上場廃止になる企業の株式を所持しているとき、どうすれば良いのかご存知でしょうか。上場廃止にはいくつか基準があり、それに該当すると上場廃止の候補になります。
上場廃止が決定した企業の株式はいくつかの手放す方法があります。
今回の記事では上場廃止の基準と、その株式についてどうすれば良いのか解説します。
目次
上場廃止が発表されるとどうなる?
上場廃止は、企業がなんらかの理由で申請する、上場廃止基準に該当する、などの理由から取引所での株式の売買が廃止されることを言います。
この場合、すぐに上場廃止となるわけではありません。監理銘柄、整理銘柄を経て最終的に取引所の判断により上場廃止が決まります。それぞれの言葉について詳しく見てみましょう。
監理銘柄とは
監理銘柄の指定は、上場廃止の恐れのある銘柄に対して、上場廃止決定前に周知するためのものです。投資する人々が上場廃止に対して備えるために設けられた期間とも言えます。
整理銘柄とは
上場廃止が決定すると整理銘柄に指定されます。整理銘柄とは、上場廃止の1ヶ月前に設けられるもので、投資者がその株を売買したりする期間となります。整理銘柄である期間が終了した上場廃止日以降、該当企業の株式は売買できないので注意が必要です。
上場廃止基準とは?
上場廃止基準とは、名の通り市場での上場が廃止になる基準です。日本国内には東京・名古屋・福岡・札幌、計4個所の取引所がありその中でそれぞれが上場廃止基準を設定しています。これらの上場廃止基準に該当した場合、上場廃止の候補となります。
ここでは、東京取引所の上場基準について詳しく解説します。
上場維持基準不適合
取引所には上場維持基準があり、これを割ると不適合となり上場廃止基準に該当します。上場廃止基準はいくつかの項目があり、市場ごとに異なる内容で定められています。
上場維持の基準 | 東証プライム | 東証スタンダード | 東証グロース |
株主人数 | 800人以上。 | 400人以上。 | 150人以上。 |
流通株式 | 流通株式数:20,000 流通株式時価総額:100億円 流通株式比率:35% | 流通株式数:2,000 流通株式時価総額:10億円 流通株式比率:25% | 流通株式数:1,000 流通株式時価総額:5億円 流通株式比率:25% |
時価総額 | ー | ー | 40億円 |
売買代金 | 一日の平均売買代金0.2億円 | ー | ー |
売買高 | ー | 月平均売買高10単位 | 月平均売買高10単位 |
純資産額 | 純資産の額が正である |
上場維持基準を割ってしまった場合、90日以内に改善計画の提出が必要となり、この基準を1年以内に上回らなければ上場廃止になります。
有価証券報告書提出遅延
有価証券報告書とは上場企業が開示する企業情報で、事業の経営状況や財務諸表などの書類を指します。
有価証券報告書は、事業年度が終了してから90日以内の提出が義務付けられており、締切りから1ヶ月以上遅れた場合、上場廃止の基準となります。
虚偽記載又・不適正意見等
有価証券報告書などの重要書類において、監査法人による意見が記載されていなかったり、事実と異なる記載があった場合には虚偽記載となります。
不適正意見等は、有価証券報告書などの重要な書類において間違いがあるとして不適正であることを指摘されたときに該当する項目です。
例えば、有価証券報告書に架空売上や架空請求を記載するなどが挙げられます。
特設注意市場銘柄等
特設注意銘柄は、取引所がその企業の内部体制に問題があると判断した際に指定されます。主に投資している人々に注意を促すための意味があります。
特設注意銘柄になった企業は速やかな改善が必要ですが、改善の見込みがないと見なされると上場廃止になります。
判断材料となるのは、その企業が法律を遵守して企業活動をしているか、計上した売上げや利益に不正がないかという点です。
特設注意銘柄は、通常の株式とは別で売買されます。
上場契約違反等
上場企業は、上場の際に新規上場申請等に係る宣誓事項契約を結んでいます。この内容に違反して、上場が適切でないと判断された場合は上場契約違反に該当します。
これに該当した企業は、1年以内に改めて審査を受けて合格することが必要です。
その他
上記の上場廃止基準の他にも以下の事柄に該当した場合には、上場廃止基準に該当します。
- 銀行の取引停止
- 破産・民事再生・更正などの手続き
- 事業活動の停止
- 不適切な合併
- 第三者割当による支配株主の異動
- 完全子会社となる
- 反社会勢力との関与
上場廃止基準に関する経過措置
上場廃止基準に該当した場合でも、企業によっては経過措置を受けられることがあります。上場廃止基準に関する経過措置には、具体的に以下の基準があります。
