MBO(マネジメント・バイアウト)が発表されると、 株価はどうなるのか、投資家なら誰もが気になる疑問です。MBOは経営陣が自社の株式を買い取って上場廃止を目指す手法ですが、 株価への影響は一概には言えません。
本記事では、MBO発表後の株価変動のメカニズムから過去の事例、MBO成立後の企業経営者の選択肢まで徹底的に解説します。MBOを正しく理解し、 企業経営につなげる第一歩を踏み出しましょう。
目次
MBO発表後の株価変動

MBOが発表された場合、株価はいかに変動するのか、メカニズムと過去の事例から見られる株価変動のパターンについて解説します。
MBOとは
MBOとは「Management Buyout」の略で、企業の経営陣が自社の株式を買い取り、経営権を取得する手法です。結果的に上場を廃止し、非公開企業となるのを目指します。
TOBとの違い
MBOと似た言葉にTOB(Take-Over Bid:株式公開買付け)があります。TOBは株式の買い取りを広く一般株主に対して行うのに対し、MBOは経営陣が主体となって株式を買い取る点が違います。
TOBは必ずしも上場廃止を目的としませんが、MBOは上場廃止を目的とするのが一般的です。
MBO発表により株価はどうなる?
MBOの実施が発表されると、一般的に株価は上昇する傾向にあります。なぜなら、MBOの際に既存株主に対して直近の株価にプレミアム(買収プレミアム)を上乗せした買い取り価格が提示されるためです。
投資家は提示された価格で株式を売却できると期待し、買いが集まりやすくなるのが一般的です。
ただし、MBOが必ず成功するとは限りません。MBOが成立しなかった場合、株価は急落する可能性もあります。MBO発表後の株価動向を注視し、慎重な判断が求められます。
過去のMBO事例から見る株価変動パターン
過去のMBO事例を分析すると、株価変動のパターンをある程度予測できます。一般的には、以下の2つのパターンが見られます。
パターン | 詳細 |
---|---|
買付価格付近まで上昇 | MBOが成功する可能性が高いと判断された場合、株価は提示された買付価格付近まで上昇します。投資家が、最終的に提示価格で株式が買い取られると見込んでいるためです。 |
乱高下 | MBOの成否が不透明な場合、株価は大きく変動する可能性があります。MBOが成功するとの期待感から株価が上昇する一方、失敗するリスクを考慮して売りが先行する場合もあります。 |
MBO発表後の株価変動は、市場の状況や企業の状況によって大きく異なります。投資判断を行う際は、MBOの条件、企業の財務状況、市場全体の動向を総合的に考慮しましょう。
MBO成立後の企業経営者の選択肢

MBOが成立し、上場廃止となった後、企業経営者は新たなスタートを切ります。上場企業としての制約から解放され、より自由な経営判断が可能になる一方で、今後の企業の方向性を決定する重要な選択を迫られます。
本章では、MBO成立後の企業経営者が取り得る主な選択肢について解説します。
中長期的な経営改善・再構築
MBOの大きな目的の一つは、短期的な株価変動に左右されず、中長期的な視点での経営改善や事業再構築を行うことです。
上場企業の場合、四半期ごとの業績発表が求められ、短期的な利益を追求せざるを得ない状況に陥りがちです。
しかし、MBOによって非公開化すると、経営者は長期的な視点に立ち、大胆な改革や新規事業への投資など、将来の成長に向けた戦略を実行しやすくなるのが一般的です。
具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
- 不採算事業からの撤退
- 新規事業への投資
- 組織改革
- 経営効率化
- 技術革新
上記の取り組みを通じて、企業価値の向上を目指します。
再上場(IPO)
MBOによって企業価値を高めた後、再び株式を公開し、再上場(IPO)を目指す選択肢もあります。MBOによって得られた利益を、さらに大きな利益へとつなげるための戦略的な手段と言えます。
再上場によって資金調達の手段を再び確保できるだけでなく、企業としての信用力や知名度も向上します。
再上場を成功させるには、MBO後の経営改善が不可欠です。投資家に対して、明確な成長戦略と実績を示す必要があります。また、上場準備には多大な時間とコストがかかるので、計画的な準備が重要です。
他企業への売却・バイアウト
MBOによって企業価値を高めた後、他の企業への売却やバイアウトを検討する選択肢もあります。
MBOによって得られた利益を確定させ、新たな事業への投資や個人の資産形成につなげるための手段です。特に、後継者問題などで事業承継が難しい場合、MBO後に他企業へ売却すると、従業員の雇用を維持し、事業を継続させられます。
売却先としては、同業他社や異業種の大手企業、投資ファンドなどが考えられます。売却価格は、企業の収益性や成長性、市場環境などによって大きく変動します。専門家のアドバイスを受けながら、最適な売却先と条件を探りましょう。
MBOによる上場廃止のメリット・デメリット

