業績悪化や後継者不在で会社をたたむ際、清算と破産のどちらを選ぶべきか戸惑う経営者は少なくありません。
清算と破産の決定的な違いは、債務超過(借金が資産を上回る状態)かどうかです。自社の財務状況によって選ぶべき手続きや流れ、費用は大きく変わります。
本記事では、清算と破産の違いや各手続きの具体的な流れ、経営者や従業員に与える影響を分かりやすく解説します。
さらに、会社を消滅させるだけでなく、赤字や債務超過でも経営者の負担を減らし、従業員の雇用を守れるM&A(会社売却)という選択肢についても紹介します。
目次
- 1 「清算」と「破産」および関連用語の意味
- 2 清算とは?通常清算と特別清算の違い
- 3 破産とは?裁判所を介して借金をゼロにする手続き
- 4 混同しやすい廃業・倒産・解散の意味
- 5 清算と破産の決定的な違いは債務超過の有無
- 6 通常清算と破産の違い
- 7 特別清算と破産の違い
- 8 各手続きの流れと期間・費用の目安
- 9 通常清算の手続きの流れと期間・費用の目安
- 10 特別清算の手続きの流れと期間・費用の目安
- 11 法人破産の手続きの流れと期間・費用の目安
- 12 会社をたたむ際の経営者や従業員への影響
- 13 経営者個人の財産や連帯保証への影響
- 14 従業員の解雇や未払い給与と取引先への対応
- 15 清算や破産を選ぶ前に検討すべきM&Aという選択肢
- 16 赤字や債務超過でもM&Aで経営者や従業員を守れる理由
- 17 IT・Web業界はとくに買い手が見つかりやすい
- 18 まとめ:清算や破産を決断する前にM&Aの検討を
「清算」と「破産」および関連用語の意味
会社をたたむことを検討し始めた際、正しい手続きを選ぶためには、清算や破産をはじめとする関連用語の正確な意味と違いについての理解が重要です。
以下では、各言葉の定義を整理して解説します。
清算とは?通常清算と特別清算の違い
清算とは、解散した株式会社の財産関係を整理し、会社を完全に消滅させるための法的手続きです。
具体的には、会社が保有している資産(不動産、設備、売掛金など)を現金化し、その資金で借金や未払い金などの負債を支払います。
そして、最終的に残った財産を株主に分配して会社を終了させるのが一連の流れです。
清算手続きには、会社の財務状況によって、通常清算と特別清算の2種類が存在します。
会社の資産が負債を上回っている(借金をすべて返済できる)場合は、通常清算の対象です。
一方、負債が資産を上回っている(債務超過に陥っている)ものの、債権者の同意を得て手続きを進められる場合は特別清算となります。
どちらも最終的な目的は法人を消滅させることですが、会社の財務状況によって選ぶべき手続きが変わります。
破産とは?裁判所を介して借金をゼロにする手続き
破産(法人破産)とは、債務超過や支払不能に陥り、どうしても借金を返済できなくなった会社が利用する法的手続きです。
裁判所に申立てを行い、裁判所が選任した破産管財人の厳格な管理のもとで会社の全財産を強制的に換価し、債権者に対して公平に配当を行います。
破産手続きが終了すると法人は消滅し、残った借金の支払い義務も法人とともに消滅します(実質的に借金はゼロになります)。
裁判所の強力な権限によって手続きが行われるため、債権者の同意がなくても進められるのが特徴です。
混同しやすい廃業・倒産・解散の意味
清算や破産と同じ文脈で使われやすい用語に廃業・倒産・解散があります。これらは混同されがちですが、それぞれ明確な違いがあります。
| 用語 | 種別 | 定義 |
| 廃業 | 非法律用語・状態 | 事業を自主的にやめること |
| 倒産 | 非法律用語・状態 | 借金が返せなくなった状態 |
| 解散 | 法律用語・ステップ | 清算に入るための最初の手続き |
| 清算 | 法律用語・手続き | 財産整理をして会社を消滅させること |
| 破産 | 法律用語・手続き | 裁判所主導で会社を消滅させること |
