グループ会社はビジネス用語として用いられる用語ですが、正しい意味をご存知でしょうか?
法的な場ではグループ会社の用語は用いらず、関係会社と呼ばれる用語を使います。
グループ会社は、親会社や子会社、関連会社など、資本面で関係のある一連のまとまりを指す言葉です。
今回の記事では、グループ会社の子会社や関連会社の意味や、関係性を種類別に解説し、グループ会社の経営のメリット・デメリットを紹介します。
目次
- 1 グループ会社とは
- 2 グループ会社の種類
- 3 関係会社
- 4 親会社と子会社
- 5 子会社
- 6 完全子会社
- 7 連結子会社
- 8 非連結子会社
- 9 関連会社
- 10 持分法適用会社
- 11 グループとホールディングスの違い
- 12 グループ会社の7つのメリットとは
- 13 グループ会社のメリット1:軽減税率を適用できる
- 14 グループ会社のメリット2:交際費の経費限度額が2倍になる
- 15 グループ会社のメリット3:2年間の消費税免除を受けられる
- 16 グループ会社のメリット4:迅速な意思決定ができる
- 17 グループ会社のメリット5:人材を共有し、有効活用できる
- 18 グループ会社のメリット6:事業リスクを分散できる
- 19 グループ会社のメリット7:M&Aへの対応を迅速にできる
- 20 グループ会社の5つのデメリットとは
- 21 グループ会社のデメリット1:損益通算が効かなくなる
- 22 グループ会社のデメリット2:隠蔽の可能性
- 23 グループ会社のデメリット3:グループ会社内での対立
- 24 グループ会社のデメリット4:法人を維持するコストがかさむ
- 25 グループ会社のデメリット5:不祥事によるグループ会社全体の信用低下
- 26 より良い経営のためにグループ会社の定義を理解しよう
グループ会社とは
グループ会社とは、グループ経営において最も広義な意味を指す用語です。
グループ会社は、親会社、子会社、関連会社など関係性のある全ての会社の一連のまとまりを指します。
A社を親会社としたとき、A社と資本関係のある会社はA社のグループ会社であると捉えられます。
グループ会社は法的に定められた言葉ではなく、ビジネス用語として用いられている用語です。
A社のグループ会社である子会社や関連会社は親会社であるA社の利益のために営業していると言えるでしょう。
グループ会社は同じ経営理念や哲学を持ち、意思決定を素早く通達し、意思疎通もスムーズに行われます。
法律上では関係会社が同じ意味を持つ用語です。
関係会社は連結決済という方法で決算され、経営上の結びつきも強くなります。
グループ会社の種類
グループ会社は上記で紹介した通り、関係性のある全ての会社を指します。
主な会社の呼び方として、
- 関係会社
- 親会社
- 子会社
- 関連会社
- 持分法適用会社
があり、2つの会社の関係や決算方法により呼び名が変わります。
一つずつ詳しく見て行きましょう。
関係会社
グループ会社という用語は法的に定められた言葉ではありません。
グループ会社と同じ意味で法的に定められているのは関係会社という用語です。
関係会社は、親会社、子会社、関連会社など経営上や会計上関係のある会社の一連のまとまりを指します。
親会社と子会社
他社の株式を50%以上の保有している場合、その会社の親会社になります。
親会社と対照に他社に50%以上の株式を保有されている会社をその会社の子会社と呼びます。
また、株式の所有率が50%未満である場合でも、
- A社の社員が出向し、B社の役員になっている
- A社がB社の事業方針を決定する契約を交わしている
などB社の大きな決定権がA社に委ねられている場合、「A社はB社の親会社である」「B社はA社の子会社である」と言い表すことができ、実質的な支配権があるかどうかが判断基準となります。
親会社は決算の際、連結決算と呼ばれる決算方法で関係会社の決算を組み込み計上を行います。
子会社
子会社の中にはいくつか種類がありますが、決算方法や株式の保有率により
- 完全子会社
- 連結子会社
- 非連結子会社
に分かれます。
近年注目されている経営戦略の一つとしてM&Aが挙げられます。
M&Aの中でも他社を買収し、自社の子会社にする手法が多く用いられます。
買収は合併と異なり、売り手企業の会社がなくなることはありません。
売り手企業が買い手企業の子会社となり、買い手企業は売り手企業の親会社となります。
売り手企業からの視点でも、自社がなくなる心配がないため買収されることに対する抵抗が少なくなります。
完全子会社
子会社の中で、親会社が100%の株式を保有している会社は完全子会社と呼ばれます。
完全子会社の経営権は親会社にあり、意思疎通や伝達がスムーズに行われます。
連結子会社
連結子会社は決算の際、親会社の連結決算に組み込まれる子会社を指します。
通常、全ての子会社が連結対象となり、親会社は連結決済で計上することになります。
