「うちのIT子会社、このままでいいのだろうか」と、ふと疑問に感じることはありませんか。
そもそも、なぜ多くの企業がIT部門を分社化したのかを振り返ると、当時は「コストを抑えたい」「専門の採用枠を作りたい」といった明確な理由がありました。
しかし、ITが経営の主役となった今、親会社に頼りきりの体制は、かえって変化の足かせになっているかもしれません。
本記事では、IT子会社のあり方を見直すべき「なぜ」を整理し、M&Aを成功させるための考え方を分かりやすくお伝えします。
もし、IT子会社の将来性に限界を感じているなら、M&Aによって専門性の高いパートナーへ事業を託すことは、会社をスリム化するだけでなく、従業員の可能性を広げる前向きな選択肢となります。
目次
- 1 IT子会社が設立される5つの理由とは
- 2 人件費の抑制
- 3 システム開発コストの抑制
- 4 システム運用コストの抑制
- 5 外販率の向上
- 6 人材確保
- 7 IT子会社が抱える3つの課題とは
- 8 IT企画力不足
- 9 プロジェクトマネジメント力不足
- 10 案件量に対する人材不足
- 11 【IT子会社】課題解決のための3つの取り組みとは
- 12 IT企画力の習得機会を創出
- 13 プロジェクトマネジメントに向けた人材育成
- 14 案件数の管理能力強化
- 15 【親会社】課題解決のための3つの取り組みとは
- 16 IT子会社が担う役割の見直し
- 17 キャリアパスの整備
- 18 IT子会社との関係性強化
- 19 IT子会社の課題解決が企業の将来性獲得につながる
IT子会社が設立される5つの理由とは
IT子会社の存在理由を理解するためには、まずその歴史的背景を知ることが重要です。
多くのIT子会社は、1980年代から1990年代にかけて、親会社の「情報システム部門」が独立する形で誕生しました。
当時、ITはビジネスの中心ではなく、主に業務効率化を支えるコストセンターと位置づけられていました。
総務や経理と同様に社内機能だったIT部門を独立させることで、市場原理を導入し、経営効率を高める狙いがありました。
以下では、IT子会社が設立される5つの理由について詳しく解説します。
人件費の抑制
IT子会社が設立される最も大きな理由の一つが、人件費の抑制です。
親会社と子会社では、異なる給与テーブルや評価制度が適用されるのが一般的です。
特に、親会社が金融や商社、メーカーといった非IT企業である場合、IT職の給与水準を親会社の総合職と完全に同一にすることが難しい場合があります。
そこで、IT専門の人材を子会社に集約し、IT業界の市場価値に合わせた独自の給与体系を設けることで、グループ全体としての人件費を最適化する狙いがあります。
システム開発コストの抑制
グループ全体のシステム開発に関わるコストを削減することも、IT子会社設立の重要な目的です。
親会社や各グループ会社が個別に外部のITベンダーにシステム開発を発注すると、案件ごとに見積もりや契約交渉が発生し、コストが膨らみがちです。
また、ベンダーごとに技術標準や開発プロセスが異なると、システム間の連携や将来的なメンテナンスが複雑になるという問題も生じます。
IT子会社は、こうしたグループ内の開発案件を集約する役割を担います。
内製化を進めることで外部への発注コストを直接的に削減できるだけでなく、グループ全体の技術標準を統一し、開発ノウハウを社内に蓄積することが可能になります。
これにより、長期的な視点での開発効率の向上とコスト削減が実現可能です。
システム運用コストの抑制
システムは開発して終わりではなく、日々の安定稼働を支える運用・保守業務が不可欠です。
サーバーの監視・セキュリティパッチの適用・障害発生時の対応・ユーザーからの問い合わせ対応など、その業務は多岐にわたります。
これらの運用業務を各部署や各グループ会社がバラバラに行うと、非効率であるだけでなく、セキュリティレベルのばらつきといったリスクも生じます。
IT子会社は、これらの運用・保守業務を一元的に引き受けることで、業務の標準化と効率化を図ります。
専門のチームが万全な体制でシステムを監視することで、サービスの安定性を高め、グループ全体のITガバナンスを強化する役割も担っているのです。
外販率の向上
設立当初はグループ内の業務が中心だったIT子会社も、事業を拡大し、新たな収益源を確保するために、グループ外の企業から案件を受注する外販に力を入れるケースが増えています。
親会社の業務を通じて培った特定の業界知識やシステム開発のノウハウは、同じ業界の他社にとっても非常に価値のあるものです。
この専門性を武器に外販を成功させると、IT子会社は単なるコストセンターから、自ら利益を生み出すプロフィットセンターに変化します。
外販比率が高いIT子会社は、市場競争に晒されることで技術力や提案力が高まる傾向にあり、働く側にとっても多様なプロジェクトに挑戦できる魅力的な環境と言えます。
