代表的な企業の資金調達には、以下の4種類があります。
- デットファイナンス
- エクイティファイナンス
- アセットファイナンス
- 補助金・助成金
4種類のなかにも現実的なものと、そうでないものなどさまざまな違いがあります。
大切なのは、自社の未来を見据え、現実的かつ実現可能な資金調達の方法を選ぶことです。
この記事では、4つの資金調達の方法について、ひとつずつわかりやすく説明します。
目次
- 1 資金調達には4つの方法がある
- 2 資金調達の方法1.デットファイナンス:返済期限のある資金調達
- 3 デットファイナンスの3つのメリット
- 4 メリット1.資金調達方法では最も簡易
- 5 メリット2.金融機関との親密化が図れる
- 6 メリット3.金融機関により「箔がつく」
- 7 デットファイナンスの3つのデメリット
- 8 デメリット1.実現できないと他の調達手段も難しい
- 9 デメリット2.返済の資金繰りが必須
- 10 デメリット3.突き詰めれば借金
- 11 デットファイナンスの資金調達方法:金融機関からの融資
- 12 資金調達の方法2.エクイティファイナンス:返済期限のない資金調達
- 13 エクイティファイナンスの3つのメリット
- 14 メリット1.安定した資金調達手段になる
- 15 メリット2.利息を支払う必要がない
- 16 メリット3.信用度の向上はデットファイナンス以上
- 17 エクイティファイナンスの3つのデメリット
- 18 デメリット1.株主離れのリスクがある
- 19 デメリット2.経営権を奪われる可能性がある
- 20 デメリット3.コストが必要
- 21 エクイティファイナンスの資金調達方法:増資
- 22 資金調達の方法3.アセットファイナンス:資産の換金による資金調達
- 23 アセットファイナンスの3つのメリット
- 24 メリット1.資産のオフバランス化が図れる
- 25 メリット2.保有リスクから解放される
- 26 メリット3.資金調達の費用が抑えられる
- 27 アセットファイナンスの3つのデメリット
- 28 デメリット1.企業イメージダウンのリスクがある
- 29 デメリット2.足もとを見られる可能性がある
- 30 デメリット3.必要な資産を換金すると企業が存続できない
- 31 資金調達の方法3.補助金・助成金の活用:返済の義務がない資金調達
- 32 補助金・助成金を活用するメリット
- 33 メリット1.返済が不要である
- 34 メリット2.商工会議所に相談できる
- 35 補助金・助成金を活用するデメリット
- 36 デメリット.後払いである
- 37 自社の未来まで見据えた資金調達を
資金調達には4つの方法がある
4つの資金調達方法を、ひとことで表現すると以下の通りです。
- デットファイナンス:返済期限のある資金調達
- エクイティファイナンス:返済期限のない資金調達
- アセットファイナンス:資産の換金による資金調達
- 補助金・助成金の活用:返済の義務がない資金調達
それぞれ解説していきます。
資金調達の方法1.デットファイナンス:返済期限のある資金調達
デットファイナンスを直訳すると、借入(デット)で資金調達(ファイナンス)することです。
資金調達する者(借り手)と提供する者(貸し手)の間に、第三者が介在する取引であるため、「間接金融」とも呼ばれます。
デットファイナンスで代表的なものは、銀行融資などの融資です。
よく「デッドファイナンス」という表現もありますが、借入れ(debt)から派生した言葉として、この記事ではデットファイナンスとします。
デットファイナンスには、以下3つの特徴があります。
- 返済期限がある
- 利息を支払う義務
- B/Sでは負債が増加する
まず特徴の1つめは、返済期限があることです。
融資に代表されるように、返済期限に完済する義務が生じるため、返済に向けた資金繰りを考えなくてはいけません。
特徴の2つめは、利息を支払う義務がある点です。
融資の場合、利息支払が必要になります。
通常の利息以外には延滞利息、遅延損害金(年利15%程度)などが加算されます。