非連結子会社
子会社の事業が小規模の場合やグループ経営に関与しない会社だと、連結対象から外すことができ、非連結子会社となります。
他にも、
- 経営上、重要でない子会社
- 金額が小規模の子会社
- 損益が少なく連結せずとも、関係者に誤解を与えない子会社
など連結対象から外し、非連結子会社とすることが可能です。
関連会社
関連会社は親会社に株式を保有されている会社の中でも、所有率が少なく、実質的な支配を受けていない会社を指します。
保有率の基準としては、全株式の20%以上50%未満が目安です。
ただし、親会社の株式の所有率が20%未満であっても、事業方針などで実質的な影響を受けている場合は関連会社として扱われます。
例として
- A社の社員が出向し、B社の役員になっている
- A社がB社の事業方針を決定する契約を交わしている
- A社がB社に技術提供を行っている
- A社はB社の重要な資金調達の先である
などがあり、この場合はB社はA社の関連会社であると言い表せます。
関連会社も決済の際は子会社と同様、親会社の連結決算に組み込まれます。
持分法適用会社
関連会社と同じ意味を持つ言葉として持分法適用会社があります。
持分法は、連結決済の簡易的な会計処理の方法で、関連会社や非連結子会社に適用することが多くあります。
関連会社は連結決済の際に持分法の対象となり、持分法の適用される会社はグループ会社の中で持分法適用会社という位置付けになります。
グループとホールディングスの違い
グループとホールディングスの違いは以下の通りです。
グループ:親会社と子会社をまとめた表現
ホールディングス:株を持っていて子会社に強い影響力を与えられる会社
以下の図は、グループとホールディングスを階層でわかりやすく示しています。
出典:我が国の「企業グループ」の状況について-経済センサス‐基礎調査の集計結果から-|総務省統計局統計調査部
押さえておくべきは、グループはホールディングスなど親会社と子会社をまとめた意味で、ホールディングスは子会社に影響力を行使できる持ち株会社だということです。
グループ会社の7つのメリットとは
昨今では、経営戦略上の利点が多いことからグループ会社による、グループ経営が増えてきています。
一つの会社として複数の事業を行った場合と比べて、事業ごとに子会社を作りグループ会社として経営を行った場合のメリット・デメリットについて解説します。
グループ会社のメリットは節税面や経営戦略の面において多くあります。
まず、代表的なメリットを7つ紹介します。
グループ会社のメリット1:軽減税率を適用できる
資本金が一億円以上の中小企業は、800万円以下の所得に対して法人事業税の軽減税率を適用できます。
法人事業税は法人の所得にかかる都道府県税の一つです。
子会社を設立し、利益を分散させることで親会社と子会社、関連会社で軽減税率を適用できます。
グループ会社の数が多いほど軽減税率を適用できる範囲が広がり、節税できるメリットがあると言えるでしょう。
グループ会社のメリット2:交際費の経費限度額が2倍になる
出資金や資本金が1億円以下の中小企業は、年間800万円以下の交際費を損失に算入させることができます。
1つの子会社を設立した場合、その会社は別会社として扱われるため、800万円の2倍の額1600万円の交際費を損失に算入させることができます。
グループ会社のメリット3:2年間の消費税免除を受けられる
課税売上高が1000万円以下の事業者は2年間の消費税免除を受けることができ、免税事業者となります。
子会社を設立した場合も同様に2年間は免税事業者になれます。
ただし、年間の売上高が5億円を超える場合は不適用となるため注意が必要です。
グループ会社のメリット4:迅速な意思決定ができる
グループ会社で経営を行う場合、意思疎通がスムーズになるメリットがあります。
親会社が決定した事項を子会社や関連会社へ素早く通達することができるため、事業を行うスピードも上がります。
新たな事業や商品の開発など、無駄な時間をかけず迅速に行うことができるでしょう。
グループ会社のメリット5:人材を共有し、有効活用できる
一つの会社として人材を確保した場合、有能な人材や個人の才能が大人数の中に埋もれてしまう恐れがあります。
それぞれの子会社や関連会社の事業にあった人事制度を作ることでより良い人材を採用し、その人個人にあった役職や役割を与えることができます。
また、グループ会社の中で競争力を高めるほか、多くの人に権限や役割を与えることにより、個々の力を活性化させて経営に活かすことも可能です。
グループ会社の中で人事共有し、人員の配置を転換することでもより良い循環も期待できます。
グループ会社のメリット6:事業リスクを分散できる
グループ会社は個々の会社で経営を行うため、グループ内でリスクを分散できる利点もあります。
一つの会社で経営が悪化した際も損失を他の会社で補えます。
