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セブンイレブンが行ったアメリカ企業の買収と国内M&Aを紹介

セブン&アイ・ホールディングス(以下セブン&アイ)は日本屈指の総合小売企業です。コンビニエンスストア国内最大手のセブンーイレブン・ジャパンを軸に、百貨店、専門店、そして通信販売まで手掛けています。

セブン&アイがここまで成長できた背景には積極的にМ&Aをしてきたところにあります。しかし、セブン&アイが実施した全てのМ&Aが成功したとは言うわけではありません。理由は、業績が低迷している企業を買収したため、経営再建に苦戦しているからです。では、なぜセブン&アイはそれでもМ&Aを進めていったのでしょうか?

今回の記事では、セブン&アイのМ&A戦略について、事例や今後の展望を解説します。

セブン&アイは様々な業種・業態の小売業を持つ連合企業

セブン&アイは、東京都千代田区に本社を置く持株会社です。グループ企業にはコンビニエンスストア「セブンイレブン」、スーパーマーケットの「イトーヨーカ堂」、そして金融機関である「セブン銀行」など50社以上あります。

セブン&アイの成り立ちは1920年に創業した洋品店です。その後イトーヨーカ堂を設立し、1973年からコンビニエンスストア事業を開始しました。そしてコンビニエンスストア事業の拡大と、後の項で解説する各社とのМ&Aを経て2005年に現在の持株会社となったのです。

セブンーイレブン・ジャパンがアメリカ本社を逆買収した流れ

2005年11月、セブンーイレブン・ジャパンは、アメリカ法人の7-Eleven,Inc(米セブン本社)を買収して完全子会社化しました。日本のセブンイレブンがアメリカの本社を買収したと聞くと異例のように感じますがどのような背景があったのでしょうか?

順を追い見ていきましょう。

サウスランド社への出資

サウスランド社は米セブンの前身となる企業です。1927年に設立されて1960年代に急速に成長しましたが、1980年代には業界の競争激化により経営危機を迎えました。

1989年に経営破綻したサウスランド社は、イトーヨーカドーグループと既に提携していた株式会社セブンイレブン・ジャパンとにより再建されることになります。

両者はサウスランド社に出資するため、現地法人IYGホールディングス社を設立して、アメリカでサウスランド社に出資できる体制を整えました。

セブンーイレブン・ジャパンがアメリカのセブンを完全子会社化

セブンーイレブン・ジャパンは現在、セブン&アイ・ホールディングスの傘下となっています。

当初、イトーヨーカ堂がセブンーイレブン・ジャパンやデニーズを経営していました。しかし、イトーヨーカ堂の業績が伸び悩み、セブンーイレブン・ジャパンの株式時価総額が親会社であるイトーヨーカ堂を上回りました。

この状況下である2005年、現在の形態であるセブン&アイ・ホールディングスが新たに設立されて、セブンーイレブン・ジャパンやイトーヨーカ堂などはその傘下に入る形となりました。

そして、当時勢いのあったセブンーイレブン・ジャパンは同年に米セブン本社を完全子会社化するに至ります。

セブンイレブンがスピードウェイを買収

経営破綻の危機にあった米セブンですが、その後、再建を果たしました。現在では、近年伸び悩んでいるイトーヨーカドーに変わり、成長が期待されています。2020年にはコンビニエンスストア併設型ガソリンスタンド「スピードウェイ」を買収しました。この項では、その背景や理由を解説します。

スピードウェイとは

スピードウェイは、アメリカの石油精製会社マラソン・ペトロリアムが運営していた1つの部門で、アメリカで第3位のコンビニエンスストアです。

2019年12月末時点で約3900店を展開しています。全ての店舗にガソリンスタンド併設が併設され、車でも立ち寄りやすい好立地の店が多いのが特徴です。

セブンイレブンがスピードウェイを買収した理由

このM&Aの買収額は2兆円で、セブン&アイ・ホールディングスにとって過去最大規模です。これにより、米セブンの営業利益は2倍近くになります。

アメリカのコンビニ業界は日本のコンビニ業界とは異なり、寡占化が進んでいません。米セブンはこの買収で3900店舗のスピードウェイを取り込むこととなり、合計1万4000店舗となり、第2位に7000店舗の差をつけることとなります。

2兆円という買収額は巨額とも取れますが、立地が重複している店舗の売却や、スピードウェイが持つ不動産資産の売却、アメリカの節税効果などで実質は1兆2億円ほどになる見込みと言われています。

