公開会社と非公開会社、それぞれの特徴や違いを把握することは、企業運営を考える上で欠かせないポイントです。
特に経営者や財務担当者は、どちらの形態が自社のビジョンや目標に適合するかを明確に理解しておく必要があります。
この記事では、公開会社と非公開会社の基本的な定義から、株式譲渡の自由度、会社法における違い、それぞれのメリットとデメリットについて、分かりやすく解説します。
目次
- 1 公開会社の定義
- 2 公開会社とは何か?
- 3 公開会社の要件
- 4 公開会社と上場会社の違い
- 5 非公開会社(株式譲渡制限会社)の定義
- 6 非公開会社(株式譲渡制限会社)とは何か?
- 7 非公開会社の要件
- 8 公開会社と非公開会社の主な違い
- 9 株式譲渡の自由度
- 10 会社法における主な違い
- 11 第113条(発行可能株式総数)
- 12 第299条(株主総会の招集の通知)
- 13 第327条(取締役会等の設置義務等)
- 14 第332条(取締役の任期)
- 15 公開会社のメリット
- 16 資金調達手段の多さ
- 17 市場の信用とブランド認知の向上
- 18 人材獲得と成長の機会
- 19 非公開会社のメリット
- 20 運営の柔軟性と秘密保持
- 21 株主との密接な関係維持
- 22 経営権の安定と乗っ取り防止
- 23 公開会社のデメリット
- 24 規制と公開の負担
- 25 市場の変動による影響
- 26 買収のリスク
- 27 非公開会社のデメリット
- 28 資金調達の限界
- 29 株式の流動性の欠如
- 30 経営の透明性が求められる場合の課題
- 31 非公開会社の株式譲渡方法
- 32 株式譲渡の基本ルール
- 33 譲渡承認のプロセス
- 34 譲渡における留意点と対策
- 35 まとめ:公開会社と非公開会社の違いを理解して経営リスクに備えよう
公開会社の定義
公開会社とは、多数の投資家から資本を集めることを目的として、広く一般に株式を公募する会社のことです。
株式が証券取引所に上場されている場合が多いですが、必ずしも上場している必要はありません。
公開会社とは何か?
公開会社とは、株式を一般公開しており、機関投資家や個人が株主となり得る企業のことです。
株式を公開することにより、資金調達が容易になる反面、株主の意見に従う必要があります。
また、株式の価格は市場の需給によって変動します。
そして、経営者は株主に対して経営状況や成果を報告する義務があります。
公開会社の要件
公開会社を設立するには、資本金の額、株主の数、財務報告の公開などの法的要件を満たす必要があります。
金融商品取引法に基づく登録が必要であり、上場するにあたっては、証券取引所の定める基準をクリアしなければいけません。
公開会社と上場会社の違い
公開会社と上場会社はしばしば混同されがちですが、明確な違いがあります。
公開会社は、投資家から資金を調達するために株式を公開していますが、その株式が必ずしも証券取引所に上場されているわけではありません。
一方、上場会社は株式が証券取引所に登録されており、厳格な規制のもと、経営における重要情報を適時開示する義務が課されます。
上場をすることで、企業は広範囲から資本を集めることが可能になり、ブランド認知や市場での信頼性も高まります。
しかし、上場には高い透明性と報告義務、監査が求められるため、運営上の負担も大きくなります。
非公開会社(株式譲渡制限会社)の定義
非公開会社(株式譲渡制限会社)とは何か?
