- IT業界では倒産する企業が多いの?
- 市場動向やIT企業のM&Aについて知りたい
上記のようにお考えの方も多いはず。
IT業界は、近年急速に市場規模を拡大させており、多くの企業が新規参入しています。
またM&Aが活発に行われるなど、注目度の高い業界です。
本記事では、IT企業の倒産について、中小企業庁が発表した企業生存率を用いて紹介します。
目次
IT企業の倒産数を測る「企業生存率」
企業生存率とは、中小企業庁や国税庁などの官公庁の資料にも用いられるデータ。
具体的には、起業した会社のうち、ある一定期間に事業を継続している割合のことです。
企業生存率が高い業種は、倒産・退場する企業が少ないことを表し、反対に割合が低い業種は多くの企業が倒産・退場していることを表します。
しかし、調査対象や対象期間、サンプルデータが異なることで企業生存率も変動するため、官公庁の発表資料ごとに値が異なる点に注意が必要です。
本章では、国内中小企業における企業生存率の平均を解説します。
国内中小企業における企業生存率の平均
国内中小企業における企業生存率は、以下のとおりです。
- 1年後:95.3%
- 2年後:91.5%
- 3年後:88.1%
- 4年後:84.8%
- 5年後:81.7%
上記の値は、中小企業庁がTDB(株式会社帝国データバンク)のデータを元に公表したデータです。
比較的企業生存率が高く、起業から5年後に生存している割合は全体の8割ほど。
つまり、倒産・退場する企業は、全体の2割程度です。
また日本の企業生存率は国際的に見ても高く、起業から5年後では、アメリカやイギリスと約30ポイントもの差が生じています。
もちろん、国によって法制度や開業率が異なるため、一概に比較することは困難です。
ただそれを差し引いても、日本の中小企業は起業後に倒産・退場することなく、長期的に事業を継続できていると言えます。
IT企業は倒産が多い!?開業率・廃業率は?
では、IT企業に限定すると、どれほどの企業が生存し、倒産しているのでしょうか。
中小企業庁が発表したデータによると、IT企業の開業率・廃業率は以下のとおりです。
IT企業が含まれる情報通信業の開業率は、およそ6%なのに対し、廃業率は4%未満です。
言い換えると、既存のIT企業数に対して6%もの企業が新規参入し、4%未満のIT企業が倒産・退場しているということ。
また、IT業界全体を見ると、企業数は増加傾向にあり、倒産する企業が少ないと言えます。
ただ、企業数の増加が緩やかなのに対して、売上高が急速に拡大していることがお分かりいただけるでしょう。
これは、ペーパーレス化やテレワークの導入、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進などにより、IT関連の需要が高まっているためだと考えられます。
政府もIT導入補助金の支給など、企業のIT化を推進しているため、今後もIT需要が高まり、企業数が増加することが予測されます。
日本で増加傾向にあるIT企業のM&A
最近は、M&Aを実施するIT企業が増加しています。
M&Aとは、Mergers and Acquisitions略で、企業の合併や買収のこと。
1990年代の国内M&A件数は年間1,000程度でしたが、2005年には年間2,500件、2017年には年間3,000件を超えるほどにまで増加しました。
近年さらに増加しており、2019年には年間4,000件以上ものM&Aが行われています。
中でもIT企業が関連したM&Aが多く、全体の3分の1を占めるほど。
2018年には、1000件以上ものM&Aが実施され、今もなお増加し続けています。
IT企業によるM&Aが増加している4つの理由
では、一体なぜIT企業のM&Aが増加しているのでしょうか。
主な理由は、以下の4つです。
- 人手不足の解消
- 新たな技術・ノウハウの獲得
- IT企業の倒産を回避
- 後継者問題の解決
本章では、上記4つの理由を詳しく解説します。
人手不足の解消
IT・ソフトウェア業界でM&Aが増加する一番の理由は、人材不足の解消です。
経済産業省の調べによると、ビッグデータやAI、IoTなどの先端ITを担う人材は、4.8万人が不足しており、情報セキュリティ対策を担う人材は、19.3万人も不足しているとのこと。
今後さらに人材不足が深刻化し、2030年には最大79万人も不足するとして、警鐘を鳴らしています。
ただ、IT業界では新たな技術が生まれやすく、人材の育成・確保が追いつかない状態です。
また、人材の確保・育成には、多くのコスト・時間がかかるため、短期的にIT人材を確保できるM&Aが注目されています。
年々激化する市場競争を勝ち抜くためにも、人材獲得を目的としたM&Aが増加しています。
新たな技術・ノウハウの獲得
2つ目の理由は、新たな技術・ノウハウの獲得です。
IT業界は、とりわけ技術・ノウハウの移り変わりが激しい業界です。
仮に、一から技術・ノウハウを構築していては、この移り変わりに乗り遅れる恐れがあります。
