ビジネスの場で、頻繁に使用される事業スキームという言葉。事業スキームは、事業計画や事業構造を意味します。
事業スキームは必要があるときに自身で作成できます。その際には、盛り込むべき内容があり、それらと共にポイントを押さえて作成することで、説得力のある事業スキームが出来上がります。
事業スキームは、社内で使用されることはもちろん、社外の人に向けた説明などに使用される場合も多いため、第三者が見てもわかりやすいように作成することが重要です。
今回の記事では、事業スキームの意味や作成方法、ポイントについて解説します。
目次
- 1 事業スキームとは?
- 2 プラン、ロジック、フローと、スキームとの意味の違い
- 3 M&Aや資金調達で使われるさまざまな「スキーム」
- 4 事業スキーム
- 5 M&Aスキーム
- 6 集団投資スキーム
- 7 資金調達(融資)スキーム
- 8 事業スキームに盛り込む内容
- 9 事業のコンセプトとビジョン
- 10 事業ドメイン(領域や範囲)
- 11 マネタイズ方法
- 12 自社の強み
- 13 財務計画
- 14 事業スキーム作成のためのポイント
- 15 簡潔に事業内容を説明
- 16 実施項目の明確化
- 17 客観的な事実を盛り込む
- 18 スキーム図とは?
- 19 要素を洗い出し、情報を整理する
- 20 情報を記号に置き換える
- 21 記号を配置する
- 22 事業スキームで効果的な戦略を立てよう
事業スキームとは?
仕事を進める中で、事業スキームという言葉を聞いたことがあるかもしれません。事業スキームとは、組織のもとで計画的に実行する計画です。枠組みを伴う計画という考え方ができます。
具体的には、資金調達や営業等の場面で、事業計画書を指す場合が多くあります。事業に関わる人や物、お金がどのように関わっているのかを説明したもので、時には、スキーム図を使用し、第三者の人が見てもわかりやすい説明になるよう心掛けます。
プラン、ロジック、フローと、スキームとの意味の違い
ビジネス界では、スキームに似ている意味として、使われる言葉がいくつか存在します。プランがその一つです。スキームと同じように計画や予定と言った意味を持ち、事業プランという単語もよく耳にします。
事業スキームと事業プランの違いは、事業プランは構想段階の抽象的な段階で使われるのに対して、事業スキームは実行段階で使う言葉です。
そのほかにも、フローやロジックといった言葉もスキームと似ている単語として挙げられます。フローとは、事業の始まりから途中経過、終わりまでの一連の流れを意味し、ロジックは考え方や、道筋を表し、物事をわかりやすく簡潔に伝えることを指します。
- スキーム=計画
- フロー=手順
- ロジック=論理
と分けると覚えやすいでしょう。
M&Aや資金調達で使われるさまざまな「スキーム」
次に、さまざまに場面で使われるスキームについて解説していきます。解説するのは、以下の4点です。
- 事業スキーム
- M&Aスキーム
- 集団投資スキーム
- 資金調達(融資)スキーム
事業スキーム
事業スキームは、今回紹介する中でも、最もよく使われます。事業計画や構造を意味し、事業の枠組みを表す言葉です。
組織的で継続性を持つニュアンスがあり、具体例として挙げられるのは、新規事業計画などです。仕入れや生産などの商品に関することから、管理方法、資金の流れなどを記載します。
M&Aスキーム
M&Aスキームは、会社を他社に譲渡する際の手段や、やり方として使用します。具体的には、事業譲渡や会社分割、株式譲渡などがあげられます。
M&Aを実施する際は、M&Aの仲介業者が第三者として、売り手企業と買い手企業の間に介入し、取引を進めていきます。
集団投資スキーム
集団投資スキームは、投資家から集めた資金で事業運営や有価証券に投資した後、出資者に利益を分配する仕組みを指します。集団投資スキームには、資産運用型と資産流動化型があります。
資産運用型は、投資家から集めた資金をファンドマネージャーが運用する投資信託が一般的です。資産流動化型は、特定の資産から生じたキャッシュフローを組み替える仕組みや、その仕組みを投資家に販売する仕組みのことを指します。
資金調達(融資)スキーム
資金調達(融資)スキームは、新規事業をはじめる際に、金融機関や他社から資金を集めるための仕組みを指します。具体的には、融資や借入れ、第三者割当増資などです。
資金調達の際に提出する事業計画書には、資金調達スキームを掲載します。そのため、事業スキーム同様に、資金の流れや計画を細かく記載し、わかりやすいものにする必要があります。
事業スキームに盛り込む内容
次に、事業スキームへ具体的に記載するべき内容を紹介します。
- 事業のコンセプトとビジョン
- 事業ドメイン(領域や範囲)
- マネタイズ方法
- 自社の強み
- 財務計画
盛り込むべき内容は以上のとおりです。事業スキームは、ビジネスシーンで起こりがちな予期せぬトラブルや、思いどおりに利益が上がらないなどの問題を防ぐのに効果的です。そのために必要な内容を詳しく見ていきましょう。
事業のコンセプトとビジョン
初めに、明確な事業コンセプトを記載しましょう。コンセプトとは事業の概要であり、基盤となる部分です。具体的には、事業で果たすべき目標や、顧客が得られるメリットなどがあります。
合わせて事業ビジョンも明確に決める必要があります。ビジョンは、以下のとおりに考えると効果的です。
- いつまでに
- どこで
- 何を売って
- どのくらいかせぐのか
事業スキームは、実現性の高いものを考えましょう。3〜5年までの間に実現できるように計画するのがポイントです。
