2022年1月、100円ショップチェーンを運営するキャンドゥ(本社:新宿)をイオングループがTOBで子会社化したのは記憶に新しいのではないでしょうか。
イオングループのM&A戦略の歴史は、1967年、現イオン名誉会長の岡田卓也氏が、フタギ株式会社の二木一一社長に合併を持ちかけたことから始まりました。
両社の提携に株式会社シロが参画、イオンの前身となるジャスコ株式会社が誕生。
その後も合併を経営戦略の主軸とし、現在日本の流通業を支える一つとなりました。
本記事で、イオングループのこれまでの数々のM&Aの歴史や、経営戦略についてお伝えします。
イオングループにおける主なM&Aの歴史
もともとイオングループは「ジャスコグループ」の名称で運営しており、1989年にイオングループへ改称されました。
その後イオングループはM&Aを経営戦略の主体とし、さまざまな企業を買収、出資などをして拡大してきた経緯があります。
イオングループによるこれまでの主なM&Aについては以下の通りです。
年月 | 概要 |
1991年9月 | ケーヨー(ホームセンター大手)との資本業務提携 |
1992年1月 | 石黒ホーマー(ホームセンター大手)との資本業務提携 |
1994年3月 | 中三(青森県の百貨店)との資本業務提携 |
1994年11月 | やまや(酒類ディスカウントストア)との資本業務提携 |
1995年1月 | ツルハ(大手ドラッグストア)との資本業務提携 |
1997年10月 | ヤオハン・ジャパン(現・マックスバリュ東海)への支援 |
1999年1月 | クラフト(調剤薬局チェーン)に資本参加 |
1999年8月 | ドラッグイレブン(九州のドラッグストアチェーン)との資本業務提携 |
2000年1月 | スギ薬局(ドラッグストア)に資本参加 |
2000年4月 | ハックキミサワ(ドラッグストア)との資本業務提携 |
2000年4月 | タキヤ商事(ドラッグストア)との資本業務提携 |
2001年11月 | マイカルの再建支援金業にイオンが選定 |
2002年2月 | 寿屋(九州のスーパー)から50店舗取得 |
2002年5月 | 寺島薬局との資本業務提携 |
2002年5月 | いなげや(スーパー)の株式を26.1%取得 |
2002年11月 | マイカル九州再建支援金業にイオンが選定 |
2003年6月 | カスミ(スーパー)との資本業務提携 |
2003年8月 | サンデー(ホームセンター)との資本業務提携 |
2004年2月 | 子会社ロイヤル・コスモをヤマノホールディングコーポレーションへ譲渡 |
2004年7月 | イオンディライト(連結子会社)によるあさひ銀ビル管理の買収 |
2004年12月 | イオンディライト(連結子会社)によるタワーズの買収 |
2005年3月 | カルフール・ジャパン(総合小売業)の株式を全て取得 |
2005年12月 | ツルヤ靴店との資本業務提携 |
2006年2月 | 米国孫会社がThe J. Jill Group(婦人服やアクセサリーの小売業)を買収(5億1700万ドル) |
2006年3月 | オリジン東秀をTOBで買収 |
2006年4月 | マイカルクリエイトを買収・吸収合併 |
2006年4月 | サンデー(ホームセンター)を子会社化 |
2006年7月 | ベルク(スーパーマーケット)との資本業務提携 |
2007年3月 | ダイエーの自主再生への協力を目的とする資本業務提携 |
2007年3月 | ダイエー所有のマルエツ株式をイオンが取得。イオン・マルエツ・丸紅で業務提携 |
2007年5月 | エイ・ジー・サービスの株式を取得(第三者割当増資引受け) |
2007年9月 | ダイエーからマルエツ株式を追加取得 |
2007年9月 | 橘百貨店の株式をクアトロエグゼキューションズに売却 |
2007年12月 | 光洋(食品スーパーマーケット)を子会社化 |
2008年5月 | CFSコーポレーション(ドラッグストア・調剤薬局)との資本業務提携 |
2008年8月 | 環境整備の株式を買収 |
2008年9月 | ツルヤ靴店の株式をTOBで追加取得 |
2008年10月 | シミズ薬品(ドラッグストア・調剤薬局)との資本業務提携 |