そこで、先ほどの人材と同様、すでに技術・ノウハウを確立している企業を買収するケースが増加しているのです。
一般的なM&Aであれば、マッチングからクロージングまでが数ヶ月〜半年ほどで完結します。
また、自社への統合作業を含めても、1年程度で技術・ノウハウの獲得が可能です。
技術・ノウハウの短期的な獲得と、それに伴う市場競争力の強化を目的に、多くのIT企業がM&Aを実施しています。
IT企業の倒産を回避
3つ目の理由は、IT企業の倒産を回避するためです。
資金繰りや人手不足など、さまざまな理由から倒産に陥る企業が多いもの。
しかし、会社を倒産すると代表者が信用を失うなどのデメリットがあります。
そのため、倒産の回避を目的に、自社の売却を検討するケースも多く見られます。
ただ、財務状況に問題を抱える会社は、買い手からして評価しづらい傾向があります。
実際に取引が成立するのは、他社から見て魅力的な人材・ノウハウ・ブランドを保有している場合がほとんどです。
後継者問題の解決
4つ目は、後継者問題の解決です。
IT業界は一見新しい業界にも思いますが、すでに60年以上もの歴史がある産業です。
中には、経営者が高齢化し、後継者問題に頭を悩ませる企業も存在します。
従来であれば、会社を廃業するケースが一般的でしたが、近年はM&Aをサポートする仲介会社やマッチングサービスも増加しました。
M&Aを実施しやすい環境が整ったこともあり、経営権を第三者へ継承するM&Aが注目されています。
M&Aは経営者のみが入れ替わるため、従業員や取引先への影響を最小限にとどめられます。
また、経営者は会社の売却益を獲得できるため、M&Aを検討する方が増加しています。
IT企業がM&Aを進めるうえでの注意点
IT企業がM&Aを進める際には、以下の3つに注意が必要です。
- スピード感のあるM&Aを意識
- 承継する人材の能力を見極める
- 従業員・取引先へ告知するタイミング
スピード感のあるM&Aを意識
1つ目の注意点は、M&A過程のスピード感です。
前述のとおり、IT・ソフトウェア業界は、市場や技術の移り変わりが激しい業界です。
仮に、M&Aに多くの時間を費やしていては、獲得した資源を有効に活用できない恐れが出てきます。
また、競争が激化している昨今では、狙っている候補企業をほかの会社に取られるケースもあります。
魅力的な企業ほど、買収を狙うライバルも多いため、スピード感を持ってM&Aを進めることが大切です。
承継する人材の能力を見極める
2つ目の注意点は、承継する人材の能力を見極めることです。
IT企業のM&Aは、他の業種よりも人材の重要度が高い傾向があります。
通常のデューディリジェンスは、税務・事業・財務・法務・人事などの観点から売手企業のリスクや収益性を分析します。
ただ、人材獲得が求められるIT企業の場合、エンジニアがどのような言語・スキルを習得しているかなどの能力面を重点的に調査することが大切です。
従業員・取引先へ告知するタイミング
3つ目の注意点は、従業員・取引先へ告知するタイミングです。
一般的には、M&Aの最終合意書が交わされたタイミングで、従業員や取引先へ告知します。
しかし、これには明確な正解があるわけではないため、社内の状況を考慮して適切なタイミングで告知することが大切です。
仮に、早期の段階でM&Aを告知した場合、情報が外部へ漏洩したり、他社から妨害を受けたりする可能性が高まります。
一方、告知が遅れると、従業員から十分な理解を得られなかったり、離職者が続失したりする恐れがあります。
人材の重要度が高いIT業界では、M&Aの告知タイミングや伝え方を慎重に精査し、従業員への負担を最小限にとどめることが重要です。
IT企業の売却・買収を検討中ならM&A仲介会社がおすすめ
IT企業の倒産や人材の獲得を目的に、M&Aを検討しているなら、M&A仲介会社の利用がおすすめです。
M&A仲介会社とは、候補企業とのマッチング〜取引後の統合作業までを一貫してサポートするサービスです。
法律・法令、評価額の算出や交渉時のノウハウなど、M&Aに必要な専門知識のもとサポートしてくれます。
また、M&A仲介会社は独自のネットワークを保有しているため、自社の条件に適した候補企業とマッチングしやすいでしょう。
自社のみでのM&Aに不安を感じている場合は、M&A仲介会社を検討してみてください。
専門家による支援のもとIT企業のM&Aを成功させよう
本記事では、IT企業の倒産について、中小企業庁が発表した企業生存率を用いて紹介しました。
本記事の内容をまとめると、以下のとおり。
- IT企業の倒産数は比較的少なく、業界全体では企業数が増加傾向
- 市場全体が成長している一方で、人材不足などの課題がある
- 課題解決に向け、IT企業のM&Aが活発化
- M&Aでは専門的な知識が不可欠
パラダイムシフトは、IT企業のM&Aを専門に扱うM&A仲介会社です。
自らもIT企業として事業をおこなっているため、業界特有の商習慣・トレンドを把握しています。
深い専門知識をもとにサポートするため、M&Aをご検討中の方はお気軽にご相談ください。