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介護業界大手のツクイホールディングスが買収された理由と背景

2021年、アジアの投資会社MBKパートナーズが、介護事業のツクイホールディングスをTOB(株式公開買い付け)で買収。完全子会社化としました。

株式会社ツクイホールディングスは、1969年に津久井督六氏により津久井土木株式会社として設立されたことがはじまりです。

当初は土木事業を展開していましたが、1983年に介護事業に進出して、1999年に社名を株式会社ツクイに変更しました。2002年には土木事業から撤退して、その後は介護事業を中心に拡大を続け、2020年に株式会社ツクイホールディングスに社名変更。介護事業の大手として、在宅介護事業をけん引しています。

介護事業の大手であるツクイホールディングスがなぜ、TOBを受け入れたのか。買収された理由や背景を見ていきましょう。

ツクイホールディングスのTOB概要

ツクイホールディングスのTOB概要について以下の通りです。

  • 買付主体……MBKP Life合同会社
  • 買付価格……924円/株
  • 買付期間……2021年2月9日〜2021年3月24日
  • 買付予定数……53,102,016株(下限:29,316,000株)
  • 応募株式数……45,719,057株

ツクイホールディングスとは

ツクイホールディングスはもともと、1969年に土木工事の津久井土木として設立された企業です。

その後1983年に介護事業へ進出、デイサービスでは全国47都道府県560ヶ所に拠点をおき、介護業界トップクラスの企業となりました。

デイサービス以外にも有料老人ホームやグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの居住系が約80拠点(総定員3400名)と、介護業界では大手として成功を収めています。

その他にも

  • 株式会社ツクイキャピタル……福祉車両や福祉機器のリース事業
  • 株式会社DIGITAL LIFE……ヘルスケアIT事業や高齢者世帯向けWebサービスなど
  • 株式会社ツクイスタッフ……介護・医療業界特化の人材サービス事業、ほか

などの子会社もあり、介護事業においてさらなる拡大を進めていました。

ツクイを買収したMBKパートナーズとは

MBKパートナーズは北アジア専門のPEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)。

これまでにコメダホールディングスやユニバーサル・スタジオ・ジャパン、ゴディバ・ジャパンなどを買収してきた大手投資ファンドです。

2005年に設立され、創業者はアメリカの投資ファンド「カーライル・グループ」に属していたマイケル・キム氏。キム氏は2015年のブルームバーグが選ぶ「世界で最も影響力のある50人」の42番目に選ばれています。

MBKパートナーズは主に韓国、上海、北京、香港、日本を拠点としており、2016年には韓国が運営するスーパーマーケット「テスコ」を約6,000億円で買収しました。

ツクイホールディングスが買収された理由と背景

ツクイホールディングスは介護業界大手なのに、なぜTOBを受け入れたのでしょうか。

理由は新型コロナウイルスの感染拡大にあります。

コロナ禍において主力事業のデイサービスは利用が控えられ、事業の先行きが不透明になってしまったというのは、大きな理由の一つと言えるでしょう。

主力事業の業績に影響が出ると、企業全体の経営戦略が崩れてしまい、そのままだと業績悪化で立て直しが効かなくなる場合もあります。

ツクイホールディングスは介護事業の大手であり、関連事業で複数の子会社を設立し、拡大を図っていましたが、外部支援も必要であると判断したようです。

参考:日本経済新聞

一方、MKBパートナーズ側としては、介護事業への将来性を感じ買収に踏み切ったようです。

過去の事例で、2012年にアメリカの投資ファンド「カーライル・グループ」による日本医療事務センター(現在はソラスト)のMBOの結果、株式売却で投資額の約3倍を得たとされています。

これにより、介護事業は儲かるとされ、今回のツクイホールディングス買収が実現したのです。

なお、MBKパートナーズ株式会社の代表取締役である加笠研一郎さんは、買収後5,6年後の再上場で株価を3倍にしたいという目標を話しています。

参考:朝日新聞デジタル

事業の先行き次第では売却の検討も必要

今回のツクイホールディングス買収のように、前戦で経営している大手企業でも、情勢によって先の見通しが立たずに会社を売却するという決断も避けられない場面があります。

中小企業でも同様、事業やコンテンツのクオリティは高いが資金不足やリソース不足で経営を続けるのが困難と感じた場合は、思い切って売却の検討も必要かもしれません。

会社ごとの売却以外に、M&Aで事業単体を売却するという選択肢もあります。

事業の売却は、不採算事業の切り離しやリソース不足の解消になり、事業の選択と集中ができるメリットがあります。

パラダイムシフトでは会社や事業の売却についてアドバイス、サポートさせていただきます。

ご興味のある経営者様はご相談ください。