人材確保
IT業界は慢性的な人材不足にあり、優秀なエンジニアやプロジェクトマネージャーの獲得競争は激化しています。
親会社が非IT企業の場合、その採用プロセスや評価制度がIT専門職のキャリア観と合わないことがあります。
そこで、IT子会社として独立した組織を設けることで、IT人材に特化した採用戦略を展開しやすくなります。
例えば、技術者向けのイベントへの出展や、スキルを重視した採用基準の導入、柔軟な働き方の提供などが挙げられます。
また、IT専門の教育・研修制度を充実させることで、入社後の人材育成を効率的に行い、専門性を高めることができるのも大きなメリットです。
IT子会社が抱える3つの課題とは
IT子会社はコスト削減や効率化という明確な目的のもとに設立され、多くの企業グループで重要な役割を担ってきました。
しかし、デジタルトランスフォーメーション(DX)が企業の競争力を左右する現代において、その存在意義は大きな転換期を迎えています。
かつてのコストセンターという役割だけでは、変化の激しいビジネス環境に対応できなくなっているのです。
特に、日本全体の課題として警鐘が鳴らされている「2025年の崖」は、IT子会社にとって他人事ではありません。
老朽化した基幹システム(レガシーシステム)の刷新や、深刻化するIT人材不足といった問題は、IT子会社の経営を直撃する喫緊の課題となっています。
以下では、現代のIT子会社が直面している代表的な3つの課題について解説します。
IT企画力不足
現代のIT子会社が直面する最も深刻な課題の一つが、ビジネスの変革を牽引するためのIT企画力の不足です。
これは、単に技術的な知識があるだけでなく、ビジネス課題を深く理解し、ITを活用してどのように解決・価値創造できるかを構想し、提案する能力を指します。
しかし、多くのIT子会社は長年にわたり、親会社から指示されたシステムを開発・運用する受託業務が中心でした。
その結果、「言われたことを、言われた通りに作る」という文化が根付き、自らビジネスの課題を発見し、能動的に解決策を提案する「攻めの姿勢」が育ちにくい構造になっています。
親会社からの安定した仕事に依存する体質が、市場のニーズを自ら掴みに行くという意識を希薄にさせてしまったのです。
プロジェクトマネジメント力不足
IT企画力と並んで、大規模かつ複雑なプロジェクトを完遂させるための、プロジェクトマネジメント力の不足も大きな課題です。
DX関連のプロジェクトは、単なるシステム開発に留まらず、業務プロセスの変革や組織文化の改革まで伴うことが多く、関係者も多岐にわたります。
このようなプロジェクトを成功に導くためには、予算・スケジュール・品質・そしてリスクを適切に管理し、多様なステークホルダーと円滑にコミュニケーションを取りながら推進していく高度な能力が求められます。
しかし、これまで比較的小規模で仕様の決まった案件を中心に手掛けてきたIT子会社では、こうした不確実性の高い大規模プロジェクトを率いる経験を持つ人材が不足しているケースが少なくありません。
案件量に対する人材不足
DXの波は、IT子会社への期待を高めると同時に、業務量の急激な増加をもたらしました。
しかし、需要に対して、人材の供給が全く追いついていないのが現状です。
特に、クラウド・AI・データサイエンスといった先進技術を扱えるDX人材は、IT業界全体で引く手あまたの状態です。
IPA(情報処理推進機構)の調査によれば、多くの日本企業がDX人材の確保において「魅力的な処遇を提示できない」ことを課題として挙げています。
親会社との給与体系の違いなどから、IT子会社が市場のトップレベルの人材を獲得するのは容易ではありません。
その結果、増え続ける案件に対応できず、サービスの品質低下や従業員の疲弊を招くという悪循環に陥ってしまうリスクを抱えています。
【IT子会社】課題解決のための3つの取り組みとは
これまで見てきたような深刻な課題に対し、多くのIT子会社はただ手をこまねいているわけではありません。
自らの存在価値を再定義し、親会社やグループ全体のDX推進に貢献する真のパートナーとなるべく、様々な変革に取り組んでいます。
これらの取り組みは、単なる付け焼き刃の対策ではなく、組織文化や人材育成のあり方を根本から見直す改革です。
以下では、IT子会社が自社の力で推進している代表的な課題解決策を3つの側面に分けて紹介します。
IT企画力の習得機会を創出
「待ちの姿勢」から脱却し、能動的な提案力を身につけるため、多くのIT子会社が人材育成に力を入れています。
その一つが、親会社の事業部門へ技術者を出向させる取り組みです。
ユーザーの側で業務を経験すると、現場のリアルな課題やニーズを肌で感じ、ビジネス視点を養うことができます。
また、デザインシンキングやサービスデザインといった、顧客の課題発見から解決策の創出までを体系的に学ぶ研修を導入する企業も増えています。