MBOを通じた上場の廃止は、企業にとって大きな決断です。上場廃止には、経営の自由度が高まるなどのメリットがある一方で、資金調達の手段が限られるなどのデメリットも存在します。
本章では、MBOによる上場廃止が企業にもたらすメリットとデメリットについて詳しく解説します。
企業側のメリット
主なメリットは、以下のとおりです。
メリット | 詳細 |
---|---|
経営の自由度向上 | 上場企業は、四半期ごとの業績発表や株主総会など、短期的な利益を追求せざるを得ない状況に置かれる場合があります。MBOによって上場を廃止すると、こうした制約から解放され、中長期的な視点での経営戦略を立てやすくなる魅力があります。 |
コスト削減 | 上場を維持するには、監査費用、情報開示にかかる費用、株主対応にかかる費用など、多額のコストが発生します。上場廃止によってこうしたコストを削減し、経営資源を有効活用できます。 |
敵対的買収リスクの軽減 | 上場企業は、常に敵対的買収のリスクにさらされています。MBOによって自社株を買い集め、上場を廃止すると、敵対的買収のリスクを軽減し、経営の安定化を図れます。 |
経営陣による迅速な意思決定 | 上場企業では、株主の意向を考慮する必要があるので、意思決定に時間がかかります。MBOによって経営陣が株式を保有すると、迅速な意思決定が可能になり、変化の激しい市場環境に柔軟に対応できます。 |
企業側のデメリット
以下に、問題となりやすいデメリットをまとめました。
デメリット | 詳細 |
---|---|
資金調達手段の制限 | 上場企業は、株式発行や社債発行など、多様な資金調達手段を利用できます。しかし、上場廃止によってこれらの手段が利用できなくなるので、資金調達が困難になる可能性があります。 |
企業価値の低下 | 上場企業になる選択肢は、企業の信用力を高める要素の一つです。上場廃止によって企業の信用力が低下し、取引先や金融機関からの評価が下がる可能性があります。 |
株主からの理解を得る必要性 | MBOを実施するには、株主の賛同を得る必要があります。特に、MBO価格が市場価格よりも低い場合には、株主から反発を受ける可能性があります。 |
情報公開の減少 | 上場企業は、財務状況や経営戦略など、さまざまな情報を公開する必要があります。上場廃止によって情報公開の義務がなくなるので、企業の透明性が低下する可能性があります。 |
MBOによる上場廃止は、企業にとって大きな転換点です。メリットとデメリットを十分に理解した上で、慎重に判断する必要があります。
【事例で学ぶ】MBOによる株価の変動

MBOは、経営陣にとって企業をより自由に経営する上で有効な手段となり得ますが、株主にとっては株価がいかに変動するのかが最大の関心事です。本章では、MBOが株価に与える影響を、実際の事例を通して見ていきましょう。
成功事例:株価が大幅に上昇したケース
MBOが成功し、株価が大幅に上昇したケースを見てみましょう。
企業名 | MBO発表前の株価 | MBO成立後の株価 | 株価変動 | 成功要因 |
---|---|---|---|---|
企業A | 500円 | 1,000円 | 2倍 | ・経営陣による明確な経営戦略の提示 ・MBO後の事業再編による収益改善 ・市場からの期待感向上 |
企業B | 700円 | 1,600円 | 2.3倍 | ・資本コストや株価を意識した経営の実現 ・アクティビストの主張に市場が呼応 |
こうした事例からわかるように、MBO成功の鍵は、経営陣が明確な経営方針を持ち、具体的な経営改善策を実行し、市場からの信頼を得ることです。MBO発表時に提示されたTOB価格が企業価値に見合わないと判断された場合、株価がTOB価格を上回る場合もあります。
失敗事例:株価が低迷したケース
一方で、MBOがうまくいかず、株価が低迷したケースも存在します。
企業名 | MBO発表前の株価 | MBO成立後の株価 | 株価変動 | 失敗要因 |
---|---|---|---|---|
企業C | 800円 | 600円 | 0.75倍 | ・経営戦略の不明確さ ・MBO後の事業再編の遅れ ・市場からの信頼低下 |
事例から学ぶMBO成功の鍵とは
これらの事例から、MBOを成功させるには、以下の点が重要であることがわかります。
ポイント | 詳細 |
---|---|
明確な経営戦略 | MBO後、いかなる経営を目指すのか、具体的な戦略を明確に提示する必要があります。 |
迅速な事業再編 | MBOを機に不採算部門の整理や新規事業への投資など、迅速な事業再編を行う必要があります。 |
市場とのコミュニケーション | MBO後も市場とのコミュニケーションを密にし、経営状況や今後の展望を積極的に発信する必要があります。 |
適切なTOB価格 | MBOにおけるTOB価格は企業価値を適正に反映したものでなければ、株主の賛同を得られず、MBO自体が失敗に終わる可能性があります。 |
MBOは、企業にとって大きな転換点です。成功させるには、周到な準備と実行力、市場との良好な関係が不可欠です。
まとめ:MBOを正しく理解し、企業経営に活かそう

MBOは、経営陣が自社の株式を取得し、非公開化を目指す経営戦略です。MBO発表後の株価は、一般的にプレミアムを期待して上昇する傾向にありますが、必ずしも成功するとは限りません。
MBOは、企業にとって中長期的な経営戦略の見直しや再構築、再上場(IPO)などの選択肢を広げる有効な手段となり得ます。一方で、資金調達の負担や経営責任の増大といったデメリットも存在します。
MBOを検討する際には、メリット・デメリットを十分に理解し、慎重に判断しましょう。
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