世界中で買収を含むM&Aが活発に実施されています。
特に注目を集めるのが電気自動車や自動運転技術の分野です。
GoogleやAmazonなどM&Aを活用して、巨大企業が参入し、群雄割拠の様相を呈しています。
この分野で先駆的な存在がイーロンマスク氏を中心に創業されたテスラです。本記事では、テスラの買収の歴史や姿勢、テスラを巡る買収の動きなどを解説します。
目次
- 1 テスラは買収によって成長した?
- 2 買収に否定的?マスク氏の買収に対する姿勢
- 3 Twitterの買収
- 4 テスラが実施した買収案件
- 5 2015年:Grohmann Engineering
- 6 2016年:SolarCity
- 7 2017年:Perbix Machine Company
- 8 2019年:Maxwell Technologies
- 9 テスラが買収される?巨大企業によるテスラ買収計画
- 10 2013年:Google
- 11 2013年:Apple
- 12 2018年:アマゾン
- 13 2013年:Union Pacific Railroad
- 14 今後のテスラによる買収の動き
- 15 買収の足枷となる財務面の課題
- 16 テスラの事業成長と買収の動きに注目
テスラは買収によって成長した?
テスラは買収を含むM&Aによって成長した企業ではありません。
2003年にイーロンマスク氏を中心に創業されたテスラは電気自動車の生産を開始しました。
テスラの成長は、イーロン・マスク氏をはじめとする経営陣の強いリーダーシップ、新しい技術と製品の開発、生産の効率化、市場戦略の見直し、投資家や顧客の支持など、様々な要因が貢献しています。
しかし、テスラが買収と無縁であるわけではありません。
テスラは過去にいくつかの企業買収を行っており、これらの買収が同社の成長に寄与している可能性もあります。
例えば、2016年にはソーラーパネルメーカーのSolarCityを買収し、テスラエナジーの一部門として展開しています。
最終的に決裂したものの、自動運転技術の開発にも力を入れており、2016年には自動運転技術の専門企業であるMobileyeの買収を発表しました。
しかし、これらの買収がテスラの成長に直接的な影響を与えたかどうかは明確ではありません。
買収に否定的?マスク氏の買収に対する姿勢
テスラは、過去にいくつかの企業買収を行っていますが、買収やM&Aに対する公式見解については明確にされていません。
ただし、テスラのCEOであるイーロン・マスク氏は、過去に自身のTwitterで、M&Aについて「買収による成長は、組織を大きくすることが目的となるため、本来の目的から逸れる」という趣旨の発言をしています。
また、同じくTwitter上で、「買収する企業は、株主の承認を得る必要がある」とも述べています。
このように、テスラの公式見解としては、買収について特別な方針や意図は示されていないようです。
これらの発言からは、テスラは買収には積極的ではなく、自社内での技術開発や製品開発、市場拡大を中心とした独自の成長戦略を重視していることが伺えます。
ただし、必要に応じて買収を検討することも否定していないため、将来的に買収を行う可能性はゼロではありません。
Twitterの買収
2022年10月、テスラ創業者で実業家のイーロン・マスク氏がアメリカのTwitter社の買収を完了しました。
報道などによると、買収総額は440億ドルに上ると見られています。
この買収について、「テスラ社によるTwitter社の買収である」と勘違いする方もいますが、これはイーロン・マスク氏個人によるTwitter社の買収です。
イーロン・マスク氏は、2021年から1年程度でテスラ社の株式約360億ドル相当を売却し、買収資金を作っています。
2022年1月からTwitter社の株式取得を開始し、3月時点で5%の株式を取得、4月には9.2%を取得し、筆頭株主になっていました。
テスラが実施した買収案件
テスラは買収やM&Aに関する公式見解を公表しておらず、買収に消極的だと見られています。
しかし、買収に全く無縁であるわけではなく、過去にいくつかの買収を実施しています。
2015年から2019年にテスラが実施した買収案件を確認しましょう。
2015年:Grohmann Engineering
2015年、テスラは自動製造システム改善を目的にドイツに本拠を置くGrohmann Engineeringの買収を発表しました。
買収総額は1億3500万ドルで、Grohmann Engineeringの企業規模に比して高額な買収価格は驚きを持って迎えられました。
同社は自動化システムメーカーで、テスラはこの企業を買収して、自動化生産ラインを構築するための技術と人材を獲得しました。
買収によって、テスラは自社製品の生産ラインをより高効率化し、生産性を向上させることができるようになりました。
2016年:SolarCity
テスラが実施したM&Aの中で、最も有名なのは2016年に実施したSolarCityの買収でしょう。
SolarCityは、太陽光発電システムの開発・製造・販売を手掛けるアメリカの企業で、イーロン・マスク氏が設立した企業の一つでもあります。
テスラは買収発表のプレスリリースの中で買収によって、「持続可能エネルギー企業」を設立し、シナジー効果により、最初の1年間で1.5億ドルの削減効果があるとしています。
テスラは、SolarCityの買収により、自社の製品ラインナップに太陽光発電システムを加え、再生可能エネルギー市場に参入することを狙っていました。
しかし、この買収には批判もあり、テスラの経営に懸念を抱く株主からの反発もあったとされています。
2017年:Perbix Machine Company
Perbix Machine Companyは、アメリカの自動化機器メーカーであり、生産オートメーションを提供しています。
長年、テスラのサプライヤーでしたが、2017年にテスラによって買収されました。
買収の背景には、テスラが自動運転車の開発を進める上で必要な自動化技術を獲得することにあります。
Perbix Machine Companyの技術は、テスラの自動運転車の生産ラインに統合され、生産ラインの自動化を進めることができるようになりました。
