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会社清算の手続きとは?残余財産の分配についても解説

会社の清算手続きは解散手続きと並行して行われます。清算人として選任・就任された人(一般的に代表取締役)は、解散後に残った債務や債権を綺麗にし、残った財産を株主に分配するなどの後始末をしなければなりません

会社の解散から清算結了まで、スムーズに進んでも2ヶ月以上はかかります。また、全て清算人自身で手続きが進められるのであればいいですが、多くは税理士、司法書士、弁護士などそれぞれ専門家に依頼をします。そのため、費用も数十万円かかるケースも少なくありません。

本記事では会社の解散・清算手続きの具体的な流れやかかる費用残余財産の分配方法について詳しく解説します。

会社清算手続きとは?解散との違い

会社を倒産して閉じる時には、まず解散手続きをしてから清算手続きをします。
解散は「廃業の手続き」で、清算は「廃業後の負債や債権の後始末」です。

会社を自由に解散できてしまうと、金銭の契約が発生している取引先や、融資元の金融機関が被害を受けてしまいます。そうならないよう、清算という手続きの中で債務の弁済を行い、債権者の保護をするという法律が設けられています。

会社解散とは

会社の解散は、廃業すなわち法人格を消滅させる手続きです。例えば、

・業績悪化で赤字が続いている
・後継者がいないため事業継続が難しい
・株式譲渡により法人格を意図的に消滅させる

などの理由で会社を解散させるという選択をするケースがあります。

また、解散するには以下いずれかの要件に該当している必要があります

  • 定款で定めた存続期間の満了
  • 定款で定めた解散の事由の発生
  • 株主総会の決議
  • 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)
  • 破産手続開始の決定
  • 第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第一項の規定による解散を命ずる裁判
  • 休眠会社のみなし解散

(出典:会社法8章471条)

事業悪化や後継者不足で事業継続が困難な場合で言うと、上記の「株主総会の決議」によって解散が認められます。
なお、一人会社の解散の場合も『株主総会を行いました』という株主総会の決議書を、形式上作成する必要があります。

会社清算とは

解散手続きをしたから終わり、ではありません。会社の負債や債権、残った資産などの後始末をする必要があります。それが会社清算手続きです。

負債がある場合は返済をし、債権があれば回収します。株主がいる場合は、残った財産(預貯金以外に、土地、物件などの有形財産)を現金化し、分配します(残余財産の分配)。

全ての負債や債権を綺麗にし、清算結了した時点で、法人格が消滅します。

会社解散・清算手続きの流れ

会社の解散、清算手続きには以下の流れで進めて行きます。
株主総会による解散決議で解散が決まったケース

  1. 株主総会による解散決議(特別決議)
  2. 解散・清算人を選任、就任の登記
  3. 解散の届出
  4. 財産目録と貸借対照表の作成と承認
  5. 債権者の保護手続き
  6. 解散確定申告書の提出(解散事業年度分)
  7. 債務弁済、残余財産の確定、株主等への分配
  8. 税務署へ清算確定申告書の提出
  9. 決算報告書の作成
  10. 株主総会での承認
  11. 清算結了の登記
  12. 各公的機関へ清算結了の届出
  13. 会社の解散・清算手続き完了

 

株主総会による解散決議

株主総会を開き、解散することについて決議をします。参加できるのは発行済株式総数の過半数を保有する株主が対象で、出席した株主のうち3分の2以上の賛成で可決となる特別決議となります。

解散・清算人を選任、就任の登記

特別決議で解散が決まったら、解散の登記をする他に、清算人の選任、就任の登記も並行して行います。清算人は会社の解散後の清算手続きを行う役割を担います。主に代表取締役が選ばれることが多いですが、稀に他の取締役がなることもあります。

解散の届出

会社解散の登記が終わったら、すみやかに各公的機関に解散の届出を行います。「異動届出書」「登記事項証明書」が必要になります。

財産目録と貸借対照表の作成と承認

清算人は、財産目録貸借対照表を作成し、株主総会で承認を得なければなりません。

債権者の保護手続き

清算人は官報公告により、債権者へ会社解散を通知します。債権者は2ヶ月以内に申し出る必要があります。また、個別で把握している場合は直接、清算人から債権者へ通知します。

解散確定申告書の提出(解散事業年度分)

解散事業年度の解散確定申告書を税務署へ提出します。(解散日から2ヶ月以内)

債務弁済、残余財産の確定、株主等への分配

清算人は、未回収の債権があれば全て回収し、未払いの債務があれば支払いを済ませます。また、棚卸し在庫や土地・不動産などを含む有形財産は全て現金化し、最後まで残った財産を、株主へ分配します。

税務署へ清算確定申告書の提出

残余財産が確定した段階で、税務署へ清算確定申告書を提出します。(残余財産確定の翌日から1ヶ月以内)

