用できません。
アプリの利用者の多くはスマートフォン上で操作しているので、スマートフォン対応であることは最低限の条件です。
iOSとAndroidの両方に対応していることが理想です。
片方のOSに対応していないとユーザーを取りこぼすことがあり、機会損失となります。
ユーザーの獲得やそれに伴う収益性に不利となります。
iOSとAndroidでは、アプリの申請先が異なるので、手続きに手間がかかりますが、収益面でリターンがあるので、両方に対応しておきましょう。
アプリのジャンル
アプリのジャンルによって収益性は異なるのです。
令和3年版総務省の情報通信白書によれば、2020年時点のモバイルアプリ市場は259億ドルのうちモバイルゲーム市場は201億ドルを占めています。
ゲームは最も高いシェアを誇っており、市場の将来性があると予想されます。
また、アプリゲームは収益性が高いので、人気のゲームを開発できれば、価格決定の際に有利になるでしょう。
人気アプリなら個人でもM&Aができる
記事では、アプリのM&Aの特徴やM&Aのスキーム、高く売却するポイントなどについて解説しました。
アプリのM&Aは市場が拡大傾向にあり、小規模な企業や個人でもチャンスにあふれています。
アプリのM&Aを検討する場合、専門家に相談しましょう。
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