廃業とは、会社や個人事業主が自主的に事業をやめることを指す言葉で、会社をたたむこと全般の総称です。廃業の具体的な手段は、清算や破産などの手続きです。
倒産も法律用語ではなく、資金繰りが行き詰まり借金の返済が困難になった状態を指す一般的な言葉です。倒産状態に陥った後の法的な手続きとして、破産や特別清算などが選択されます。
解散は、会社の営業活動を終了させるための法律上の手続きです。ただし、解散の登記をしただけでは法人はまだ消滅しません。
解散はあくまで清算手続きに入るための最初のステップであり、清算が結了して初めて会社は消滅します。
清算は解散後に財産整理をして法人を消滅させる手続き、破産は裁判所への申立てを経て法人を消滅させる手続きです。詳細は前述の通りです。
廃業や倒産は状態、解散は清算へのステップ、清算や破産は法的手続きと整理しておくと、今後の検討がスムーズに進みます。
清算と破産の決定的な違いは債務超過の有無
清算と破産を分けるもっとも大きなポイントは、債務超過(会社の借金が資産を上回っている状態)であるかどうかです。この財務状況によって進むべき道が明確に分かれます。
以下では、自社がどの手続きを選ぶべきかの判断基準について解説します。
通常清算と破産の違い
通常清算と破産の最大の違いは、「資産が残るか、借金が残るか」という点にあります。
通常清算は、すべての借金を返済しても手元に資産が残る(資産超過の)状態で行う手続きです。裁判所は関与せず、経営者側で選んだ清算人が主導して自主的に手続きを進められます。
一方、破産は会社の資産をすべて換価しても借金を返済しきれない(債務超過の)状態で行う手続きです。会社側の人間ではなく、裁判所が選任した破産管財人が客観的かつ厳格に財産の調査と配当を行います。
通常清算が「円滑な会社の終了手続」であるのに対し、破産は「やむを得ない強制的な終了手続」と言えます。
特別清算と破産の違い
特別清算と破産は、債務超過(借金が資産を上回っている)の状態で行う法的手続きという共通点があります。しかし、手続きの進め方や柔軟性に大きな違いがあります。
特別清算は、債権者(銀行や取引先など)の同意が得られる見込みがある場合に利用できます。
会社法上、協定の可決には出席した議決権者の過半数、かつ議決権の総額の3分の2以上の賛成が必要です。なお、この同意は書面による手続きで行われることも多く、すべての債権者から個別に同意を取り付ける必要があるわけではありません。
裁判所の監督は受けますが、経営陣が自ら清算人となって手続きを進められるため、破産よりも柔軟で迅速な解決が期待できます。
これに対し破産は、債権者の同意が得られない場合や、複雑な権利関係が絡んでいる場合に選択されます。裁判所が選んだ破産管財人がすべての権限を握るため、手続きは非常に厳格で、経営陣は会社の財産を管理・処分する権利を失います。
各手続きの流れと期間・費用の目安
手続きの選択によってスケジュールや費用が大きく異なるため、手元に資金があるうちに全体像を把握しておくことが重要です。
以下では、各手続きの流れと期間、費用の目安を解説します。
通常清算の手続きの流れと期間・費用の目安
通常清算の主な手続きの流れは以下の通りです。
- 株主総会での解散決議および清算人の選任
- 法務局へ解散・清算人就任の登記申請
- 官報での解散公告および知れたる債権者への個別催告
- 財産の換価(現金化)および債務の弁済
- 残余財産の株主への分配
- 株主総会での決算報告の承認
- 法務局へ清算結了の登記申請
【期間の目安】
会社法により、債権者に対して債権を申し出るよう2ヶ月以上の期間を定めて官報公告を行うことが義務付けられています。
そのため、いかに早く手続きを進めても、最低2ヶ月半から3ヶ月程度の期間が必要です。
【費用の目安】
法定費用(実費)として、法務局での登録免許税が計4万1,000円(解散登記3万円、清算人就任登記9,000円※資本金1億円以下の場合、清算結了登記2,000円)かかります。
(参考:法務局「登録免許税額一覧」)
