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経常運転資金とは?計算方法や不足する要因、調達方法を解説

経常運転資金は資金繰りに直結する話です。

経常運転資金が不足すると、帳簿の上では黒字でも倒産してしまう「黒字倒産」に陥る可能性があります。

経常運転資金に余裕があるときには資金繰りを心配することはないかもしれませんが、不足する場合には、倒産を防止するために早期の資金調達が必要です。

この記事では、経常運転資金の概要や計算方法、具体的な資金の調達方法について解説します。

運転資金とは?

運転資金は「経常運転資金」や「必要運転資金」とも言われ、会社が事業を継続していくために必要な資金を指します。

事務所の家賃、人件費、水道光熱費など、事業を続けていく上で必要な資金はすべて運転資金となります。

日本のビジネスでは掛取引が一般的です。

掛取引とは、代金の支払いを購入時でははく、購入から一定期間経過後に行うものです。

したがって、支払いの時期と入金の時期の微妙なズレによって資金が不足することがあります。

経常運転資金とは?

経常運転資金とは、「所要運転資金」「正常運転資金」とも呼ばれ、基本的に運転資金と同じ意味です。

経常運転資金の増減が資金繰りに影響を与え、資金が不足すると会計上は黒字でも倒産のリスクがあります。

したがって、経常運転資金は資金繰りの問題として把握する必要があり、不足する金額は金融機関からの融資などによって調達する必要があります。

黒字倒産の因や未然に防ぐ方法は、こちらの記事で詳しく解説されています。あわせてご確認ください。

参考:【建設業】黒字倒産とは?要因や黒字倒産を未然に防ぐ方法をご紹介! | 施工管理・業務管理システムなら【アイピア】

経常運転資金の計算方法

経常運転資金の計算方法は以下の通りです。

 

経常運転資金

売上債権(売掛金+受取手形+棚卸資産)+前渡金-買掛債務(買掛金+支払手形)

また、より簡略化して、以下の計算式を使うこともあります。

 

経常運転資金=売掛金+在庫ー買掛金

 

上記の計算式からわかることは、支払いのタイミング(買掛金を支払うタイミング)と入金のタイミング(売掛金の入金のタイミング)の時間的なズレによって、経常的に運転資金が不足することになります。

以下では、計算式にでてくる各項目の詳細を解説いたします。

売上債権

売上債権とは、売掛金や受取手形などが該当します

日本のビジネスの商慣習では、企業間で商品やサービスを取引する際、現金で支払いが行われることは少なく、契約においてすべての商品やサービスの代金の支払日をまとめて後払いにすることが一般的です。