これにより、生産ラインの効率性が向上し、テスラはより高品質な自動運転車の生産を目指すことができました。
買収総額については明らかになっていません。
2019年:Maxwell Technologies
2019年5月16日、テスラはMaxwell Technologiesの買収を公表しました。
テスラが実施した最大のM&Aであり、買収額は約2億2,500万ドルです。
Maxwell Technologiesは、蓄電技術の一種であり、電気自動車(EV)用のバッテリー技術に活用されているスーパーキャパシタ開発を担っています。
電気自動車を開発するテスラにとって、Maxwell Technologiesが保有する技術は必要不可欠なものです。
テスラはこの買収により、バッテリー技術の開発を強化し、より高性能かつ低コストなバッテリーの実現を目指しています。
テスラが買収される?巨大企業によるテスラ買収計画
テスラは買収される側としても何度か噂がありました。
過去にいくつかの噂がありましたが、実際にテスラが買収されたことはありません。
2013年:Google
一部報道によれば、テスラの自動車事業が不振だった2013年にイーロン・マスク氏がGoogleにテスラの買収を提案したようです。
過去にGoogleは自動運転技術の開発に力を入れており、2016年には自動運転車の開発を行う子会社「Waymo」を設立しています。
テスラは自動運転技術で先駆的な存在として知られており、両社の事業領域は類似しています。
したがって、一部報道でGoogleがテスラの買収を検討しているという噂が流れたことがありますが、Google自体は公式に否定しています。
2013年:Apple
米紙ウォールストリート・ジャーナルの記者の暴露本によると、2013年にイーロン・マスク氏がテスラ社の売却をApple社に打診していましたが、Apple社のティム・クックCEOは面会を拒否し、成立しませんでした。
一部報道によれば、イーロン・マスク氏は買収と同時に自らがアップルのCEOに就くことを打診していたようです。
暴露で明らかになったのは2020年ですが、買収提案があったのは2013年です。
当時、Appleが自動運転技術の開発に興味を示しており、自動運転技術に定評があったテスラの買収が成立してもおかしくない状況ではありました。
2018年:アマゾン
アマゾンは、2020年6月、自動運転技術を手がけるアメリカのスタートアップ企業Zooxを買収することを公表し、自動運転車に本格参入しています。
そのアマゾンがテスラを買収する可能性について2018年に報道がありましたが、実現しませんでした。
この買収についてはそもそも提案があったのか明らかになっていません。
しかし、アマゾンが自動運転社の開発を進めていることやテスラが自動運転技術の分野でリードしていることから、買収提案があっても不思議ではありません。
2013年:Union Pacific Railroad
Union Pacific Railroadはアメリカを中心に鉄道輸送事業を展開する企業であり、自動車産業とは直接関係のない業種です。
しかし、2013年に一部報道によれば、Union Pacific Railroadがテスラ社の買収を検討しているという噂が流れました。
当時、イーロン・マスク氏がアイダホ州のショールズの工場を購入する計画を発表したことがありましたが、その際に買収の情報がありました。
しかし、実際に買収は実施されず、双方ともに公式コメントを発表していません。
今後のテスラによる買収の動き
テスラは必ずしも買収に積極的ではありませんが、今後はM&Aを行う可能性があります。
過去の買収をみると、テスラは自動運転技術やバッテリー技術など、自社のビジネスに関連する技術や企業を優先的に買収する傾向があります。
また、テスラは電気自動車市場において、競合他社との差別化を図るため、独自の技術開発や特許取得を積極的に行っているので、市場に存在する小規模な技術企業を買収することも考えられます。
テスラは創業者のイーロン・マスク氏が率いる企業であり、マスク氏は常に新しいアイデアや挑戦的なプロジェクトに取り組むことで知られています。
そのため、テスラは今後もM&Aを通じて、自社の成長を促すための戦略的な動きを続ける可能性があると言えます。
ただし、M&Aを実施するかどうかは、テスラが目指すビジネス戦略や市場環境、財務状況に応じて決定されるため、確実なことは分かりません。
買収の足枷となる財務面の課題
テスラが買収に消極的な理由として財務面の課題が指摘されることがあります。
テスラが抱える財務面の課題は主に2つです。
1つ目は財務指標の改善が必要な点です。
テスラは過去数年間、急速な成長を遂げていますが、その一方で財務指標が改善されていないことが課題となっています。
特に、利益率やキャッシュフローが改善されておらず、将来の事業拡大に対する資金調達が懸念されています。
2つ目は長期的な債務返済です。
テスラは、新しい工場や施設の建設、新製品の開発、そして自動運転技術の開発など、大規模な投資を必要としています。
そのため、債務の返済にも圧力がかかっており、長期的な視野で見た場合、これらの投資が回収されなければ、債務を返済することができなくなる可能性があります。
しかし、これらの課題を解決するために、テスラは収益の増加やコストの削減などの対策を取っています。
また、利益率やキャッシュフローの改善にも力を入れており、長期的な事業拡大に向けた財務戦略を模索しています。
テスラの事業成長と買収の動きに注目
本記事では、テスラの買収の歴史や姿勢、テスラを巡る買収の動きなどを解説しました。
テスラは、今後も自動車産業のリーディングカンパニーとして成長を続けると予想されます。
特に、電気自動車の需要が拡大する中で、テスラの市場シェアは拡大し続けることが予想されています。
一方、M&Aに関しては、テスラはこれまでいくつかのM&Aを実施してきましたが、将来的にもM&Aによる事業拡大を目指す可能性はあります。
特に、自動運転技術やエネルギー貯蔵システムなど、テスラが注力する分野での企業買収は、今後も継続される可能性があります。
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