会社の売却を検討する際、事業の一つにWebサイト運営があるなら、まず「サイトM&A」を検討する場面も出てくるかもしれません。
Webサイトの運営は人員もコストもかかります。採算が合わないようであれば、まずサイトを売却し、会社の立て直しを図ることもできます。
本記事ではサイトM&Aについての基礎知識や流れ、注意点を解説します。売却する時に考えるべき相場や、失敗例などもご紹介しますので、貴社の経営判断に役立ててください。
目次
- 1 サイトM&Aとは?
- 2 サイトM&Aにおける売買の流れ
- 3 売却先(買い手)を探す
- 4 交渉
- 5 合意
- 6 契約
- 7 買い手から入金
- 8 譲渡手続き・検収
- 9 入金(着金)・完了
- 10 サイトM&Aでの注意点
- 11 エビデンスは偽りなく提出する
- 12 相場を理解して交渉する
- 13 競業避止義務について
- 14 契約内容はしっかり確認する
- 15 売却後の運営情報の変更を確認する
- 16 サイトM&Aの売買相場について
- 17 サイトM&Aでの失敗例
- 18 相場より安く売却してしまった
- 19 入金されず逃げられてしまった
- 20 アフターフォローが大変だった
- 21 土壇場で契約破棄されてしまった
- 22 注意点や相場を把握して失敗しないサイトM&Aを
サイトM&Aとは?
サイトM&Aとは、Webサイトの事業譲渡のことを指します。法人・個人問わず、運営しているWebサイトを売却することをサイトM&Aと言います。
「売上はあるが更新するリソースがなく、放置しておくなら他の人に運営してもらいたい」「自分の力ではこれ以上PVを増やすことができない」「売上が落ちてきたから、興味を持ってくれる人に譲渡したい」などの理由から、サイトM&Aは日常的に行われています。
また、サイトM&Aは株式譲渡とは違い、サイト運営の事業譲渡となるため、比較的簡単な手順・短期間で売却が可能です。
サイトM&Aにおける売買の流れ
仲介業者を利用したサイトM&Aの流れは以下の順です。
- 売却先(買い手)を探す
- 交渉
- 合意
- 契約
- 買い手から入金(エスクロー)
- 譲渡手続き・検収
- 入金(着金)・完了
サイトの規模や譲渡条件によっても多少変わってきますが、買い手が決まれば大体数週間〜1ヶ月ほどで譲渡手続きが完了します。
それぞれついて、サイトM&Aの仲介業者を利用した場合の一般的な流れを解説していきます。
売却先(買い手)を探す
売却先はサイトM&Aの仲介サイトに会員登録することで、自身で探すことができます。
仲介サイトでは主に、
- 買い手希望者とご自身でやりとり・交渉をして進めていく方法
- 仲介サイトに売却先の選定から交渉まで全てお任せする方法
上記2パターンがあります。
少しでも売却手数料を安くした場合や、売却サイトの価格が高くない(100万円以下)の場合は、ご自身で直接交渉するほうがいいかもしれません。
ただ、「売買交渉が初めてでよくわからない。」「売上も多く高く売却したいので、仲介してもらいたい」「直接交渉はトラブルが怖いので仲介に任せたい」といった場合は、サイトM&Aの仲介を依頼すると良いでしょう。
サイトM&Aの場合は仲介手数料としての着手金を取られることはほとんどなく、成約した場合のみ手数料が発生することが多いので、費用面についても株式譲渡より安価です。
交渉
相手が見つかったらいよいよ交渉です。
買い手へ、サイトの情報、PVや売上などを開示します。サイトの規模によっては、必要に応じて秘密保持契約(NDA)を締結してから情報開示する場合もあります。
事前にPL表(損益計算表)や収益のエビデンスのキャプチャ(ASPの収益発生画面やアドセンスの管理画面など)を用意しておくとスムーズでしょう。
場合によっては、グーグルアナリティクスやサーチコンソールの閲覧権限を求められることもあるので、応じられる準備はしておくと良いです。
サイトをより高く売却するためにアピールできる段階なので、売却サイトの価値や将来性などを提示していきましょう。また、サイトに会員がいる場合は会員数や、SNSをセットで運用しているならSNSのフォロワー数などもプラス要素になります。