また、一つの事業で事業停止命令などが下り営業できなくなった場合でも、グループ会社として会社を分散していれば、他の会社はそのまま営業を継続できます。
グループ会社のメリット7:M&Aへの対応を迅速にできる
グループ会社として経営を行うことは、M&Aにおいて有利になることがあります。
M&Aは、最近では経営戦略の一つとして注目される手法の一つです。
M&Aでは他社を買収して子会社にすることができます。
買収は合併と異なり売り手の会社がなくなることはありません。
売り手企業が買い手企業の子会社となり、買い手企業は売り手企業の親会社となります。
売り手企業からの視点でも、自社がなくなる心配がないため買収される抵抗が少なくなり双方の融合がスムーズになります。
グループ会社の5つのデメリットとは
メリットの多いグループ会社の経営ですが、デメリットもあります。
事前に理解しておくことでリスクを回避できるため、しっかり把握しておきましょう。
グループ会社のデメリット1:損益通算が効かなくなる
複数の所得があり、そのうちの一つで赤字が発生している場合、他の黒字になっている所得から赤字分を差し引く損益通算を行うことができます。
しかし、グループ会社で経営を行っている場合、親会社と子会社、関連会社は別会社の扱いになり損益通算を行うことができません。
グループ会社のデメリット2:隠蔽の可能性
グループ会社として経営を行う場合、基本的な経営権や重要事項の決定は親会社に委ねられています。
それ以外の事業の範囲内では子会社、関連会社それぞれに裁量が委ねられます。
そのため、親会社に知られると良くない不祥事や都合の悪い出来事を隠蔽しようとする考えが働きやすくなります。
このような出来事を迅速に把握することが難しく、対処しづらい点がデメリットです。
グループ会社のデメリット3:グループ会社内での対立
グループ会社の経営では、最終的に親会社の決定に従う必要があります。
こうした事項が子会社や関連会社にとって都合の悪い場合、親会社と対立してしまう恐れがあります。
グループ会社内で協力体制が築けない場合や、上下関係ができてしまった場合、会社間での関係が悪くなってしまいます。
特に、事業内容が増えていき、グループ会社の数が増えれば増えるほど、対立する可能性も大きくなるため注意が必要です。
グループ会社のデメリット4:法人を維持するコストがかさむ
グループ会社として組織が大きくなればなるほど、管理体制や人事体制が複雑化します。
それに伴い、重複する組織も増えていき、人件費や維持コストがかさみます。
普段の業務に支障が出ない程度に維持コストを抑えていくことが必要です。
グループ会社のデメリット5:不祥事によるグループ会社全体の信用低下
グループ会社の一社が不祥事を起こした場合、信用の低下は該当する会社だけに留まらず、グループ会社全体の社会的信用が低下する可能性があります。
親会社や他の子会社、関連会社が別々に経営を行うグループ経営ですが、親会社の名が知られていることが多くあります。
そのため、子会社の一つが起こした不祥事でも、世間一般的には親会社が起こしたようなイメージになることもあります。
子会社の不祥事が、親会社の指示で起こった・親会社の指示不足で起こったケースも考えられます。
このような不祥事の場合は、親会社が責任を逃れることは難しいため、責任を取る必要があると考えておいたほうが良いでしょう。
より良い経営のためにグループ会社の定義を理解しよう
今回の記事では、グループ会社について解説しました。
グループ会社に法的な意味はありませんが、ビジネス用語として広く用いられる用語で、親会社や子会社、関連会社など、関係性の高い会社のまとまりです。
グループ会社の経営にはメリットは以下7つです。
- 軽減税率の適用
- 交際費の経費限度額の倍増
- 2年間の消費税免除
- 迅速な意思決定
- 人材の有効活用
- 事業リスクの分散
- M&Aへの迅速な対応
メリットが多く存在する反面、税制面や経営戦略面でのデメリットもあります。
グループ会社の意味とあわせて、メリット・デメリットを正しく理解することで、より良い経営を行うことに繋がります。
パラダイムシフトは2011年の設立以来、豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。
パラダイムシフトが選ばれる4つの特徴
- IT領域に特化したM&Aアドバイザリー
- IT業界の豊富な情報力
- 「納得感」と「満足感」の高いサービス
- プロフェッショナルチームによる適切な案件組成
M&Aで自社を売却したいと考える経営者や担当者の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
またM&Aを成功させるためのコツについて全14ページに渡って説明した資料を無料でご提供しますので、下記よりダウンロードしてください。