非公開会社(株式譲渡制限会社)とは、株式の譲渡に制限を設けており、会社の承認がなければ株式の譲渡が出来ない企業のことを指します。
株式の譲渡に制限を設けることにより、外部への株式流出を防ぎ、経営の安定を図ることが可能であり、また、敵対的買収のリスクを抑制することができます。
非公開会社の要件
非公開会社の要件について、会社法(第2条17項)では、『譲渡制限株式:株式会社がその発行する全部または一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定めを設けている場合における当該株式をいう』と定められています。
非公開会社を設立するには、会社の定款に株式譲渡の承認手続きや承認拒否の条件など、譲渡に関する制限や規則を明記する必要があります。
株式譲渡の制限を設けることで、非公開会社は株主構成をコントロールし、経営の安定性を高めることができます。
非公開会社は、特に中小企業や親族経営に見られる企業形態であり、資金調達を行う際には、経営者の自己資金や金融機関からの借入れが主な方法となります。
この資金調達の方法は、公開市場に依存せずに済むため、外部の市場環境の影響を受けにくいというメリットがあります。
公開会社と非公開会社の主な違い
株式譲渡の自由度
公開会社の株式は、基本的には株式市場で売買が可能です。
これにより、投資家は株式を市場で容易に取引することができ、企業は幅広く資金を集めることができます。
一方、非公開会社では、株式の譲渡に会社の承認を必要とするため、取引の自由度は大きく制限されます。
会社法における主な違い
会社法では、公開会社と非公開会社に対して異なる規定を設けています。
第113条(発行可能株式総数)
公開会社
- 発行可能株式総数の上限は、会社設立時に発行された株式総数の4倍までと定められている。
- 定款を変更して発行可能株式総数を増加させる場合でも、発行済株式総数の4倍を超えることはできない。
(例)会社設立時に300株を発行した場合、その後の発行可能株式総数は最大で1200株となる。
非公開会社
- 発行可能株式総数に上限が設けられていない。
- 非公開会社は自由に発行可能株式総数を設定することができ、発行済株式総数の何倍でも設定することが可能。
第299条(株主総会の招集の通知)
公開会社
- 株主総会の日の2週間前までに株主に対して招集通知を発送する必要がある。
非公開会社
- 一般的には、株主総会の日の1週間前までに招集通知を発送する必要がある。
- 書面や電磁的方法による議決権行使の定めがある場合、公開会社と同じく、2週間前までに招集通知を発送する必要がある。
- 取締役会を設置していない非公開会社では、定款でさらに短縮した通知期間を設定することが可能。
第327条(取締役会等の設置義務等)
公開会社
- 取締役会の設置が必須。
- 取締役は最低3名以上で構成されなければならない。
- 監査役の設置が義務付けられている。
- 一部の公開会社では、監査等委員会や指名委員会等を設置する義務がある。
非公開会社
- 取締役会の設置は任意。
- 取締役会を設置しない場合、取締役が1人でも会社設立が可能。
- 監査役の設置は、取締役会を設置する場合にのみ必須であり、その他の場合では任意。
- 取締役会を設置しない場合でも、会計参与を選任することが可能。
第332条(取締役の任期)
公開会社
- 取締役の任期は最大2年。
- 監査役の任期は最大4年。
- 任期終了後は再選手続きが必要。
非公開会社
- 取締役の任期は最長で10年まで延長可能。
- 監査役の任期も同様に最長10年まで設定することが可能。
- 任期終了後は退任後の重任手続きをとる必要がある。
公開会社のメリット
資金調達手段の多さ
公開会社は株式を公開市場で取引することができるため、資金調達の選択肢が格段に増えます。
株式の発行による資金調達は、事業拡大や研究開発、新たな投資の機会を得るための有効な手段です。
市場の信用とブランド認知の向上
株式を公開することにより、企業運営の透明性が確保され、ステークホルダーからの信用を得やすくなります。
また、ブランドの認知度を高め、企業の市場価値を向上させる要因となります。
人材獲得と成長の機会
株式が公開されていることで、求職者にとって安定したキャリアパスや成長機会を得られる企業と判断され、人材獲得が容易になる場合があります。
また、株式を含む報酬を与えることが、高いスキルを持つ専門家や経営幹部を引き寄せる効果的な方法となります。
非公開会社のメリット
運営の柔軟性と秘密保持
非公開会社は、経営上の重要な決定を迅速に行うことができるため、新しいビジネス機会を素早く捉え、競合他社に対する優位性を保つことが可能です。