スピードウェイ買収までの流れ

セブン&アイ・ホールディングスは、以前にもスピードウェイの買収を検討していましたが、その際には折り合いがつかずに終わってしまいました。

しかし、コロナ禍で大幅な赤字となったスピードウェイが再検討し、今回の買収へつながりました。

買収後は、スピードウェイにセブンオリジナル商品を導入することで、商品売り上げの増加や購買力強化していく他、スピードウェイのガソリン販売のノウハウを取得してガソリンスタンドとしての安定的は利益を得られるよう目指します。

セブン&アイのМ&A戦略

セブン&アイの成長はコンビニエンスストア事業だけでなく、積極的にM&Aをすることで実現しました。日本で知名度の高い百貨店や専門店を中心に次々と買収していったのです。セブン&アイがこのようなМ&Aを実施していることには何か理由があったのでしょうか?

実は、この戦略はセブン&アイの日本における経営戦略に基づいているものです。それは成熟した市場で総合小売大手が進むべき道でもあります。

ここからは、日本におけるセブン&アイのМ&A戦略と事例について解説します。

日本では「成熟市場の囲い込み」

セブン&アイはコンビニエンスストア業界で国内トップの地位を獲得しています。しかし、コンビニエンスストア業界は飽和状態にあり、日本の人口動態から見ても市場の拡大は望めません。ライバルであるファミリーマート、ローソンとの大手3社を含めた寡占に近い状態になっているのが現状です。

この状況でセブン&アイが同業他社のМ&Aで得られるメリットは多くありません。しかし、他の業種や業態の小売業を取り込むことのメリットはあります。それは、消費者にグループ企業で買物を促すことで様々なメリットを提供して、常にセブン&アイへ収益が入るようにできるからです。

このような考えのもと、セブン&アイで考案されたのが「オムニチャネル戦略」です。これは、人が生まれた時からお年寄りになるまでにある、様々な買い物をセブン&アイグループで完結できるような仕組みを構築することです。

高級業態を取り込む「西武・そごう」

セブン&アイのオムニチャネル戦略で実施した初めての大型М&Aは、2006年の百貨店の買収です。

百貨店業界は当時から業界再編が活発になっていました。その中でセブン&アイは「ミレニアムリテイリンググループ」を完全子会社化しました。ミレニアムリテイリンググループとは西武百貨店そごうが2003年に合併して誕生した会社です。

このМ&Aには、セブン&アイが持たない「高級商品の顧客層」を取り込む狙いがあります。しかし、М&Aを実施したあとも、百貨店業界の衰退は顕著で思うように業績が伸びなかったのです。そして現在では、店舗の整理や譲渡など経営再建が必要になっています。

若年層の消費を促す「ロフト」

次に2007年、セブン&アイは総合雑貨販売大手のロフトをミレニアムリテーリングが買収するという形で完全子会社化しました。ロフトは創業時、西武百貨店系列の小売店でしたが、西武百貨店が経営不振となり他社に株式を売却していたのです。

赤ちゃんへの消費を狙った「アカチャンホンポ」

さらに2007年、セブン&アイはベビー・マタニティ小売業「株式会社赤ちゃん本舗」をイトーヨーカ堂の子会社にすることを決定しました。赤ちゃん本舗はアカチャンホンポという屋号で定評のあるマタニティ・ベビーグッズ専門店でした。しかし、当時は少子化と業界内の競争で業績が悪化し、経営再建を目指していました。そしてオムニチャネル戦略を実行していたセブン&アイと利害が一致し、М&Aが実現したのです。

ぴあの株式を取得しチケット販売で連携を目指す

そして2009年には当時経営不振におちいっていたチケット販売最大手の「ぴあ」に対して資本提携を結びました。ぴあが持つ各種イベントのチケット販売網をセブンイレブンなどで販売することで相乗効果を生み出す狙いがあったのです。

CD/DVD専門店を買収し集客力を図る

さらに、セブン&アイは2010年になって「タワーレコード」に資本参加することを決定し、翌年の2011年には、出資比率を高めて筆頭株主になりました。タワーレコードはアメリカ発祥の音楽・映像ソフト専門店です。これを機にセブン&アイは自社店舗にタワーレコードの店舗をオープンさせ、前年にМ&Aをしたあとに、ぴあとの連携を図るようになりました。

通販事業の強化も目指す「ニッセンホールディングス」

他にもセブン&アイは、通販事業の拡充にも力を注いでいます。2013年に総合通販大手の「ニッセンホールディングス」と資本業務提携を結びました。そして2016年にはニッセンホールディングスを完全子会社化にしたのです。

ところがこのМ&Aも順調には進みませんでした。資本提携後、ニッセンホールディングスの業績は悪化し続けたのです。そのため、セブン&アイによる完全子会社化は、ニッセンホールディングスが経営再建の手助けを求める形になりました。現在もセブン&アイによるニッセンホールディングスの構造改革が進められています。