事業ドメイン(領域や範囲)
事業ドメインは、企業が活動する範囲と領域を指します。ドメインは、自社の強みや市場の関係など様々な要素を考慮します。
事業ドメインは、物理的定義と機能的定義、2つに分けて考えると効果的です。
物理的定義とは、商品や製品に対して考える事業ドメインです。機能的定義は、製品を提供する機能に対してドメインを定義する方法です。
事業ドメインから大きく離れた事業スキームで進めてしまうと、自社にとって不利益になる恐れがあるので、注意が必要です。
マネタイズ方法
マネタイズ方法は、利益を上げる方法のことです。資金を回収する仕組みや、取引のプロセスを指します。事業を継続させるためには、継続して利益を出し続けなければなりません。そのため、事業スキームを考える際のマネタイズ方法の仕組みは、とても重要だと言えるでしょう。
マネタイズ方法には、様々なものが挙げられます。最も想像しやすいのは、商品を売り、利益を得る方法です。インターネット上で、商品を売るECサイトの展開もマネタイズ方法のひとつと言えます。商品を売るだけではなく、広告収入等の課金モデルもマネタイズ方法に含まれます。
自社の強み
事業スキームを構築する上で、自社の強みは必ず活用しましょう。自社の強みを生かした事業は、成功する確率も高くなります。
技術力やノウハウ、人材、そのほかにもブランド力や販売経路など自社の強みはありますか?自社の強みを見つける際には、VRIO分析の活用がおすすめです。
VRIO分析は、価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣可能性(Imitability)、組織(Organization)の4つの観点で、自社の経営資源の優位性を分析する手法です。4つの観点が共存することで、他社との差別化を図ることができます。
財務計画
財務計画は、いつどのくらいに資産を使用するのかと言う計画です。さらに目標となる売上高や利益も盛り込みましょう。
成功した場合でだけでなく、最悪のシナリオも考えておくことがポイントです。計画どおりにいかないことを想定しておくことで、撤退する基準が明確になり、各部門で対応できるようになります。
財務計画は、数字の羅列だけでなくグラフや図形で示すとわかりやすくなります。棒グラフや円ブラフなど、内容に応じて使い分けてみましょう。「月ごとの目標金額の棒グラフ」や「ターゲット層の円グラフ」など、具体化した財務計画を入れることで、事業スキームがより効果的なものとなります。
事業スキーム作成のためのポイント
次に、事業スキームを作成するためのポイントを紹介します。今回紹介するポイントは3点です。
- 簡潔に事業内容を説明
- 実施項目の明確化
- 客観的な事実を盛り込む
簡潔に事業内容を説明
事業スキームに記載する内容は、簡潔にする必要があります。1項目あたり、1〜2分で説明できる内容にしましょう。さらに、専門用語を多用せず、わかりやすい説明文にすることも大切です。
とくに、外部の人に説明するための事業スキームを作成する場合は、わかりやすく説明できているか、第三者に確認してもらうなどして入念にチェックしましょう。
実施項目の明確化
事業スキームは、実際に遂行されなければ意味がありません。抽象的な内容にしてしまうと、実際に何をするべきかわからなくなってしまい、現実味のない事業スキームになってしまいます。
項目を具体化するには、現場の声を拾い上げて事業スキームの内容に盛り込むことが必要です。
客観的な事実を盛り込む
客観的な事実やデータを盛り込むことで、事業スキームは具体的で、わかりやすいものになるでしょう。仮説や予測ばかりになると現実味がないものになってしまいます。市場の情報や競合他社の情報など、客観的な根拠を示すことで、説得力のあるものになります。
スキーム図とは?
スキーム図とはスキームを図解したものです。スキーム図を作成することで、第三者が見てもわかりやすい事業スキームを作成することができます。作成方法は以下のとおりです。
- 要素を洗い出し、情報を整理する
- 情報を記号に置き換える
- 記号を配置する
要素を洗い出し、情報を整理する
まずは、事業に関わる全ての要素を洗い出しましょう。具体的な要素は、組織に関わる人や、お金、物を指し、情報や無形の物も含まれます。これらの情報の流れと関係性を整理していきます。
情報を記号に置き換える
要素同士がどのように関係しているのかを考え、記号に置き換えていきます。具体的な記号は、矢印などがわかりやすいでしょう。使用する記号や図形を予め決めておき、統一するためのルールを設けるようにします。
記号を配置する
記号に置き換えた情報を図になるよう配置していきます。他社で似たような事例がある場合は、それを元に作成するのもおすすめです。何度か配置を移動し、わかりやすい場所を決めていきます。
事業スキームで効果的な戦略を立てよう
今回の記事では、事業スキームについて解説しました。事業スキームには、プランやフローなど、混合してしまいやすい似た意味の単語がありますが、事業スキームは、事業計画や事業構造を意味し、実行段階で使う言葉です。
事業スキームは、コンセプトやビジョン、資金の流れを明確にし、簡潔に説明することで、第三者にも伝わりやすくなります。
パラダイムシフトは2011年の設立以来、豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。
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