買い手があまりにも安い金額で交渉してくるようなら、断る決断も大切です。
合意
買い手と交渉し、譲渡条件や価格の折り合いがついたなら、合意となり、契約へと進みます。
契約
譲渡契約を締結します。「クラウドサイン」と呼ばれる、オンライン上での契約締結が主流です。
ただし、売り手・買い手どちらかが、書面で契約希望の場合は、契約書を作成し、対面か郵送などで締結します。
買い手から入金
仲介業者を通している場合は、契約後に一旦、仲介業者のエスクロー口座へ入金されます。
エスクローとは、売り手・買い手の間で金銭的トラブルが起きないよう、仲介業者が間に入り、預託金として一旦お金を預かるサービスです。
M&Aのほとんどはエスクローを利用して譲渡手続きを進めます。
譲渡手続き・検収
買い手からエスクロー口座へ入金されたら、続いて譲渡物の引き渡しです。
Webサイトの管理画面のログイン情報や、サーバー、ドメインなど、サイト運用に必要な情報全てを買い手に引き渡します。
アフィリエイト運用しているWebサイトの場合は、ASPの引き継ぎも行います。
引き渡し後、買い手側で問題なくサイトの引き継ぎが完了したと判断した場合は、検収完了です。
入金(着金)・完了
買い手より検収完了報告があれば、譲渡手続きは完了です。仲介業者へ預託金の振り込みを依頼しましょう。
サイトM&Aでの注意点
サイトM&Aは個人事業主でも比較的簡単にできる事業譲渡ですが、注意しなければいけないポイントもいくつかあります。
中でも、「競業避止義務」について知っておかないと、後々大きなトラブルに発展する可能性もあるので、要注意です。
エビデンスは偽りなく提出する
買い手へ情報開示する売上やPVのエビデンスは、改ざんしてはいけません。少しでも高く買ってもらおうと、売上をごまかすのは違法行為になります。
相場を理解して交渉する
売却相場を理解していないと、買い手の要望との乖離が生じ、交渉が一向に進みません。
サイトM&Aをする際にはまず、ご自身のサイトの売上や利益をもとに、適正の売却価格を算出してから登録するようにしましょう。
もしくは、サイトM&A仲介業者へ査定を依頼するのも一つの手です。
競業避止義務について
競業避止義務とは、事業売却後、向こう20年は同一の事業を行ってはいけないという、会社法第21条で定められている法律です。
(譲渡会社の競業の禁止)
第二十一条 事業を譲渡した会社(以下この章において「譲渡会社」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(特別区を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区又は総合区。以下この項において同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。引用元:e-GOV法令検索
これを知っておかないと、事業譲渡後にまた同業のサイトを運営してしまうと、売却先から訴えられる可能性があります。
とはいえ、会社法で設定されている20年という期間はサイトM&Aではあまり一般的ではなく、大体2年以内が期間の相場です。
トラブルを防ぐためにも、競業避止義務の期間についてはよく協議し、契約書に盛り込みましょう。
契約内容はしっかり確認する
契約書はサイトM&Aの仲介サイトが雛形を用意してくれる場合があります。かと言って、それに安心してしまい契約内容の確認が雑になってしまうと、トラブルの元になりかねません。
契約締結する前に、隅々まで目を通し、少しでも不自然なところがないか確認しましょう。
売却後の運営情報の変更を確認する
売却したら終わりではありません。売却後に、サイト運営情報が買い手の情報に変更されているか?アフィリエイトリンクやグーグルアドセンスの張り替えはされているか?を確認しましょう。
各種情報変更は、多少時間がかかる場合がありますので、その辺についても買い手と話し合ったほうが無難です。
サイトM&Aの売買相場について
