垂直統合は企業が製品やサービスの供給チェーンの複数段階を一貫して管理する戦略で、M&Aを検討している会社にとって垂直統合のメリットやリスクを理解することは重要です。
ユニクロやトヨタ、Amazon、Netflixといった大手企業が成功例として知られており、生産から販売までを効率化することでコスト削減や供給の安定化を実現しています。
しかし、垂直統合には多額の投資が必要なため、取引先の離反や専門性の低下といったリスクもあります。
この記事では、具体的な垂直統合の事例や水平統合との違い、垂直統合のメリット・デメリットなどを解説します。
この記事を読むことで、M&A戦略の立案に役立つ知識が得られるでしょう。
目次
- 1 垂直統合した企業例一覧
- 2 ユニクロ
- 3 トヨタ
- 4 Amazon
- 5 Netflix
- 6 垂直統合について
- 7 垂直統合とは
- 8 水平統合との違い
- 9 垂直統合のメリット
- 10 取引コストを削減できる
- 11 シナジー効果が発揮できる
- 12 他企業と差別化できる
- 13 安定した供給ができる
- 14 垂直統合のデメリット
- 15 多額の統合コストがかかる
- 16 取引先が離れる可能性がある
- 17 自社の専門性が薄くなる恐れがある
- 18 垂直統合を成功させるポイント
- 19 M&Aの目的や戦略を明確にする
- 20 企業間で密なコミュニケーションを取る
- 21 M&A後の統合を徹底する
- 22 M&Aの専門家に相談する
- 23 垂直統合を視野に入れたM&A戦略を立てよう!
垂直統合した企業例一覧
垂直統合とは、製品の製造から販売までのプロセスを一貫して自社内で行うビジネス戦略です。
これから紹介する企業は、垂直統合を積極的に進めている代表的な企業です。それぞれが異なる業界で独自の垂直統合戦略を展開し、市場での競争力を強化しています。
垂直統合した企業がどのように垂直統合を実現しているのかを紹介します。
ユニクロ
ユニクロは垂直統合を成功させた企業の一つで、もともと衣料品の小売業としてスタートして企画から製造、物流、販売までをすべて自社で一貫して行う垂直統合モデルを採用しました。
ユニクロは垂直統合により、コスト削減や品質管理の向上を実現したため急成長を遂げています。
ユニクロの垂直統合は、他社との差別化を図りつつ効率的なバリューチェーンの構築に成功したのです。
トヨタ
トヨタは垂直統合の代表的な成功事例として知られています。
研究開発から部品の製造、車体の組み立て・販売までを一貫して自社グループ内で行うことで、効率的なバリューチェーンを構築しています。
トヨタ独自の「かんばん方式」を用いた垂直統合により、無駄を削減しながら高い品質と低コストを実現しました。
系列の販売店を通じてユーザーに製品を届ける仕組みが、競争力を支えています。
Amazon
Amazonは垂直統合型のビジネスモデルを採用しています。
Eコマース事業に関して、倉庫管理や配送業務、ECサイトの運営までをすべて自社で行っています。
Amazonは垂直統合により、バリューチェーン全体を最適化することで効率的な物流とコスト削減を実現しました。
倉庫業務を自社内だけでなく外部にサービス提供することで、既存リソースを最大限に活用しています。
Netflix
Netflixは、垂直統合を活用して自社でオリジナルの映像コンテンツを制作・配信しています。
当初はDVDの配送を行っていましたが、現在はストリーミングを通じてコンテンツを提供し、視聴データを活用してユーザーの好みに合った作品を制作しています。
Netflixの垂直統合で映像制作から配信まで一貫して管理することで、独自の競争力を持つハリウッドスタジオとも競う巨大スタジオに成長しました。
垂直統合について
垂直統合とは、企業が製品の企画から製造、販売に至るまで一貫して自社で行うビジネスモデルのことです。
ここからは、垂直統合の特徴や水平統合との違いについて詳しく解説します。
垂直統合とは
垂直統合とは、生産から流通、販売までの一連のプロセスを企業が自社内で行うビジネスモデルです。
企業は垂直統合をすることにより取引先の影響を受けにくくなり、安定した供給や品質管理の向上が可能となります。また、外部企業に依存することなくリードタイムの短縮やコスト削減も実現できます。
垂直統合をすることで、さまざまな方向の企業成長が促進されるでしょう。
水平統合との違い
垂直統合と水平統合の違いは以下のとおりです。
- 垂直統合:生産や流通、販売といった一連の経済活動を自社内で行う、サプライチェーンの効率化
- 水平統合:同業他社との統合を通じて市場シェアを拡大する、市場の競争優位を築く
垂直統合と水平統合の違いは、統合の目的や対象が異なることです。
垂直統合のメリット
垂直統合は、コスト削減や競争力の強化を同時に達成できるなどのメリットがあります。
ここからは、垂直統合の具体的なメリットを4つ挙げて詳しく解説します。
取引コストを削減できる
垂直統合は、企業はサプライチェーンにおける外部委託のコストを削減できます。
原材料の調達を自社で行うことで取引コストを削減、自社での販路確保によって販売コストも抑えられます。
垂直統合は取引相手による不利な契約を避けられるため、長期的なコスト面のリスクが低減されるのです。
シナジー効果が発揮できる
垂直統合により、企業はシナジー効果を得ることができます。
異なる事業間で技術やノウハウ、顧客情報が共有されるため、新しい商品やサービスの開発が可能です。
垂直統合によるシナジー効果は、既存事業の強化だけでなく新たな市場での事業展開も見込めます。