また、官報公告費用として2万円〜4万円程度が必要です。
(掲載行数によって異なります。参考:官報公告ポータルサイト)
これに加えて、手続きを司法書士や税理士、弁護士などの専門家に依頼する場合の報酬として、数十万円程度の費用を見込んでおく必要があります。
特別清算の手続きの流れと期間・費用の目安
特別清算の主な手続きの流れは以下の通りです。
- 株主総会での解散決議および清算人の選任(ここまでは通常清算と同様)
- 裁判所へ特別清算開始の申立て
- 裁判所による特別清算開始決定
- 債権者との交渉および協定案の作成
- 債権者集会での協定案の決議・裁判所の認可
- 協定内容に基づく債務の弁済(実行)
- 裁判所による特別清算終結決定
【期間の目安】
債権者集会での同意をスムーズに得られるかどうかで期間は変動しますが、申立てから手続きの終結まで、概ね半年から1年程度が目安です。
【費用の目安】
裁判所に納める予納金は、東京地方裁判所の場合、協定型で5万円程度が目安です。(裁判所や手続きの種類によって異なります。参考:裁判所ウェブサイト「会社法非訟事件の申立て」)
これに申立て手数料等の実費がかかります。ただし、債権者との複雑な調整が必要になるため、弁護士への依頼が必須となり、弁護士費用として数十万円から百万円以上の費用がかかることが一般的です。
特別清算手続については、こちらの記事でも詳しく解説されていますので、あわせてご確認ください。
法人破産の手続きの流れと期間・費用の目安
法人破産の主な手続きの流れは以下の通りです。
- 弁護士への依頼・債権者への受任通知の発送(取り立ての停止)
- 裁判所へ破産手続開始の申立て
- 裁判所による破産手続開始決定・破産管財人の選任
- 破産管財人による会社の財産の調査および換価
- 債権者集会の開催(財産状況の報告など)
- 債権者への配当(配当できる財産がある場合)
- 破産手続の終結・法人の消滅
【期間の目安】
会社の規模や保有している財産の状況、債権者の数によって大きく異なりますが、申立ての準備から手続きの終結まで、半年から1年以上かかるのが一般的です。
【費用の目安】
法人破産では、裁判所が選任する破産管財人の活動費用として引継ぎ予納金を納める必要があります。
東京地方裁判所の少額管財という手続きを利用できる場合でも最低20万円以上、通常管財(特定管財)となれば70万円以上の予納金が必要です。
(参考:東京地方裁判所「破産事件の手続費用一覧(令和5年4月1日現在)」)
予納金の金額は裁判所や事案の状況によって異なるため、申立て前に弁護士へご確認ください。
さらに、申立てを依頼する弁護士費用として、小規模な法人でも100万円前後かかるケースが多く、規模や複雑さによってはそれ以上になる可能性もあります。
会社に一定の現金が残っているうちに決断し、申立ての準備に入ることが極めて重要です。
会社をたたむ際の経営者や従業員への影響
会社をたたむ手続きは法人だけの問題では終わりません。経営者個人の財産や従業員・取引先にも大きな影響を及ぼします。
以下では、経営者や従業員への影響を具体的に紹介します。
経営者個人の財産や連帯保証への影響
中小企業の場合、会社が金融機関から融資を受ける際に、経営者が個人の「連帯保証人」となっているケースがほとんどです。
通常清算であれば、会社の資産で借金を完済できるため経営者個人に負担が及ぶことはありません。
しかし、破産や特別清算によって会社の借金を返済しきれず会社が消滅した場合、残った借金の返済義務は連帯保証人である経営者個人に移行します。
数千万円規模の負債を個人で返済することは困難なため、多くの場合、法人破産の手続きと同時に経営者自身も自己破産を申し立てます。
自己破産をすると、自宅や車などの一定以上の価値がある個人財産は処分されるため、経営者のその後の生活再建に大きな打撃を与えます。
従業員の解雇や未払い給与と取引先への対応
会社をたたむ場合、事業を継続できないため、関係者に影響が及ぶため全従業員を解雇せざるを得ません。