特徴の3つめは、B/Sでは負債が増加する点です。
デットファイナンスは、企業のB/S(バランスシート、貸借対照表)上の負債が増加します。
たとえば、1,000万円を融資で資金調達した場合、B/Sでは負債が1,000万円増えます。
負債の増加に相当する現預金(運転資金として)、あるいは機械や不動産(設備投資など)が増加することになります。
デットファイナンスの3つのメリット
デットファイナンスのメリットには、3つのメリットがあります。
メリット1.資金調達方法では最も簡易
銀行融資なら申し込みの手続きや、審査に必要な資料・書類の準備などが必要にはなりますが、あとは成否の回答を待つだけで、資金調達方法では最も簡易です。
メリット2.金融機関との親密化が図れる
金融機関は融資が主な業務ですが、貸したお金を返してくれる相手でなくては融資できません。
資金調達できるのであれば、金融機関が「付き合っていきたいお客様」と考えている証になりますので、親密化が図れます。
メリット3.金融機関により「箔がつく」
金融機関は大小さまざまあり、信金・信組よりは地銀、地銀よりメガバンクが格上です。
したがって、資金調達をする相手がどの金融機関かにより「箔がつく」ことになります。
ホームページに掲載する取引金融機関(取引とは融資のこと)がメガバンクなら「我が社はメガバンクから融資を受けています」とアピールできるのです。
デットファイナンスの3つのデメリット
デットファイナンスは、デメリットが3つあります。
デメリット1.実現できないと他の調達手段も難しい
デットファイナンスが実現できなければ、他の調達手段はもっと難しくなります。
エクイティファイナンスは、企業の内容など高いレベルが求められ、アセットファイナンスは、実現できる企業が限られます。
そのため、デットファイナンスが実現できなければ、エクイティファイナンス・アセットファイナンスなどの他の資金調達法が困難になるのです。
デメリット2.返済の資金繰りが必須
デットファイナンスには返済義務があります。
資金調達後は、返済資金を常に念頭に置き、資金繰りをしなければいけません。
「資金繰りに詰まったときの貯えはあるのか?」など、以前に加えてリスク意識が必要になります。
デメリット3.突き詰めれば借金
デットファイナンスも、突き詰めれば借金です。
上記した取引銀行でも、以前はメガバンクから融資を受けていたが地銀、更に信金へと変わっていけば、業績低下で上位金融機関が手を引いたと見られる場合があります。
デットファイナンスの資金調達方法:金融機関からの融資
デットファイナンスは、銀行融資が代表格です。
証書貸付、手形貸付、当座貸越などさまざまな種類があります。
企業が金融機関に融資申し込みし審査を受ける形態で、創業から小規模、中小企業向けの資金調達方法です。
資金調達の方法2.エクイティファイナンス:返済期限のない資金調達
エクイティファイナンスとは、「株主資本(エクイティ)の増加による資金調達(ファイナンス)」です。
エクイティファイナンスの代表的な手法は、増資。
デットファイナンスのように、金融機関などの第三者が介在しないため「直接金融」と呼ばれます。
エクイティファイナンスの特徴は、以下3つです。
- 資本の増加で資金を調達
- 返済期限がない
- 返済ではなく還元(配当やキャピタルゲイン)をする
特徴の1つめは、資本の増加で資金を調達する点です。
資本(株主資本)の調達がエクイティファイナンスなので、B/Sでは資本が増加します。
特徴の2つめは、返済期限がないことです。
デットファイナンスのような期限がないので、企業は時間的制約を受けず経営できます。
ただし、例外的に償還期限を設定する場合もあります。
特徴の3つめは、返済ではなく還元(配当やキャピタルゲイン)をする点です。
デットファイナンスの返済が、エクイティファイナンスでは還元(配当やキャピタルゲイン、償還差益)にあたります。
エクイティファイナンスの3つのメリット
エクイティファイナンスのメリットは、3つあります。
メリット1.安定した資金調達手段になる
エクイティファイナンスは、返済期限がないため、返済を重視した資金繰りは不要です。