これにより、技術者が「どう作るか」だけでなく、「何を、なぜ作るのか」から考えられるようになることを目指しています。
プロジェクトマネジメントに向けた人材育成
複雑なDXプロジェクトを成功させるため、プロジェクトマネジメント能力の強化も急務です。
多くの企業では、PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)といった国際的な資格の取得を奨励し、受験費用や研修費用を補助する制度を設けています。
また、従来のウォーターフォール型開発だけでなく、変化に柔軟に対応できるアジャイル開発の手法を導入し、実践を通じて学べる環境を整える動きも活発です。
意図的に若手に小規模なプロジェクトのリーダーを任せ、早い段階からマネジメント経験を積ませることで、次世代のプロジェクトマネージャーを計画的に育成しています。
案件数の管理能力強化
増え続ける案件に振り回されず、戦略的にリソースを配分するためには、案件全体を俯瞰し、管理する機能が不可欠です。
その役割を担うのが、PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)と呼ばれる専門組織です。
PMOは、各プロジェクトの進捗状況や課題を一元的に把握し、経営層に対して的確な報告を行うとともに、プロジェクト間のリソース調整や優先順位付けを支援します。
これにより、特定の部署や個人に負荷が集中するのを防ぎ、会社として最も重要なプロジェクトに注力できる体制を構築することを目指しています。
【親会社】課題解決のための3つの取り組みとは
IT子会社が直面する課題は、子会社単独の努力だけで解決できるものではありません。
その生い立ちからして、親会社との関係性が事業の根幹を成しているため、親会社側の意識改革と具体的な行動が不可欠です。
むしろ、親会社がIT子会社をどのように位置づけ、どう関わるかが、課題解決の最大の鍵を握っていると言っても過言ではありません。
以下では、親会社が主導すべき3つの重要な取り組みについて解説します。
IT子会社が担う役割の見直し
最も根本的な取り組みは、親会社がIT子会社に対する認識を改めることです。
いつまでも「コストを削減するための下請け組織」として扱っていては、IT子会社の社員のモチベーションは上がらず、自主的な提案も生まれません。
親会社は、IT子会社を「グループ全体のDXを技術で牽引し、新たなビジネス価値を創造する戦略的パートナー」として明確に位置づける必要があります。
そのためには、コスト削減率といった守りの指標だけでなく、外販による売上高や新規事業の貢献度といった「攻め」の成果を評価する仕組みへと転換することが重要です。
キャリアパスの整備
優秀な人材をIT子会社に惹きつけ、定着させるためには、魅力的なキャリアパスの提示が不可欠です。
「子会社に入社したら、親会社への転籍はできず、キャリアの天井が見えている」という状況では、意欲の高い人材は集まりません。
親会社と子会社の間で人事交流を活発にし、互いの業務や文化を理解する機会を増やすことが重要です。
さらに、IT子会社で成果を上げた社員が、実力に応じて親会社の重要なポジションや役員に登用される道筋を明確にすることで、目標を持ってキャリアを築けるようになります。
IT子会社との関係性強化
経営戦略とIT戦略が乖離してしまう最大の原因は、両者のコミュニケーション不足にあります。
親会社の経営層がトップダウンで決定した戦略を、後からIT子会社に「これをシステム化してほしい」と指示するだけでは、真のDXは実現できません。
戦略立案の初期段階からIT子会社の専門家を巻き込み、ビジネスと技術の両面から最適な方針を共に議論する体制が必要です。
親会社の経営会議にIT子会社の役員が定期的に出席したり、共同でDX戦略を策定する委員会を設置したりするなど、組織的なコミュニケーションの仕組みを構築することが、両者の見えない壁を取り払う第一歩となります。
IT子会社の課題解決が企業の将来性獲得につながる
デジタル化が企業の死活を制する現代において、IT子会社は単なるバックオフィスではなく、企業の未来を創るエンジンです。
子会社の自律性を高め、親会社との強固な連携を築くことで、初めてデータドリブンな経営や迅速なサービス展開が可能になります。
M&AアドバイザリーとしてM&Aに関連する一連のアドバイスと契約成立までの取りまとめ役を担っている「株式会社パラダイムシフト」は、2011年の設立以来豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。
パラダイムシフトが選ばれる4つの特徴
- IT領域に特化したM&Aアドバイザリー
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