また、重要な企業情報や経営計画を内密にできます。
株主との密接な関係維持
株主は限られた関係者に限定されるため、経営者と株主間の関係がより密接になります。
株主からの直接的な意見やサポートを経営に生かすことができるため、企業の方向性や政策を効果的に調整することが可能になります。
経営権の安定と乗っ取り防止
株式の譲渡に制限を設けることができるため、不測の事態や敵対的な買収から会社を守ることができます。
株式の譲渡を制限することで、経営者や主要株主が企業の経営権を維持し、安定した経営を続けることが可能です。
公開会社のデメリット
公開会社には多くのメリットがありますが、それに伴うデメリットも存在します。
規制と公開の負担
証券取引所や金融規制当局の厳しい規制下にあるため、定期的な財務報告、透明性の維持、監査要件の遵守が求められます。
こういった規制への対応にはコストと時間を要するため、特に中小企業にとっては大きな負担となることがあります。
市場の変動による影響
株価は市場の需給により日々変動し、経済の変動、政治的な出来事、または投資家の判断によって大きく影響を受けます。
このような外部要因により、企業の株価が不安定になることがあります。
買収のリスク
公開会社は敵対的買収のリスクに晒されることがあります。
株式が公開市場で自由に取引されるため、他の企業や投資家による大量株式購入が行われることがあり、これが望ましくない経営権の奪取につながることがあります。
非公開会社のデメリット
非公開会社についても、多くのメリットがある一方で、特有のデメリットを抱えています。
資金調達の限界
外部の資本市場へのアクセスが限られているため、大規模な資金調達が困難です。
一般的に、非公開会社は金融機関からの融資に頼ることが多く、資金調達の選択肢は限定的です。
そのため、事業の拡大や新たな投資をしたくても出来ない場合があります。
株式の流動性の欠如
株式が公開市場で取引されないため、株式を売却しようと思っても、適切な買い手を見つけることが困難になる場合があります。
特に、起業家や初期投資家が保有している株式の一部を現金化して、他の事業に再投資したい場合、この流動性の問題は大きな障害となります。
経営の透明性が求められる場合の課題
非公開会社では、経営の透明性が低下しやすいという課題があります。
透明性の欠如は、ステークホルダーとの信頼関係を築く上で障壁となることが多く、企業価値にも影響を及ぼす可能性があります。
非公開会社の株式譲渡方法
非公開会社の株式譲渡には、公開会社と異なる制約や手続きが存在します。
ここでは、非公開会社の株式譲渡における留意点について解説します。
株式譲渡の基本ルール
非公開会社の株式譲渡は、会社の定款による制約があります。
多くの場合において、株式の譲渡には他の株主の同意や会社による承認が必要です。
定款には、譲渡可能な株式の条件、必要な承認の形式、譲渡先の制限などが明記されてることが一般的です。
譲渡承認のプロセス
株主が株式を譲渡する意向を示した場合、通常、取締役会や指定の承認機関が審査をします。
譲渡の承認は、企業と現株主の利益を考慮して行われるため、財務状況の評価や新株主の調査が伴う場合があります。
譲渡における留意点と対策
非公開会社の株式譲渡には多くのリスクを伴うため、以下の点に留意する必要があります。
- 税務上の影響の評価:株式譲渡には税金が発生する可能性があるため、適切な税務アドバイスを求めることが重要。
- 株価の正確な評価:公正な市場価値を反映した価格で取引をする必要がある。
- 法的リスクの回避:株式譲渡はトラブルを引き起こす可能性があるため、法律に詳しい専門家に相談することで紛争を未然に防ぐ。
- 情報漏えいの防止:譲渡の過程において企業情報が漏れるリスクがあるため、機密保持契約(NDA)の締結や、情報公開の範囲を明確に設定する。
これらの措置は、株式譲渡をした後も健全な経営を維持し、全株主の利益を保護するために不可欠です。
まとめ:公開会社と非公開会社の違いを理解して経営リスクに備えよう
この記事では、公開会社と非公開会社の定義、それぞれのメリットとデメリット、主な違いについて解説しました。
企業形態を選択する際には、各形態が持つ特性を理解し、自社のビジネスモデルと目標に最適な選択をすることが重要です。
- 公開会社は資金調達が容易
- 非公開会社は企業運営の自由度が高い
- 株式の取扱いに大きな違いや規制がある
パラダイムシフトは2011年の設立以来、豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。
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