資金的に拘束を受けないので、積極的な経営戦略も可能となります。
メリット2.利息を支払う必要がない
エクイティファイナンスは、利息を支払う必要がありません。
そのため、金利ゼロで資金調達ができます。
ただし、発行コストや、配当支払の義務などの費用は発生します。
メリット3.信用度の向上はデットファイナンス以上
エクイティファイナンスの信用度の向上は、デットファイナンス以上です。
たとえば、増資では、広く市場に企業価値を問うことになります。
そのため、実現すればそれ相応の経営基盤や業績の証明になり、信用度の向上はデットファイナンスの比ではありません。
エクイティファイナンスの3つのデメリット
エクイティファイナンスのデメリットは、3つあります。
デメリット1.株主離れのリスクがある
エクイティファイナンスは、増資で資金調達します。
そのため、一株の価値が下落してしまうケースがあり、そうなると従来からの株主(ステークホルダー)は損失を被ることになります。
保有する株の価値が下がれば、株主が離れていってしまうリスクがあります。
デメリット2.経営権を奪われる可能性がある
エクイティファイナンスは、保有株数の変化による発言力の低下・最悪は経営権を奪われる可能性もあります。
いわゆる「物言う株主」を呼び込むリスクは、常に考えなくてはいけません。
デメリット3.コストが必要
増資やCBの発行などは、各種法律に沿った手続きが必要となります。
証券会社や専門業者などに依頼するのが一般的で、融資よりコストが必要になることもあります。
エクイティファイナンスの資金調達方法:増資
エクイティファイナンスの代表格は増資です。
企業の創業期、成長期はデットファイナンスで資金調達し、ある程度の成長、拡大を遂げた企業がエクイティファイナンスに資金調達方法を切り替える流れが一般的です。
資金調達の方法3.アセットファイナンス:資産の換金による資金調達
アセットファイナンスは、企業が保有する資産を換金して資金調達する方法です。
アセットファイナンスの特徴は、以下3つです。
- 有形・無形を問わず資産は資金化できる
- 調達というよりも換金
- B/Sでは資産が減少する
特徴の1つめは、有形・無形を問わず資産は資金化できるという点です。
アセットファイナンスは端的に言うと「資産の切り売り」で、さまざまな資産があります。
不動産や動産(商品、在庫など)以外にも、特許などの知的財産権も対象になり得ます。
最近ではファクタリング(手数料を支払い売掛債権を売却する)が一般化しつつあります。
特徴の2つめは、調達というよりも換金という点です。
資金調達よりも、ずばり換金という意味がアセットファイナンスです。
売るべき資産があり、買い取ってくれる相手がいれば、業況とは無関係に資金調達することも可能です。
特徴の3つめは、B/Sでは資産が減少する点です。
アセットファイナンスは資産を売却して換金するので、B/Sでは資産が減少します。
また換金した資金で負債を返済すれば、負債の圧縮にもつながります。
アセットファイナンスの3つのメリット
アセットファイナンスのメリットは3つです。
メリット1.資産のオフバランス化が図れる
売却すれば、資産のオフバランス化(B/Sから資産を切り離し財務を圧縮)が図れます。
売却により資金調達をして負債を返済すれば、債務圧縮となり財務状態の健全化にもつながります。
メリット2.保有リスクから解放される
資産の保有にはリスクが伴います。
工場であれば火災などリスクがありますし、機械や車両も経年劣化や損失のリスクがあります。
当たり前ですが、保有していなければ保有リスクはありません。
メリット3.資金調達の費用が抑えられる
融資なら保証料、増資なら証券会社に大きな費用が必要となります。
一方、アセットファイナンスでは企業が売り手なため、費用も抑えられます。
アセットファイナンスの3つのデメリット
アセットファイナンスには、3つのデメリットがあります。
デメリット1.企業イメージダウンのリスクがある
アセットファイナンスは、企業のイメージダウンにつながるリスクがあります。
