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倒産した会社の借金は誰が負担する?返済義務の有無と気をつけるべき3つの違法行為

倒産した会社に借金があった場合、返済義務は誰にあるのか疑問に思われるでしょう。

この記事では、会社が抱える借金の返済義務が誰にあるのかを詳しく解説します。

また、法人破産の仕組みと気をつけるべき違法行為を併せてご覧ください。

会社における「倒産・廃業・破産」の定義の違い

会社の「倒産」によく似た言葉として、「廃業」・「破産」があります。

これらの言葉は似ているものの、まったく異なった意味を表します。

この章では、会社における「倒産・廃業・破産」の定義の違いを解説します。

会社の倒産とは?

会社の倒産と聞くと、経営状態や財政状況の悪化により、会社そのものが消滅するというイメージを持つのではないでしょうか。

しかし厳密には、企業が財政状況の悪化などにより、経営活動を継続できない状態を表す言葉です。

つまり、会社の倒産が、必ずしも会社の消滅を表すわけではないということ。

倒産手続きには、事業を終了させる清算型のみならず、事業を継続させながら立て直しを図る再建型も存在します。

倒産の定義は、一般的な倒産のイメージとズレがあるため、その点には注意が必要です。

会社の廃業とは?

会社の廃業とは、会社や個人事業主が自主的に事業をやめることです。

廃業の定義では、事業をやめる理由について触れておらず、後継者不足や資金繰りの問題など、各会社によって様々です。

単に事業をやめただけでは、会社の資産や負債が残るため、廃業では会社を解散して清算手続をおこなう必要があります。

会社の破産とは?