「全世代むけのラインナップ」は達したが利益貢献は不十分

これらМ&Aで、セブン&アイはオムニチャネル戦略に向けて大きな軸を確立したと言えます。生まれる前から高齢者になるまで、どの世代においてもセブン&アイグループが関わることができるようになったからです。

ところが、これらのМ&Aは成功したとはいえません。なぜならこれらМ&Aで得た事業はいずれも利益貢献ができていないからです。2019年期末の業績によると、営業収益ではコンビニエンスストア9554億円、百貨店・専門店合計9475億円と肩を並べました。その一方で営業利益ではコンビニエンスストアが2467億円に対して、百貨店・専門店合計は103億円なのです。

その理由はМ&Aを実施した企業の多くは当時、業績が低迷していたため、今なお再建に苦慮していることと、いずれの業界も競争が激しいことが挙げられます。そのためセブン&アイは百貨店事業を中心に店舗の戦略転換を模索し、収益性の改善に取り組んでいます。

各地の「ブランド小売店」と協業を目指す

一方でセブン&アイはスーパーマーケットと百貨店のシェアが低い地域への進出も手掛けています。コンビニエンスストアでは全国的なネットワークができたのに対して、スーパーや百貨店事業では地域による隔たりが残っているのが現状です。

しかし、セブン&アイがシェアの低い地域のスーパーや百貨店をМ&Aで子会社化することは容易ではありません。なぜなら、スーパーや百貨店は地域性が強いビジネスで、日本各地で強い地盤を持つ企業が安定した経営をしているからです。そのためセブン&アイは子会社化ではなく、資本提携業務提携という形で進めています。

弱い地域を補完する①「ダイイチ」

セブン&アイは2013年、北海道で展開するスーパー「ダイイチ」と資本業務提携を結び、ダイイチの株式30%を取得しました。セブン&アイは北海道ではスーパーマーケットが少なかったことと、ダイイチは経営順調でしたが、今後の事業戦略に必要だという思いが合致したМ&Aでした。

弱い地域を補完する②「天満屋」

さらに同年、セブン&アイは中国地方で展開する「天満屋」と業務提携を結び、天満屋の子会社である「天満屋ストア」と資本提携をしました。セブン&アイは元来関東から東日本に地盤があったため、中国地方も手薄な地域でした。一方で天満屋は地盤のある岡山にイオンが大型店舗を出店することが分かっていたため、危機感を強めていたのです。

弱い地域を補完する③「H2Oリテーリング」

そして2015年にはセブン&アイは関西の百貨店大手「阪急百貨店」を有する「H2Oリテーリング」と資本業務提携を結びました。これによってセブン&アイが有していた関西地域の百貨店をH2Oに譲ることになったのです。そしてお買い物ポイントの共通化などで、相乗効果を図るとしています。

業務提携で補完するケースもある

また、セブン&アイは地域の有力店に対してМ&Aだけでなく業務提携という形で相乗効果を目指す取り組みも進めています。

2015年、セブン&アイは関西地域の食品スーパーである「万代」と業務提携を結びました。関西地方もセブン&アイが手薄な地域でした。一方で万代は競争の激しいスーパー業界において増収増益を続ける優良企業です。しかし万代は店舗のデジタル化などで他社の後れをとっている点に課題があったのです。

それ以後もセブン&アイは小田急電鉄や中国地方のスーパーイズミとの業務提携を結び両社の経営地盤強化に協業することになりました。

地域の優良店との緩やかな連携は長期的に期待できる

このようにセブン&アイは自社の弱点を補う提携も進めいています。この形では子会社化と比べて提携先への支配力は弱まります。しかし、日本の小売業の特徴と長期的な相乗効果を狙うには緩やかな連携で協業する方が効果的です。

なぜならスーパーや百貨店は地域に対するブランド力が大きく影響されるからです。また子会社化できる小売業はすでに業績が傾いていることが多く、経営再建に手間がかかっているという理由も挙げられます。

セブン&アイの総合小売業としての発展に期待

今回の記事では、セブンーイレブン・ジャパンと米セブン本社の関係や、セブン&アイ・ホールディングスのM&Aについて解説しました。

セブン&アイ・ホールディングスは、自社の弱点を補いながらM&Aを繰り返し成長しました。その後、オムニチャネル戦略を打ち出し、どの世代でも関わりのある企業になりました。現在のところ、全てのM&Aが成功したとは言えませんが、戦略を転換して、収益性の改善に取り組んでいます。

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