売掛金とは商品やサービスを提供してから数カ月後に現金払いとする「掛け取引」、いわゆるツケ払いにおいて生じた未収代金のことです。

受取手形とは、通常の商取引において発生した手形債権をいいます。

商品やサービスを購入した際に、その対価として仕入先に渡す商業手形を指し、支払期日までは支払う義務がありません。

売上債権は経常運転資金や資金繰りに影響を及ぼしますので、適切に管理・把握することが必要です。

棚卸資産

棚卸資産とは、企業が販売する目的で保有している在庫のことです。

小売業では商品、製造業では原材料や仕掛品、半製品、不動産事業であれば、土地や建物などが在庫に当たります。

棚卸資産は、商品やサービスとして販売されると利益として計上されますが、販売されない限りは、仕入価額相当の資金が滞留していることを意味します。

したがって、在庫が販売されずに放置されていると、「不良在庫」とみなされます。

不良在庫は会社にとって損失として計上されることになります。

買掛債務

買掛債務には、買掛金や支払手形が該当します

買掛債務は売上債権と対になるものです。

日本の伝統的な商慣習では、企業間の商品やサービスの提供と代金の支払いは現金ではなく、代金を後日にまとめて支払ったり、受け取る掛取引が用いられます。

買掛金とは、商品やサービスを仕入れた際、代金を将来支払うことを約束した取引、またはその義務をいいます。

いわゆるツケ払いであり、毎月一定期日で締め切って一定の支払日にその代金を支払います。

支払手形とは、商品やサービスを仕入れる際に振り出す約束手形などを指し、手形に記載されている金額を支払期日に支払うことを約束したものです。

買掛金も支払手形も金額の多寡によって資金繰りに影響を与えますので、安易に支払いを約束することには注意が必要です。

経常運転資金の計算例

経常運転資金の計算方法は既に解説した通り、以下の計算式で表せます。

 

経常運転資金

売上債権(売掛金+受取手形+棚卸資産)+前渡金-買掛債務(買掛金+支払手形)

 

例えば、以下の場合の経常運転資金を計算してみましょう。

 

売掛金…5,000万円

受取手形…4,000万円

棚卸資産…1,500万円

前渡金…1,000万円

買掛金…3,500万円

支払手形…2,500万円

 

売上債権(5,000万円+4,000万円+1,500万円)+1,000万円ー買掛債務(3,500万円+2,500万円)

=5,500万円

 

したがって、この場合の経常運転資金は5,500万円となります。

 

運転資金の概要や計算方法はこちらの記事でも詳しく解説されています。あわせてご確認ください。

参考:運転資金とは何か?わかりやすく解説【内容/計算方法】 – 経営コンサルティングの株式会社武蔵野

経常運転資金が不足する理由

経常運転資金が不足する場合は、金融機関からの融資などによって資金調達をしなければなりません。

しかし、融資の場合は金利を支払う必要があり、買掛債務の支払いの度に資金調達を行うのはコストと労力がかかります。

したがって、不足する経常運転資金の金額をできるだけ抑えることが重要です。

ここからは経常運転資金が不足する要因について解説します。

これが分かれば、経常運転資金の不足分を減らし、手元の資金をより潤沢にすることができます。

売上が減少した

最もイメージしやすいのは、売上が減少した場合です。

売上が減少し、手元に十分なキャッシュがなければ、経常運転資金を支払うことができないかもしれません。

売上の減少による場合は、事前に十分なキャッシュを貯めておくか金融機関などから必要な金額を調達する必要があります。

売上の減少が一時的な場合は問題ありませんが、継続的である場合は、買掛債務の支払いの度に経常運転資金が不足することになります。

ビジネスモデルを見直したり、経費をカットしたりして、売上が上昇する仕組みを作ることが不可欠です。

売上が増加した

イメージが難しいかもしれませんが、実は売上が増加した場合でも経常運転資金が不足する場合があります。

日本のビジネス慣習では、商品やサービスの提供の際に現金ではなく、掛取引が一般的です。

基本的なビジネスモデルが「仕入れ→販売→入金」の順番で行われるとすると、売掛金が回収されるまでの間は支払いがかさみ、金銭的な負担が大きくなります。

売上が大きく増加すると仕入れ代金も大きくなりますので、負担はさらに増します。

帳簿上では黒字を達成していても手元にキャッシュが足りず、経常運転資金が支払えない場合があります。

このような場合は、単に売上の向上を目指すのではなく、支払いと入金のタイミングを見直すことが必要です。

取引先と交渉して入金のタイミングを早め、仕入先への支払いタイミングを遅くすることによってタイミングをズラせば、資金繰りは楽になります。

経常運転資金の調達方法

経常運転資金の不足が見込まれる場合は、不足する資金を調達する必要があります。

経常運転資金の調達方法には、いくつか候補があります。

最も一般的なデットファイナンスによる資金調達方法について見ていきましょう。

なお、デットファイナンスとは負債になる資金調達方法です。

方法について見ていきましょう。

 

  • プロパー融資
  • 日本政策金融公庫
  • 制度融資
  • ビジネスローン
  • 親族や友人から借入

 