2009年4月 | ドゥサービス(ビルメンテナンス)の株式を買収 |
2009年6月 | 米国孫会社がJ.Jill事業を譲渡 |
2010年5月 | CFSコーポレーションの買収 |
2011年1月 | サンデーの株式をTOBにより追加取得 |
2011年2月 | パルコの株式を取得 |
2011年4月 | カジタク(家事支援サービス)を子会社化 |
2011年4月 | エイ・ジー・サービス株式を追加取得し子会社化 |
2011年8月 | ロック開発(飲食店等企画開発)を子会社化 |
2011年10月 | マルナカ(食料品、衣料品販売)を買収 |
2011年10月 | 山陽マルナカ(食料品、衣料品販売)を完全子会社化 |
2011年12月 | 東芝ローンサービスを子会社化 |
2012年6月 | テスコジャパンを子会社化 |
2012年7月 | ザクザク(ドラッグストア)との資本業務提携 |
2012年9月 | ジェネラル・サービシーズを子会社化 |
2012年11月 | Magnificient Diagraph(マレーシアのハイパーマーケット)を買収 |
2013年1月 | デジタルダイレクト株式を三菱商事より買収 |
2013年4月 | 東芝ファイナンスを買収 |
2013年7月 | 武漢小竹物業管理有限公司(中国)を子会社化 |
2013年8月 | ダイエーを子会社化 |
2014年9月 | レッドキャベツの株式を買収 |
2014年9月 | ダイエーを完全子会社化 |
2014年11月 | ウエルシアホールディングスを追加出資により子会社化 |
2019年4月 | マックスバリュ東海株式会社を吸収合併 |
2020年3月 | イオン東北株式会社を完全子会社化 |
2020年3月 | イオン北海道株式会社を吸収合併 |
2020年3月 | イオン九州株式会社を吸収合併 |
2022年1月 | キャンドゥをTOBにより子会社化 |
イオングループの経営戦略
イオングループはM&Aを経営戦略の根幹として拡大してきました。
しかしそれだけでなく、海外進出の例も多くあり、M&Aだけで経営してきたわけではありません。
経営戦略の根幹はM&A
イオングループは1969年にジャスコ株式会社が設立されてから何度もM&Aをしてきました。
当時の社長、岡田卓也氏(現イオン名誉会長)によるフタギの合併をきっかけに、M&Aを戦略の根幹として経営。
特にイオングループに改名した1991年以降では、数々の資本業務提携や株式の買収、吸収合併、完全子会社化など、M&A実績は60回を超えます。
直近ではキャンドゥへのTOB
直近では2020年1月に成立した、100円ショップチェーン「キャンドゥ」のTOB。
イオンはキャンドゥの株式の51.16%を取得することで、連結子会社としました。
株式買収総額は約212億円。今後は、およそ2027年を目処に2000店舗まで増やすと目標を掲げています。
※2022年7月末時点では1230店舗
イオングループは、M&Aによる買収で終わることなくすぐに、拡大へと舵を取っています。
M&A以外では海外戦略も
イオングループの経営戦略はM&Aだけでなく、海外進出にもあります。
1985年、マレーシアに海外1号店となる「ジャヤ・ジャスコストアーズ ダヤブミ店」をオープン。
同年12月には香港にジャスコストアーズを設立しています。
現在ではアジア10カ国で事業展開しており、中国22店舗、インドネシア、ベトナム、カンボジアなどのアセアンで12店舗、計33店舗を展開しています。
今後も新規オープンが予定されており、イオングループの海外戦略は速度を緩めません。
大企業から学ぶM&A戦略
イオングループの経営戦略はまさに合併そのもの。
ジャスコの創設者の一人、故・小嶋千鶴子氏は企業の合併においてのメリットについて「有為な人材が得られ、組織の基盤が安泰し、さらに新たな人材が集まる」という内容を、著書「あしあと」で話しています。
50年以上前からM&Aを経営戦略の根幹として会社を築いてきたイオングループ。大企業から経営方針を学べることは多くあることでしょう。
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