製造から販売までを一体化することで、開発から販売までのスピードアップが図られるのが垂直統合の大きなメリットです。
他企業と差別化できる
垂直統合することで、他企業との差別化が可能です。
自社で製造から販売までのプロセスを統合することで、独自の付加価値を付けやすくなるからです。
例えば、品質管理の強化や自社独自の仕様、デザインを市場に提供できるのです。
垂直統合することは、顧客との接点を増やして迅速な対応やパーソナライズしたサービスを提供することで、顧客の満足度を高められるでしょう。
安定した供給ができる
垂直統合することで、安定した供給が可能となります。
自社で供給元を持つことで、外部の市場変動や供給不足のリスクを軽減できるからです。
製造と原材料供給を統合することで、必要な資材をタイムリーに確保できるため、生産の遅延を防ぎます。
自社で強固な供給元を持つことで、供給コストを抑えたり品質の管理が行き届いた安定した製品を提供したりできるでしょう。
垂直統合のデメリット
垂直統合には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。
垂直統合のデメリットを理解していないと、多額のコストや取引先との関係が悪化するなどのリスクがあります。
ここからは、垂直統合のデメリットを3つ挙げて詳しく解説します。
多額の統合コストがかかる
垂直統合は、多額のコストがかかることが大きなデメリットです。
垂直統合のための買収費用や専門家の仲介手数料、企業価値評価の費用などが発生する上に、さらに新設備の導入や新たな顧客開拓など先行投資も必要になってきます。
また、事業が軌道に乗らない場合は撤退コストもかかり、期待した成果を上げない場合には大きな経済的負担となるリスクもあります。
垂直統合をする際には、慎重な費用対策が必要です。
取引先が離れる可能性がある
垂直統合をすると取引先が離れる可能性があります。
自社で一貫して事業を行うようになると、以前の取引先がビジネスの機会を失って他の取引先に移行してしまうからです。
自社グループ内での取引を優先すると外部の取引先との関係が希薄化してしまうため、信頼関係の悪化につながります。
垂直統合は社外でのネットワークの維持が難しくなるため、将来の柔軟性を欠くことが懸念されます。
自社の専門性が薄くなる恐れがある
垂直統合することで、自社の専門性が薄れる恐れがあります。
垂直統合で新たな分野に踏み込むと、既存の強みである技術やノウハウに割けるリソースが分散してしまうため、本来の専門性が弱まる可能性があるのです。
異なる事業分野を同時に管理する必要があるため、既存事業の品質や効率が低下するリスクがあります。
垂直統合すると競争力の低下にもつながる可能性があるため、注意が必要です。
垂直統合を成功させるポイント
垂直統合を成功させるためには、いくつかの重要なポイントを押さえることが必要です。
これから紹介するポイントを意識することで、垂直統合のプロセスを円滑に進められるため、持続的な競争優位を築けます。
ここからは、垂直統合を成功させるポイントを詳しく解説します。
M&Aの目的や戦略を明確にする
垂直統合を成功させるためには、M&Aの目的や戦略を明確にすることが重要です。
目的が不明確であれば、資源の無駄遣いや期待するシナジー効果の実現が困難になることがあるからです。
例えば、新たな市場の開拓やコスト削減、サプライチェーンの強化など、明確な目的を持つことで、M&A後の計画と意思決定が円滑に進みます。
垂直統合の戦略が明確であることで、全社での方向性も一致させやすくなるでしょう。
企業間で密なコミュニケーションを取る
垂直統合を成功させるためには、企業間での密なコミュニケーションが欠かせません。
垂直統合後の異なる企業文化や経営方針の違いを解消するためには、定期的な会議や情報共有を行うのが重要だからです。
企業間で積極的なコミュニケーションをすることで、統合後のシナジー効果を最大化できるため、円滑な事業運営を実現できるでしょう。
M&A後の統合を徹底する
垂直統合を成功させるためには、M&A後の統合を徹底しましょう。
垂直統合の過程で新しい組織構造や業務プロセスを迅速に整備できるため、従業員に対しても明確な方向性を示せます。
例えば、異なる企業文化を融合させるためには、積極的な教育や研修を実施するといいでしょう。
垂直統合を成功させるには、従業員同士や業務の一体感を生み出すことで、効果的なシナジーを発揮できるでしょう。
M&Aの専門家に相談する
垂直統合を成功させるためには、M&Aの専門家に相談することが効果的です。
M&Aは法律や財務面での複雑な手続きなどが必要なため、自社だけでは対処が難しいことが多いからです。
M&A専門家のサポートを受けることで、リスクを軽減したうえで適切なアプローチが可能になります。
垂直統合を成功させるには、M&A専門家の経験や実績をもとにした適切なアドバイスが、M&Aの成功確率を上げてくれるでしょう。
垂直統合を視野に入れたM&A戦略を立てよう!
M&Aを検討している企業は、製造から販売までのプロセスを自社内で統合する「垂直統合」を視野に入れてM&A戦略を立てましょう。
ユニクロやAmazon、Netflixのような企業が垂直統合の成功を収めている背景には、取引コストの削減やシナジー効果、安定した供給の確保などのメリットがあります。
しかし、成功させるためには多額のコストや専門性の維持、取引先との関係管理などの課題に慎重に対処する必要があるのです。
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