「プライベートエクイティ」という言葉を聞いたことがありますか?
エクイティといえば、エクイティファイナンスが企業が新たに自社株を発行して、資金を調達することを意味し、銀行融資や社債の発行による資金調達であるデットファイナンスと対比されます。
プライベートエクイティも中小企業の資金調達と密接に関わっています。
簡単にいえば、非上場企業への投資をエクイティファイナンス投資といいます。
株式投資といえば、上場企業の株式を取得することをイメージしやすいですが、通常の投資と比較したエクイティファイナンス投資とはなんでしょうか?
目次
プライベートエクイティとは?
プライベートエクイティは英語で”private equity “と表記されます。
この場合、”private”とは「非公開の、未公開の」、”equity ”とは「株式」を意味します。
上場企業は自社株を自由に取引できるように、市場に公開しています。
つまり、プライベートエクイティとは非公開株式、つまりは非公開となっている非上場企業の株式を指します。
プライベートエクイティ投資とは?
プライベートエクイティとは、非上場企業の株式を指します。
したがって、プライベートエクイティ投資とは非上場企業の株式への投資です。
潜在的な成長可能性のある非上場企業の株式を、株式価値が低い時に取得や引受をし、投資先企業の企業価値向上のため、専門的な知識・ノウハウを持った経営者を派遣するなどします。
主に投資先となる非上場企業は中堅中小企業や大企業の子会社などです。
企業価値向上の取り組みに3~5年程度かけて、企業価値が向上し株式の価値が上昇したタイミングで株式を売却します。
この売却をExitと呼び、株式を市場に上場したり、他の投資企業に売却したりするといった方法があります。
株式の売却によって、売却時の株式価値と取得時の株式価値の差額が利益となります。この利益のことをファイナンシャルリターンと呼びます。
プライベートエクイティファンドの種類
プライベートエクイティファンドとは、機関投資家や個人投資家から資金を集めて、プライベートエクイティ投資を行うことを目的とする投資ファンドです。
プライベートエクイティファンドは投資の時期、投資対象、投資対象企業の状態によって以下の4種類に分けられます。
- ベンチャーキャピタル
- バイアウト投資
- 企業再生投資
- ディストレス投資
それぞれのファンドの特徴について見ていきましょう。
ベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタルはハイリターンを狙って、ベンチャー企業やスタートアップ企業などの創業間もない未上場企業に対して、投資を行います。
これらの企業は高い潜在的成長率を持っていますので、順調に成長した場合には大きなリターンがある一方で、事業がうまく進まず投資した資金を回収できないリスクも大きいので、ハイリスク・ハイリターンの投資となります。
また、ベンチャー企業やスタートアップ企業は優れた技術やアイデアを持ちながら、事業拡大に必要な資金が不足しており、その業歴ゆえに銀行等からデットファイナンスで資金調達を行うことが難しいという局面にあります。
したがって、彼らにとって設立間もない段階からリスクを取って投資をしてくれるベンチャーキャピタルは貴重な存在です。
バイアウト投資
バイアウト(Buyout)とは、「(企業の)買収」「(株式の)買取」という意味です。
バイアウト投資の投資対象先は、後継者不在のため事業承継が必要な企業や経営不振に陥っている企業、不振ではなく比較的事業が安定している企業が対象となります。
これらの企業は創業からある程度期間が経過し、すでに成長しているという特徴があります。
企業価値の向上を図るために経営陣を派遣し、経営に参画、成長戦略の企画・立案、リストラクチャリングの実施などを行います。
これらの取り組みによって、企業価値の向上を確認したら、IPOや他企業への売却によって、購入時と売却時の差額を利益とするという点ではベンチャーキャピタル投資と同様です。
ただし、すでに成長軌道に乗っている企業を投資対象としていますので、明確な成果を示すことが難しい難易度の高い投資となります。
企業再生投資
再生ファンド、事業再生ファンドとも呼ばれる投資方法です。
企業再生投資は文字通り、投資先の企業やその事業を再生させることを目的としています。
したがって、投資対象は経営不振や経営破綻に陥っている未上場企業です。
企業再生のために経営陣の派遣、人員削減や不採算事業の売却等のリストラクチャリング、資金調達方法の見直しなどを実施し、企業価値が回復した段階で株式を売却して、差額を利益とします。
投資対象企業は本来の株式投資では投資先となりえない経営不振の企業ですので、企業再生が成功しないと、損失を負います。
したがって、投資先の選定や企業再生にかかる技術や知識が高レベルになる、ハイリスク・ハイリターン投資といえます。
しかし、経営不振であるため、株価が低いので、成功した場合のリターンも大きいです。
ちなみに、よく批判される「ハゲタカファンド」は、まさに企業再生投資によって莫大な利益を獲得します。
ディストレス投資
ディストレスト投資(Distressed Investment))とは、”Distressed”(資金が困窮した)企業への投資(Investment)を行います。
つまり、財政面において危機的状況にある経営破綻した企業、もしくは経営破綻の危機にある企業の株式や債券に投資を行う投資手法です。
企業再生投資と似ていますが、ディストレスト投資の場合はさらに危機的状況にある企業を投資対象としています。
これらの企業は株式の価値が本来の価値よりも著しく安くなっており、株式購入のハードルは低くなっています。
しかし、暴落した株価が企業再生の取り組みによって、必ずしも元通りになる保証はないので、高度な専門知識が必須となる、ハイリスク・ハイリターン投資に分類されます。
プライベートエクイティファンドの出資を受けるメリット
中堅中小企業の経営者の目線から、プライベートエクイティファンドの出資を受けるメリットについて解説します。主なメリットは以下の4つです。