会社の破産とは、債務超過などに陥った際に、会社が抱える資産と負債を清算する法的整理のことです。

具体的には、裁判所が選任した破産管財人が会社の財産を管理・換金し、借金の返済をおこないます。

さらに、破産手続きが完了すると、会社そのものが消滅するという仕組みです。

先ほどの、倒産・廃業との違いをまとめると、下記の通りです。

  • 倒産:企業が経営活動を継続できない状態のこと
  • 廃業:自主的に事業をやめること
  • 破産:資産と負債を清算する法的整理のこと

上記3つは、混同しやすいため、それぞれの違いを理解しておくとよいでしょう。

倒産後に破産した会社の借金は原則免除

会社が破産手続きを終了した場合、抱えている借金は原則免除されます

理由は、破産手続きの終了とともに、借金を抱えた会社が消滅するためです。

破産手続きは、会社の全資産を借金返済に充てた段階で終了します。

このとき、すべての資産を処分しても、借金を返しきれないケースがほとんどです。

しかし、仮に借金が残ったとしても、借金を抱えた会社そのものが消滅するため、原則的に返済義務が免除されます。

また、会社と経営者は別人格として扱われるため、経営者が会社の借金を肩代わりする必要もありません。

個人が破産手続きをおこなった場合、免責により借金が免除されるため、破産=借金免除と捉えがちです。

ただし、会社の破産で借金が免除されるのは、あくまでも会社の消滅による効果であるため、個人破産の免責とは異なります。

個人と会社では、借金が免除される理由に違いがあるため、その点には注意が必要です。

法人と経営者は別人格として扱われる

法律において、法人と経営者は別人格として扱われます。

会社には、株式会社・有限会社・合同会社などいくつかの種類があり、いずれも法人に分類されます。

法人とは、法律上「人」として扱われ、権利義務の主体になれる団体のこと。

法人自体が権利を持ち、義務を負うため、法人の資産や負債は法人のものです。

そのため、法人が借金をした場合、借金の返済義務を負うのは法人であり、別人格である経営者ではありません。

法人と経営者が別人格であることは、破産手続きにより会社が消滅した場合でも同様です。

借金を抱えた会社が消滅したとしても、別人格である経営者が返済義務を負うことは、原則としてありません。

ただし、場合によっては、経営者が会社の借金を負担するケースもあるため、その点には注意が必要です。

代表者が会社の借金を負担する3つのケース

原則として、経営者が会社の借金を負担することはありません。

ただし、下記の場合には、代表者に借金の返済義務が生じる可能性があります。

  • 会社の連帯保証人になっている場合
  • 会社から借金をしている場合
  • 代表者の過失が原因で生じた損害の場合

それぞれのケースについて、詳しく解説します。

会社の連帯保証人になっている場合

1つ目のケースは、会社がお金を借りる際に、代表者が連帯保証人になっている場合です。

先述の通り、会社の借金は、倒産・破産手続きをおこなった際に免除されます。

ただし、経営者が会社の連帯保証人になっている場合、会社が倒産・破産したとしても、保証人としての返済義務は免除されません。

そのため、経営者が連帯保証になっている場合には、会社が倒産・破産などにより返済能力がなくなると、代わりに返済しなければならないのです。

会社と経営者は別人格であるため、たとえ会社の財政状況が悪くても経営者の財産に影響はなく、経営者個人が財産を抱えていると認識されています。

これにより、中小企業が銀行や金融機関から融資を受ける際には、経営者個人が会社の連帯保証人になることを求められるケースが多いのです。

しかし、会社の借金を必ずしも経営者が完済できるわけではないでしょう。

仮に、経営者の財産すべてを返済に充てたとしても完済できない場合は、代表者も自己破産手続きを申請する必要があります。

個人の自己破産では、破産後に免責がおこなわれ、借金が免除される仕組みです。

経営者個人が連帯保証人になっている場合は、法人破産手続きを申請する際に、自己破産も合わせて検討するとよいでしょう。

会社から借金をしている場合

2つ目のケースは、代表者個人が会社から借金をしている場合です。

代表者が会社からお金を借りている場合、会社が破産手続きにより消滅したとしても、会社から借りたお金の返済義務は無くなりません。

法人破産手続きでは、裁判所によって選任された破産管財人が会社の財産を調査・管理し、債権者へ配当します。

破産管財人が管理する財産には、資産の他に売掛金や債権も含まれます

そのため、代表者の借金は会社の消滅とともに免除されるのではなく、会社が無くなった後も破産管財人からの請求により、返済する必要があります。

ただし、代表者が会社の連帯保証人になっており、法人破産手続きと自己破産手続きを同時に申し立てた場合、免責の効果により、会社から借りたお金の返済義務が免除されます。

代表者の過失が原因で生じた損害の場合

3つ目のケースは、代表者の過失が原因で生じた損害の場合です。

経営者や社長などの代表は、様々な経営判断を下し、会社経営の舵取りをします。

そのため、会社の倒産・破産は、代表者の責任ともいえまが、法律上、通常の経営をおこない倒産・破産に至った場合は、代表者が責任を問われることはありません。

ただし、重大な過失や故意に不利益をもたらした場合は、第三者に与えた損害を経営者個人が賠償する必要があります。

第三百五十五条 取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。

第四百二十九条 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
引用:会社法|e-gov法令検索

会社法では上記のように定められているため、会社に対する損害賠償が経営者に請求されるケースもあります。

また、会社法違反により、刑罰を受けるケースもあるため、注意が必要です。

法人破産で気をつけるべき3つの違法行為

法人破産手続きでは、下記3つの違法行為をしないよう注意が必要です。

  • 会社財産を個人名義へ変更
  • 借金の返済先に優劣をつける
  • 意図的に財産を安く処分する

この章では、法人破産時に気をつけるべき違法行為を詳しく解説します。

1.会社財産を個人名義へ変更

1つ目の違法行為は、会社財産を個人名義へ変更することです。

破産手続きに伴い、会社で購入した備品を自分のものとして利用すると、詐欺罪に該当する恐れがあります。

会社で購入したものは、会社の所有物であり、経営者の所有物ではないのです。

また、倒産・破産した会社の財産を理由なく個人名義に変更すると、破産犯罪に該当する恐れもあるため注意が必要です。

万が一、会社財産を個人名義へ変更したい場合は、法律の専門家である弁護士に確認するとよいでしょう。

2.借金の返済先に優劣をつける

2つ目の違法行為は、借金の返済先に優劣をつけること

破産を検討した際は、普段からお世話になっている取引先や身内からの借金を優先的に返済したいと考えるでしょう。

しかし、破産手続きでは、債権者を平等に取り扱わずに優劣をつける偏頗弁済(へんぱべんさい)が禁止されています。

あくまでも債権者は平等に取り扱い、借金返済も平等におこなう必要があるのです。

ただし、偏頗弁済には一部例外があり、負債の種類によっては優先的に返済しなければならないケースも存在します。

たとえば、従業員の未払い給料は、他の負債よりも優先的に支払う必要があります。

基本的に偏頗弁済は禁止されている行為ですが、例外もあるため注意が必要です。

3.破産手続き前に財産を処分

3つ目の違法行為は、破産手続き前に財産を処分することです。

破産手続きでは、裁判所によって選任された破産管財人が会社の財産を管理・換金し、各債権者に弁済します。

また、会社の代表者は、「倒産した会社の財産を合理的な理由なく処分してはならない」と財産散逸防止義務によって定められています。

そのため、仮に倒産した会社の財産を破産手続き前に処分した場合、財産散逸防止義務に反したとみなされる可能性があります。

財産散逸防止義務に違反すると、債権者への返済額を減少させたことになり、損害賠償を請求される可能性があります。

また、最悪の場合、破産犯罪に該当し刑罰が課せられるリスクもあるため、倒産した会社の財産を破産手続き前に処分することは避けましょう。

会社を倒産前に売却するという選択肢も

会社が多額の借金を抱えたことで倒産しそうな場合、廃業・破産以外に、借金ごと会社を売却する(M&A)という選択肢もあります。

仮に会社を売却できれば、借金がなくなる・減らせるのみならず、従業員の雇用維持にもつながります。

また、買い手側としても、すでに完成している状態の会社を買収できるため、短期間での事業拡大・経営基盤の強化といったメリットがあります。

M&Aで買い手企業が見つかるかどうかは、会社の事業内容や借金の金額など、あらゆる要素によって異なります。

場合によっては、会社の借金が残る可能性もありますが、借金を完済し、創業者利益を得られる可能性もあります。

そのため、一つの選択肢として、M&Aを検討してみるとよいのではないでしょうか。

ただし、M&Aでは専門的な知識が求められるため、まずはM&Aコンサルティングに相談するとよいでしょう。

会社の倒産・破産を検討するなら早めに対策しよう

この記事では、会社が抱える借金の返済義務が誰にあるのかについて解説しました。

倒産・破産した会社は、存在そのものが消滅するため、借金が免除されます

また、法人と経営者は別人格であるため、3つのケースを除き、経営者が借金を負担することはありません。

会社の倒産・破産は、すぐに完結するものではないため、早めに検討しておくことが重要です。