労働基準法に基づき、原則として30日前に解雇予告を行うか、解雇予告手当を支払う義務があります。
また、資金繰りの悪化によって給与や退職金の未払いが発生してしまう場合は、国が未払い賃金の一部を立て替えて支払う未払賃金立替払制度の活用を検討し、従業員の不利益を可能な限り軽減する配慮が求められます。
取引先に対しても、売掛金の未回収や継続取引の突然の停止などにより多大な迷惑をかけることは避けられません。
連鎖倒産を引き起こさないよう、弁護士を通じた誠実な説明と対応が不可欠です。
清算や破産を選ぶ前に検討すべきM&Aという選択肢
会社を完全に消滅させる前に、M&A(会社売却)を検討すると、現在の厳しい状況を大きく好転させられる可能性があります。
赤字や債務超過でもM&Aで経営者や従業員を守れる理由
「赤字続きの会社や、債務超過に陥っている会社は買い手が見つからないだろう」と思い込んでいる経営者は少なくありません。
しかし、M&Aにおいて買い手企業が評価するのは、現在の表面的な財務状況だけではありません。
自社が長年培ってきた独自の技術力、特定の地域や業界における強固な取引先ネットワーク、そして熟練した従業員のスキルなどは、買い手企業にとって対価を支払ってでも獲得したい大きな価値を持ちます。
事業譲渡や株式譲渡といったM&Aの手法を用いることで、会社全体、あるいは一部の優良な事業だけを引き継ぐことができます。
M&Aが成立し、資金力のある企業の傘下に入ると、買い手からの資金提供によって会社の負債を解消できる可能性があります。
これに伴い、経営者を苦しめていた個人保証(連帯保証)が解除されるケースも多くあります。
さらに、従業員の雇用が維持され、取引先との関係も継続できるため、経営者・従業員・取引先の三者にとってメリットの大きい解決策です。
IT・Web業界はとくに買い手が見つかりやすい
あらゆる業界の中で、とくにIT・Web業界の企業は、M&A市場において非常に高い需要があります。その最大の理由は、日本全体における慢性的なエンジニア不足と、IT人材の獲得競争の激化です。
買い手企業にとって、優秀なエンジニアをゼロから採用し教育するには、多額のコストと膨大な時間がかかります。
それよりも、M&Aによって技術力を持った開発チームを一括して受け入れる方が、はるかに効率的で合理的であると判断されます。
そのため、仮に直近の業績が赤字であったり、債務超過に陥っていたりしても、自社で開発したシステムの価値、安定した顧客基盤、エンジニアのスキルが高く評価され、好条件で会社や事業の譲渡が成立する事例は珍しくありません。
IT・Web領域で事業を展開している場合は、清算や破産で会社を終わらせてしまう前に、自社の隠れた価値を専門家に算定してもらうことを強く推奨します。
まとめ:清算や破産を決断する前にM&Aの検討を
清算・破産はいずれも数百万円規模の費用と数ヶ月以上の期間がかかり、経営者の個人財産喪失や従業員解雇といった重い現実が伴います。
通常清算であっても、登記費用や専門家報酬など相応のコストと手間は避けられません。最終決断の前に、事業と雇用を守れる可能性があるM&Aをぜひ一度ご検討ください。
M&AアドバイザリーとしてM&Aに関連する一連のアドバイスと契約成立までの取りまとめ役を担っている「株式会社パラダイムシフト」は、2011年の設立以来豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。
パラダイムシフトが選ばれる4つの特徴
- IT領域に特化したM&Aアドバイザリー
- IT業界の豊富な情報力
- 「納得感」と「満足感」の高いサービス
- プロフェッショナルチームによる適切な案件組成
M&Aで自社を売却したいと考える経営者や担当者の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
またM&Aを成功させるためのコツについて全14ページに渡って説明した資料を無料でご提供しますので、下記よりダウンロードしてください。