それぞれについて見ていきましょう。

調達方法1.プロパー融資

プロパー融資とは、銀行から融資を受ける方法です。

プロパー融資は、企業や個人と銀行の間で契約が締結され、決算書を提出し、企業の財務状況や業績、担保の有無などをもとに、融資の上限額や金利、貸付の期間などが決定されます。

メガバンクなどは全国に支店があり、利用しやすく、審査も迅速に行われるので、すぐに資金が必要な企業にとって便利です。

一方で最近では、中小企業への新規の融資のハードルが上がっており、申込から資金調達までのプロセスが大変です。

また、金利が比較的高く、返済期間も短いので、借入後の資金負担が大きくなります。

調達方法2.日本政策金融公庫

日本政策金融公庫とは、政府が100%出資する政府系金融機関です。

中小企業の資金繰りを支援することを目的に設立されており、中小企業が利用しやすい資金調達方法です。

資金使途が運転資金に特化した融資のプランもあるので、利用しやすいです。

メガバンクや地方銀行など民間の金融機関に比べて、融資の審査基準が低く、借入がしやすいというメリットがあります。

また、金利も低めに設定されており、返済期間も長いので、借入後の資金負担も抑えられます。

しかし、申込から融資の実行まで時間がかかるので、余裕をもって申込をする必要があります。

調達方法3.制度融資

制度融資は、日本政策金融公庫と同様に、中小企業や小規模事業を支援することを目的に設立された制度です。

仕組みとしては、各種自治体と民間金融機関、信用保証協会が連携して提供しています。

融資を実行するのは自治体ですが、窓口は金融機関となります。信用保証協会が信用保証をしてくれます。

基本的に無担保・無保証で融資を受けることができるので、借入後の資金負担を抑えられます。

また、申込から融資の実行まで比較的期間が短いので、今すぐ資金が必要な場合でも対応してくれます。

一方で融資を受けるためには、創業年や自己資金などの条件があるほか、資金計画書などをしっかりと作り込む必要があります。

調達方法4.ビジネスローン

ビジネスローンとは、銀行や信販会社などが提供する、事業資金に利用目的を絞った融資です。

オンラインから申請できるので、手軽に申し込みすることができます。

プロパー融資や日本政策金融公庫の融資と比べて、融資の基準がやさしく、素早く資金を調達できます。

銀行のプロパー融資の場合は1ヶ月前後かかる場合もありますが、ビジネスローンの場合、銀行でもおおむね3~5営業日、ノンバンクなら即日融資を受けることができます。

一方で、金利が高いのが最大のデメリットです。

銀行のプロパー融資の場合は1%以下で借入ができる場合もありますが、ビジネスローンの場合は14%程度の金利が相場です。

「とりあえずのつなぎ資金が今すぐ必要だが、来月になればすぐ返済できる」という短期のみの利用になります。

調達方法5.親族や友人から借入

最も手軽な方法が、親族や友人からお金を借りる方法です。

融資の審査が不要で、無担保・無保証で融資を受けられます。

金利の負担もないので、借入後の資金調達の負担もありません。

しかし、返済が滞った場合は人間関係に悪影響が出る可能性があります。

事前に使用使途や返済期間についてしっかりと取り決めを行ったうえで、借入をしましょう。

経常運転資金について知り、自社の資金繰りを見直そう

経常運転資金について理解することで、黒字倒産を防ぐことができます。

帳簿上では黒字でも手元に十分なキャッシュがないために、倒産してしまう企業は少なくありません。

仕入先への支払サイトを延ばすことや、販売先からの回収サイトを短くするなどによって資金繰りを楽にしましょう。

この記事を読んで、経常運転資金について理解して、自社の資金繰りをもう一度見直してみてください。

経常運転資金について不明な点がある場合は、株式会社パラダイムシフトに相談してみましょう。

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中小企業の経営に関する情報やノウハウを蓄積していますので、信頼して相談することができます。