上場維持の基準 | 東証プライム | 東証スタンダード | 東証グロース |
株主人数 | 800人以上。 | 150人以上。 | 150人以上。 |
流通株式 | 流通株式数:10,000単位 流通株式時価総額:10億円 流通株式比率:5% | 流通株式数:500単位 流通株式時価総額:2.5億円 流通株式比率:5% | 流通株式数:500単位 流通株式時価総額:2.5億円 流通株式比率:5% |
時価総額 | ー | ー | 5億円以上 |
売買高 | 月平均売買高40単位 | 月平均売買高10単位 | 月平均売買高10単位 |
純資産額 | 純資産の額が正である |
経過措置の適用を希望する場合、上記の上場維持基準の該当に加え、再び上場維持基準に適合するための計画と取り組み、実施期間を開示する必要があります。そして、これらの進歩状況を事業年度末から90日以内に提出します。
上場廃止になる理由
企業が上場廃止になる理由には上場廃止基準の該当だけでなくさまざまなものがあります。上場廃止と聞くと、経営状態の悪化を連想しがちですがそれだけではありません。むしろ、経営戦略の一環で上場廃止を選択することもあります。
この章では、上場廃止の主な理由について紹介します。
経営破綻
経営状態が芳しくなく、経営破綻などで上場廃止となるケースです。
利益率が低く借金が多い企業、自己資本比率が20%未満である企業は注意が必要とされています。
経営破綻した企業が上場を廃止した場合、企業側に返済の義務はなく、株式価値がなくなる恐れがあるので企業のWebサイトや証券会社での通知などを確認し注視しましょう。
上場廃止基準に該当
先の章で紹介した通り、上場廃止基準のいずれかに該当する場合には上場廃止となります。
しかし、これまでに上場廃止基準に該当したことが理由で上場廃止になった企業は少なく、経営破綻による上場廃止が数件ある程度とされています。
経営戦略のため
最後に紹介する上場廃止の理由は、経営戦略の一環である上場廃止です。経営戦略的に上場を廃止する事例としては以下のものがあります。
- 該当の企業の親会社が100%の株式を取得し、完全子会社となった場合
- 発行済み株式の数を減らすために株式統合で複数の株式を1つに統合した
以上のように、企業の経営力を強化させるM&A的な要素が強いと言えます。
上場廃止になりそうな株を所有しているなら
では、上場廃止になりそうな株式を所持している場合、どうすれば良いのでしょうか。ここでは、4つのケースを紹介します。
- 株式公開買い付けのTOBに応じる
- 信託銀行で金銭交付をする
- 市場で売却する
- 保有し続ける
株式公開買い付けのTOBに応じる
上場廃止が決定すると、企業により株式公開買い付け(TOB)が実施されます。TOBに応じた場合、証券会社での手数料は無料であることも多いのでメリットがあるとも言えます。
しかし、TOBの代理人となっている証券会社でしか売却できません。そのため、その証券会社の口座を所持していない場合には、新たに口座を開き、株式移管の手続きが必要です。
提示された株価と自分が所持している株価を比べてTOBに応じるか決めると良いでしょう。
経営戦略のために上場が廃止になる企業の場合、TOBにはプレミアが付与され、通常よりも高値で売却できる可能性が高くなります。対して、経営破破綻で上場廃止になる際は株式の価値はなくなりゼロに近くなります。
信託銀行で金銭交付を受ける
TOBに応じなかった場合、信託銀行により金銭交付を受ける方法もあります。この場合、企業から来る通知などで株主に周知され、株主は所定の手続きをする必要があります。
市場で売却する
通常通り市場で売却します。上場の廃止が決定している場合、その日付を過ぎると売却できないので注意が必要です。
保有し続ける
上場が廃止となる株式を上場廃止日まで持ち続けることもできます。しかし、上場廃止日を迎えると支配株主や該当の発行会社により強制的に取得され、株主には対価として金銭が支払われます。
上場廃止の恐れのある株を注視することが重要
今回の記事では、上場廃止となる企業の基準や上場廃止になる企業の株式についてどうすれば良いのかを解説しました。
上場廃止は、決められた上場廃止基準に該当する企業に対して、取引所が改善のみ込みを判断し決定します。
上場廃止が決定した企業の株式においては、株式公開買付け(TOB)に応じたり、金銭交付を受ける方法などで整理売買します。場合によっては所持している株価よりも高額で売却できる可能性もあるため、企業や取引所が発信する情報を吟味して、どのように手放すか考えましょう。
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