- 資金調達ができる
- M&Aのサポート
- 人材紹介
- 経営ノウハウの獲得
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
資金調達ができる
出資を受ける上で最もわかりやすいメリットは「ファンド」という名称のとおり、自社株を譲渡することで資金調達ができる点です。
通常、投資先となるベンチャー企業や経営不振に陥っている企業は、財務状況が良好ではないため、銀行等の借入が難しくなります。
その点、プライベートエクイティファンドは、資金調達をする手段が限られている企業が円滑に資金を調達できる数少ない手段です。
また、エクイティファイナンスですので、デットファイナンスと異なり、調達した資金に利子をつけて、返済する必要はありません。
資金をすべて、企業価値向上のために使うことができます。
M&Aのサポート
現在、中堅中小企業の多くが後継者不足に悩まされています。
事業を引き継ぐ後継者がいない場合には廃業するしかありません。
親族や従業員に引き継ぐ従来の方法に代わる事業承継対策として注目されているのが、M&Aです。
プライベートエクイティファンドの出口戦略として、投資先企業を他社へ売却する方法があります。
つまり、M&Aが出口戦略となっている場合があり、その場合は新たな経営者を迎えて、事業を継続し、取引先との関係や従業員の雇用を維持できます。
そのため、プライベートエクイティファンドにはM&Aをサポートしてくれる専門家が在籍し、最適な買収先を見つけてくれたり、ファンドがM&Aの仲介会社と交渉し、M&Aを成約してくれたりする場合もあります。
人材紹介
プライベートエクイティファンドは、プライベートエクイティ投資を専業とするファンドであることから、複数の中堅中小企業に投資を行っています。
企業価値の向上に必要であると判断した場合には、投資先の他の企業から人材を紹介してくれることもあります。
経営状態にもよりますが、新規事業を始める際や既存の部署で一定以上の職階の人材が不足している場合に、適当な人材を外部から見つけて紹介してくれるのです。
また一般的な手法として、ファンドから経営陣を派遣しますが、ここで派遣される人材は専門性の高い高度人材です。
このような人材紹介機能を有効活用することで、企業価値の向上を図ることができます。
経営ノウハウの獲得
プライベートエクイティファンドから企業価値の向上に資する経営ノウハウや技術を学ぶことができます。
ファンドは多くの企業に投資をして、企業価値を向上させた実績を持ちます。
これまでの経験から得た質の高いノウハウを教えてくれるので、着実かつスピード感をもって経営目標を達成できます。
具体的には、人員削減や不採算事業などのリストラクチャリングを円滑に進める方法、事業拡大のための新規開拓のサポート、対象となるマーケットの調査・分析、外部から優秀な人材を採用する方法、あらゆる手段を考慮に入れた資金調達方法などです。
経営不振に陥った中堅中小企業の場合は、経営者に十分な技術や知識が不足している場合がありますが、それらをファンドから学び、補うことが可能です。
プライベートエクイティファンドの出資を受けるデメリット
プライベートエクイティファンドから出資を受けることはメリットが多いように思えますが、デメリットがないわけではありません。
デメリットを知ることでメリットと比較しながら、慎重に選ぶことができます。
主なデメリットは以下のとおりです。
- 経営の自由度が落ちる
- 数年後にEXITする必要がある
それぞれのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
経営の自由度が落ちる
出資を受けるということは、経営に制限がかかるということです。
この点については議決権割合について理解する必要があります。議決権と主な権利の関係は以下のとおりです。
- 2/3以上:特別決議の可決
定款変更、合併承認、会社解散
- 1/2超:普通決議の可決
取締役の選任および解任、役員報酬の決定、配当の決定
- 1/3超:特別決議に対する「拒否権」
出資を受けるとファンドが議決権の多くを握ることになるため、ファンドの意見に従う必要があります。
経営者にとっては自分が経営者でも「名ばかりの経営者」であり、実質的な権限がないことを痛感するかもしれません。
自由な経営を望むのであれば、ファンドの出資を受けるべきではありません。
数年後にEXITする必要がある
プライベートエクイティファンドは3~5年を目処にEXITします。
EXITとは出口戦略のことで、株式の上場や他企業への株式売却によって行われます。
EXITの後はファンドの支援を受けることはできません。
ファンドの支援に依存した状態でEXITとなると会社にとっては大きなダメージになります。
また、数年後にEXITが控えているということはファンドは短期間の利益を追求しているということです。
極端にいえば、ファンドにとってEXIT後の企業がどうなっても気にしないでしょう。
したがって、長期的な観点からの企業価値の向上は難しいかもしれません。
プライベートエクイティファンドの出資を検討してみよう
プライベートエクイティやプライベートエクイティ投資やファンド、その出資を受けるメリット・デメリットについて解説しました。
確かに出資を受けることで経営の自由度に制限がかかったり、短期的な利益を追求してしまうという留意点はあります。
しかし、他の資金調達手段が限られている企業にとってファンドの出資は魅力的な手段です。
日本では事業承継対策としてファンドの出資を受ける企業が増加するのではないかと言われています。
今後はよりメジャーな資金調達手段になるかもしれません。
ただし、現在のところ専門家の助言なしに出資を受けることに対して、抵抗がある経営者もいるかもしれません。
そんなときはM&Aサポートを手掛ける株式会社パラダイムシフトに相談してみましょう。
M&Aアドバイザリーとしての信頼と実績をもとに正しい助言が受けられるかもしれません。