Webサイトの売買相場は、ジャンルにもよりますが、「直近半年の利益平均の10ヶ月分〜24ヶ月分」相当が相場です。
グーグルアドセンス収益のブログや、アフィリエイトサイトの場合は1年前後〜1年半分くらいの相場で落ち着くことが多く、よほど売上の安定しているサイトでない限り、2年分以上での売却は難しいかもしれません。
これは、近年のグーグルコアアップデートによるPVの不安定さが原因の一つにもなっているため、オーガニックのアクセス依存による売上がメインの場合は、高い金額での売却が難しくなっているのが現状です。
逆に、広告運用や企業との契約収益で運用しているサイトについては、2年分以上で売れる可能性は十分にあります。
売却予定のサイトがどういった収益モデルで売上をあげているのかで相場が変動しますので、わからない場合は仲介業者へ査定依頼すると良いです。
サイトM&Aでの失敗例
サイトM&Aで失敗をしないよう、いくつか例をご紹介します。
相場より安く売却してしまった
相場を知らず、安く掲載してしまった。早く売りたいがために、値引き交渉に応じ、相場より安く売ってしまった、などというケース。
交渉に慣れていないと、「いくらでもいいから早く売りたい」という気持ちが先行してしまい、相場より格安の値段で売却することにもなりえます。
あらかじめ相場を理解し、売却に出しましょう。
入金されず逃げられてしまった
譲渡物の引き渡しが完了したのに、相手から入金がされなかったというケース。
これは仲介業者を使用しなかった場合(エスクローを使わなかった場合)にあり得るトラブルです。契約書記載の住所が実在しなかったら、相手を追うことができません。
そうならないためにも、エスクローは安全保証のためにも利用すべきサービスです。
アフターフォローが大変だった
譲渡手続きも全て終わったあとの、買い手へのアフターフォローが大変だったという声もまれにあります。
契約書に、アフターフォローの期間を明記しておくことでこのようなトラブルは防げます。内容にもよりますが、大体は1ヶ月のフォロー期間が相場です。
土壇場で契約破棄されてしまった
何度も交渉を重ね、契約もしたのに買うのをやめるといったケース。
これに関しては、契約書の記載内容に基づき、両者の協議次第にはなりますが、売り手としても、買いたくない相手に売りたくはないでしょう。
そうならないためにも、交渉時の連絡頻度や相手の反応がどうか?をしっかり判断する必要があります。
注意点や相場を把握して失敗しないサイトM&Aを
サイトM&Aは未経験者でも比較的容易に進められる事業譲渡の一つです。注意点や相場を理解していれば、大きなトラブルや失敗は防げます。
種類別のサイト売買相場は、こちらの記事で詳しく解説されています。あわせてご確認ください。
参考:サイト売買相場の種類別まとめ。無料査定も!【アフィ・EC・ブログ】 | サイト売買・サイトM&AならUREBA
ラッコM&Aでのサイト売買については、こちらの記事で詳しく解説されています。あわせてご確認ください。
参考:サイト売買をラッコM&Aでやってみた!購入者のメリットや注意点を解説 – マネー大全
クラウドファンディングのやり方・始め方については、こちらの記事で詳しく解説されています。あわせてご確認ください。
参考:2024年版|WEBサイト売買サービス厳選8種を徹底比較!タイプ別おすすめ・アカウント仲介業者一覧 | いまどきのネットショップ開業講座
また、サイトM&Aの仲介業者を利用することで、買い手を探す難易度は下がり、エスクローを使うことで安心して譲渡手続きを進められます。
サイトM&Aで自社運営のサイトを売却したいと考える経営者や担当者の方は、ぜひ弊社パラダイムシフトへお問い合わせください。
パラダイムシフトは2011年の設立以来、豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。候補先企業様のファインディング、デューデリジェンスの実施などのM&A全般の交渉をサポートするほか、買い手企業様の希望に柔軟に対応しながら、ニーズに沿ったM&A支援を行います。