決算報告書の作成

決算報告書を作成します。清算手続き中(解散の翌日〜残余財産確定の日まで)に発生した費用や、債権の回収・財産の現金化によって得た収益、残余財産の金額、株主への1株あたりの配当金などを記載します。

株主総会での承認

決算報告書が作成できたら、すみやかに株主総会を開き、承認を得ます。

清算結了の登記

法務局にて清算結了の登記申請をし、清算手続きは完了です。(株主総会の承認後2週間以内)

各公的機関へ清算結了の届出

清算結了した旨を、各公的機関へ届け出ます。

会社解散・清算手続きにかかる費用

名目費用
登録免許税解散及び清算人選任の登記:39,000円

清算結了の登記:2,000円

官報公告費用目安:39,482円(22字×11行の場合)※
その他諸費用登記事項全部証明書:数千円

株主総会開催費用:規模に応じて

専門家への依頼費用税理士:10万円〜30万円

司法書士:8万円〜数十万※依頼範囲による

弁護士:必要に応じて。数十万かかることも。

※参考:「官報と官報公告・決算公告

どこからどこまで依頼するかにもよりますが、全て専門家に依頼した場合は、最低30万円前後〜かかると考えておけばよいでしょう。

また、弁護士へ依頼する必要がある場合は50万円以上はみておく必要があります。

なるべく費用を抑えたい場合は、できる範囲で資料をご自身で作成したり、税務署や法務局など各公的機関への書類提出に行ったりすると良いでしょう。

会社解散・清算手続きに要する期間

会社の解散・清算手続きに要する期間は会社の規模によって変わってきます。債権の回収や債務の支払いに時間を要する場合、長いと1年以上かかるケースもあります。

債権者の保護手続きで官報公告に掲載する期間が最低2ヶ月以上と会社法で定められておりますので、どんなにスムーズに手続きが進んでも、2ヶ月〜3ヶ月はかかります。

残余財産の分配とは

残余財産とは、有形財産(棚卸し在庫、土地、不動産など)を全て現金化したものと回収した債権弁済した債務を差し引いて残った現金を言います。

株式会社における会社の実質的所有者は株主ですので、残余財産は株主に均等に分配しなければなりません。

この時、数円〜十数円の端数が出ることがありますが、その場合は何かしらの雑費や書類作成費用などで税理士に調整してもらうことが多いようです。

残余財産の分配方法とタイミング

残余財産を分配するタイミングは、財産の換金や債権回収、債務弁済が全て終わり、残余財産が確定した後になります。

株式会社の場合

残余財産は1株あたりの金額を定めることで株主に分配しますが、現物での分配も可能です。清算人は、「残余財産の種類」「分配の割り当て」を決め、分配します。種類株式が発行されている場合は、まず定款に記載されている金額を、優先株主へと分配します。

持分会社の場合

合名会社、合資会社、合同会社などの持分会社の場合、株主はいませんので、出資者で分配します。出資者が複数いる場合には、それぞれの出資割合で残余財産の分配を確定させるのが一般的です。

種類株式について

種類株式が発行されている場合は、定款で定められた方法で分配が決まります。

種類株式には以下3パターンがあります。

  • 普通株主に先立ち、優先して多くの配当を受け取れる
  • 普通株主より受け取れる配当が少ない
  • 残余財産を一切受け取らない

「普通株主に先立ち、優先して多くの配当を受け取れる」場合が多く、残余財産が確定したらまず、定款で定められた金額を優先株主へ分配し、その後優先株主を含む全ての株主に均等に分配します。

債務超過の場合の清算手続きについて

残余財産の確定を進めている段階で、在庫や不動産の売却をしても債務の支払いが追いつかない場合、通常の清算手続きができません。その場合は、会社の破産手続きあるいは、特別清算という手続きになります。

会社清算の手続き前にM&Aで事業売却の検討も

会社の解散を考える前に「会社の譲渡」という選択肢があります。
業績が悪化している場合でも、買い手によっては復活させられる見込みがあったり、事業のクオリティやシナジーを評価されて売却ができる可能性はあります。

後継者がいない場合も同じです。引き継いでもらえる企業が見つかれば、廃業にしなくて済みます。売り先の条件次第では、従業員や取引先も喜んでくれることでしょう。

また、会社ごとの譲渡・売却ではなくとも、事業の一部を譲渡したり、取り扱っているコンテンツや経営権を譲渡したりするという選択肢もあります。

  • 不採算事業のせいで財務状況が思わしくない
  • 事業が複数あり、リソース不足
  • 売上を作れる人員がいなくなってしまった

上記のような場合は特に、会社の解散の前に一度、M&Aによる事業売却が可能かどうか、考えてみるのもいいかもしれません。

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