たとえば、利用しなくなった保養所を手放す場合。
「あの会社は社員の福利厚生施設まで手放さないと、やっていけないらしい」と誤解されるケース。
こうした場合を考慮して、周りの目にも注意が必要です。
デメリット2.足もとを見られる可能性がある
アセットファイナンスは、足もとを見られる可能性があります。
たとえば、不動産売却では、工場などの物件は一般の買い手が見つけにくいです。
そのため、同業他社や不動産業買取業者に依頼するのが一般的。
そうなると、買い手の立場が強くなり、価格面で足もとを見られてしまうことがあります。
デメリット3.必要な資産を換金すると企業が存続できない
必要な資産を換金すると、企業として存続ができなくなることを、頭に入れておきましょう。
企業存続に欠かせないモノは、絶対に売れません。
とはいえ、資金繰りに窮した場合には、3つある工場の1つを手放すなど選択を迫られることもあります。
経営者は、手放して得る資金と、手放すことによる損失を慎重に見比べる必要があります。
資金調達の方法3.補助金・助成金の活用:返済の義務がない資金調達
最後に補助金・助成金の活用についてみてみましょう。
補助金・助成金は政府や民間が交付している給付金です。
条件を満たし、公益上必要であると判断された場合に給付されるもので、基本的に返済義務はありません。
補助金と助成金の違いは以下の通りです。
種類 | 給付元 | 財源 |
補助金 | 経済産業省や地方自治体 | 税金 |
助成金 | 厚生労働省、国や地方公共団体 | 雇用保険料 |
補助金と助成金の難易度を比較すると補助金の方が高いと言えます。
理由は財源が税金となるため給付の上限に限りがあることも多いためです。そのため、倍率が上がりやすくなり必然的に難易度が高くなります。
補助金・助成金を活用するメリット
補助金と助成金を活用するメリットを見てみましょう。
メリット1.返済が不要である
補助金・助成金を活用する最大のメリットは原則的に、給付金の返済が不要である点が挙げられます。
これまで紹介したその他の資金調達方法は、資金を借り入れることです。
それに対して、返済不要の補助金や助成金は大変効率の良い資金調達の方法と言えるでしょう。
メリット2.商工会議所に相談できる
2つ目のメリットとして挙げられるのは、商工会議所に指導や助言を求められる点です。
補助金や助成金を申請する際には、事業計画書や実施計画書の作成と提出が条件となっていることが多くあります。
その際に商工会議所に相談したり、給付が受けやすくなるよう助言を受けたりできる点もメリットです。
補助金・助成金を活用するデメリット
次に補助金助成金を活用する際のデメリットを紹介します。
デメリット.後払いである
補助金・助成金は申請すればすぐに振り込まれるものではなく、基本的に後払いとなります。
スピード感のある資金調達とは言えません。
しかし、補助金・給付金が振り込むまでの期間を融資でカバーするなどの対処方法もあります。
自社の未来まで見据えた資金調達を
資金調達の4つの方法を、メリット・デメリットとあわせて解説しました。
資金調達には、おおきく4つの方法があります。
- デットファイナンス
- エクイティファイナンス
- アセットファイナンス
- 補助金・助成金
もっとも大切なことは、企業の将来を見据えた資金調達方法を考えることです。
たとえば、M&Aも資金調達の方法として確立されています。
次代に導いてくれる相手に自社を譲ることは、決して恥ずかしいことではありません。
M&Aで得た資金で、次のステップへ踏み出す選択肢もあります。
各資金調達方法の特徴やデメリットを考えて、自社にあった資金調達方法を選択しましょう。
パラダイムシフトは2011年の設立以来、豊富な知識や経験のもとIT領域に力を入れ、経営に関するサポートやアドバイスを実施しています。M&Aに精通している仲介会社を利用すると、安心して行うことが出来ますので、是非ご検討ください。
パラダイムシフトが選ばれる4つの特徴
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